Pentax K-50 を修理に出しました

絞り制御機構の不具合、いわゆる『黒死病』です。
この『病』については既にネット上で多くの事例や対処法が紹介されていますので詳しくはそちらに譲るとして、ここでは私が修理を決断してから還ってくるまでの経緯を中心に記します。修理を検討している方の参考になれば幸いです。

●使用歴と発症に至るまで

購入は2015年10月下旬。
異変に気づきはじめたのはそれからおよそ1年半後の2017年3月。起動直後に撮影した写真が、プレビューすると不自然に暗い。
私はファインダーを覗きながら撮影するのが主なのですが、その頃はまだライブビューで(画像モニターで確認しながら)の撮影は問題がないようにみえました。
K-50は私にとって初めての一眼レフだったので、己の技術的な未熟さに起因するんだろうと思っていました。また、まだ寒い時期だったことや、何回かシャッターを切っているうち(温まって?)自然に解決していたようにみえたので、もし原因がK-50にあるとしても寒さのせいだろうと勝手に考えていました。
よもや同じモデルやKシリーズで同様の現象が、このとき既に多数発生しているとも知らずに…

やがて季節は春から夏になっても、異変は自然解決どころかいよいよ顕著化し、不審に思って調べていくうちに黒死病に突き当たったのです。
既に購入から2年程経っているので、保証期間はしっかり過ぎております。

ちなみに使用環境についても触れておくと、週に一回弄る程度。保管は百均で買ってきたクリアボックス(乾燥剤も一緒に)。バッテリーは当初からエネループをずっと使用してきました。
黒死病の原因として、撮影枚数や使用頻度の多寡、バッテリー(乾電池かエネループか)などが取り沙汰されていますが、個人的にはそれらに因果関係があるかどうかは分かりません。なにせ思い当たる節がないので、可能性はゼロともアリとも断言できません。
大事に扱ってきたつもりではありますけどね。落としたりカビさせたりもなく。

●サポートに相談し、修理を決める

黒死病が現れた時、一時凌ぎの方法として行っていたのは、ライブビューボタンを連打することです。

露出補正値を最大にすることでもそれなりに明るくなりますが、この方法だとISO感度も上がりノイズが出やすくなるようであまりお勧めしません。

電源をオンにしたらまず連打。そんな「ウォーミングアップ」を慣習として2年以上続けてきて、幸いボタンや内部が二次被害的に壊れることはありませんでしたが、黒死病は一向に改善せず、連打の頻度が増えるだけ。

修理してこのまま使い続けるか、いっそのこと他社のカメラを買うか…
そんなことはずっと頭にあったのですが、いよいよ本気で検討し始めたのは2020年1月。
いつしかライブビューを見ながらの撮影でも起動直後は症状が出るようになってしまってました。ごまかしゴマカシでここまで使い続けてきたものの、徐々に追い込まれていたのです。

ネット情報では、修理代金は1.3万円とも1.7万円ともいわれていて、「じゃあ他社のミラーレス一眼の資金にでもした方がいいじゃん」とも思いますわな。
そもそもこの症状は後継機種でも起きているようなので、メーカーへの不信感も募ります()。

嘆いていても話が進まないのでリコーのサポートにWeb上で問い合わせました。

「本来ならリコール対象として無償で修理に応じるべきだ!」

という言葉が喉まで出かかっているのを堪え、いくつか質問。

一番のテーマは「再発しないって保証はあるの?」です。それに尽きます。
サポートにとっては無理難題であろうとは承知していますが、安くない代金を支払って修理に出すのですから、ユーザの一人としては懸念してしまうのも本音。実際、正規で修理したにもかかわらず再発した()というネット情報もありました。

それについてサポートからの返答は、

  1. 絞り制御ユニットの不具合の発生原因は多岐に亘る
  2. 製品の耐久性向上を図る製造メーカーの取組の一環として、部品・部材等の見直しや修正を常に行っている
  3. 修理にて部品交換を行うにしても、同じ部品に取り換えるだけという対応ではない

こちらがメールで具体的に現象を伝えたところで、サポートとしては「だいたいは分かりましたし事例も多数把握してますが、何はさておきまずお持ちいただいて、実機を分解し点検してみないと(明言できない部分もある)」という立場なのも理解できます。「再発しないの?」という問いにも答えられていません。そりゃそーだわな。
パーツも常に改良を重ねている、と胸を張ったところで、どこまで信頼してよいものか…

それでも、元の絞り制御ユニットを取り出して消磁して戻しておわり、という安易な修理ではなさそうだということが分かっただけでも、躊躇していた身としては一定の参考材料になりました。

ネット情報はK-30やK-50の事例が多数で、さすがに近年は報告例が減少傾向にあるように見受けられます。完全に克服したとは言い難いにせよ、パーツが改良されている証かもしれません。
数年程前にK-50を修理に出したものの再発したという方もいましたが、その方が修理に出したのは2年程前のようなので、それからの2年の間に更にアップデートが為されているかもしれない、と、期待したいのです。

「絞り制御ブロック」に原因があると突き止め、ユーザが自ら修理を行ったという事例もネット上でいくつか見つかります(メーカー側もそうした情報が出ていることは当然把握していたようです)。
ただ、作業は慎重を要しそうですし、失敗したという話もありました。個人的には、ネジの多さよりも、グリップ部のラバーを剥がすことの方が心配。元に戻しても少し浮いて捲れやすくならないのかな。
カメラを何台も持っている人であればダメモトで試す価値もあるのでしょうけど、勘を頼りにパーツを削るのは不可逆的ですし、消磁機なんて持ってません。私のようにそこまで趣味としてのめり込んでいない、さりとて一眼レフの楽しさがようやく見えてきたような者にとってはこの一台が切実なのですよ。

あと、これは勝手な期待というか、折角正規サポートに修理を依頼するのだから、(絞り制御ブロック以外の部分も含め)修理票には載せない非公式な改良をコッソリやってくれるかもしれない。こっちだって「本来ならリコール…」って気持ちを我慢したんだからサ、それぐらいの心意気を見せてよ、というのも考えました。

K-50と出会ってからおよそ4年半。その半分以上で私は黒死病とも共存してきた訳ですが、それでも愛着もあります。オーダーカラーも気に入ってますし。

修理に出すことにしました。

が、次があったらPENTAXもリコーも二度と買わねーからな!という不退転の決意も胸に秘めつつ。

●補修用性能部品の保有期間

このタイミングで修理に出した別の理由として、「補修用性能部品の保有期間」の問題もあります。
「補修用性能部品の保有期間」とは、メーカーは修理などを念頭に一定期間パーツを保有しておかねばならないという、業界団体の規定(だったはず)です。

つまり、この期間内であれば修理を受け付けられるし、逆に期間が過ぎてしまったら原則的には最悪「パーツがないので修理を受け付けません」と突っぱねられる事態もあり得ます。
我慢して修理を先延ばししたことが、かえって後悔することになりかねません。
その点も事前にサポートに確認したところ、K-50の部品保有期間は製造終了から約5年となり、目安としては2021年頃に(部品保有期間)終了とのこと。
但し、同時に部品在庫がある限り対応するとの言質もいただきました。杓子定規的にハイ終了~じゃ薄情ですしね。それに実際のところ、絞り制御ブロックのパーツはK-50の後継機でも使われていますし、もしメーカー在庫を切らしても容易に調達できそうに思います、と私は思いますが、気になる人は問合せだけでも早めにしておいた方がいいと思います。

●修理までの流れ

修理を受け付ける手段・窓口はいくつかありますが、私はリコーイメージングスクエア新宿に直接持ち込みました。
あと、代替機の貸し出しは、あるにはありますが(修理期間代替機貸出サービス)無料ではありません。まーそーだわな。

そして、修理そのものにかかる実費。費用。
こちらも公式サイトの「修理料金および日数について」で簡易修理見積もりを算出することができます。ここで機種を「K-50」、不具合現象を「露出アンダー・オーバー」と設定すると、概算見積金額は「¥11,000~15,000」と出ました(「露出不安定」とすると最大¥20,000まで表示しますね)。
もちろん、他にも修理すべき箇所が出てくればこの料金の限りではなくなってきますが、料金が加算されるレベルの修理であれば事前に同意を求めてくるはずです。たぶん。

●修理に出す

リコーイメージングスクエア新宿に直接持ち込んだのは2020年2月上旬の週末の午後。先客もなく、すぐ受付。
事前にサポートとメールでやりとりした際に

なお、今回ご連絡いただいている内容は弊社修理窓口の担当者に申し送り行います。

とあったので、(即日修理は無理としても)手続きぐらいは速やかに済むものだろうと思っていました。

早合点でした。窓口でいちから説明しなければなりませんでした。

もっとも、こちらが「露出が…」と話を切り出せば「あ、はい」ってな具合で、説明というほどのこともなかったのですが。「また来やがったな」ってなもんなのでしょう。
それに、こちらがアレコレ言うまでもなく技術者が実際にチェックすれば分かるでしょうし。窓口の背後は仕切られており、そこでチェックが行われているのだと思われます。

が、そのチェックは短時間では終わらないようで、○○時までお待ちくださいとなりました。その所要時間は私の場合2時間。この日は私の他に客はおらず(待ち時間が長いからと外に出るのかもしれませんが)立て込んでいる様子には見受けられませんでしたので、思わず「えー…」。
しかしこれも、もしチェックの過程で想定外の修理を要することが判明すれば、トータルの修理プランも費用も変わってくる可能性はあります。場合によっては、提示された条件に「じゃあ修理しなくていいです」ということだってあるかもしれません。まどろっこしくとも、入念に点検してくれているのだと信じるしかありません。

そうはいっても、この日は私もあとの予定があり、悠長に待ってられなかった。
それにチェック後に「やっぱ、やーめた」と気が変わる可能性も低かったので、その旨を相談すると点検の結果を当日中に電話しますということになり、心置きなくK-50を置いてきました。

それから数時間後、担当者から電話があり、修理費用と完成日(修理完了日)について具体的に提示されました。
費用は税込み13,200円。完成日については、事前にメールでやりとりをした際は「約2~3週間」とのことでしたが、依頼し窓口に置いてきた日を含めて20日後となりました。
異論はありません(不満は燻ってるが)。これにて正式に修理に進めてもらいました。

後日(預けた2日後ぐらいか)に、正式な見積もりが封書で届きました(上の画像は同封の手紙)。内容は電話でのやりとりに加え、他の修理箇所の詳細も。完成日が来てもサポートからは連絡はしないとのことで、予定日以後に取りに来れば渡せるようになっているようです。

●修理の内訳

    ご指摘内容

  1. 露出アンダー
  2. 撮像素子、FDゴミ清掃
  3. オートフォーカス精度点検
  4. 各部点検

露出アンダー以外は「ご指摘」したつもりはないはずですが、トータルメンテナンスの一環として組み込まれているのでしょう。

    診断内容

  1. 露出アンダー
  2. 撮影素子、FDゴミ清掃
  3. オートフォーカス精度点検
    処置内容

  1. 部品を交換しました。
  2. 清掃しました。
  3. 点検しました。
  4. 点検しました モール千切れのため部品を交換しました。

4)に「モール千切れ」とありますが、このモールとは、撮影時にミラーが跳ね上がる際の衝撃を吸収するためのスポンジ状のパーツのようで、消耗品なのでしょう。下の「交換部品」にある「鏡箱関連部品」はこのモールを指すものと思われます。

    交換部品

  1. 絞制御ブロック 鏡箱関連部品

修理代金は
 工料:10,000円
 部品代:2,000円
 消費税:1,200円
 計:13,200円
工料と部品代が大雑把な印象ですね。ほとんど人件費って感じっぽい。

本来はK-50本体だけの修理・点検と考えていましたが、リコーイメージングスクエア新宿へ持参した際に、普段使いのまま無意識にDAL18-55WR(「ダブルレンズセット」として初期セットに含まれていたレンズの1本)をマウントしていたものですから、レンズも一緒に点検に回っていました。
結果は特に異常がないとのことで、修理票には「点検異常なし、お預かりのみ」と記されていて、追加料金も発生していないようです。

同様に本体に付いていたものとして、アイカップ、電池(エネループ白×4本)、HSカバー(レンズキャップのこと?)についてはK-50本体と一緒にお預け。SDカードは受付時に取り出され返却されました。見られて困るものは入ってないけど、サポート側としても無闇に預かりたくないでしょうし。
液晶保護フイルムが貼ってあることも記されています。修理の際に剥がさなければならない事情が生じたら、フイルム1枚とて確認事項となるのでしょう。

●黒死病完治(?)

完成日より数日遅れましたが、リコーイメージングスクエア新宿に引き取りに上がりました。
窓口で簡単な説明を受け、受け取り、代金を支払って完了。この日は時間が掛かることもありませんでした。折角なのでアウトレットのコーナーなども見ました。

店を出てすぐさま撮影してみましたが、まあ普通ですね。もちろん黒死病の症状は治ってはいますが、ついでに写りが格段に良くなってたみたいのは感じません。
修理とはそういうものと分かっていてもつい期待していたのですが、マイナスから原点に戻っただけです。
さあ、あとはお前の腕次第だよと押し出されるように西新宿の街へ。まあでも、ひとまず良かったということで、再発せぬよう祈りつつこれからも愛用していこうと思います。

2020.4.23追記:PENTAX K-50、RICOH GR/GR IIのカスタマイズサービスが5月で終了(デジカメWatch 2020年4月22日 15:08)
K-50については「グリップラバー交換サービス」が「2020年5月いっぱいで終了する」そうです。

2022.12.1追記:修理からほぼ 1,000 日が経過しましたが、再発の徴候は一切ありません。

2023.9.4追記:引き続き良好な状態です。

2 comments to “Pentax K-50 を修理に出しました”
  1. 詳細な記録ありがとうございます!久々に発掘したK50の不具合に、このブログのおかげでどんな修理やサポートが可能なのかが分かり大変助かりました。ありがとうございました

    • >Yoshiさん
      コメントありがとうございます。参考になりましたら幸いです。
      私のK-50の近況としては、修理以来そろそろ4年経とうとしてますが今朝の雪の風景も問題なく撮影できました。それでもなお、修理を躊躇している人に「どうやら再発は無さそうだよ」などと責任を持っては言いがたいのも本音。いつまで修理を受け付けてくれるか分からないことと、K-50への愛着>修理費であれば、先延ばしせずに検討してみてはと背中を押したいところです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください