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□ Genre menu bar □ はじめに   ゲゲゲの鬼太郎   DRAGON BALL   3.3.7.ビョーシ   犬夜叉   GAME   ■ ゲゲゲの鬼太郎 ■

59 駒草
58 トモダチ
57 百八つ
56 反射鏡
55 かくれんぼ
54 通り雨
53 影ふみ
52 あさがお
51 うみの日
50 水たまり
49 なぬかのよ
48 末吉
47 袖の香
46 さんすう
45 春眠
44 はつこい
43 沈丁花 
42 しりとり
41 でんしん
40 日光浴
39 初雪の日
38 雨宿り
37 うたたね
36 祝いの心
35 大事なもの
34 今だけの真実
33 おばけの音
32 猫の秘密
31 ひざ枕
30 犬のおまわりさん
29 待ちびと
28 やみのなか
27 ねこみみ
26 夢のつづき
25 けんかしかけた日
24 虚無の扉
23 なかよし
22 真剣勝負
21 河豚
20 切れた鼻緒
19 青年の夢
18 器
17 ダンデライオン
16 酔夢
15 寒がり暑がり
14 倦怠感
13 つまべに
12 おやすみ。
11 けんかした日
10 雪降る森
09 しゃっくり
08 とくべつ
07 怪奇お寝坊さん
06 未来のお嫁さま
05 魔女の心臓
04 しゃぼん玉の記憶
03 お彼岸餅
02 化け粧
01 白猫の夢


[ 15 寒がり暑がり ]

厳寒の風が吹きすさぶ中。ゲゲゲの森の奥深く、鬼太郎の家に猫娘が訪れていた。
普段は、砂かけばばあの経営する妖怪アパートで一人暮らしを続ける猫娘だが…。
「もう〜信じられないのよー。全室床暖房完備のはずが、配電工事のせいで効かないのっ」
鬼太郎宅も決して温かいわけではない、隙間風吹くあばら屋だが。
猫娘は火鉢に両手両足をかけて、鉢を抱きしめるようにしてまるくなっていた。
まさに猫のごとく。ゴロゴロと丸くなって、火鉢に戯れている。
いくら、鬼太郎でも。火鉢にやきもちなど妬いたりはしない。
それがたとえ、火鉢妖怪のなれの果てだとしても…まあ、許容範囲だ。
「それで、僕の家に?」
「うん」
「ふうん…」
卓袱台に置いた茶をすすり、少年らしからぬ枯れた風情で、猫娘を眺める。
「あ…。ひょっとして…迷惑だった?」
「いや、まさかまさか。それは全然、全くもって構わないんだけ…ど」
ちりっと火鉢の中の炭が音を立てる。
「炭の予備を切らしてるんだ」
「えっ!?」
火鉢の中を覗き込む。燻った煙りを薄く立ち上らせ、炭を縁取る赤い火は徐々に白く灰化してゆく。
「ど…どうするつもりだったのよーっ」
「どう…って。冬が寒いのは当たり前のことだし…。それに」
あまり考えてなかった、というようにぽりぽりと頬を掻く。
「しばらくすれば炭屋の行商が訪れるかなあ…と思って、た」
「こんな寒い時に行商なんて…っ」
「いや。寒いからこそ、稼ぎ時なんじゃあ…ない、かな?」
玄関口の簾をぺらりと開いて外の様子を伺うが、静まり返ったゲゲゲの森。
妖怪連中でさえ冬篭もりに入っているようだ。
「寒いぃ…っ。あ〜け〜ない〜で〜…っ」
「あぁ…ごめん」
「ねえ。もうすぐ消えちゃうよ…?」
「うん? それじゃあ…」
火鉢にやかんをかける。
「父さんのお風呂用にお湯沸かしておかないと…ね」

しばらくして、やかんはしゅんしゅんと音を立てて沸いたが、すぐにその湯気も力を失った。
「あー…」
もうすっかり炭火は消えてしまったようだ。
それでも猫娘は、名残惜しげに火鉢を抱きしめたままだった。
「……仕方ないよ…ね」
読んでいた本をパタンと閉じて、鬼太郎は早々に木の葉の寝床についた。
「ねえ猫娘」
頭までかぶったふとんを開き、手招く。
「おいで?」
「え…。でも」
「二人でふとんかぶっていた方が、まだ温かいと思うよ」
「うん…」
猫娘はしばし躊躇したが、不意に室内に流れ込んだ隙間風に身を縮めて、そそくさと寝床へ向かう。
「え? そのままの格好でふとんに入るの?」
「そのまま…って?」
「外出着のままで寝床に入るなんて…。お行儀が悪いんじゃあないかなあ」
「でも…」
ここは自宅ではないのだから。寝巻きのひとつもない。
意地悪な笑みを浮かべる鬼太郎の前で、猫娘はまた寒さにぶるりと震えた。
「脱いだら?」
「えっ」
「その赤いジャンバースカートと、ブラウスだけでも。ね?」
鬼太郎はにっこりと微笑んで言った。
「でも…」
鬼太郎に目を向けて、ハッと気付く。
「鬼太郎だって、ちゃんちゃんこ着たまんまじゃないのよー」
ちゃんちゃんこどころか、上下の学童服まで着込んだままだ。
それは、いつもいつもそうだった。
「あはは」
とうとうばれてしまった。鬼太郎は猫娘の手を引く。
「どうしてそんな意地悪するのよーっ」
「ごめんごめん」
ちょっとだけ、猫娘を困らせてみたかったのだ。
だって。困った時の猫娘は、すごく可愛いんだ。
いや。困った時の猫娘、も、すごく可愛いんだ。
頭まですっぽりふとんをかぶると、二人分の輪郭をかたどる。
密閉されたふとんの中で顔を合わせると、二人は思わず笑い出した。
まるで二人して、かくれんぼをしているような気分だった。
昔はよく、こうしていつまでもいつまでもおしゃべりしていたものだった。
「温かいね?」
「うん。そうだね」
こんなに近くで猫娘と顔を突き合わせるのは久しぶりだから、鬼太郎は妙にどきどきとしていた。
「……でも。まだ…鳥肌立ってるよ?」
いつもなら、ちょっと手が触れただけでくすぐったがるけれど。
こうしてふとんの中にいると、猫娘は丸くなって体を温めることに集中しているせいか、背中に手をまわしたぐらいなら平気なようだ。
「まだ、寒い?」
「うん…ちょっと、ね」
全身を覆うはずの猫の毛がないせいか、猫体質の猫娘は、ひどく寒がりだ。
まるでかつては逆毛を立てていた猫毛の残像のように、全身の肌が鳥肌立っている。
「じゃあ…」
これは猫娘のためだから、と。自分に言い訳をしながら、その身を引き寄せる。
子供体温の猫娘はとても温かい。そして、どこもかしこも柔らかい。
体を寄せる…ふりをして、猫娘の髪に顔を埋めたり。背中を温めるふりをして抱き寄せたり。
互いの肌が触れると一番温かいからと、その首筋に顔を埋めたりしてみた。
すると…
「……?」
鬼太郎は、妙な息苦しさを覚えた。
息苦しいから鼓動が高鳴るのか。あるいはその逆なのか。
温かさにまどろんで、「鬼太郎?」と上目遣いに声をかける猫娘にたまらず、鬼太郎はふとんを跳ね除けた。
「ニャッ! 寒いじゃないのよー…っ」
鼓動はまだ、治まらない。
肩で荒く息をしながら、鬼太郎はその額に汗まで流していた。
「? 鬼太郎…って」
「え?」
真っ赤に紅潮した鬼太郎を見上げて、猫娘がコロコロと笑う。
「暑がりなんだねー」


Fin.

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