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米吉 〜LoveHydeStory〜
昼下がり ウメフク
リンカーン... ウメソメ
リンカーン... マリソメ
ドブネズミは鮮やかな夢を見るか? ウメソメ


[ リンカーン... ウメソメ ]

『リンカーン・コンチネンタル・マークV・ツインロータリー・トリプル・インター・クーラー・ターボ』
(ウメソメ ver.)



※暴力描写含みます。要注意。



コマ劇場の裏手。廃屋ビルの一室で、暗闇の中数人の人影が蠢いている。
突然背後から襲われ、目隠しをされ、抵抗することもできずに、ソウメイはここへ連れてこられた。
───コロス。
最初は数名だったが、いつの間にか人影は増え、数えるのも面倒なのでやめた。
耳元にはコブシの効いたサブちゃんの歌声が、コンクリートをつたうベース音と共に響いてくる。
今日は北島三郎リサイタルだったんだな、とソウメイは心空ろに思った。
「……うっ…」
何本目だったか忘れた、生温かいブツがソウメイの喉の奥で弾ける。
喉元がひきつるような苦さにむせ込みながら、ソウメイは眉を顰めた。
「何だよ? まだ余裕じゃねェか」
と、ソウメイを背中から抱きかかえるようにして侵入していた男が、笑みを落とす。
「まだイッてねェもんな? ソウメイちゃん」
そう。まだ達っていない。
根元をきつく縛り上げられたままで後ろからブチ込まれ、ソウメイのソレは鬱血したまま痛々しく立っていた。
「っ…アぅ……!」
不意に掴まれた甘い痺れに反応し、ソウメイは体を反らして背を預ける。
「全然 萎えてねェじゃんか」
面白がって胸の突起をいじると、ソウメイはまたヒクリと全身を奮わせた。
「コイツ結構慣れてんじゃねェの? さっきからスゲェ締めてくんだけど」
と、また激しい律動がソウメイを突き上げて揺らす。
「……メ…ロ…っ」
痛みには慣れている。
けれど、突き上げられたままで前の方を絞り上げられた瞬間、ソウメイの口元から言葉がもれた。
「あー? 何か言ったぁ?」
「………っ」
ギリギリと歯噛みして、薄明かりでボンヤリと映る目の前の男を睨みつける。
と、上下に絞り上げられた甘い痺れが体中に走って、掠れた嬌声を上げた。
けれど達することのできない熱に煽られて、ソウメイはもどかしさに首を捩る。
「お願いがあるなら土下座でもすれば?」
「……っ」
「”やめて下さいお願いします”とか?」
「”イカせて下さいお願いします”だろ?」
「”もっと奥まで入れて下さい”じゃねェの?」
───コロス。
男達が笑い合う中、突き上げていた男の律動が忙しなく荒れる。
直後、男の息が詰まるのと同時に、不快な熱がジワリと吐き出された。
痛みだか何だか、もうソウメイには分からない。
ただただ全身に巡る痺れに耐えているだけで精一杯だった。
腰を抱え上げられ、力をなくした高まりが抜きとられる瞬間、思わず呻き声がもれる。
「次、オレな?」
今度は床に仰向けに引きづり出せれ、縛り上げられた両腕を別の男が拘束する。
「せっかくだから天国見せてやるよ」
「………」
両足を抱え上げられた瞬間、ソウメイは唾を吐きかけた。
「……へぇ」
「まだ弱ってねェみてェだな」
「強がっちゃって、カワイイねぇ」
笑いながらも、男の怒りは行動に現れた。
先端を押し当てて標準を定めると、いきなり奥まで突き上げてくる。
「グッ…アァアっ……!!」
内臓ごと引きずり出されるような無茶な動きでも、散々放り出された体液が潤滑油の役割を果たして引き裂かれることはなかった。
「スッゲ…グッチャグチャ。女みてぇ」
耳を覆いたくなるような淫猥な音が響き、ソウメイはギュッと瞼を伏せる。
と、衝撃で萎えた高まりに、また別の男の手が伸びた。
「…っっ……うア…っ」
直接的な刺激に、また呼び覚まされる。
「お。スゲェ締める」
「な? やっぱコイツ慣れてんだよ。スゲェ感度イイじゃんか」
───コロス。
じっと目を閉じて。ソウメイはただ時が過ぎるのを待っていた。




再び目を開くと、室内は白々と明けていた。
体中に残った情交の跡が陽の光の元に晒される。
コンクリートの床の上で冷やされた体があちこち痛む。ソウメイは一瞬 鈍い痛みに眉を顰めたが、すぐに辺りの様子を伺った。
もう人の気配はない。
縛られた手首のタイに歯を立てて解く。
身ぐるみはがされたとはいえ、アクセサリーもそのままで、着ていた服は破かれもせずに放り出されていた。
「………」
ソウメイは無言で服を着込んでビルを後にした。




「……?」
無意識に行き着いたのは繁華街の通りだった。
何故こんなところへ辿り着いたのか、自分でも分からなかったが、目の前に白スーツの男が現れて悟った。
無意識ではない。自分はこの男に会いたかったのだ。
理由もわからず、ただただウメのそばにいたかった。
が。
出勤前なのだろう。ウメの隣りには灰色のロン毛をサラサラとたなびかせて、ホストスーツを颯爽と着こなしたハイドがいた。
打ち合わせらしきことを話しながら、こっちへ向かってくるので、ソウメイは反射的に物陰に身を潜めた。
「あ…れ?」
「ん? 何ですか?」
「あ…あぁ……うん」
物陰を通り過ぎた瞬間、ウメがハイドに告げる。
「何でもないよ」
「そーっすか。で、今週末のショウなんですけどね…」
ハイドの話にうなずきながらも、どうも気にかかって振り返る。
と、呆然と立ち尽くしていたソウメイの姿が目に止まった。
やはり、見間違いではなかった。
「で、今回は……」
「あぁゴメン、ハイド。頼みがあるんだけど」
「へ? コトによっては受けつけますけど。どんな頼みですか?」
「…調べて欲しいことが、ある」
「何を?」
ウメの深刻な様子に、ハイドもゴクリと喉を鳴らして真剣に尋ねる。
「……さぁ」
「はあ?」
「詳しいことはあとで連絡入れます。店には遅れると伝えておいて下さい」
「えぇ? あー…まぁそりゃあ構わないっすけど…」
「ありがとう。ハイド。頼んだよ」
「はあ…(だから、何を?)」
踵を返して道を戻ったウメは、道を折れて辺りを見回した。
そこにはもう、ソウメイの姿はなかった。




いつものようにクラブに来たソウメイは、一人、床に座り込んでいた。
昨夜は暗くて、相手の顔など分からなかった。その声に聞き覚えもなかった。
けれど、きっとやつらは自分が怯えているのを見たいのだろう。
ならばいつものように振舞ってやればいい。
もし妙な目をするやつがいれば、それが証拠だ。
───必ずコロス。
恨みを持つ者など数知れない。当てがあり過ぎる。
向こうからしっぽを出すのを待つ外ない。
「………」
一瞬 昨夜のことをリアルに思い出して、ゾクリと肩を竦めた。
それは本当に一瞬だったけれど、怯えている自分に気付いて、ソウメイは驚いていた。
強姦まがいのことなら、今まで腐るほどしてきた自分が、襲われる側に立たされて、少しでも恐怖を感じていることが可笑しかった。
「は…はははっ」
力なく笑ったとしても。誰に気付かれることもなく、クラブ内の騒音に掻き消される。
誰にも届かない。
昨夜だってそうだった。
メチャクチャに突き上げられながら、押さえつけられながら、ソウメイは心の中で何度も叫んでいた。
何度も何度も何度も。助けを呼んでいた。
けれど、助けなど現れるはずもない。
声にも出せない言葉など、誰の耳にも届かないのだ。
いや。
たとえ声に出したところで、この街で今までしてきたことを思えばこそ、
こんな自分の願いを聞いてくれるような都合のいい神様などいるはずもなかった。
誰にも届かない。
そう。誰にも……
「やっぱりココですか」
ひざに額を当てるようにして俯いていた顔を上げると、このクラブには不似合いな真っ白なスーツ姿。
「テメェ…」
「探しましたよ」
隣りに座り込んで、ネクタイを緩める。
「何の用だ」
「何って……。呼んだでしょう?」
「はあ?」
まるで当然のように微笑んだウメの笑顔に迷いはない。
けれどその目は。ただどんよりと曇ったままで、瞳の奥を探らせはしない。
「バッカじゃねぇの? 何で俺がテメェを呼ぶってんだよっ」
腹を抱えてバカ笑いする。
「それも、のこのこと俺のアジトに来やがって。ぶっ殺されてぇのか? あア??」
笑いまじりにウメをじっと睨みつける。
───今更 出て来やがったって、遅ぇんだよ…っ
ウメの手が伸び、ソウメイの頬に触れる。
口元の青あざに気付いて、優しく親指で撫でた。
「何があったんですか?」
「……何も」
ひとつため息をついて、ウメは再び問いかける。
「先輩は本当に意地っ張りだから…。はっきり言ってくれないと分かりませんよ?」
「誰が意地なんて…っ」
「言いたくないなら、それでもいいんですが」
傷口に触れていた手を戻し、今度はソウメイの頭をよしよしと撫でる。
「…もう何も。心配しなくても、いいんですよ」
「なっ…よせっ」
「………」
「ガキじゃねぇんだっ! やめろっ」
もう、ウメは何も言わなかった。
ただ黙ってソウメイの頭を撫で続けるだけだ。
余計な口を叩かないウメ。
───あぁだから俺はこいつに会いたかったのか?
肩を強張らせていた緊張が解けていく気がした。
「やめろ…ってんだろ…っ」
ソウメイの強がりに、ウメは思わずクスリと微笑んだ。
そして。やはり、瞳の奥はどんよりと曇ったままだった。



数日後。
裏通りに約数名の血溜まりが発見された。
明らかに致死量の血痕に、警察は事件として調査したものの、喧嘩現場に居合わせた者はなく。目撃証言も取れず。
被害者の存在すら浮かんで来ないままに、事件にならぬまま、闇に葬られた。
その場で何があったのか。
ウメに頼まれたハイドが何を調べたのか。
それは新宿の闇に消え、誰にももう、分からない。


Fin.

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