| □ Genre menu bar □ はじめに ゲゲゲの鬼太郎 DRAGON BALL 3.3.7.ビョーシ 犬夜叉 GAME | ■ ゲゲゲの鬼太郎 ■ |
|
|
[
37 うたたね
] 外は霜の降りる寒々としたゲゲゲの森。 砂かけばばあの財力にものをいわせた妖怪アパートの一室は、全室暖房で適温に保たれていた。 温かい部屋のせいか、それともその身に未だ残る冬篭りの本能か。 床に広げた本を向かい合って読んでいた猫娘は、こくりこくりと舟を漕ぎ始めていた。 「……ん?」 熱心に字づらを追っていた鬼太郎も、猫娘の頭の影が揺れて顔を上げる。 ひじで体を支え、頬杖をついた頭が不安定に揺れていた。 思わず笑みがもれ、鬼太郎は本から目を上げたままで猫娘の寝顔を眺める。 長い睫毛が揺れ、大きな瞳はまぶたの下に消えていた。 頬杖をついた手にやわらかい頬は少しへしゃげて、小さな唇は閉じる力もなく半開きだ。 (安心しきっているんだなぁ…) 何かいたずらでもしてみたくなる。 けれど可愛い寝顔に見とれているうちに、カクリと片ひじが落ちて猫娘は焦点の定まらぬ寝ぼけ眼を向けた。 「猫娘?」 寝起きで何が何だか分からない猫娘にそう呼びかける。 君は猫娘、僕は鬼太郎。 猫娘が一瞬でも不安ならないように、ここがどこで自分が誰であるかを知らせてあげたかった。 「どの頁まで覚えている?」 パラリと本の頁を戻し、指を差す。 「ん…寝てない、寝てないよ…?」 小さな両手で顔を洗うように撫で上げて、パチパチと瞬きする。 いつもの一重まぶたが二重になっていた。 (寝てたってば…) また笑いがもれて肩を揺らす。 どうしてこんな時に、咄嗟にそんなことを言ってしまうのだろうか。 小さな嘘が可愛くて、鬼太郎の表情はまだほころんでいた。 「鬼太郎…?」 「そうだ。僕が読んであげようか?」 鬼太郎の提案に、猫娘はむうっと唇を縛って怒り顔を向けた。 「赤ちゃんじゃないんだからっ」 「あはは、赤ちゃんだったら読んでも分からないと思うよ?」 まだ笑っている鬼太郎に腹を立てたのか、猫娘は身を起こした。 「横から字を追ってるから眠くなっちゃうんだよ。あたしもこっちから読む」 「え……?」 鬼太郎の脇に座りなおし、並んで床に這う形になった。 すぐ隣りで猫娘のリボンが揺れて、肩を突き合わせながら本の続きを覗き込む。 ……とても頭になど入ってこない。 どうしてか、急に自分の呼吸音が気になり始めた。 聞こえてしまうほど近い距離にいるから気になって、気にすればするほど息が上がる。 徐々に鼓動も高鳴ってくるように思えた。 (? おかしいな…?) 少し体を動かすのも、ぎこちなく思える。 いつも近くにいる猫娘なのに、近づきすぎると落ち着かない。 (…なんでだろう…?) そろそろ次の頁に行ってもいいかな、と、本に手を伸ばす。 「ねぇ…猫娘?」 ピクリっと肩を震わせ、猫娘は慌てて顔を向けた。 「寝てない、寝てない…よ?」 寝ていたらしい。 どうやらこんなふうにぎこちなくどきまぎしているのは自分の方だけだと知り、鬼太郎は力なく笑う。 「昼寝したら?」 両手を重ね、立てていたひじを崩して床につき、猫娘の寝ぼけ顔を見上げる。 「うーん…」 「少し眠るとすっきりするんじゃないかな」 鬼太郎のひじに頭をのせ、腕枕にしてごろりと横になる。 背を向けられたのは少し悲しい…気がする。 けれど乗せられた猫娘の頭の重みは心地好い。 「…なんだか…勿体ない気がして…眠りたくない…の……に」 「どうして?」 言いながら、猫娘はすでにすうすうと寝息を立てていた。 返答はない。答えは夢の中へ吸い込まれていってしまった。 「……僕が遊びに来てるから……?」 そう答えてくれたらいいなと思って、一人、苦笑する。 たとえどれほど共に時間を過ごしてきても、こうして二人でいられる時間はいつもいつも貴重だから。猫娘にとってもそうだといいなと思っていた。 「……ん…」 「え?」 それは返事だったのか、ただの寝息だったのか。 鬼太郎は分からないままに、何故だか頬が熱くなっていくのを感じていた。 Fin. |