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注意:レズ(ソフトですが)救いのない話、キャラクター独自解釈が駄目な人はこの先は読まないでください。
今までも大概ですが、ここから捏造が著しくなる予定ですので。


《ねぇ、あたしとキスしない?》

目の前の女にベッドの隅に追い込まれた。
女は手と肘を突き、丁度獣のような四つん這いで下から舐め上げるように私を覗き込む
《まずい》
ヴェーゼの能力は知っている。キスした相手を180分間言いなりにする、キスされてしまってからでは手遅れだ。
伝言を伝えに部屋の扉をノックしただけのつもりがいつの間にかこんなことになっていた。
後じさる私の目線にも彼女の肢体は鮮やかだ。キャミソールというらしい膝丈の薄手の下着一枚の彼女は
伸びやかな脚と大きな丸い尻と細いウエスト白い背中を私に見せている。
そこを詰め寄られにゅっと顔を上げられて、白い腕の向こうに豊かな乳房が実っている様が現れる。薄手なので乳首の形まで顕わに判る
無造作に上げてきつく束ねた髪の所為で細く長い首と小さめの顔、その中で赤い唇が映えている
時折割れてちらちらと舌が唇を舐める
獲物を追い詰めた蛇のようだ
男性ならこの時点で彼女に完敗だろう。私にはよく判らないが、こういう時に冷静に対処できる男性が少ないことは知っている。
為す術もなくあるいは自ら口付けして彼女の僕に成り下がるのだ。
私はというと、
傍にあった枕を抱きしめ口元を隠し、彼女との防波堤にしている。脚を前に膝立ちにして座り込んだ腰の引けた情けない姿だ
背中にはヘッドレストが当たり既に逃げ場がない事を知らせてくる。
何を思ったか、彼女はキスより先に私の服を脱がせに掛かった。怯える少年を楽しもうという嗜虐趣味か…
《おねえさんがイイコト教えてあげる》
そういったところか…
まさにそのままのセリフを吐いて、彼女の手が私の下半身に伸びた。
予想通りに過ぎ、思わず噴出した私の態度に彼女の手が止まる
《……何よ?》
笑われ、心外だと言わんばかりの不満げな声が下から上がる
努めて冷静に
《いや、私に色仕掛けは無理だと思う》と返す
《?》
《わからないか?》

《え?…あっ……ぁはははははは。嫌だ!もう、》笑い転げられた。
そこまで笑わなくてもと思えたが、騙されたの詐欺だのと悪態を吐かれるよりはよほど良い
ようやく笑いの治まったヴェーゼが目尻の涙を拭いながら
《気分が殺がれちゃったわ、何かお話しましょうよ》と言った。
私は早く役目を終えて辞したいのだが何故か逆らえないのだ。
先程もそれで部屋の中まで招きいれられてしまったのだから…正直、長居はしたくない。
にもかかわらず、何故かお茶などする羽目になっている。

《どうしてあなたが少年に見えてたのかしらね?》
《この服装の所為ではないか?》
《ふうん?》
取り留めのない会話から始まったのに
《どうしてボディーガードになったのか?》
などと、内面に関わるような会話へ移っている…やはりオカシイ
《どうしても、欲しいものがあるからだ》
これ以上は答えたくない…そう思うと彼女が続けていた
《そう?私は足がかりよ》
《足がかり?》
《出来れば十老頭の誰かの愛人になりたいんだけど。ま、最初はボスの父親辺りかしら?》
事も無げに言う
《調べたんだけど、ボスの父親って、見てくれは結構悪くないナイスミドルって風体のイイオトコ風なのよ。中身は知らないけど、あれなら悪くないわ》
舌舐めずりをしながらニヤリとほくそえむ…これは淫魔だ。知らず手を出すと髄まで吸い尽くされる…
目の前の《女》に圧倒されていると
ヴェーゼがじっとこちらを見ているのに気付いた
《何か?》
《あなたって、ヴァージンでしょ?》
そういう切り返しがくるとは思わなかった
《そういう訳ではないが…》
言葉尻が弱い
どう取ったものか、相手は乗り出した身体を戻しながら
《そう?》
と、納得していない風な返事をよこす。
《なぜそう思った?》
《だって、さっきのあなた、愛人って言葉に拒否反応出てたわよ》
先程の間を拒否だと取られたのか…
《愛人という感覚が理解できなかったから…》
目線を落として手にしたカップを回す
《ほらそこよ。その反応がヴァージンっぽいの》
二杯目を注ぎながら
《ボディーガードなんかやってるよりよっぽど実入りがよさそうだし、第一絶対楽そうよ》
立ち上った香りを楽しんで
《何より私の能力なら手玉に取るのも簡単でしょうし》
ニヤリと笑う口許で舌が口紅に赤く彩られた唇を舐めている
《そうね、私を楽しませてくれるなら寝るの位は別にかまわないわよ。相手はちゃんと選ぶしオジサン嫌いじゃ無いし。もちろん若い子もね》
舌なめずりをして獲物を選別する山猫だ。したたかでしなやかな山猫
《相手にもある程度は餌を与えないと…》
くらくらする。
《何よ?その顔》
額を小突かれた
《いや、》
額を押さえながら言うべきか言わざるべきか悩んで、結局言葉に出した。私も雰囲気に流されているらしい
《子供が出来たらどうするのだろうかと思って》

《やだ、そんなドジ踏むわけないでしょ?》
けらけらと笑って返された。ドジを踏んだ…それでは産まれる子供が浮かばれまい。
《愛人の子供なんて揉め事の火種だもの、リスクは避けるわよ。でも、》
《でもそうね、心底ほれた相手なら産んでもいいかもって思うかも》
《その時は本妻や幹部との争いに勝たなきゃならないから大変だけど、そうね、その時によるわね》
ヴェーゼの独壇場だ
《でも今はまだ、当分はセックスを楽しみたいわね》
《楽しむ?》
思わず聞いていた
《え?》
ヴェーゼも驚いて返す
《セックスは子を生す為だけの行為だと思っていたから…》
《いやぁだ!もうっ!可愛い》
ギュッと抱きしめられた。今の私は隙だらけだ
《ん?ちょっと待ってよ、あなた経験あるのよね?》
抱きしめていた手が両の二の腕を掴み引き剥がすようにして見据えられ真顔のヴェーゼに詰められる
《何回か》
また素直に答えてる
《今まで避妊してなかったの?それは、相手の男が酷いんじゃない?》
《いや、私から誘ってたんだ》
顔は真っ赤だろうことが自分でわかる。なによりなぜ私はこんなに素直に質問に答えているんだ?
《へー》と感心とも呆れともつかない溜息がもれた
《その歳でもう子供が欲しくなるような男性と出会えてるんだ?》
あの時の気持ちはそういうことだったのだろうか?
神妙な表情になったらしい私に雰囲気を変えようとヴェーゼが軽口を叩いた
《あなたって、ほんっとにクソが付くほど真面目よね、からかいがいあるって言うか》
《よく言われる》
そう返すと、やっぱりという顔が待っていた。
《面接試験のときから目を付けてたのよね。見た目の綺麗な少年って好物だし》
少年…あえて否定をしたことは無かったな。男装をしているつもりも無かったが
《あなたって普段きっちり着込んで禁欲的に見えるし、ちょっかい出したくなるのよね》
着込んでいて欲情されるのでは、どんな格好をすればよいと言うのだ?人それぞれとはいえ困り果ててしまう。
《そうね。よく見ると妙な色気はあるし、あなた、やばいタイプよ》
《…》もう黙ってるしかない。
《気を付けなさい。男でも女でもそんなことはお構いなしな連中だって五万といるのがマフィアなんだから》
言うだけ言うと品定めをする視線は遠慮なく私の衣服をはいでいる…
実際は着ていても着ていないのと同じような心許ない感覚に落ちた
視線だけで、丸裸にされていくような…同性の視線と言うものは遠慮がない分痛くて辛辣だ

ちょっと見目の良いキレイなコを見つけたらハメてやろうって輩、どこにだって転がってるわ。
ウチのボスの父親だってどんなヤツか知れたものじゃ無い
思ってた性別と違ったって、それはそれ。
どっちでもいいってのもいるのよ。

ニマッと凄みのある笑みを浮かべて耳元で囁く
《知ってた?私、バイなのよ》
軽くキスをされた
《?!》
しまった!慌てて口元を押さえて突き飛ばすが、おそらくもう遅い

だが、自分の身に特段変わった感じは受けない…
眼を白黒させてる私の取乱し様が可笑しかったのだろう
クスクスと笑いながらヴェーゼが言う
《これは貸しよ》
知ってた?あなた、私のテリトリーに入った時から私の術中なのよ、何もディープキスをして意のままに操るだけが私の能力じゃ無い。
《今晩の任務が終わったら、返してもらうわ》
《何…を…》
聞かずとも解っている。彼女の手が私の上着の下に入り込んできて、きゅっと胸を掴んだ
《!》
やわらかく揉まれ、不意を衝かれて思わず反応が顔に出る、声を立てることだけは我慢できた
《アラ、意外とあるんだ》
ぱっと手を跳ね除ける
《ふふ、いろいろ教えてたっぷりと可愛がってあげるヮ》
ホントはこのまま頂いちゃいたい気もするんだけど、楽しみは後に取っておくわ。だって今からじゃ時間もそんなに取れないし。
このコ自分からせまったって言ってるけど、相手に言い寄られても断れないんじゃないの?
だから、ついでにオトコのあしらい方も教えてあげる。でもその前に思う存分楽しませてもらうけど。

《今夜は寝かせないわ》
耳元に息が掛かるように囁かれた。



《客をどうした?オークションの客に我々の仲間がいた》
《殺した。そういう計画だったんでな》

彼女は帰ってこない。跡形もなくこの世から消えた。