| □ Genre menu bar □ はじめに ゲゲゲの鬼太郎 DRAGON BALL 3.3.7.ビョーシ 犬夜叉 GAME | ■ ゲゲゲの鬼太郎 ■ |
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58 トモダチ
] 〜鬼太郎ANN聴きましたよ特別版SS〜 鬼太郎の問題(?)発言にむしろ萌えちゃいましたVer. 朝霧も晴れ、遠くひぐらしの鳴き声が響き渡るゲゲゲの森。 ゲゲゲハウスに向かい、少女は歩を進めていた。 いつもの歌うような軽快な歩幅ではない。その赤い靴は遠慮もなく夏草を踏みしめて進んで行った。 膨らませた頬は怒気にうっすら紅潮し、つぐんだ唇をやや噛み締めてずんずんと進んでいく。 徹夜明けの睡魔にのんべんだらりと眠りに落ちた鬼太郎は、世にも愛らしい赤鬼の到来に気付くことはなく。都会の某所へ同行した目玉おやじもまた、深い眠りについていた。 「き…鬼太郎さん!!」 道場破りかくやとばかりに簾を上げるなり叫んだ呼び声に、重い目蓋がぱちりと開く。 しかしその片目はきょろりと動いてねこ娘の姿を見止めると、何だねこ娘か…と、安堵したように伏せられてしまった。 普段に増して沸点の低いねこ娘は、その鬼太郎の呑気さが気に入らない。 肩口を掴んで前後にぶんぶんと揺り動かした。 「何時だと思ってんのよー! 起きなさーい!!」 「…なんだよぅ…」 大あくびひとつ。寛げた胸元から汗ばんだ肌をかきながら身を起こす。 「何かあったのかい?」 「何か…ですってぇええ?」 「?」 怒りに戦慄いたねこ娘には、ないはずの猫毛が逆立っているように見えた。 見開いた瞳は鋭くつりあがり、脅かしているつもりなのだろうか。 鬼太郎にしてみればどれもこれも愛らしく、ただきょとんと寝ぼけ眼で眺めるだけだった。 「……あたしが聴いてないとでも…思ったの……っ」 「えっ?」 「何よ! ねずみ男までお声がかかったっていうのに、あたし達をのけ者にしてぇえええ!」 意外と出たがりなんだなぁと、鬼太郎はまだむずがゆい胸肌を掻きながら、ぼんやり思った。 「それは…僕だってねずみ男に誘われたんだよ?」 急な話だったし、うさん臭いにおいがぷんぷんとした。 ましてやねずみ男からの話となれば、ねこ娘が乗ってくるはずもないと思ったのだ。 「それに…人間界の事情ってぇもんもあるんだし、君の中の人のスケジュールだって…」 ぶつぶつと言い訳する鬼太郎の顔を上向かせて、ねこ娘はなおも怒鳴り散らす。 「何ですってぇ!?」 「……イエ。何デモアリマセン」 「それより何より! 何なのよ、と…トモダチってぇえええ!!」 「は?」 怒りに満ちたねこ娘の瞳がうっすらと潤む。怒りに感情を揺さぶられただけではなく、出どころは少女の切ない嘆きであった。 「あ…あたしのこと、トモダチって言ったじゃない!」 「あー…ああ。リスナーの質問か」 こくりと頷いたねこ娘の瞳は潤み出し、それでも涙をこぼすまいと健気にも小さな拳を握って耐えていた。 「ははっ。君が僕にゾッコンだってのは世間じゃ定説らしいね」 ねこ娘の頬がカッと赤みを増す。 正直なねこ娘の百面相を見物しながら、鬼太郎はまだくすくすと笑っていた。 「人間界の世間なんてどうだっていいよ!」 妖怪界でも知れ渡っているだろうことに気付いているのかいないのか。 いや、気付いているから真っ赤なのだろうか。 「友達じゃないか」 「え……っ」 ねこ娘の表情が一瞬にして凍りつく。 喜びを抜いた喜怒哀楽を好ましく見物し、鬼太郎はそっとその手を重ねた。 「じゃあ君は、僕を何だって紹介するんだい?」 「……」 眉間にしわが寄り、頭の上にはハテナマークが浮かぶ。 一体どんな答えを出すのかと、鬼太郎は焦らず眺めていた。 「鬼太郎さん…は……、鬼太郎さんよ」 「何だいそりゃ」 「だって! 正義の味方っていうのもちょっと違うし…怠けものだけど立派だわ。親孝行だし。ガキ大将…っていうのもちょっと違うし、えっと…」 「違うよ。僕がどうこうじゃなくて、君と僕との関係性だよ」 「だから、それは…“鬼太郎さん”」 呆れてせせら笑えば、ねこ娘はムキになって身を乗り出した。 「だって! 他に代わりがないんだものっ。友達だって仲間だって他にもいるけれど、鬼太郎さんはかけがえのない存在だわっ」 「え…っ」 まいったなと頭を掻くと、そこで初めてねこ娘は告白以上の本音を漏らしてしまったことに気付き、顔を反らす。 「分かったよ。じゃあ今度聞かれたらそう言うよ」 人間には分からんだろうなぁ…と、力なく笑う。 Q.鬼太郎さんにとってねこ娘さんはどんな存在ですか? A.えぇ僕にとってねこ娘はねこ娘です そんな答えでは妖怪ラジオパーソナリティへの道は遠い。 「今度じゃなくて! 鬼太郎さんが…昨夜そう言ったのが、鬼太郎さんの本音だったってことでしょぉおお! しかも理由が『子供だから』だなんて…っ」 子供じゃないか、と言いかけて踏みとどまる。 言えば怒りは更に増し、鬼太郎ですらひっかき五目板にされること請け合いだ。 「鬼太郎さんだって姿は子供じゃないのさ! しょこたんの前だからって大人ぶっちゃって…っ」 「あぁ…あの子は可愛かったねぇ…」 ねこ娘の姿をしてくれたのは自分へのサービスだったのだろうか。 すると彼女は自分の気持ちを知っているのだろうかと思えば、見透かされているようで心穏やかではない。 「何さ! アイドルなんだから可愛いに決まってるじゃないのっ」 「君だって妖怪界のアイドルだろう?」 「それは三部!」 「うん???」 「子供だの友達だのって、ひどいわー!」 とうとう感極まってワッと泣き出してしまった。 もっと芯の強い、姉さん的存在だったはずだが…、ねこ娘ってこんなに子供だったっけ? 鬼太郎はよしよしとその頭を撫でるが、その手はひらりと返した細い掌に跳ねられてしまった。 「───じゃあさ。子供じゃない証拠を見せてよ」 「…証拠…って…?」 潤んだ瞳を見つめれば、鬼太郎もまた胸が逸る。 思わず噴出しそうな鼻息を抑えて、できるだけ低くゆっくりとした声色でねこ娘に尋ねた。 「僕を、トモダチ以上のものだと思ってるんだろう?」 「…ん」 ねこ娘はすんっと鼻をすすって泣き止んだ。 けれどその瞳は当惑したまま、答えを求めて鬼太郎をじっと見つめ返す。 「子供じゃないんなら…分かるだろう?」 「えっ…」 まさかと思った瞬間、重ねられた手がぎゅっと掴まれる。 鬼太郎がゆっくりと身を傾けて顔を寄せるに合わせて、ねこ娘の目は徐々に見開いていった。 不精に伸ばした前髪が触れあい、額がこつんと当たった途端…… 「! あ、あたし、おばばに録音頼まれてたから、渡しに行かなきゃいけないのっ」 身を引かれ、鬼太郎の窄めた唇も不満げに下がる。 「……録音?」 「そ…そうなの。800年も生きたおばばでも、妖怪ラジオは珍しいって言って…て、だから、行かなきゃ!」 「ちょっと待てよ」 身は交わしたもののその手は取られたまま。ねこ娘は立ち上がることもままならず、再びぺたんと床に座り込んだ。 「怒ってたんじゃないのかい?」 「も…もう怒ってない…よ」 「本当に?」 「本当だよ!」 鬼太郎の手から細い指がするりと抜けて、そのまま玄関口へと向かって行ってしまった。 「じゃあ、またねっ」 「う…うん?」 パタパタと軽快な足取りで梯子を降り、山道へと帰って行ってしまった。 取り残されたまま手持ち無沙汰に宙に浮いていた片手を戻すと、その掌にはまだねこ娘の柔らかな手の感触が残っているようでくすぐったい。 深く吐息をもらし、天井を見上げる。 「……やっぱり、子供じゃないかぁ……」 Fin. |