14
捏造設定てんこ盛り
クルタさんちのおかしな風習ありぃの
師匠との出会いありぃの時系列は13のほぼ同時期
10、11、12の伏線回収です。


追われて逃げる。何かは判らない恐怖に追われて逃げている
逃げて逃げて追い詰められて、もうここまでと思った崖先で
生きようという生命の本能が勝ったのか
惨めに追い詰められた恐怖への憤りが呼びさまして点った小さな怒りが
悲しみと共に恐怖を焼き払い、身の内を狂わんばかりに駆け巡る憎悪となって出口を求めて猛り狂っている
身体の穴という穴から瘴気が発ちこめるようだ
人はそうして鬼になっていくのだろう
復讐という鬼に

鬼を拾った
小さな鬼だ
俺自身が鬼みたいなモンだったからコイツは俺に懐いたのかも知れない
別にただの気まぐれだった
気まぐれだったからちょっかいを出して、食いモンをやって火にあたらせてやった
直ぐ飽きてどこかに行くだろうと思ったが行く先が無いのか付いて来た
たまに夜にうなされる
泣いているのかと顔を覗き込んだら
眼を狙って攻撃してきやがった
俺には何の問題も無いが、鈍いヤツなら食らうかもしれない危険だ。封印するに限る。
眼を狙いやがったら手厳しく反撃した
時間は掛かったがその内、狙わなくなった
感情が死んでるのか他の事では表情を殆ど変えないやつだった
よく躾けられてるのか身の周りのことは全て自分でするヤツで、実際手が掛からないのでついてくるに任せていた
どのくらい一緒に居たのか定かじゃ無いが、1年くらいは共に居たのかも知れん
うなされる回数は減っていったし、感情らしいものも見えてきてた。
鬼から人に成ったようだ
ある夜、久方ぶりにうなされていたので起したら抱きつかれたことがある。
胸元に顔を埋め潜り込むようぴったりと引っ付かれてしまった
暖かかったし湯たんぽみたいなもんだと、そのまま朝まで抱えて眠ったら、
朝になって神妙な顔で改まったヤツが言いやがった
《貴方とは同衾した。子供が出来てたら夫になってくれますか?》
俺はズッこけた。パクパクと金魚みたいに二の句が告げれない
《前の許婚とは子供が出来ませんでした。喪も明けた》
ってまて、どういうことなんだ?
《私の里では女は12歳に成れば、1の婿を取る。子供が出来ればその者を夫とする決まりですが》
《3年の間に出来なければ、次は複数の婿を取り、子供が出来れば父親として夫をその中から選ぶ決まりです》
《本来なら一族以外の者との婚姻はありえないのですが…》
《やはり外とは風習が違うようですが、私はその風習しか馴染みがないので…》
一気にスラスラと捲くし立てた言葉使いは丁寧だし淀みが無い
だいぶ前からこの状況をシミュレートして諳んじてたとみえる。謀りやがった。
お前歳いくつだ?子供の作り方なんて知ってるのか?(いささか不躾に過ぎるが聞かざるを得まい)
《次の春には14歳です、子供の作り方は…》
ヤツは真っ赤になりながら、一通りの説明をしてのけた…きちんと知ってやがった
…聞いてる間中これはいったい何のプレイだ?と言いたい位こっちも恥ずかしかったが
それで、お前は昨日のあのやり方でそれが為されたと思うんだな?
《はい》
はいって、お前、さっきの知識はいったいなんだ?!
《母が、そうすれば朝が来るころには滞りなく殿方が済ませてくださってますと教えてくれましたから》
は・は・お・や〜〜〜〜〜〜〜〜#
これは最初の婿殿というヤツもこいつが幼すぎて手を出せずに終わってるな…しかも早世たぁ…待てよ?
こいつを拾った近辺で居るらしいと噂の少数民族といえば……クルタか!
たしか幻影旅団に襲われて全滅したとか逃げ延びたとか情報が錯綜していたな
緋の眼がブラックマーケットにでも流れれば、詳細も判ろうってモンだが…今のところそんな情報も無い、襲撃の規模も推測も出来ん…
だが、生き残りがこいつだけとは思えない、はぐれたこいつを探しているかもしれない…連れて来ちまったのは失敗だったか? 
俺は提案する
お前は二度目の婿取りなのだから婿は複数試すのが筋なのだろう?
早々とオレなぞに候補を絞ってしまってもいいのか?と
ヤツは顎に手をやっていかにも考えてますというポーズを取った
《そうだな、もっと私に相応しい素晴らしい男性が居るかもしれない》
こいつは〜〜#
人間になったらクソ生意気な口の減らないガキだった
その割りにチラッと俺を寂しそうに振り返ったように見えたのは気の所為か?

ヤツは見付からなかったら戻ってくるといい旅立って行った
俺はとっとと移動した。ヤツが戻って来れないように痕跡を消して。自分の世界に戻るべきなのだと言い訳しながら、逃げた。

馬鹿なことをしたと、俺はこの時の判断を結局2回後悔した
1度目はその後直ぐにブラックマーケットに緋の眼が流れて全滅の噂が間違いないと情報が入った時
2度目はついこの前、ハンター裏試験の修行にヤツが現れた時だ
あの時行かせたりせず、手元に置いて翌年辺りに孕ませて夫に収まっときゃ良かったと、心底後悔した
そうすりゃ馬鹿な復讐に手を染める決意を止められたんじゃなかろうかと…
あいつは、無意識に賭けてたんじゃ無いだろうか?自分の運命を
誰かが新しい命を与えてくれたならそちらを慈しむ方に舵を切ろうと
猶予は4年間

だが適わず、賽は投げられた。

今のあいつはそれら全てが逃げでしかないと断じて捨てさるのだろう
蜘蛛を駆る
その為だけに生きると決意させてしまった
今は、ただ、一瞬でも蜘蛛との邂逅が遅くなることを願っている
だがそれもきっと覆されてしまうのだ、あの執念の前には。

またあいつは鬼になってしまったのか
執念という鬼に

せめて生きぬけ!と願った。今は鬼でもかまわないから。