バカ 騒ぎ
「うーん、どっちも捨て難い」
「三郎が悩んでるなんて、珍しい」
なにやら雑誌を手にしたまま片方の手を顎に置いた状態で先ほどからブツブツと呟いている三郎の姿に、いつもは、こちらがそのポーズをしているのが定番であるので雷蔵は少し驚きながら声を掛けた。
「お、雷蔵。いいところに来た。お前は赤と青どっちが好き?」
「え? んー……赤も明るくて捨てがたいし青も空の色で綺麗だし……」
今度は雷蔵が悩み始めたのを見て、相談した相手が悪かったと三郎は苦い笑みを浮かべながら、ひらひらと手を振った。
「もういい、お前に聞いた私が悪かった」
「エー、聞いといてそれは酷いじゃないか。一体、何のことを話してたんだよ?」
ぷくりと頬を膨らませた雷蔵に、はいはいと返答しながら三郎は手にしてた雑誌を雷蔵に広げて見せた。
先ほどの質問の答えがそこにあるのかと、雷蔵はその中身に視線をやって顔を赤く染めた。
「……ちょ、三郎、何てもの見てるんだよ!!」
「何って、水着の写真集」
「そういうのを学校に持ってくるんじゃない!」
雷蔵はそれをひったくって傍にあったゴミ箱に捨てようとして、これも本の一種だと気付いて即座に三郎の鞄の中に突っ込ませた。
「あー、折角見てたのに」
「こういうのは家で見ろ!」
「雷蔵に見せる為に持ってきたのにー」
「要らないお世話!」
確かに雷蔵もお年頃。そういうものに興味がないかと問われれば否定は出来ないが、三郎に心配されるほど飢えてはいない。
本気の怒りに三郎は小さく舌打ちしながら、渋々鞄のチャックを閉じた。
そして、ふと気が付いたように口を開いた。
「なあ、雷蔵は、にはどの水着が似合うと思う?」
「……は?」
「うん、質問の仕方が違ったな。自分が、に着せたいと思う水着って何?」
「な……なななななな」
その質問に雷蔵の顔がまた赤く染まった。
その反応にニヤリと三郎が笑みを浮かべた。
「あー、想像したんだ。やーらーしー」
「っ! 三郎ーー!!」
青春の夏は続く。