| □ Genre menu bar □ はじめに ゲゲゲの鬼太郎 DRAGON BALL 3.3.7.ビョーシ 犬夜叉 GAME | ■ ゲゲゲの鬼太郎 ■ |
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40 日光浴
] 久方ぶりの晴天に、日光浴がてら鬼太郎と猫娘は河原へ散歩に出ていた。 河原には爽やかな風が吹き、なだらかな土手を越えて草をなびかせる。 他愛もない世間話を続ける猫娘の横で、鬼太郎は時おり頷きながら黙って聞いていた。 本当に女の子というものは、こんなにも幼い頃から噂話が好きなものだと、感心していた。 それにしてもよく口がまわる。 ゆっくりとした口調だが、猫娘のお話はいつまでもいつまでも続くのだ。 喉が渇きはしないかと心配になるが……。 奏でられるメロディに耳を澄ますように、鬼太郎は目を細めて微笑んでいた。 その時。 「あ。久しぶり〜、元気にしてた?」 まだおぼつかない足取りで、一匹の猫が近づいてきた。 一人歩きするにはまだ小さい。 『にゃあにゃあ』と語り合う猫語を聞きながら、その猫はまだ生まれて一ヶ月も経っていないことを知る。 猫娘ほど堪能ではないが、鬼太郎も猫語は大体分かる。 その代わり、猫娘には話せない虫語やあらゆる生物との言葉が通じるのだ。 言葉…と呼ぶのは適切ではない。意志を伝え合う術、とでも云うべきだろうか。 チチチ…チチ… 河原の虫が鳴き、鬼太郎を冷やかした。 『そんなつまらなそうな顔して。鬼太郎さんってやきもち妬きだよな』 「うん?」 …チチ…キチチ… 『うるさいよ』と、鬼太郎は鳴いた。 すると、子猫にばかり構っていた猫娘が振り返る。 「なぁに?」 「……いや、何でもないよ?」 ごまかして、鬼太郎は三角座りしたひざを深く抱きしめた。 「この子ねぇ、お母さんと離れ離れになっちゃったんだぁ…」 「えっ?」 子猫には人間の言葉は理解できない。 顎を撫でる猫娘の指にゴロゴロと喉を鳴らしながら、丸い瞳で見上げるだけだ。 「あっ。でも今は他の猫たちのところで暮らしているから、一人ぼっちじゃないんだけどね」 鬼太郎が心配しないように慌てて説明したが、当の鬼太郎は「ふうん」と呟いただけで、特に心配などしてはいなかった。 ただただ、子猫を構う猫娘の白い手をじっと見つめているだけだった。 伏目がちに下を向いていたから、物憂げにでも見えたのだろうか。 「いつかまた、会えるといいよね」 「うん…そうだね」 子猫は。不意に口を開いて猫娘の手を甘噛みする。 「!」 思わず身を乗り出すと、猫娘は「あはは」と笑った。 「まだ歯も生え揃ってないんだから、大丈夫だよー」 「……そう」 歯固めに猫娘の手を利用するなんて、なんて贅沢なんだろうか。 鬼太郎はどこにぶつけていいのか分からない、やるせない気分で座りなおしたが、どうにも落ち着かずそわそわと身を揺すっていた。 「…甘えたいんだよねー…」 「え…?」 「でも。甘え方が分からないんだよね…」 姿かたちは幼い少女だというのに、こんな時の猫娘はひどく大人びて見えた。 母性というものはこんなに幼い頃から宿っているものなのだろうか。 それとも。生きた時間の分だけ、猫娘の心中にはあらゆる感情が秘められているのだろうか。 「えいっ♪」 前足を取ってひっくり返すと、子猫は不平がましくニャアと鳴く。 「あはははは、力弱ーい」 「………」 紙一重だな、と。鬼太郎は思った。 けれど仰向けにされてさらされた腹を撫でると、子猫は心地好さそうに目を細める。すっかり安心しきっているのだろう。 「うりゃ、うりゃうりゃ。あははっ」 面白がって笑うその姿とは裏腹に、柔らかそうな腹部を撫でる猫娘の手は、優しく動く。 ちゃんと手加減して撫でるから、子猫は嬉しそうに両足を折り曲げたままで広げていた。 (気持ち好さそうだよな…) しばらくして土手の上から猫の鳴き声がすると、子猫はハッと我に返ったように目を開けて、またおぼつかない足取りで土手を上がって行った。 きっとあれが、今の親代わりの猫なのだろう。猫娘と町を散策する時に、何度か空き地で見かけたボス猫だった。 「ばいばーいっ」 その言葉の意味は子猫には分からなかったが。その声にピクリと耳を動かして、手を振る猫娘に一つ鳴き声を発した。 見守るように子猫の後ろ姿を見つめる猫娘は、鬼太郎から見れば顔を背けたままだ。 土手を降りる風が猫娘のさらさらとした髪を梳き、おリボンの端を揺らしても、いつまでも静かに見守っていた。 「………」 そんな猫娘を、鬼太郎が見守っている。 やがて子猫の姿が猫と共に土手の上に消え、猫娘が振り返った。 「あれ…?」 返り見た鬼太郎は、ゴロリと大地に背を預けて、両手を広げて腹を出していた。 「? お昼寝するの?」 「あ…いや。その…」 まさか、ちょいと撫でて欲しくて。ついそんな格好をしてしまったなどとは言えない。 チチチ…チチー… 『ばかだねぇ…』と虫が鳴く。 …チチ…キチチ… 目を伏せた鬼太郎がそう告げる。猫娘は、歯ぎしりかなと思い、首を傾げた。 「まだ風が冷たいから、風邪引いちゃうよ?」 「う…うーん。大丈夫さ…」 引っ込みがつかずに眠気を引っ張り出す。普段から、半分寝ているような生活なので、睡魔に身を委ねるのは簡単なことだった。 陽射しは暖かで、日光浴には丁度いい。 鬼太郎が実は怠け者だということを知る猫娘は、仕方がないなとため息をもらす。 「陽が翳ったら起こすからねー」 「……う…ん」 眠りに落ちる鬼太郎の腹の上。猫娘は赤子を寝かしつけるように手を当てて、ぽんぽんと優しく、一定のリズムで叩いていた。 Fin. |