| □ Genre menu bar □ はじめに ゲゲゲの鬼太郎 DRAGON BALL 3.3.7.ビョーシ 犬夜叉 GAME | ■ ゲゲゲの鬼太郎 ■ |
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07 怪奇お寝坊さん
] ゲゲゲの森にも冬将軍が訪れていた。 腰のリュウマチが痛むと砂かけばばあが湯治旅行に出かけてからというもの、猫娘はしばらく鬼太郎の家にお泊りにきていた。 もうすっかりと陽が暮れて、いつもならば妖怪たちの起床時間だけれど、猫娘は木の葉の万年床に丸くなったままで、すやすやと眠りについていた。 「…おーい…猫娘ぇ…?」 鬼太郎も決して寝起きがいい方ではないけれど。むしろいつまででも眠っていたい方だけれど。でも、ここ数日ずっとこうして寝坊していると、生活サイクルが狂ってしまうのが心配だ。 猫娘を任せた、砂かけおばばの手前もある。ここはくすぐってでも心を鬼にして起こさなければと思った。 「猫娘ー…」 顔を傾けて、その寝顔を覗き込む。大きな瞳は細く瞑られて、しあわせそうにすやすやと眠り込んでいた。 可愛いなあ… いや、今はそんなことを思っている場合ではない。 けれどそんなしあわせそうな顔で、一体どんな夢を見ているのか、気にかかる。 時おり、寝息にまみれて「…にゃん…」と寝言がもれる。猫時代の夢を見ているのだろうか。 鬼太郎の知らない、頃の夢。鬼太郎を知らない、頃の夢。 「………」 急激に心が冷え、鬼太郎の笑顔が凍る。 これが『どくせんよく』とか『やきもち』だとか云われる感情であることすら、鬼太郎は知らないけれど。 「…起きてよ? 猫娘…」 「ん…ふにゃ…ぁ…?」 閉じたまぶたが揺れる。ぴくぴくと頬が上下し、ぼんやりと瞳を開いた。 「おはよう…いや、こんばんは。もう夜だよ?」 まだ目の焦点も合っていないうつろな瞳で、一度ぶるりと身震いした。 「…たろ…ぉ?」 「うん。僕だよ」 すると、猫娘は嬉しそうに微笑んだ。 そしてもう一度。確かめるようにその名を呼ぶ。 「きた…ろー…」 「うん、うん」 そして… 「? 猫娘??」 また、しあわせそうに眠りについた。 「……参ったな」 ごろごろと丸くなって、木の葉ぶとんに潜り込んでしまう。 「あ。駄目だよ。猫娘ぇ…」 肩口までふとんを開くと「ん…にゃ…っ」と肩を震わせた。 猫娘は大層な寒がりだ。ただでさえ寒がりな猫体質だけれど、全身を覆う毛並みがない分、更に寒さが堪えるのかもしれない。 けれど、子供は風の子だから…。鬼太郎は思いなおして、また起こしにかかった。 「起きて…。起きなよう」 なにげなく触れた髪。猫っ毛でまっすぐな髪が指先でさらさらと流れる。 「ねえ…」 くすぐるように頬に触れる。つるりとした素肌は、子供体温でひどく温かい。 なんだか。鬼太郎の方も温かくなってきた。というよりも…、この寒い中、ぼっと火がついたように熱く感じられた。 指先を進めて猫娘の唇に触れる。 「……?」 不思議な感触だった。しっとりとした唇はとてもとても柔らかくて、ついいたずらに突いてしまいたくなる。 どこか懐かしい感触。 (あぁ…そっか) 以前は、よくほっぺにチュウなどしてくれたものだった。嬉しい時、楽しい時、久しぶりに会った時。猫娘なりの無邪気な愛情表現だったのだろう。 けれど最近は、めっきりしてくれない。 一体いつ頃からだろうか。こうしてお昼寝をすることはあるけれど、チュウやお風呂を共にすることはなくなっていた。 それがどうしてなのか、鬼太郎には分からないけれど……。猫娘が嫌がるから、仕方ないなと思っていた。 (そういえば…) いつも猫娘がしてくれるのを待つだけで、自分からしたことはなかったことに気付く。 ちょっと試してみようかな? と思い、唇を尖らせてみる。 「………」 頬に火がついたように熱い。どうしてか、とても気恥ずかしかった。 (猫娘も、いつもこんな気持ちでチュウしてくれてたんだろうか…) 胸がくすぐったくて、トクトクと鼓動が高鳴ってきた。 猫娘の背中越し、肩に手をかけて振り返らせる。 「ん……くすぐ…」 「?」 「…ったい、ったらぁ…!」 猫娘の鋭い爪が走る───。 鬼太郎の額から顎にかけて、五本の縦筋が走っていた。 「……んにゃ…ん」 まだ、寝惚けているのだろう。猫娘は目を伏せたままで再び床につく。 凍りついたままの鬼太郎を残して。 「………」 そんなに酷いことをしたのだろうか。しようと、していたのだろうか。 鬼太郎はまるで閻魔大王に一喝食らったような気持ちで、深く深く反省していた。 寝た子を起こすのは難しい。 まして猫の子ならば、とてもとても……恐ろしい。 Fin. |