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校長に呼びだされたんだぜ。
ンマァ、お説教に決まってら。今月に入ってからバーチャンが14人も死んだことになってるからシャーナイんだぜ。
まったく学校側はもう少しアタシの頭脳に気を使うということを考えた方がいいんだぜ。もっと研究に没頭したいんだぜ、アタシが教鞭なんぞを振るっている時間は、人類にとっても大きな損失なんだぜ。
はぁ……
スンゲー憂鬱。こんなこと、きっと校長に話してもわかってくれるわけがないんだぜ。
あの豚の存在だってアタシをブルーマンデーに追い込むんだぜ。ヂロヂロヂロヂロいやらしい眼で見やがって、通産7049回はセクハラで訴えれるんだぜ。
こういう時は自分の完璧すぎる記憶力が呪わしいんだぜ。はぁ……。あの豚の毛穴の数まで無意識に把握しちまうんだぜ。はぁ……。
天才の苦悩だぜ。はぁ……。無能な愚民どもは、自分に都合の悪いことはすぐに忘れるのに。これじゃぁ不公平なんだぜ神様。はぁ……。
そういやもうすぐ生理だぜ。はぁ……。
まぁでも、今造ってるメカが完成したら、こんな鬱屈した気分も吹き飛ぶんだぜ。天才に憂鬱はつき物なんだぜ。
……うし、ガンバロ。っだぜ。
――学校――
「オヤオヤ狂子先生。今日はもう仕事も片付いたようですな。ぶひひひ」
ンゲ…むこーからきやがったんだぜドチクショウ。おしとやかなヨシノ先生でもたぶらかして相手させようと思ってたのにコノ豚、なぜかアタシの悪巧みだけはうまいことかぎつけるんだぜ。
「相変わらず優秀優秀。私の目に狂いはなかった…ぶっひひひ」
「フニャン…!!」
「でもねぇ狂子先生ぇ…いくら優秀でもズル休みはいけません、ズル休みは…私もねぇ…これ以上かばいきれるかどうかわからない…これ以上はねぇ…」
「ひにゃん…!!」
「私もねぇ、ビジネスだからねぇ…ぶひひ。…でも鬼じゃぁない、先生がもう少し心を開いてくれれば、私だって親身になって事情を汲むというものじゃぁないですかねぇ…ぶぶひひひ」
コ、コココ、コノ豚…! どこをツンツンしてやがるんだぜ!! なんでこんな日に限って職員室には誰もいないんだぜ!? こ、こ、コノ豚まさか全部仕込んでたんじゃねーだろーなコノクソ…あ、か、こ、ひぁ…
「たまには頭をカラッポにすることも必要じゃありませんかねぇ…ぶっひゃひゃひゃ。そうすればこの…お、お、おっぱいにも栄養が回るというもの……」
「勝手にカラっと揚がってやがれだぜこの脂身ノーミソ!!!!!」
どっこーん。
「ブヒィィィィィィ……!!!」
ふぁ…! やや、やっちまったんだぜ…
理論上素手のアタシに可能な、豚に与えうる最大ダメージを延髄に叩き込んでしまったんだぜ。死にゃーしねーが、だいの大人でも3日は足腰立たなくなるんだぜ。
「何事ザマス!?」
ぬぁァ!? まずったぜ教頭だぜ!?
教育者として名高く、PTAの受けもいいこのメス豚、表向きは市議会選挙を狙ってるなんつって将来有望、裏じゃぁ校長のメス奴隷、まさにメス豚っつーウワサだぜ。
よりにもよってなんでコイツがイノイチに駆けつけるんだぜ!? コイツぁ優等生にゃとことん甘いが、アタシみたいなハグレモンには半年振りに掃除をする排水溝を見る眼でため息つくんだぜ! どう考えてもアタシが悪モンになっちまうぜ!?
「ぶひ〜ん、きき、教頭…先生…」
「こ…校長先生…ンマァなんて酷いことを…アナタ!! ご自分が何をしたかわかってらっしゃるの!?」
「こ…ここ、こうちょ…この豚が悪いんだぜ!! こ、この豚あろうことか、自分でしか触ったことのないアタシの…おお、おっぱいのさきっちょを…!!」
「この件は教育委員会に報告させていただくザマス。教員免許も取り消されると考えて結構、場合によっては訴訟も覚悟していただくザマス……」
「ま、ま、待てだぜ教頭! そりゃあんまりだぜ、少しは事情を……!!」
「事情? 事情など見ればわかるザマス!! アナタは教師としての適正を極めて欠いた行動を校長先生に咎められ、こともあろうに開き直って暴行を振るった! これは立派な犯罪ザマス!!」
「ぬぁああ!!見てねークセになんで断定すんだぜ!! セクハラなんだぜ!? こうちょ…この豚が触ったんだぜ! 被害者はアタシなの!!」
校長のヤロウ!! メソメソメソメソ泣きついてやがるんだぜ! この流れはまずいんだぜ!!
「ぶひぃ…ぶひぃ…、やってない…ぶひ……ワシはなんにもしてないのに…ぶひ…狂子先生が…ぶひ、いきなり…いきなり…」
「狂子先生? 校長先生はこうおっしゃってるわ」
「ぶひぃ…ぶひぃ…アイツはキ○○○だ…ぶひ…アイツはキ○○○だ…ぶひ」
「な! な!? な!!! 豚コラ!!てめーフザケタこと抜かしてッとキンタマとメンタマいれかえっぞクソボケ!!っだぜ!!」
「お黙り!!」
「ひぁぅ!」
「まったく汚い言葉を使って……。子供じゃあるまいし……人間誰しも、頭に血が上ることはあるでしょう、でもそれならば、犯した過ちはすぐに謝罪すべきですザマス。それをくだらないウソで、人を貶めてまでお茶を濁そうなどと……」
「んぁぁ、う、ウソじゃネーんだぜ!! なんなんだぜ、こんな扱いったらないんだぜ!?なんで信用してくれないんだぜ!? ちょっとくらいアタシの言い分に耳傾けてくれたっていいじゃネーカ!!」
「信じるなどと…!! どの口が抜かすザマスふてぶてしい、一体あなたのどこに信じるに足る実績があって?」
「んな…」
「遅刻は常習、無断欠勤は繰返す。行事も授業も時間通りに進めないし、その日の時間割を生徒に尋ねる始末。お茶を頼めば苦いしぬるいし、コピーを頼めばぶっこわす。挙句の果てに通う学校をしばらく間違えていた時期もありましたね。…ハテ、アナタは何のためにこの学校にいるザマス?」
「んぬぁ…」
「信用…などという言葉はやることやった人間が口にするものザマス。校長先生のような人格者とアナタのような犯罪予備軍とでは言葉の重みが違うザマス。わきまえろザマス。…フン、どうしても、というのなら胸を揉まれたという証拠をお持ちなさい証拠を。……まぁ、証拠以前に揉まれたという胸も存在しないみたいザマスが」
「くぁっちーん!!」
ぬ、ぬ、ぬかしゃぁーがったんだぜこのババァ!! そこまでいわいでもいいんじゃないかだぜ? 戦争だぜ! これは戦争だぜ!?
「望むところだぜこのインランインテリ!! 生まれてこの方アタシの頭が間違ったことなんてねーんだぜ!! 証明でも何でもしてやるから教育委員会のじじぃ共を連れてこいだぜ!! ついでにオメーがバカだってことも小学生にも分かるように証明してヤッからな!! うっせー泣いてなんかネーぞコンチクショウ!!バーカバーカ!!」
こうして、決戦は3日後になったんだぜ…ぐす……どうせだから神の存在も証明していってやるんだぜ…ひぐ。
正義は勝つんだぜ…ぐす……おてんと様は見てるんだぜ…ぐす…死んだバーチャンがいってたんだぜ…ふぇぇん
トンテンカントンテンカン
キュィーン、ビリビリビリ
ドンガラガッシャ、ピロリロリ〜ン
「できたぜ!! 犯した罪は末代まで! 法律一新、国家崩壊、過去再生幸福ゆんゆんラジヲ!!」
見てやがれだぜあの豚。天才を怒らせたらどうなるかわからせてやるんだぜ…フフフ。これからはバカにバカと分からせることを生業としてやるんだぜ…ふふふは、とまんねーぞ、もう泣いたってとまんねーからな豚豚豚豚…。
「というわけで、このゆんゆんラジヲは過去の出来事をあまさず再生することができるんだぜ」
ふんふん、教育委員会のお歴々、どいつもこいつも驚いてるんだぜ。校長教頭のあの顔、まったく毎度毎度、この瞬間がたまんないんだぜ。
特別に学校中の先生も集めてやったんだぜ。そろそろ誰がこの学校で一番優秀か、分からせてやる時期がきたんだぜ。
「し、しかし狂子先生……そんなことが本当に可能なのかの……」
「何かいったのかだぜ右から3番目のじじい。ほれほれ、こんな風にチューニングすればお前さんの昨日の晩酌の様子がダナ……」
「ああ、本当じゃ! ワシは委員会で一番偉い者じゃが、こんな有様を見せつけられては信じぬわけにはいくまい!!」
ハハン!! 見ろだぜ、場の雰囲気は既にアタシの味方になってるんだぜ。校長教頭の真っ青な顔ときたら! ぬははは、家に帰ったら何遍でもこの様子を再生してやるんだぜ、天才をバカにした罪は重いんだぜ。
「ぶひ、ぶひぃい、……こ、こんなのトリックに決まってる…!! 私は被害者ぶひ!!」
「見苦しいんだぜこうちょ…豚!! まぁオメーのノーミソはキタネェ使用済み油でギットギトだろうから? テメーの都合の悪いことだけぽろぽろぽろぽろ忘れてっても不思議じゃねぇけど? アタシがいる限り、そういうバカ特有のバカげた習性は今日限り根絶だかんナ!! ケッ、これからはテメーが一般人のフリするたびに、逐一テメーがバカだって思いださせてやっからな!! バーカバーカ!! ヒャハハハハ、そんじゃー今から、こうちょ…そこの豚がこの職員室でなにをしやぁがったか、見事に再生してやるんだぜ。バカと天才の違いを教えてやるんだぜ。アタシの方が正しいに決まってるんだぜ」
「ぶひぃ…ぶひぃ…ひ、ひどい。…ぶひぃ…そ、そこまでいわなくても…ぶひぃ…狂子先生だって…ぶひぃ…狂子先生だって結構、適当なこといってる時があるじゃないですか…ぶひぃ……それを…それを…」
「ネーよ豚!! このアタシの天才脳みそをテメーみてーな腐敗コレステロールと一緒にすんじゃねーよクソが!! アタシの脳みそにミスなんてねーんだ!! それをなんだお前はぶひぶひぶひぶひ……にゃっははは! 泣いてんのか? 泣いてんのか? 聞こえねーよ、テメーの鳴き声はブヒブヒだろうが!! 人間ぶってんじゃねーぞ豚!! にゃっははは!! なんだぁ教頭!! なんかいいてーことでもあるのかだぜ!? にゃはは」
「わ…わ……、わた、わた、…わたくしは…こ、校長先生を…し、し、信じてるザマス…ひぐ」
「はぁん!? まぁ信仰は誰しもの自由だから? それ自体は否定もしねーけど? にゃはは!! そんでもテメーの信じてる豚は、今から自分のしでかしたことも忘れる典型的なバカだって証明されるがな!!」
にゃっはっはっはっはあぁあぁあああああああああああああ!!!!!!!
勝った! 勝ったぜ!!どうみても勝ちは決まったんだぜ!!
きもちーんだぜ!! 最高なんだぜ!!
この豚の顔、メス豚の顔!!
そんでも許さねーからな、豚はトンカツの出荷までしっかり見届けてやるからな!!にゃはは。
遊びは終わりだ、再生日時をこないだの職員室あたりにあわせてっと。
ん? なんだ、こりゃー校長と教頭の声か? なにいってっか聞こえねーナ、音量最大、つまみをぐいんっと……
「あああああああああああああああああ!!!!!校長!!校長うぅぅぅううう!!!そこぉ!!そこぉうぅぅぅ!!!!!!ファックミー!!ファックミープリーズぅうううううううううう!!!」
んあ?
なんか豚の交尾を拾っちまったみてーだぜ。なんかみんなスゲー引いてるんだぜ。んあ、教頭が失神しちまったんだぜ。やり過ぎたか。ま、シャーナイ。
コレに懲りたら二度とアタシを貶めようとするんじゃねーぜ校長。よしよし、わかりゃーいんだぜ。
しかし自分でいうのもなんだけど、とんでもねーメカを造っちまったもんだぜ。
やっぱりアタシは天才なんだぜ、バーチャンが褒めてくれた通りなんだぜ。
バーチャンかけてくれた言葉は全部覚えてんだぜ。頭を撫でてくれた回数だってわかってる。こういうとき、天才は便利だぜ。
んでもま、このラジヲ使って、久々にバーチャンの声聞いてみんのも悪くないんだぜ。泣いちゃうかもしれねーんだぜ。
バーチャンバーチャン。バーチャンの孫は、宇宙一の天才なんだぜ。
――現在――
「んあ? なんかこのメカ、前にも造ったことあるみてーだぜ?」
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