「アルマ…!!悪ふざけはよせ…これを、解いてくれ……ッ!!」
全裸で、頭上で戒められた両腕を解こうとラムザは腕に力を込めて動かした。
だが括り付けられたベッドがわずかに軋んだだけで、何かの布地で絡めとられた両腕は容易には解けそうにない。
ラムザはベッドに寝たまま、強い視線でアルマを睨んだ。
アルマはベッドサイドに立ったまま、それを余裕の視線で見下ろす。
アグリアスさん、ていうのね。あのひと。すごく綺麗で、しっかりした感じの人だった。兄さんの恋人?」
「アルマ!!な、何を言い出すんだ…!いいから、悪ふざけはもう」
「違うの?でも、一回くらいは楽しんだでしょう?あの人と」
「そんな…」
「したのね?」
ここで嘘を言い切る程にはラムザの性格は垢抜けていない。
無言の肯定に、一瞬だけアルマの瞳が暗く燃えたようにラムザには見えた。
「やっぱりね。兄さんを見る目でなんとなく分かったわよ」
漆黒の闇を映す窓の外を見ながら、アルマは楽しげにそう言った。
「アルマ――?」
ベッドに縛り付けられているこの状況も異常だが、それを差し引いても妹の様子は明らかにおかしい。
「なぁに?別に怒ったりしないわよ?ちょっと安心しちゃったくらい。兄さんったらいくつになってもぜんぜん年頃の
女の子に関心ないみたいで、こんな手のかかる妹がいるから女の子に興味がもてなくなっちゃったんじゃないか、
なんて勝手に心配したりしてたくらいだし。それに」
笑顔で振り返り、動けないラムザの脇にするりと陣取る。
「あの人とできるのなら、私とできない理由はないものね――」
手袋を嵌めた細腕が、愛しげにまだ力ないラムザの自身を優しく握った。
アルマは眼を細め、髪を掻きあげつつ顔をそれに近づけて――無垢な自身の唇で、力ないその先端に口づけをした。
心臓の鼓動が早まる。
考えまいとしていたアルマの目的を、ラムザは認めざるを得なかった。
「可愛がってあげるわ。兄さん」
僕は悪夢を見ているのか――ラムザは、そう思った。
ムスタディオとラッドがラムザを誘ったのは、夕方頃だった。
兄にべったりのアルマをなんとか酒の席にという二人が策を講じた結果だったが、ラムザは深く考えずに付き合った。
――兄さんが飲んでないのに、私だけ飲むわけにはいかないから。
アルマの発したその言葉を境に、ムスタディオとラッドの猛攻はラムザへとシフトし――もともと押しにも弱く酒にも
弱いラムザの運命は、そこで決したと言っても良かった。
そしてアグリアスとアルマに肩を抱かれて引きずられるように宿に入り、二階のベッドに倒れこんだのが数刻前。
二人が何かを話していたようだったが、そこから先は記憶にない。
「ふふ。二人だけで一緒に遊ぶなんて、ずいぶん久しぶりよね。兄さん…」
くすくす笑いながら、アルマは着衣を脱いでゆく。
腰から背中にかけてのなめらかなライン。やわらかそうに揺れる双丘、極上の菓子を彩る果実のようなその先端。
いつの間にか女に――それも肉感的な女のそれになっていた妹の身体に、ラムザは知らず視線を奪われていた。
――いけない。これは――妹、だ。
「んふ。…ぁむ」
「く…!」
ラムザと同じく一糸纏わぬ姿になったアルマは、手始めとばかりに張りを増してきたラムザの幹を軽く口に含んだ。
「兄さん…大きくなってきたわ」
「仕方…ないだろ…!!もう、やめてくれよ…!!」
ラムザは屈辱に真っ赤に染めた顔を背けた。
満足げに微笑んだアルマの手が、袋の部分を軽く揉む。
幹の裏筋をゆっくりとなめ上げる感触に、ラムザの怒張は本人の意思と裏腹に更に張りを増した。
「……く……ッ」
「イけそう?いっぱいしてあげるから…」
「嫌だ…!!嫌だ…ッ!!」
激しく左右に首を振る兄に、アルマは軽く眉を寄せる。
「嫌なの?どうして?」
「だって…僕たちは…ッ!!」
「……そう。じゃあ……」
何を思ったか、アルマはベッドを降りる。
脱いだ衣服をごそごそと探り――再び立ち上がったその手には、真紅のリボンが握られていた。
「こうしてあげるね。あは、かわいい」
「…ッ!」
袋と幹の根元をきつく縛り上げられる異質な感触に、思わずラムザは軽く呻いた。
「――何を考えているんだ…ッ!!」
「…ふふ」
白いなめらかな手が、縛り上げたラムザの先端からあふれ出した先走りの液を塗る。
腺液と自分の唾液でべとべとになった手のひらが、ゆっくりと反り上がったラムザの怒張を包み――そのまま上下に
しごくように撫ではじめた。
「ほら。気持ちいいでしょ?兄さん?」
「うぅ、くあぁぁぁぁあぁッ!うぁッ!!」
こみ上げてくる悦楽が、きつく縛られた根元に溜まっていく。
アルマは縛った兄の先端を口に含み、手と同時に舌を這わせる。
根元から――ゆっくりと、先端まで。そして――再び、根元へ。
なめらかな濡れた舌と唇の感触、絶妙な指先の力加減。いつ精を放ってもおかしくない快楽が、ラムザの全身を震わせる。
だが、その状態が延々と持続することは苦痛以外の何物でもなかった。
「あぁ……ッ!!あ、アルマ、苦しい…ッ!!それ、解いてくれッ!!」
「嫌。さっき『妹でなんてイキたくない』って言っていたのは誰かしら?……私が今日まで気持ちを抱えて生きてきた時間、
その何分の一かでも兄さんに味わってもらうから」
「あ、あ、あはぁぁぁぁッ!!」
じゅ、じゅ、と音を立てて、妹の手が強く自身をしごき上げる。そのたびに電流のような快楽がラムザの脳を貫き、頭上で
縛られた両腕がベッドを軋ませ、女のような喘ぎが自分の口から迸る。
「ふふ。気持ち良さそう。…なんか、こっちのほうまで元気になってきてるわ」
「あ、ああぁぁぁッ!?やめ、や、うぁぁッッ!!!」
アルマの舌が、ラムザの右の胸を捕らえた。
胸の先端から感じる不慣れな快楽に、ラムザの身体は逃れようと悶える。だが両腕を縛り上げられた上、身体に上から
のしかかられてはどうしようもなく。
舌先でちろちろと与えられる胸への刺激が、間近に迫る妹の髪の香りが、腹筋に押し付けられたふたつのふくらみと、
勃ち上がったその先端の感触――そして途切れず続けられる性器への責めが、ラムザの意識を混然ととろかしてゆく。
「どう?イキたいでしょ?兄さん…」
「……ッ…。…解いてくれ…アルマぁ……ッ!!」
「イキたいです、って言えたら解いてあげる」
幹をしごきあげていた手が、今度は指先で先端をなぶり始めた。ぬるぬるとした中指の腹が先端の尿道を強く撫でるたび、
びくびくとラムザは背を反らせ思考を乱す。
「ずっとこうしていたいの?それならそれでも、私はいいけれど」
そんなのは、嫌だ。
もう……放ちたい。終わらせたい。楽になりたい……いや。
快楽が、欲しい。
この、――女の手で。
「どうなの?兄さん?」
「……イ………………………イキたい……ですッ………!」
屈辱に顔を真っ赤に染め、目をきつく閉じたまま震える唇が言葉を紡いだ。
「よくできました。じゃ、取ってあげるね」
満足げに微笑んだ妹の手によって、しゅる、と紅い戒めが解かれる。
「はぁ、はぁ…………はぁ……」
最後の――刺激が欲しい。
早く。
縛られて自由の利かないラムザは雄の淫欲にとらわれた、すがるような眼でアルマを見る。
投げ出した両足の根元に聳える震える怒張は、もはやどんなわずかなきっかけでも簡単に達する。溜まりに溜まった悦楽は、
熱い粘液となって宙に解き放たれて――
「じゃ、…挿れるわ…」
ラムザの思考は、己の身体を跨いだ妹の言葉に硬直した。
「やめろ…やめろ、アルマ……」
「兄さん…」
愛液にとろとろにほぐれた妹の秘唇が、悦楽を待ち焦がれる自身を受け入れようと先端に触れ――そこは、やがて兄のものを
完全に飲み込んだ。
「う、――う、あッ!!」
「あ、はぁ……ッ…やっと……やっと、一緒になれた…ね…」
快楽故か、他の理由か――喜悦の嘆息が混じった妹の涙が、ラムザの身体に雫となってぽたりと落ちた。
「や、やめ……う、あぁ…………ッ!!もう、我慢、…できない……ッ!!!」
ラムザは唇を血が出るほどに噛み締め、身体の欲求に必死に耐える。その抵抗も長くは続かないことを分かってはいたが、
絶対に認めるわけには――実の妹の内に放つ訳にはいかないという恐怖にも似た抵抗が、縛られた身体をよじらせる。
「イキたい、っていったじゃない。ん…ッ。嫌なら、我慢、すれば……それを、決める…のは…兄さん、よ……あぁ……」
アルマの腰が、ラムザを含んだまま甘い快楽を更に得ようと妖艶にくねりはじめた。
互いの粘液がみだらな音を立て、ねっとりとした空気が部屋を満たす。
「あは…どう?これ、気持ち、いいでしょ……?」
「やめろ………やめろぉ………ッ!!あ、あ、も、もう、動くなぁッッ!!!お前は、僕の……ッ!!」
アルマは我を忘れて叫び激しく髪を振り乱す兄の耳に、そっと唇を近づけ――
「愛してるわ、ラムザ。いままでも――これからも、永遠に」
「――――――」
胸の深いところへ刺すようにえぐりこんだその言葉に、ラムザの何かが壊れた。そして――
「……ッ!」
ラムザの怒張はびゅくん、びゅくんと激しく脈打ち、妹の胎内に大量の精を放った。
「あは……あ、…来た、いい、気持ちい……ラムザの……」
「……う……う、あ……ぁ…………」
終わった―――終わった。
終わってしまった。
苦痛、快楽、疲労、そして激しい敗北感と背徳感、焦燥感。心の負荷が限界に達し、意識が彼方へ飛び去ろうとする寸前――
――陶然と虚空を見つめ、背徳の快楽に震え酔い痴れる妹の瞳の中に、ラムザは堕ちた聖天使の姿を見たような気がした。