※クラピカの恋人は誰でもいいんじゃなーい


明るい太陽光が、優しい月光が差し込む窓一つない地下の部屋。
家具らしい家具は備え付けのクローゼット、そして大きなベッドとテーブルだけだ。
冷えた空気が体を足元から震え上がらせるようだ。
「ぅ、ぐ…っ!」
白いベッドの上で、地下室の主は女と戯れていた。
己の猛った男根でひたすら女の中へ打ち付ける。
女の陰部が透明な液で濡れていた。そして今でも二人が繋がったところから溢れている。
尻を男に差し出し、うつ伏せながらも女はそれをやり過ごそうとしていた。
眉根を寄せ、硬く目を閉じ、その行為が終わるまで耐えようとしているようだ。
声を出さないようにシーツを掴み、我慢する様はより一層男の加虐心を煽る。
……女は快楽を知っている。
それだけ男を受け入れたことがあるということだ。
現に頑なな態度とは裏腹に、強引に受け入れさせた陰部からは蜜が零れ続けたままだった。
とろりと溶けかけた性器は男自身を優しく受け入れる。
逆に外へ抜こうとすると締め付けて離してくれない。
「いい身体だな」
「…っ!」
覆うように自分の身体を女の背中に重ね、耳元で囁いてみる。
女がこちらを怒りを隠さない、刺すような瞳でこちらを見た。
「名器だと褒めているんだ。そう怒るな」
「貴様は…っ」
そろそろ絶頂が近い。
口が開いているのを確認すると自分の下にいる女の細腰を掴んだ。
そして慣れた手つきで女を責めるスピードを速める。
女は口を閉ざす時間を与えられずにを息苦しい声を上げた。
男は遠慮などしなかった。思う存分、女の中で欲望を開放した。
白濁の液で体内を汚した後、ゆっくりと男自身を引き抜いた。
途端、開放された女の身体がベッドに崩れ落ちた。
こちらに丸見えの秘所が二人の体液で濡れそぼっている。
明るい太陽光が、優しい月光が差し込む窓一つない地下の部屋。
男はここで、捕まえた女の身体を思う存分堪能していた。



捕縛するのには手を焼いた。
しかし苦労は腕の中で意識を失ったクラピカの顔を見た時に消えた。
あらかじめ用意していた地下室はクラピカの念を参考にさせてもらっていた。
地下室に入ったクラピカだけを”絶”にする。
新たに”発”を作っても無駄にさせるためだった。
クラピカに出会うまで強制”絶”という発想はなかった。
クロロが生んだ”発”はクラピカだけ有効にするという誓約の元、制約を飛躍的に高めた。
この地下室でクラピカの努力と執念の結晶を盗み、ほぼ無力化させた。
「殺せ」
それでもクラピカは気丈にもそう言い切った。
睨む姿は中々に麗しい。何かがクロロの身体を駆け抜ける。
「っ!?」
有無を言わせない態度でクロロはクラピカの足を払い、肩を押す。
ベッドに乱暴に叩きつけられたクラピカは小さく呻いた。
お構いなしにクロロはクラピカの上へ馬乗りになった。
クラピカの茶の目はクロロをねめつけたままだ。
いつまでそれができるか楽しみだった。
クロロはクラピカの上着の首元を掴むと、一気に引き裂いた。
一瞬だけだったが、クラピカの目元が変化した。気にせず破いたそこを押し開く。
僅かに膨らんだ胸元と可愛らしい乳首が見えた。
どうやら、鎖”野郎”ではなく鎖”女郎”と呼ぶのが正しいらしい。
「……下種が」
汚物を見るような目でこちらを見ている。
「言いたいことはそれだけか」
これから何をされるかわからないほどクラピカとて子供ではないだろう。
そのままクロロは服を裂いてクラピカを丸裸にした。
そして乱暴に上半身を引き上げさせると、面倒のないようにコートに隠していた手錠で
クラピカの手首を後出にはめた。クラピカの表情が曇った。
しかしそこに怯えとか恐怖などの感情は見ることはできない。
俯いたままだが、羞恥心などはないようだ。否、表情に出さないだけか。
――これでこそ楽しめるというものだ。
性別はともかく、クラピカが経験済なのは予察できていた。
クラピカには愛し愛される人がいる。事前調査で知った。
愛する者がいながら別の男に身を委ねねばならぬ状況は精神的苦痛に違いない。
それは拷問と呼べた。
クロロは再びクラピカを押し倒すと両足を開かせた。
そうされた当の本人は戦くことはない。それどころか、こちらを射抜くような目で見ている。
ごくごく初級の恥辱に屈してくれなくてよかった。
更に足を押し上げて、秘部がもっと見えるように腰を浮かさせる。
近くにあった枕を浮いた場所に押し込んだ。そして改めてそこを見た。
あらわになったクラピカの下の口は綺麗な色をしている。
男を知らないと言われれば納得できそうだった。
クロロは中指をゆっくりと性器の中に押し込めてみた。
「…っ!」
クラピカの腰が少し跳ね上がった。
ほぐすのに困難そうに見えたそこはクロロの指をたやすく受け入れていく。
既に奥や中はしっとりとしている。まるで歓迎するかのように肉壁は中指を包んでいた。
「ふ、あぁ…!」
構わず人差し指も奥まで差し込んだ。触感でわかる。
中でさらりとした液体が肉壁から染み出していた。
クロロが与える刺激に何とか堪えようとしているのか、クラピカの瞳が閉じられた。
わざと音を立てて中をかき回す。
「…んっ、……あ、あっ!」
クラピカは頭を振ってその感覚から逃れようともがいた。
そうしながらも、口元から零れる喘ぎ声は段々と艶っぽさが帯びてきている。
クロロはクラピカの太ももを掴みなおすと、口元を近づけた。
「やっ…。やめ、あぁ…っ」
背中の下にあるであろう手錠が激しく音を立てて暴れ始めた。
……丸見えになった芯を吸われただけでこれか。
どうやら恋人も似たような行為をしているらしい。
クラピカの足を押さえつけたまま、クロロは舌を這わせ続けた。
初めて見せた抵抗らしい抵抗だったが、大したことではない。
やがてクラピカの背中がしなやかに反ると、くったりと脱力していった。
「……イったのか?」
荒々しい呼吸を繰り返すクラピカにクロロは声をかけた。
「仇にイカされた気分はどうだ?」
「…貴様っ!」
怒りに震えるクラピカの瞳は赤く濡れていた。こっちのほうがいい。燃える。
「次はオレの番だな」
クロロは自分自身を取り出した。
見ていないがそこは変化しているのがわかるようだ。とにかく目の前の女を欲していた。
逆らい続けるクラピカの中へ容赦なく押し進んだ。
……自分を仇だと蔑む女の味は最高というより他なかった。



死なれては困る。だから食事はクロロ自らが地下室へ運ぼうとした。
しかし軟禁したその日からクラピカはハンガーストライキを決行した。
それならそれでいい。生きていくのに必要な栄養素と水分を注入してやるだけだった。
捕らえた時、クロロはクラピカの延髄に念の針を刺していた。
針には自殺を試みようとしたら行為を止めるようにインプットしてある。
それゆえ、地下室では自由にさせてやった。
浴室なども完備してある。着替えなどはない。シーツかバスローブがあれば事足りる。
クロロがクラピカを軟禁するようになってから、40日ほど経過していた。
そしてあることに気づく。……血を見ていないのだ。
行為中に出血させるような下手な真似はしなかったし、毎夜クラピカを嬲っていた。
最初は恋人との間に命を授かっていたのかと考えたがそうではないらしい。
クロロは顎に手を置き、少し考えてみた。
強固な筋肉質と言えないが、しなやかな筋肉に包まれて細いクラピカの腰や四肢。
なんとか女性だと証明している二つの乳房。
かろうじて丸いカーブは描いているものの、桃に例え難い小ぶりな尻。
女性の割に脂肪が少なさ過ぎた。
……それが原因か。
次の日からクロロは注射を一本増やした。
「ついに薬殺か」
いつもの注射を終えた後、腕を差し出したままのクラピカが自嘲した。
「そんな野暮なことはしない」
クロロは新しく加わった薬を刺されつくして痛々しい左腕に注射した。
そして空になった注射針を床の上に落とす。
もろいガラスで作られたそれは簡単に粉々になった。
みしりとベッドのスプリングが鳴る。
相変わらずクラピカは自分の上にいる男を汚物を見るような目で見た。
クロロはクラピカの上に馬乗りになった。
「何を打ったか気になるか?」
クラピカが纏っていたバスローブの前を肌蹴させる。
そしてあらわになった愛らしい突起をそのまま口に含む。
頬の力を強めて吸いあげるとそこが硬くなっていくのがわかる。
硬くなったそこを舌で転がし、味や感触を楽しんだ。
空いた手は同じく空いていた乳房を力いっぱい握ってみせた。
クラピカは受け流そうと身を捩じらせる。
毎日クロロに抱かれることでクラピカはダメージを受けなくなりつつあった。
表向きはクロロの性的暴行を受け流している。
”性欲処理の道具にしたいならしろ”
言わずとも態度で如実に表しているし、そのスタンスを崩すこともなかった。
だから次のステップに移った。
「排卵誘発剤」
「…っ!?」
「これから毎日打つ」
「な…」
「お前がいつ孕むか楽しみだ」
「や、めろっ!!」
クラピカの暴れる姿はかつてないほどだった。
表情を変化させ、クロロの肩を掴み、引き離そうと力を込める。
しかし必要最低限の栄養を摂取しているとはいえ、筋力を維持させるほどではない。
その抗いは全く持って無駄と言えた。
可愛らしい抵抗を物ともせず、クロロは強引にクラピカの中へ割って入っていく。
クラピカの叫び声が地下室中に響き渡った。



ベッドの上では赤い眼を見開かせたままクラピカが天井を見つめている。
彼女の太ももは白濁と透明な液で汚れたままだ。
痩せたとはいえ、均整の取れた裸体を隠すこともしない。
単なる思い付きだったが、クロロは唇をクラピカのそれに重ねた。
クラピカはされるがままだ。キスしたのは始めてだった。
用が済み、地下室を出たクロロは携帯電話で報告を受けた。
とある男が鬼気迫る勢いでクロロを探しているらしい。
このままでは団員に被害が及ぶだろう、と。
「次に男に出会った時にここの場所を教えてやれ。……構わない」
簡単にそう命ずると、携帯電話を切った。
そして近くにあるモニターの前でクロロは腰を下ろす。
地下室に設置されたカメラ越しにクラピカの姿が見えた。
クラピカは手で顔を覆っていた。両の肩が小刻みに震えているのがかろうじて見えた。
マイク付き小型カメラを設置されていることにクラピカは気づいていないのか。
それとも弱い自分を隠す気力すらなかったか。
排卵誘発剤は嘘だった。単なる別のビタミン剤だ。
クラピカがクロロの子を孕もうと孕むまいと関係なかった。
それはクラピカを屈服させるための手段に過ぎない。
――身も心も陥落したお前に興味ない。
自然とクロロの口端が上がり、頬が緩む。
何れクラピカの恋人はここへ訪れるのだろう。
クラピカを奪われた憤怒で自身を鬼神のごとく変化させて。
――もっと抵抗してみせろ。
滅多に起きない感情の変化。さすがにクロロ自身気づいていた。
――お前の恋人を目の前で殺したらお前はどうするだろう。
徹底的に絶望に叩き込む。
クラピカの大切なもの全てを奪ったクロロがしてやれることはそう多くなかった。


終わり