その日の朝、元老院から使者が訪れて姫の身柄の移送が決定された事と、その際に護衛隊が
この修道院へ派遣されて来る旨を告げた。
オーボンヌ修道院長シモン・ベン・ラキシュはこの突然の報せにわなないた。
 とうとう姫が――ここを去る時が来てしまった。
 いつかその時が来るとは思っていたが、やはり戦乱の兆しが見える今、避け様の無い成り行きであろう事は
想像に難くない。
しかし、幼い頃からその成長を見守ってきた姫がいない日々を過ごすなど、シモンにとっては
人生の彩を失うに等しい悲しみに感じられた。

 妻を娶らず、子を成さなかった自分が我が娘の様に愛情を注いだ姫があと十日も経てばここを去ってしまう。
おそらくはこれが今生の別れ。せめて老い先短い自分が存命の内はどこにも行かずここにいて欲しいと
切に願っていたのに。
 この後も転々とした末に御身が無事であればいずれ政治の道具として政略結婚をさせられるだろう。
結婚。初夜。そして夫と定められし男から破瓜の痛みをもたらされ――
 耐えられない、限りなく優しく触れてやらなければ壊れてしまいそうな危うさを湛えた姫が男に組み敷かれて
痛みに涙するなど!
 聡明なる老人は失意のあまり、長年に亘って己の中に潜んでいたドス黒く歪んだ欲望を正当化し始めた。
 ……それならばいっそ、この私が姫が苦痛を味わわぬ様に無痛の破瓜を! 甘美な眠りの中で安らかな破瓜を!


   その日の晩、夕食を終えた後になってオヴェリアはシモンから十日後の移送の件を知らされた。

「シモン先生、わたし怖い…… ここでの暮らしにもすっかり慣れて、思い出もできて、静かに毎日を過ごして……
それがまた急に変わって、変えられて、今度はガリオンヌ…… また、とも思うけど不安で眠れそうにないわ。
新しい生活なんて怖いだけ」
 シモンは動揺を含んだオヴェリアの言葉に静かに耳を傾けた後、小間使いを呼んで不思議な香りのする
紅茶を持って来させた。
 「姫様、今夜からはこれをお飲みなさい。特製のハーブを煎じてあります。
精神を安定させ、よく眠れる様になります。せめて安らかな夢を」
 「シモン先生……」
 「姫様がいつどこにいても幸せであられます様、私はいつも祈りましょう。だからどうかお休みなさい」


 日付けが変わる頃、シモンは足音を忍ばせてオヴェリアの部屋を訪れた。
 音を立てぬ様にドアを開け、大きなガラス窓から差し込む月明かりに満ちたその部屋に身を滑り込ませると
シモンは姫のベッドへ歩み寄った。
よく眠っている。その寝息は通常のそれよりも深く、長く、力強ささえ感じられた。紅茶に溶かし込んだ
眠り薬が効いているのだ。
 少々の事では、夜が明けるまで姫が目を覚ます事は無い。夢さえ見ないほどの深い眠りに入っている筈だ。
 シモンはそっと姫の手を取ると恭しく口づけた。

 シルクのネグリジェをはだけ、胸を顕にする。畏れと、己の浅ましさに歪められた愛情が葛藤し、シモンの
心臓に爪を立てる。


ゆっくりとした寝息に応じて上下する滑らかな美しい曲線を描く小ぶりな双丘がシモンの目を捕えて離さない。
月明かりに照らされた肌はその白さを一層増してまばゆく、瑞々しい産毛が輝いていているのが見えた。
 しゃぷ、と音を立てて乳房を口に含む。およそ男が口にするものの中でこれ以上に甘美なものがあろうか。
舌でまろやかな乳房の感触を愉しみ、唇で乳首を撫でて愛でる。姫の深く長い静かな呼吸が僅かに乱れた。
口の中で少しずつ硬く尖ってゆく乳首を慈しむ様に優しく吸うと、姫の口から艶かしい吐息が漏れた。
 眠れる姫に覆いかぶさる己の罪深さにおののき、慈父の面持ちで乳房を愛撫する。全ては姫のためなれば。
長らく乳房を味わい尽くした後、シモンの口はやんごとなき体のあらゆるところを這い回った。
足指の先はおろか、尻の穴まで。
 姫君の素肌は月光の粒子を浴びて幻想的なまでの白さを醸し出す中にもうっすらと桜色を帯びてきており、
シモンの体の動きに合わせて時折りビクリと震えた。シモンはそれを見てますます己の男根を固く張り詰めさせた。
 シモンはじりじりと姫の脚の間に迫り、やがて無防備な生娘のネグリジェをめくり上げた。
夜着の裾を持つシモンの手が震える。
 この愛らしい少女にも柔らかな恥毛がなだらかな丘に茂っていた。
全てが白く柔らかく滑らかでただただ美しいのに、この恥毛の縮れた様はなんという淫らさだろう。
姫の裸身の美しさをひたむきに愛でるシモンを嘲笑っているかの様だ。
 
 シモンはかつて上級異端審問官であった頃に初夜権を行使した事が数え切れないほどあった。
絶対的な権力の一端に過ぎなかったそれは(表向きは)姦淫を許されなかった僧身にとって
最高の昇華であり、発散だった。
生娘を貫く際の花嫁の理不尽の涙、恥じらい、狭き門の抵抗感、苦痛の顔、そして何よりも
前日と翌日に見る花婿の憤りと悔しさに満ちた顔。
聖職者でありながら、いや聖職者であるが故の圧倒的な神の威を背にした己の正当性に酔いしれた過去の放蕩。
 
 そうした過去があるからこそ、それがどういう事なのかをよく知っている。姫がどこの王族の下へ嫁ぐにせよ、
少なくとも、姫が破瓜の肉体的苦痛を味わわずに済む様にして差し上げるのが、私の、私の……

 シモンは姫の若草の様な恥毛を食み、しゃぶり、味わった。そして更に下の方に舌を這わせていく。

ふくよかに盛り上がった柔肉に何度も口づけを重ね、閉じられた門を舌でなぞり、門の上の珠を舐め転がした。
 そうしている内に塩気のある女の蜜の味が唾液の中に混じり始め、独特の臭いが香の様に漂い始めた。
 いよいよ時が来た。シモンは懐から小瓶を取り出して栓を抜き、少女の中心に傾けた。
小瓶の口からトロリとした透明な液体が滴り落ち、眠る姫の宝珠を打った。シモンの指が液体を掬い取り、
性器と性器の周辺へ丹念に塗りこんでゆく。
 この時、初めてオヴェリアがかすかにではあるが喘ぎ声を上げた。シモンが始めて聞く姫の“女の声”だった。
 小瓶の中には、性器と周辺の肉を弛緩させる効果のある薬に強力な催淫剤を配合された物が入っていた。
個人差はあるものの、これによって破瓜の痛みをかなり軽減する事が出来る為、シモンは初夜権を行使する
際にあまりにも痛がる娘や、どうしても入らなかった娘などに何度か使った事があった。
 
 シモンは男根の先を姫の濡れそぼった門にすりつけ、亀頭をめり込ませた。
オヴェリアは目こそ覚ましていないものの、額から首筋にかけてうっすらと汗をかいていた。
その艶かしい様を見たシモンはそのまま腰を突き動かしたい衝動を辛うじてこらえた。
少しずつ、ゆっくりと、時間をかけて。少し挿れては抜きを繰り返す。無理はしない。まだ時間はある。
 亀頭の部分がすんなりと飲み込まれる様になったところで夜が白んできた。
シモンは起き上がってベッドの脇に移動すると、オヴェリアの手を取って男根を握らせた。
姫の華奢な手に己の手を重ねて包み、男根を撫でさすらせるとシモンは激しい興奮を覚えてすぐに射精した。
姫の手に飛び散った精液と男根から滲み出て来る残滓を懐紙で拭き取ると、勃起の収まらぬ逸物を
姫の口元に持っていき、そのつややかな唇に押し当て、頬にすりつけた。
 いつまでもそうしていたかったが、シモンはまた明日があると自分に言い聞かせて男根をしまいこんだ。
姫の体を濡れタオルで優しく拭き、はだけたネグリジェを整えて元通りに毛布をかけると
シモンは自室に戻り、朝までのわずかな時間を泥の様な眠りに費やした。



 「シモン先生おはようございます。先生が寝坊なんて珍しいですね」
 食堂で屈託の無い笑顔を見せる姫に迎えられ、普段と何も変わらない一日が始まった。
姫がここを去るまでの日々はどうか過ぎないで欲しいと願う一方で、シモンは早く夜が来る事を切望していた。
半ばうわの空で日中を過ごす。そしてまた、夜が訪れた。


 オヴェリアはうつ伏せになって眠っていた。
背に豊かな髪を流し、乱れたネグリジェの裾から丸みを帯びた尻を覗かせている。
 シモンはネグリジェ越しの尻に頬をすりつけた。芸術品の様なこの尻を愛でる事の喜びを存分に味わうと、
そのまま尻の谷間の奥へと顔を埋めていった。昨夜と同じ様に愛撫を施し、濡れてきたところで薬を塗り込む。
 オヴェリアが若干下つきだった事もあってか、後ろからの挿入ではあっさりとシモンの男根を飲み込んだ。
姫の表情は穏やかで、少しの痛みも感じていない様だった。シモンは安堵し、ごくゆるやかに腰を動かし始めた。
久々に味わう女体の快楽にシモンは我を失いそうになる。もっと激しく、思い切り深くまで突きたい、と。
それを必死で抑え込み、シモンは夜明け近くまで耐え、最後は姫の手の中で果てた。

 無痛の破瓜を成した後も、シモンは数日に亘って眠れるオヴェリアを犯し続けた。だが、最後の最後まで
姫の唇を奪う事だけはしなかった。そこにだけは畏れを感じたのか、あるいは罪を感じたのか。
それから二年後、この老いた修道院長はその心境を秘したまま帰らぬ人となった。



 数百年後の今、当時オーボンヌ修道院で働いていた、覗き趣味を持った小間使いが残した日記が発見され、
またひとつこの様な真実が明らかになった。

 いやいや、真実と見るのは早計、これは卑しい小間使いの妄想、あるいは空想の産物だったかも知れない。
いずれにしてもこれは歴史に直接関わる様な事柄では無い。どちらが真実なのかは読者の判断に委ねよう。

 なお、この小間使いの日記の中にはオヴェリアの手淫についても詳細な描写が出てくるのだが、
ある時期同じ修道院に預けられていたベオルブ家の令嬢が手淫のやり方を教えたという記述がみられた。
 ベオルブ家の令嬢についてはアルマ・ベオルブの章を参考にされたい。


                                      裏デュライ白書著者・アラズラム.A.デュライ