| □ Genre menu bar □ はじめに ゲゲゲの鬼太郎 DRAGON BALL 3.3.7.ビョーシ 犬夜叉 GAME | ■ ゲゲゲの鬼太郎 ■ |
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23 なかよし
] 妖怪仲間が集い、花見に出る算段をつけていた。 さくらもいいが菜の花畑もいい。 ひとからげに妖怪と云っても、その大半は陽が暮れてからの行動を主とする。 昼がいいか、やはり夜がいいか。論議をかもしだしていた。 自宅に詰め寄られた鬼太郎は、特にどうということもなく。 特に反対もないが、賛成もない。 いつも通りの、特に希望もない様子で仲間たちの話をただ聞いていた。 だって。 猫娘がいるなら、それでいいのだから。 「……あの、ね?」 意を決したように、猫娘が話に割り込んだ。 そういえば。こういった行事ものの好きな猫娘にしては、今回はずっと黙り込んでいた。 様子がおかしいのは分かっていた。 だって。 ずっと、見ていたから。 「ねずみ男も…誘ってあげようよ…ね?」 「え?」 早耳のねずみ男にしては珍しく、この輪の中にはいなかった。 もともと、歓迎される存在ではないが…。それでも、いる、のがねずみ男というものだ。 「ねずみ男? そう云えば最近、姿を見せんのう」 「あやつがいると、また何か大騒動が起きるぞい?」 砂かけばばあと子泣き爺が、怪訝そうに言う。 「でも珍しいのう。お前がそんなことを言い出すなんて」 猫とねずみ。その間には決して理屈では説明できない本能的な倦厭がある、はずなのに。 現に猫娘は今までも、何かにつけてはねずみ男に対して冷たく当たっていた。 「うん…。でも」 まるで恥らうように俯いた時、鬼太郎の表情が凍る。 「やっぱり…みんな、仲良くしなきゃ…ね?」 思わず皆、顔を見合わせる。 様子のおかしい猫娘を前に、鬼太郎は手にした湯のみ茶碗をそのままでじっと見据えていた。 話は数日前に遡る。 また。また、同じことの繰り返しだった。 ねずみ男の下心で、悪しき妖怪の封印が解かれた。 鬼太郎が応戦し、再び封印することでことなきを得たが……その帰り道。 猫娘はいつものようにねずみ男への悪口を連ねていた。 「……もう、よしなよ」 「え?」 一反もめんの上。猫娘を背に黙って聞いていた鬼太郎が呟く。 「ねずみ男も反省しているようだし…」 「あいつの反省っ? そんなの三日も持たないわよっ」 「うん…そう、なんだけど……」 振り返ることなく、鬼太郎は続ける。 「何度 繰り返したって、いいじゃないか。何度でも何度でも…反省してくれたら、それでいいよ」 「でも…っ」 「いつまでも怒ってることないよ」 鬼太郎にしてみれば、その方が心配だった。 怒っている間中、猫娘はねずみ男のことばかりで頭がいっぱいだ。 筋違いのやきもちだとは分かっているけれど… それが猫とねずみの追いかけっこだとも知っているけれど… やはり、おもしろいものではない。 「いつもの猫娘に…戻って?」 「え?」 上空の風を浴びながら、それ以上 鬼太郎は何も言わなかった。 猫娘は考える。 鬼太郎の望みは、いつ何時でも変わらない。人間と妖怪、そして動物や植物に至るまで、世界の全ての共存だ。 誰もかれもが、互いの領域を侵すことなく平和に暮らせるのが、理想だ。 だから猫娘は、ひょっとして今、鬼太郎は怒っていたのかもしれないと悟る。 嗜めるような優しい口調だったけれど、その声は冷たく言い捨てられた。 誰とも、仲違いなどしてはならない…と。 誰とも、仲良しでなければならない…と。 そう、言いたかったのではないかと、思ったのだ。 そして猫娘は決心した。 本当は…。嫌で。嫌で嫌で嫌で嫌で…しょうがないけれど。 ねずみ男と仲良しに、なる。そうすれば鬼太郎も喜んでくれるだろうと思ったのだ。 鬼太郎のしたことは、ちゃんと実になっている。そう、目の前でして見せたかったのだ。 「うーむ。まあ…あいつがちーっとでも心を入れ替えてくれればのう…」 「大丈夫だよー…」 自信なさげに猫娘が言う。当の猫娘自身が一番信用してないのだ。 けれど、頑張る猫娘は、首をふるふると振って、力説する。 「ねずみ男もいいところあるよっ。ほら…えーっと…」 思い出せない、けれど。探せばきっと、ある。 多分…ある。あると…思いたい。 「とにかく。みんな一緒の方がきっと楽しいよっ。あいつまた、繁華街の隅っこでひとりぼっちでいるよ? 仲間なのに、そんな…ひとりぼっちにさせちゃあダメだよっ」 「うーん…。まあ、お前がそう言うんならのう」 「おい一反もめん。ちょっとねずみ男を探して連れてきてくれんか?」 「へいへーい」 一反もめんが窓から出ていくと、猫娘はほっとして笑顔を見せた。 これで、鬼太郎が喜んでくれると思ったからだ。 しかし… 「───へえー……」 ゴトリと陶器の鈍い音が響く。ようやく動きをみせた鬼太郎が、卓袱台に湯のみを置いた。 「いつの間に。そんなに仲良しになったのかな」 「え?」 鬼太郎はいつものぼんやりとした表情のままだったから、猫娘はその異変に気付いていなかった。 「なに言ってるの〜。あたしたち、ずっと仲良しだよ?」 ちゃんと、仲良くする。 たとえ。その匂いを嗅ぎ取っただけで思わず爪が伸びたとしても、ちゃんと我慢する。 「“あたし…たち”?」 鬼太郎の視線が上がる。 けれど、無理をして「うんうん」と頷く猫娘には、鬼太郎の気持ちなど見えていなかった。 「…驚いたよ。僕の知らない間に…そんっなに仲良しになってたんだ…ね?」 「そうだよ。あたしとねずみ男はとっても仲良しなのー」 駄目押しの一言に、室内の温度は一気に冷え込んだ。 「?」 ようやく異変をさとった猫娘は、それでもやはり訳が分からず首を傾げていた。 「待たせたの〜」 最強最悪のタイミングで、一反もめんがねずみ男を運んで戻ってくる。 「いやいや、一反は仕事が早いのう」 目玉おやじが場を和ませるように一反もめんを労うが、鬼太郎の表情は凍りついたままだ。 「なんだいなんだい? 俺様がいなきゃあ花見のひとつも計画できないってんなら、しょうがねえなぁ〜ジジババ共はっ」 いつもの調子のいいねずみ男の言葉にも、場は冷え込んだままだった。 そして、鬼太郎が立ち上がる。 「久しぶりだね…ねずみ男君」 「へ? ねずみ男君って…? やぁだなぁ鬼太郎ちゃんっ。まだこの間のこと怒ってんのかよ?」 そこでようやく、鬼太郎が怒っているのだということに猫娘は気付く。 けれど、一瞬にして笑顔を見せたから…。それは気のせいかもしれない。 目が笑っていないのも、きっと気のせい。 「あぁ〜あん時ゃ悪かったよ。悪かったってば」 「そんなことよりも。僕の知らないうちに、随分と…猫娘と仲良しになったんだって…ね?」 「はあ? なんの話だよ…?」 鬼太郎がにっこりと微笑む。 「じっくりと聞かせてもらいたいなあ…。今夜は僕の家に泊まってよ」 仲良しはとてもいいことだ。 けれど。度を越して猫娘と仲良くなる者は… ただではおかない。 当の猫娘は、辺りを包む妙な空気を不思議がりながらも、「やっぱり鬼太郎はねずみ男とも仲良しね」と嬉しそうに微笑んでいた。 Fin. |