10
優しい手が頭を撫でる。いつも笑って身を捩る。
褒められるのは好きだったが、子供あつかいは嫌だ。
ああ、いつも背伸びをしてたっけ。
《子供の内は子供らしくしていなさい》と、よく母からお小言をこぼされてた。
《あまり早く大きくなってくれるな》と父が隣で笑っていうと
《直ぐに12歳になって、お婿さんが決まりますよ》と母がいう。
いや、これは私の記憶じゃ無い。
私は……

大きな手が優しく包んでいる
肩を撫で、背中を撫で、わき腹や胸を滑っていく…
抱きしめられて、とても暖かい……優しく頭を撫でられてる
大きな手に。優しい手だ…
私をそんな風に扱う者は、今は既に…
急に現実に引き戻された。
《誰だ?》
戒めるように叫び体を起こしかけた私に、手の主は驚いた風でもなく溜息をついた。
《おまえねぇ、看病してる相手に向かってそれは無いだろ?》
減らず口がついてくる。ぼけていた視点が定まると見知った顔がそこにあった。
《急に倒れるから…、まさか何か…持病でもあるのか?》
《別に持病は無い。ゴンたちはもう行ったのか?》
つとめて事務的に答えた。そこで頭が漸くはっきりしたものか、初めて自分がベッドに寝かされていることに気付く。
《ここは?》
《悪い。状況が読めなかったので街で一泊部屋を取った……その…ツインで》
言いよどむ頬が赤い、視線も少し逸らし気味だ。不自然な態度にまさか…と毛布の下を覗くといつもの服装はなかった。
息が楽なように緩めに着せられた備え付けのガウン…

《……手間を掛けさせたな》
漸く振り絞った声は硬い。
《さすがに下までは脱がせなかったから、自分で脱いでくれ。シャワーも浴びて体を温めろ。何なら湯も張った方がいい》
一気に捲くし立てた声に安堵の色がある。私が怒らなかったからホッとしたのだろう。
彼は善意から行動したのだ。責める訳にも取り乱す訳にもいかない。
《そうさせてもらう》
バスタオルと替えの下着の入ったかばんを持って浴室にむかった。

膝下まで湯を張ってからシャワーを浴びる。
湯を張る間に着せられていたバスローブをはだけ、ズボンと下着を脱いだ。
鏡の中の姿は程よく筋肉は付いている。引き締まってスラリと伸びた手足…
だがそこそこ膨らみのある乳房とくびれて柔らかい曲線を描く腰は男ではありえない。
きっと驚いたことだろう。
溜息がでる。
良い感じの友情だと思っていた。心から信頼できる友人だと。
こんな些細なことで壊れてしまいたくはなかったのだが、仕方がない。
もう元には戻れない…泣きたかったが涙は出ない、それに泣いたら自分が折れてしまう気がする。
ふと、ある事を思いついた。

浴室から出ると、非常に気まずい表情をした彼が待っていた。顎に手をやり考え込んでいる風だ。
困惑しているのだろうが、あえて無視をする。
《なぁ、》
意を決した声、言いたい事もあったのだろうが言わせない内に言葉を紡ぐ
《浴室は空いたから、お前も汗を流して楽にしたらいい。色々すまなかったな》
矢継ぎ早に言葉をつなぎ何も言わせない。
怪訝な顔をしても押し切ってしまう。自分に非があると思っている時の彼は従順だ。

結局何も言わず、すごすごと浴室へ向かった。

《なぁ、やっぱりお前、どこか悪いんじゃないのか?》
声を掛ける。
バスタオルを被り浴室から出てきたレオリオは、彼女に気を使ったのかバスローブを着ていた。
返事はない。
ベッドの方を見ると小さな頭が毛布から出ている。眠っているのか?
近づいて確かめると、どうやら眠っているようだ。
そっと、髪をよけて額に手を当てる。熱は無い様だ…
《ったく、頑固者が》
指が名残惜しそうに額から髪を撫ぜてはなれた。
《おやすみ》
聞こえないだろうが、一声掛けてベッドに入りサイドのランプを消す。

明かりの消えた部屋でまどろみ始めたレオリオはいきなり眠りの淵から呼び戻される
いつのまにか、クラピカが毛布の中に忍んできていて、レオリオのバスローブのあわせから手を入れて胸に這わせている。
《やめr…》
抗議の声を上げる筈だった彼の口は、柔らかい唇に塞がれてしまった。力ずくで体を這い回る手を引き離し顔を捩って声を出す
《ふざけるな!こんな事をして…》
だが直ぐにまた唇で塞がれ舌を絡め取られてしまう。
いつの間にか、バスローブは完全に肌蹴られレオリオの胸に彼女の瑞々しい体が押し付けられていた。
滑らかな肌触りと柔らかな2つのふくらみと頂の小さな塊が、擦りつけるように裸の胸の上で踊る。
口の中では舌が蠢き逃げ場を奪う。
頭がしびれる。体の中心に熱が集まるのが解る。今日ばかりは下着を付けていて良かったと思った。
丁度その上の辺りに彼女の脚が絡みついている…
限界だ!
こんな状態で我慢できる男が存在するならお目に掛かりたい
勢いをつけて、体を回転させ体勢を入れ替えた
今度はレオリオがクラピカを抱き込む形になった。
唇が離れた。唾液の糸が伸びて千切れて落ちる。
白い胸の上に転々とゼリーのように
《バカ!もう止まらねぇぞ》
それだけ宣言すると、さっきまで彼女を引き剥がそうと苦心していた手で胸に落ちた唾液を掬い、
小麦粉を捏ねるように肌にはわす。ゆっくりと大きく弧を描きながら少しづつ力を加えて中央に寄せていく
気持ちが良いのだろうクラピカの鼻から抜けるような溜息がもれた。
薄くあえいで唇が開く
お返しとばかりに、レオリオが口付ける。先程のクラピカからの噛む様なただ激しいだけの口付けではなく
全体を吸ったり、歯の裏を舐めたり、口蓋の奥に押し付けたりと、緩急をつけた慣れた舌使いの口付けにクラピカの心が少し痛んだが、
直ぐにそんな不満は霧散して何も考えられなくなってしまった。頭の芯が蕩けて身体が溶け出し熱をはらむ
変わらず彼の大きな手は彼女の乳房を捏ねていたが親指が時折掠めるように頂を撥ね、埋め込むように押しつぶす。
その度、口のふさがったクラピカの鼻から甘ったるい声ともいえない息が抜ける。
もぞもぞと、脚を摺り寄せるように白い腰が揺れはじめた。
そろそろかと、レオリオは乳房を捏ねていた手の片方を脇腹から脚の付け根へとラインと腰骨に沿って滑らせた。
彼の大きな手に似合った長い指が彼女の秘部の切込みにするりと沿わされる。
キスをしながらの手探り状態なので、たどたどしい動きの指はそこを穿る様に掻き分ける。
下肢に熱が集まりつつあったクラピカにはそれだけで、たまらない刺激でよりいっそう腰が揺れる、這わされた指先が例の肉芽を掠めた瞬間、ビクンと軽く達した。

思考が真っ白に飛ぶ。電流が身体を駆け抜けたような感じと上がった息と力の入らない四肢に当惑しつつ、
目を開けると視界は真っ赤に染まっていた
《綺麗だな…凄く綺麗だ》
耳元で浮かされたようなkレオリオの低い声が囁いた
眼について言われるのは嫌なことだったのだが、今は甘く疼いて響く。
力の抜けた脚に感覚が少し戻ってきた時、何か違和感を感じた。
先に進もうと、私の脚の間に身体の位置を変えたレオリオがあっと声を上げる。
脚の付け根から太腿に一条の血が流れてきていた。
《え?オレまだ挿入れてないぞ……》
私も身体を起こす。しばらく2人で見詰め合った
レオリオがそうか!という顔をした、私はまだわからなくてポカンとしていた。
《お前…そうかなんだ、不調はこの所為か》
はははと、笑い出した。釣られて私も笑ったが、すぐに泣き声交じりになってしまった。
人前で、いやそもそも泣いたのは何年振りだろう?里を出てから殆んど泣いた記憶は無い。
止まらなくなって、声を上げて泣いてしまった。
レオリオは泣きじゃくる私を抱いて頭を撫でながら
《大丈夫、大丈夫だって》と幼子をあやす様に声をかけてくる、優しかった。
その晩、私は彼にしがみ付いて眠った


目が覚めた。
不愉快な夢だ、あの夜、結局私はヤツを満足させられなかった。私から仕掛けたのに…だ
あんな時に始まるとは…思えばその前の不調は前兆だったのだろう。
何年も音沙汰なしだったのにあれからきっちり来るようになったのは喜ばしいことなのだろうが

ヤツは、私の不調の原因が判って安心していた。
あれこれと、食事やら何やら注意点のレクチャーまでしてくれた。
お人好し過ぎて腹立たしいくらいだった。
…そういえば礼を言わなかった。
翌朝、目が覚めた私はあまりの自分の失態に、あわせる顔が無くてヤツが眠っている間に1人先に旅立ってしまった。

入り口に気配がしたのでそちらを向く
《何だ起きたのか?》
この庵の主が帰ってきたらしい。もうそんなに時間は経っていたのか。気付けば外は夜だ。
師匠と決めた男は、自分の寝台を占領する不届きな弟子にニコニコと近づいてきて、

《必要だろ?》

そう言って、まるで戦利品だというようにありとあらゆる種類の生理用品を並べた。

《何も顎を殴ってくることはないだろう?》
これ見よがしに顎を撫でながら師匠になった男が不満たらたらに文句を言う。
《敵への攻撃は一撃必殺で無ければ意味はないと昔教わった》
《だからって、普通いきなり顔殴るか?…って、おいまて!俺は敵か?》

そういえば、昔はもっと確実な一撃を加えていたように思う…
《おい、聞いてんのか?おいっ!》
喚く師匠を尻目に考えこんだ。