『夢見る女』


優しい男。優しすぎて、辛い…。あまりにも、優しすぎて…。
はっきり「嫌だ」と言ってくれない残酷な男。
でも、私は…。

雲の多い夜だった。雨も降りそう。だが、それが良かった。
まるで、天まで涙を流してくれそうな気がするのだ。
「ラムザ…」
メリアドールは、夜着の裾をたくし上げた。
宿の一室。皆が、階下の酒場で飲んでいる。自分はさっさと切り上げて、この部屋にいる。
いつからか、自分を慰めるようになった。
初めは敵。出会いは戦場。交わした言葉は憎しみ。そして、紆余曲折を経て仲間になった。
ラムザは、新参者にも優しかった。古株と新参で別れないように、いつも気を使う。
新参の悩みも、丁寧に答える。
信頼が愛情に変わるのに時間はかからなかった。
でも、わかっている。
ラムザは、私にもアグリアスにも同じように振舞う。
でも、私は気づいている。
私より、もっとずっと深い所で、ラムザはアグリアスと繋がっている。
苛立ちや、独占欲。
そういうものを、はっきりと表せない。
なんだか、憚られるものがある。
触れてはならないような気がする。
何があったか、そんな事を聞く気はなかった。聞けば聞いただけ、ラムザのアグリアスへの想いを感じるだろうから。
叶わぬ恋かもしれないけど、まだ夢を見ていたい。
出来れば、ずっと…。


「ぁ…」
胸をやわやわと揉みしだくと、少し高い声が出る。
軽い刺激だが、身体の芯に、微かな炎が灯ったのがわかった。
だんだんと、胸を揉む手が荒くなっていく。まるで、獣へと変わっていく男にされているように。
「く…ぁ、は…」
胸の頂点は、すでにしこっている。焦らすように触り、加速をつけていく…。
段々我慢ができなくなってきたのか、手はそろそろと、下へ向かっていく。
「ふぁ!」
花弁を超え、芯に触った時、大きな声が出た。
そして、一度出始めた声は、まるで堰を切ったように、止まることは無い。
「くぁ、らむざぁ…」
夢の中の想い人に抱かれている。考えようによっては、幸せなのかもしれない…。
ただ、メリアドールは処女である。実際に男に抱かれたことなど、ただの一度もない。
だからこそ、その妄想は、自分の理想どおりである。
何処までも、理想通りである。
「ラムザ、ぁ、わたし…わ、たし…あなたが、あぁ…」
段々と高みへと昇り、手は激しくなる。
比例するように、声も艶を帯びたものから、ほとんど悲鳴に近い高さになってきていた。
「私!もう…ダ、メ…あ、あい…し」
びくびくと体を震わせたかと思うと、すぐに弛緩した。達してしまったようだ。

最後の言葉は、語られることは無い。恐らく、永遠に。
彼女は幻想を見続けるのかもしれない。
しかし、それでも良いのだろう。彼女が、夢を見続けたいと願う限り。

言葉にならない、切なさと心苦しさを感じながら、メリアドールは眠りに落ちた。
そして、また夢を見る。