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□ Genre menu bar □ はじめに   ゲゲゲの鬼太郎   DRAGON BALL   3.3.7.ビョーシ   犬夜叉   GAME   ■ ゲゲゲの鬼太郎 ■

59 駒草
58 トモダチ
57 百八つ
56 反射鏡
55 かくれんぼ
54 通り雨
53 影ふみ
52 あさがお
51 うみの日
50 水たまり
49 なぬかのよ
48 末吉
47 袖の香
46 さんすう
45 春眠
44 はつこい
43 沈丁花 
42 しりとり
41 でんしん
40 日光浴
39 初雪の日
38 雨宿り
37 うたたね
36 祝いの心
35 大事なもの
34 今だけの真実
33 おばけの音
32 猫の秘密
31 ひざ枕
30 犬のおまわりさん
29 待ちびと
28 やみのなか
27 ねこみみ
26 夢のつづき
25 けんかしかけた日
24 虚無の扉
23 なかよし
22 真剣勝負
21 河豚
20 切れた鼻緒
19 青年の夢
18 器
17 ダンデライオン
16 酔夢
15 寒がり暑がり
14 倦怠感
13 つまべに
12 おやすみ。
11 けんかした日
10 雪降る森
09 しゃっくり
08 とくべつ
07 怪奇お寝坊さん
06 未来のお嫁さま
05 魔女の心臓
04 しゃぼん玉の記憶
03 お彼岸餅
02 化け粧
01 白猫の夢


[ 23 なかよし ]

妖怪仲間が集い、花見に出る算段をつけていた。
さくらもいいが菜の花畑もいい。
ひとからげに妖怪と云っても、その大半は陽が暮れてからの行動を主とする。
昼がいいか、やはり夜がいいか。論議をかもしだしていた。
自宅に詰め寄られた鬼太郎は、特にどうということもなく。
特に反対もないが、賛成もない。
いつも通りの、特に希望もない様子で仲間たちの話をただ聞いていた。
だって。
猫娘がいるなら、それでいいのだから。
「……あの、ね?」
意を決したように、猫娘が話に割り込んだ。
そういえば。こういった行事ものの好きな猫娘にしては、今回はずっと黙り込んでいた。
様子がおかしいのは分かっていた。
だって。
ずっと、見ていたから。
「ねずみ男も…誘ってあげようよ…ね?」
「え?」
早耳のねずみ男にしては珍しく、この輪の中にはいなかった。
もともと、歓迎される存在ではないが…。それでも、いる、のがねずみ男というものだ。
「ねずみ男? そう云えば最近、姿を見せんのう」
「あやつがいると、また何か大騒動が起きるぞい?」
砂かけばばあと子泣き爺が、怪訝そうに言う。
「でも珍しいのう。お前がそんなことを言い出すなんて」
猫とねずみ。その間には決して理屈では説明できない本能的な倦厭がある、はずなのに。
現に猫娘は今までも、何かにつけてはねずみ男に対して冷たく当たっていた。
「うん…。でも」
まるで恥らうように俯いた時、鬼太郎の表情が凍る。
「やっぱり…みんな、仲良くしなきゃ…ね?」
思わず皆、顔を見合わせる。
様子のおかしい猫娘を前に、鬼太郎は手にした湯のみ茶碗をそのままでじっと見据えていた。


話は数日前に遡る。

また。また、同じことの繰り返しだった。
ねずみ男の下心で、悪しき妖怪の封印が解かれた。
鬼太郎が応戦し、再び封印することでことなきを得たが……その帰り道。
猫娘はいつものようにねずみ男への悪口を連ねていた。
「……もう、よしなよ」
「え?」
一反もめんの上。猫娘を背に黙って聞いていた鬼太郎が呟く。
「ねずみ男も反省しているようだし…」
「あいつの反省っ? そんなの三日も持たないわよっ」
「うん…そう、なんだけど……」
振り返ることなく、鬼太郎は続ける。
「何度 繰り返したって、いいじゃないか。何度でも何度でも…反省してくれたら、それでいいよ」
「でも…っ」
「いつまでも怒ってることないよ」
鬼太郎にしてみれば、その方が心配だった。
怒っている間中、猫娘はねずみ男のことばかりで頭がいっぱいだ。
筋違いのやきもちだとは分かっているけれど…
それが猫とねずみの追いかけっこだとも知っているけれど…
やはり、おもしろいものではない。
「いつもの猫娘に…戻って?」
「え?」
上空の風を浴びながら、それ以上 鬼太郎は何も言わなかった。
猫娘は考える。
鬼太郎の望みは、いつ何時でも変わらない。人間と妖怪、そして動物や植物に至るまで、世界の全ての共存だ。
誰もかれもが、互いの領域を侵すことなく平和に暮らせるのが、理想だ。
だから猫娘は、ひょっとして今、鬼太郎は怒っていたのかもしれないと悟る。
嗜めるような優しい口調だったけれど、その声は冷たく言い捨てられた。
誰とも、仲違いなどしてはならない…と。
誰とも、仲良しでなければならない…と。
そう、言いたかったのではないかと、思ったのだ。


そして猫娘は決心した。
本当は…。嫌で。嫌で嫌で嫌で嫌で…しょうがないけれど。
ねずみ男と仲良しに、なる。そうすれば鬼太郎も喜んでくれるだろうと思ったのだ。
鬼太郎のしたことは、ちゃんと実になっている。そう、目の前でして見せたかったのだ。
「うーむ。まあ…あいつがちーっとでも心を入れ替えてくれればのう…」
「大丈夫だよー…」
自信なさげに猫娘が言う。当の猫娘自身が一番信用してないのだ。
けれど、頑張る猫娘は、首をふるふると振って、力説する。
「ねずみ男もいいところあるよっ。ほら…えーっと…」
思い出せない、けれど。探せばきっと、ある。
多分…ある。あると…思いたい。
「とにかく。みんな一緒の方がきっと楽しいよっ。あいつまた、繁華街の隅っこでひとりぼっちでいるよ? 仲間なのに、そんな…ひとりぼっちにさせちゃあダメだよっ」
「うーん…。まあ、お前がそう言うんならのう」
「おい一反もめん。ちょっとねずみ男を探して連れてきてくれんか?」
「へいへーい」
一反もめんが窓から出ていくと、猫娘はほっとして笑顔を見せた。
これで、鬼太郎が喜んでくれると思ったからだ。
しかし…
「───へえー……」
ゴトリと陶器の鈍い音が響く。ようやく動きをみせた鬼太郎が、卓袱台に湯のみを置いた。
「いつの間に。そんなに仲良しになったのかな」
「え?」
鬼太郎はいつものぼんやりとした表情のままだったから、猫娘はその異変に気付いていなかった。
「なに言ってるの〜。あたしたち、ずっと仲良しだよ?」
ちゃんと、仲良くする。
たとえ。その匂いを嗅ぎ取っただけで思わず爪が伸びたとしても、ちゃんと我慢する。
「“あたし…たち”?」
鬼太郎の視線が上がる。
けれど、無理をして「うんうん」と頷く猫娘には、鬼太郎の気持ちなど見えていなかった。
「…驚いたよ。僕の知らない間に…そんっなに仲良しになってたんだ…ね?」
「そうだよ。あたしとねずみ男はとっても仲良しなのー」
駄目押しの一言に、室内の温度は一気に冷え込んだ。
「?」
ようやく異変をさとった猫娘は、それでもやはり訳が分からず首を傾げていた。
「待たせたの〜」
最強最悪のタイミングで、一反もめんがねずみ男を運んで戻ってくる。
「いやいや、一反は仕事が早いのう」
目玉おやじが場を和ませるように一反もめんを労うが、鬼太郎の表情は凍りついたままだ。
「なんだいなんだい? 俺様がいなきゃあ花見のひとつも計画できないってんなら、しょうがねえなぁ〜ジジババ共はっ」
いつもの調子のいいねずみ男の言葉にも、場は冷え込んだままだった。
そして、鬼太郎が立ち上がる。
「久しぶりだね…ねずみ男君」
「へ? ねずみ男君って…? やぁだなぁ鬼太郎ちゃんっ。まだこの間のこと怒ってんのかよ?」
そこでようやく、鬼太郎が怒っているのだということに猫娘は気付く。
けれど、一瞬にして笑顔を見せたから…。それは気のせいかもしれない。
目が笑っていないのも、きっと気のせい。
「あぁ〜あん時ゃ悪かったよ。悪かったってば」
「そんなことよりも。僕の知らないうちに、随分と…猫娘と仲良しになったんだって…ね?」
「はあ? なんの話だよ…?」
鬼太郎がにっこりと微笑む。
「じっくりと聞かせてもらいたいなあ…。今夜は僕の家に泊まってよ」
仲良しはとてもいいことだ。
けれど。度を越して猫娘と仲良くなる者は…
ただではおかない。
当の猫娘は、辺りを包む妙な空気を不思議がりながらも、「やっぱり鬼太郎はねずみ男とも仲良しね」と嬉しそうに微笑んでいた。


Fin.

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