| □ Genre menu bar □ はじめに ゲゲゲの鬼太郎 DRAGON BALL 3.3.7.ビョーシ 犬夜叉 GAME | ■ ゲゲゲの鬼太郎 ■ |
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17 ダンデライオン
] ゲゲゲの森にも春が訪れていた。 鬱蒼とした草木の生い茂る森を抜け、丘に出ると、そこは一面のたんぽぽ畑が広がる。 花見代わりに出かけたはずが、酒を持ち寄った仲間たちは酒の宴を繰り広げていた。 柔らかい陽射しの下。春風を頬に浴びて飲む酒も格別だとばかりに、いつしか酔いどれ連中は昼寝についてしまった。 「……やれやれ」 鬼太郎はふうとため息をついて、ふと手もとのたんぽぽを摘み取った。 早咲きのたんぽぽだったのだろうか。もうすっかり黄色い花弁は枯れ、その身は綿毛に包まれている。 「綿ぼうし…か」 目を伏せて───思い浮かべてみる。 猫娘には、きっと綿ぼうしの白無垢がよく似合うだろう。 鬼の名を持つ鬼太郎のお嫁さんとしては、角かくしの方が似合うのかもしれないが……。いやいや猫娘に角などないのだし、そもそも角を隠す角かくしではない。 おすべらかしを覆うように、綿ぼうしを被った猫娘は、きっと、おすましして俯いているのだろう。 神の使いとして生まれた猫娘が、僕のものになる日。 三々九度の盃を交わし、ようやく綿ぼうしに隠された猫娘の顔を上げる……。 「…ん?」 すると。思い描く猫娘は、子供のまま。幼い猫娘が、木の葉型の大きな瞳で見上げる姿が浮かんだ。 それは鮮明に思い出せる。 朱の盃を指を揃えて傾けるその手はもみじのように小さく、大きな綿ぼうしに比べてその等身はあまりにも低い。 ひとつ口をつけた清めの酒の苦さに眉を顰め…けれどちゃんと我慢する。 幼いままの、猫娘だった。 「………」 鬼太郎はふるふると頭を振って、もう一度、最初から考え直した。 第一候補は白無垢・綿ぼうしだけれど。猫娘は洋装もとても似合うだろう。普段の格好も白いブラウスに赤いジャンバースカートと、洋装だ。いつぞやの、猫屋で見せた紺のメイド服もよく似合っていた。 真っ白なウェディングドレスもとても似合うだろう。それはそれは、これでもかというほどレースを重ねてボリュウムを持たせたドレスがとってもよく似合う。 オフショルダーのローブデコルテだったら…どうしよう。 「……っ!」 胸元の開いたドレスをまとい、自分を見上げる猫娘を想像して、ついハッとした。 こんなことを考えては、いけない。 頭にかぶったケープは長く長く伸びて、ヴァージンロードの上をゆく。 父代わりにその横に並ぶのは…ぬりかべだろうか。広い会場が必要だ。 そこまで想像して、鬼太郎はまた気付く。 「……?」 時間をかけて辿り着いた祭壇の前。自分を見上げた猫娘はやはり…幼い姿のままだった。 どうしてだろうか。大きくなった猫娘が想像できない。 きっと。清楚で凛とした娘に育っている…はず、なのに。 けれど、思い浮かべた猫娘はみんな…緊張しつつも、鬼太郎と目が合うと嬉しそうにはにかんで笑うから、鬼太郎はまた、鼻の下が伸びた。 「ふぅーっ」 突然、指先を襲った風にハッと我に返る。 摘み取ったたんぽぽに息を吹きかけた、猫娘がいた。 「ああ…っ」 あれよあれよと云う間に、たんぽぽの綿帽子はちりぢりに春風に舞い、無数に広がった綿毛が丘を滑るように飛んで行った。 「うふふ」 いたずらっ子の笑みを浮かべて、猫娘が肩を竦める。 だから、つい「何するんだよ」という非難の言葉も消え失せてしまった。 「なーにぼうっとしているの?」 「…う…ん」 飛び散った綿毛と同様に、さっきまで思い浮かべていた夢でさえ、ちりぢりになってしまったような空虚感が襲うけれど……。 「?」 鬼太郎の答えを待って、首を傾げる猫娘がここに───すぐ隣りに、いるから。すぐに心は春の温かさに満たされる。 「……なんでもないん…だ」 見果てぬ先の夢よりも、今この時。目の前にある時間の方が大切だ。 たとえ永き命でも。一分一秒も無駄にできないほど、大切なんだ。 猫娘がいる。ただそれだけで、見渡す景色はいつも春だ。 Fin. |