初投稿します。最近ハンタとクラピカスキーになったんで間違いとかあるかもしんないです。
大幅におかしいところがあったらツッコんでもらえるとありがたいです。(原作に未読部分あり&手元にないので)

※原作の5年後設定のキルクラでちょっとクラ→レオあり





「クラピカが好きだ。」

キルアは言った。その瞳はまっすぐにクラピカを捉えている。出会ったときは人の目を見ないで話すことの多かった彼は、5年を経て外面だけでなく内面も成長したようだった。その視線にたじろいだのを悟られぬよう、クラピカはゆっくりと瞬きをし、グラスに視線を落とした。

「…違うな。」

ルビー色の液体を見つめながらクラピカは言った。この世で最も美しい紅になるその瞳は、黒く感情を読み取らせない。キルアはその瞳を、些細な感情の機微も取り逃さぬよう見つめたままでいた。

「それは友情であって恋愛感情ではないよ。キルアはハンター試験まで他人と接触したことがなかったと言っていたが、すると私たちが初めてできた仲間だったのだろう?私に持つ感情はゴンやレオリオに対するのと同じものだ。たまたま私が女だっただけだよ。」

一息に喋り終わると、クラピカはようやく顔を上げた。キルアはやはり瞬きもせずクラピカを見つめていた。その強い光に負けないように、諭すような笑みをつくる。キルアはしばらく黙っていたが、クラピカから訂正はないと悟り、ため息をついて肩を下げた。

「いつの話をしてんの?」

「俺は、いま、クラピカが好きだって言ってるんだけど。そんな昔の話をしてるんじゃない。」

キルアの視界には、クラピカ以外何も映っていないようだった。クラピカは目の前の彼から、少年だったころの面影を探す。キルアが友情と恋愛感情を履き違えるなど考えられないことはわかっていた。再び目を逸した。自分の方が大人なのだという主張は、この数年で倍の速度で成長した彼に一蹴され、むしろ自分が子どもに逆戻りしたかのような気にさせられた。いつも素早く開く口が動かない。

「あんたがレオリオに抱いてた感情も、友情だったって言うのかよ」

どくん、と心臓が飛び跳ねたのを隠せず、反射的に顔を上げた。頬杖をついていたキルアが、やっぱ違ったんじゃん、と鼻で笑った。

「…知っていたのだな。」
「あたりまえじゃん。バレバレ。」

普段感情の起伏を表に出さないクラピカが、恋愛面ではずいぶんわかりやすい人間になることは、それなりに察しのいい人なら気付いていただろう。たまたま近くにいた他の二人は気付いていなかったようだが、キルアは違った。もっとも、彼がその時からクラピカを少なからず意識していたからでもあるが。

「…寝たの?」

キルアが手のひらに顎をのせたまま言った。先ほどまでとは打って変わって視線をテーブルに落としている。

「まさか。私の片思いだったよ。本人はそのことに気付いてすらいないだろうな。」

クラピカは自嘲気味に薄く笑った。キルアは、クラピカを一目見やると、そっか、と言った。キルアも恋愛に関してはなかなかわかりやすい。

「最近気づいたのだが、私はレオリオに憧れていたみたいだったのだな。私にないものをすべて持っているように思えたからな。できるだけ彼に近づきたかったのだと思う。…こんな風にレオリオを思っていたなんて、自分でも驚きだったのだが。」

クラピカは笑った。自分の叶わなかった恋について話しているというのに、いつになく饒舌だった。二人の間に流れる空気が、レオリオの話になるだけで、その天性の人柄に影響されたかのように温かみを取り戻す。キルアが口を開こうとすると、クラピカが言葉を繋げた。

「キルア。私はお前とは付き合えないし、そんな資格もない。私は女であることは捨てたんだ。」

クラピカははっきりとそう言うと、少し間を置いてから、利用はしているが、と呟いた。その瞳は相手に諦めを促す。キルアはクラピカの真意を探るようにじっと見つめていた。「利用」に関して、いくつか点と点が繋がったような心当たりを覚えたが、口に出すのは憚られた。本当は、今にも彼女を抱きしめたいほどの感情に胸を焼かれていたのだが。

「…恋愛に資格なんかいるのかよ」

キルアが不機嫌を隠さずに言う。その姿が5年前のゴンと重なった。あの場にキルアはいなかったはずなのに、言い方も、台詞も、少しだけ顔つきも似ていた。親友というのは正反対に見えても、どこか似てしまうところがあるのだろうか。クラピカ、とキルアが呼んだ。

「俺、クラピカが好きだ。ずっと一緒にいたいって思うし、前を歩いてるのを見ると抱きしめたいって思う。手握りたいし、髪も触りたい。キスだってしたい。これって恋愛感情だろ?」

キルアは表情を崩さぬまま喋った。それはとても女性を口説くときのものではなかったが、まだ大人にはなりきっていない青年のまっすぐな気持が溢れるくらいに伝わってきていた。クラピカは、胸の奥のずっと仕舞い込まれてきた部分がぎゅっと痛くなるのを感じた。

「クラピカが何をもって資格があるかないか言ってんのか知らないけどさ、俺には関係ないよ。俺はクラピカのこと好きなだけなんだから。」

キルアが微笑むように笑った。ずいぶん大人っぽい笑い方をするようになったのだな、とクラピカはぼんやり思った。黒いシャツの奥に見える鎖骨の隆起や、喉仏が、彼がもう十分に男であることを主張していた。

(違う。これは恋愛感情ではない。)

クラピカは浮かんでくる考えを打ち消す。今キルアに対し湧き上がる感情は、昔レオリオに対して抱いていた感情とは別のものだった。レオリオへの感情が恋だったならば、これは何であるのか。たった一度しか知ったことのないクラピカには、その問いはわからなかった。

「私は…違う。キルアに恋愛感情はない。」

クラピカは逡巡する頭の中を振り払うように、口を動かした。キルアの随分とたくましくなった腕やその筋が目に入る。目を見ることが出来ないのに、キルアが笑っているのがわかる。

「嘘。クラピカは俺に触れたいって思ってる。」

キルアは左腕を差し出し、手のひらを上にしてテーブルに置いた。右腕で頬杖をつきながら、クラピカの頭の中がすべてわかっているとでもいうような顔で彼女を誘う。キルアのいたずらっ子みたいな笑い方は、昔と変わらない。クラピカは、悪いことを二人だけでしているような感覚に襲われた。
キルアの指がトントン、とテーブルを叩く。クラピカは吸い寄せられるように、その指先に触れた。


部屋に入り、ドアを閉めると同時にキルアはクラピカを抱きしめた。驚いてあげようとした声はキルアの唇に呑みこまれた。押し付けられた唇は角度を変え、何度もクラピカの唇を啄む。右手を首の後ろに差し入れ、キスだけでは足りないかのように肌や髪の感触を求めた。クラピカは満足に息もつけず、キルアの胸を押して些細な抵抗を試みるが、びくともしない。キルアは、クラピカの体から力が抜けたのを見抜き、腰を引き寄せる。クラピカの腰に固いものが押し付けられた。

「キルアっ、ちょっと待て」
「無理。もうたっちゃった」

キルアはいたずらそうに口角を上げたが、その眼には隠しようもない情欲が見て取れた。首を傾げて再度唇を味わおうとする。今度は舌を入れ口内を犯しはじめた。頭を押さえて、逃げまどう舌を追いかける。

「ん…っ」

糸を引きながらゆっくりと唇を離すと、クラピカの眼はとろん、としていて、視点が定まっていないようだった。キルアは微笑んで、ちゅ、と軽く口づけを落とすと、その手をとり部屋の奥まで引っ張って行く。キルアが泊っているこの部屋は、ハンターライセンスのおかげで広く奥行きがあり、絨毯や調度品に高級感が漂っていた。最奥に置かれたダブルベッドにクラピカを倒す。ベッドが重みを受けてギシリと鳴った。
キルアは早急な動作で上着を脱ぐ。シャツを取ると筋肉のついた白い肌が露わになった。クラピカは目の前の男の肉体を見、同時に自身の体が疼きを感じていることに気付いた。キルアはクラピカの上にのしかかると、彼女の顔の横に腕をついて顔を近づけ、愛おしそうに髪を撫でた。

「クラピカ…」

名前を呼ぶその声は、今まで幾度となく繰り返されてきたものとは違っていて、クラピカはまた胸の内に痛みを覚える。つい先ほど恋愛感情ではないと結論づけたはずなのに、この痛みがキルアによって引き起こされていることは否定しようがなかった。
再び舌を入れてきたキルアの口づけに応えようと、クラピカが舌を絡ませると、彼は一瞬驚いたように眼を見開いた。キスが深くなっていき、荒げた息と唾液が交わる音がする。いつの間にか服の下に手が入り込み、ブラジャーのホックがはずされていた。体の線をなぞった指が胸の突起に触れる。指の腹で弄ばれると、クラピカはくぐもった声をあげた。キルアは衣装を脱がそうと胸のあたりまで捲りあげるが、その構造の複雑さと焦りでそれ以上進まない。唇を離すと、照れた笑いを浮かべながら、相変わらず厚着だね、と言った。

かわいい、と思った。自分より逞しくなった青年に。
触りたい、と思う。抱きしめたい。キスをしたい。

クラピカは、上体を起こすと、腕をクロスさせ服を脱ぎ捨てる。そして、キルアが再び押し倒そうとするのも構わず、自分からキスをした。勢いがついてそのままキルアを押し倒す形で倒れ込むと、頭を抱え込みながら舌を絡ませる。キルアはしばらく思考が停止していたが、目を細めるとクラピカの体の線に手を這わせ、下の衣類を脱がせながらキスを甘受した。
顔を離し、クラピカの濡れた唇から二人を繋ぐ唾液の糸が垂れる。キルアは上体を起こしてベッドの上に向かい合う形で座ると、クラピカの一糸纏わぬ体を見つめた。

「あまり真剣に見ないでくれ」

照れたように笑いながら、体を隠そうとするクラピカの腕を捕まえる。白く、引き締まった、しかし女であることを主張する柔らかそうな丸みを帯びた体。

「キレーだな」

呟かれたその言葉に、クラピカの頬が赤く染まる。キルアの手によって女を開かせられたその体は、うっすらと桃色に染まっていた。

「綺麗だ、クラピカ」

キルアはそのまま手に力を込めると、クラピカを押し倒した。


ぴん、と天井に向かった乳首を口に含む。もう片方を指で捏ねながら、舌先で転がすと、クラピカから鼻にかかった声が漏れる。そのまま体の線を撫でながら、手が下におりていく。割れ目を上下に撫で上げ、茂みを掻き分け陰核を摘みあげる。秘壺から溢れる愛液を掬いとり、指の腹で上下に撫でた。クラピカが口元を丸めた手で押さえながら呻いた。親指で刺激を続けながら、中指を泉の中心にゆっくりと侵入させる。じゅぷ、と水音がしてそのまま奥までいくかと思いきや、なかなか狭く思うように進まない。入口付近で足止めをくらった指は、粘膜をぐるりと撫でた。

「んっ、ああっ…!」

クラピカの体がびくりと跳ねる。零れ出てしまった声を拾おうと手のひらで口を覆うが、キルアの指の動きに翻弄され、次々と声を漏らしてしまう。段々と奥への侵入を許し始めたそこは、キルアの指を呑みこもうとでもするように収縮を繰り返していた。指が根元まで埋め込まれたのを、クラピカは認識した。
キルアの指が私の中に入っている。それだけで、叫び出したいような衝動に見舞われた。
得体のしれない欲とキルアの愛撫に心身ともに掻き回され、言葉にならない声を上げ続けた。クラピカ、と呼ばれるその声だけで、全身を愛撫されたかのように欲情した。

「入れてもいい…?」

目を開けるとキルアが懇願するように眉を下げていた。
聞かなくてもいいのに、とクラピカは思う。
見たことのない困り顔をするキルアがかわいくて、その頬を両手で包んだ。

「…キルア」

きて。
耳に唇を寄せ囁くと、キルアは一瞬息を詰まらせ、その口を塞いだ。

「んんっ」

舌と同時にペニスがクラピカの中に侵入する。一人前の男のモノをしたそれは、先程の指と同様になかなか進んでいかない。

「きっつ…」

キルアは唇を離し耐えるように眉根を寄せた。クラピカを見るとぎゅっと瞑られた目の端から一筋の涙を流している。

「痛い…?」

キルアは心配そうな様子でクラピカを覗き込む。
本当は痛かった。体が裂けてしまうのではないかと思うほど。
しかし、そんな捨てられた子犬みたいな目で見られたら、喉が詰まって何も言えなくなってしまう。
クラピカは大丈夫、と聖母の如く表情を緩ませた。

キルアは内心、喜びのような想いが胸に広がるのを感じていた。指で抉じ開けた時もそうだったが、こんなに頑なに男の侵入を拒むのはクラピカが生娘であったことを予感させたからだ。クラピカの口ぶりから、目的のために体を使ってさえいるのだと思っていたが、違ったのかもしれない。もしそうなら、彼女のこんな乱れた姿を目に映した男は自分の他には誰もいないということになる。過度に期待するな、と自らを律しながら、顔が綻びそうになるのを必死に堪えた。

キルアが腰を押し付け、少しずつクラピカの中にペニスを進めていく。やっと根元まで埋め込んだとき、クラピカの目の横を二筋目の涙が落ちていった。
キルアはクラピカの額に自分のそれを合わせる。二人の息が荒く交わった。

動くよ、とキルアが切羽つまった様子で言ったのを合図に、律動が開始された。ず、ず、という肌の合わさる音と、二人の息が弾む音、クラピカの喘ぎ声とキルアの呻き声。部屋に響くそれらに追い立てられるように、二人は互いの体を貪った。痛みはいつしか消え、快感だけが中心から体中へと纏わりついて神経を隅々まで絞っていく。キルアの先端がクラピカの一部を突いたとき、電撃を浴びたかのような刺激が襲った。

「あっ、んぁあっ、キルア…っ!」

クラピカがキルアの首に腕を巻きつけて叫ぶ。キルアは目の前の白い首に顔を埋めると、クラピカが大きく反応した場所を目掛けて腰を早く動かした。

「あぁ…!もうっ、も、だめっ…あっ、キルア…っ!」

クラピカは頭から突き抜けるような甲高い声を出すと、キルアの名前を叫びながら達した。締め付けに引きずられ、キルアも中に精を放つ。大きく息を吐き、乱れた呼吸を整える努力をしながら、しばらくぼうっと痙攣しているクラピカの体を眺めていた。


「クラピカってセックスしたことあった?」

別にどっちでもいいんだけどさ、と前置きしてから尋ねた。あくまでピロートークのほんの一部であるように、軽いノリに聞こえるように心掛けて。しかし、クラピカの表情や声を一瞬たりとも逃さないように見つめてしまっている顔に本音がでていないかと心配になる。
クラピカは大きい瞳をきょとん、と丸めると、不思議そうにキルアを見た。

「いや、お前が初めてだよ。下手だったか?」
「まさか。超気持ちよかった。名器だよ。」

キルアが言うとクラピカは呆れたような笑い方をした。キルアの胸に安堵が広がっていく。自分が散々踏み荒らしたくせに、まるで聖母の純潔が保たれたかのような気がしていた。
キルアの顔に広がる感情を読み取ったクラピカは、先に自分が言った言葉がキルアを悩ませていたのだと気が付いた。

「普段は男のふりをしているのだが、マフィア界には女性のコミュニティーもあってな。そういう所に紛れ込んだりするんだ。」

誤解させてしまった事について弁解すると、顔に出ていたことを悟られたと気付いたキルアは、気恥ずかしそうにそういうことは早く言えよ、と言った。
安心すると、急に我を忘れてクラピカの体に夢中になってしまったことが思い出される。クラピカの剥き出しになった肩まで布団を引っ張り上げながら、中に出してごめん、と言った。クラピカは布団の中でキルアと向かい合わせるように体を反転させると、今日は大丈夫だから気にするな、とキルアの頭をぽんぽんとあやすように撫でた。
子ども扱いするなよ、と言いたいのに、その笑顔に甘えていたくて何もできない。
女の人にこんな風に甘えたいと思うなんて、一生ないと思っていたのに。
クラピカが眠りにつくまで、キルアは彼女を飽きずにずっと眺めていた。




眼を開けると、外には太陽が昇っているらしかった。厚いカーテンの隙間から冬の乾いた陽光が差し込んでいる。隣を見れば、キルアが静かに寝息を立てて布団に顔を埋めていた。昔と変わらない癖っ毛を指先で弄ぶ。それに呼応したのかキルアは少しだけ動くと、手を宙にさまよわせた。クラピカの手を捕えると、ぎゅっと握りしめる。
クラピカは、その様子を眺めながら、情事中に抱いた感情に確信を得た。キルアを見るたびに沸き起こった様々な感情。それらは、すべてこの青年を、いとしいと思っていたのだ。
クラピカは、キルアの頭を抱え込み、胸に押し付け、髪に口づける。
いとしい、愛しい。
レオリオに抱いていた感情はたしかに恋だった。けれど、今キルアに抱いている感情もまた恋だ。
レオリオに憧れて、求めて、でも届かない、だからこそ恋していたのかもしれない。けれど、キルアは、どんなに暗く冷たい場所で泥にまみれていても、こうして胸に抱きしめていたい。求められて、その何倍も求め返したい。自分の全てを見せて、彼の全てを知りたい。
クラピカは、初めて抱いた感情を大切に守るように、キルアを抱きしめた。窓から差し込む光が、部屋の塵をきらきらと輝かせている。
キルアが起きたら、キスをして、一緒に朝食を食べて、街へ出て光を浴びよう。
クラピカは腕の中のキルアの匂いを吸い込むと、目を閉じて再び眠りについた。