クラピカと言えばいつもマジメ。
俺はそういうイメージを持ってた。
天空闘技場で過ごす時間はあっという間のようだったけど。
だけどハンター試験はもっと長かったような。
でもそれでいてあっという間だったような。
俺には分からない。
トリックタワーで50時間も暇を持て余すことになったときは長かったのだけは確か。
あのオッサンが懸けで負けたせいだけど、それを攻める奴なんていなかった。
皆なんだかんだでお人よしだ。
俺とゴンは寝るとき以外は部屋にあるゲームをしていた。
流石に最新のゲームはなかったけど、ちょっと型落ちしたゲームくらいならあった。
ゴンはどうも凄い田舎(ていうか離れた小さい島)出身なためか、ゲームには疎かった。
俺が何度も説明して、だんだん上手くなってきた。
理解するのに時間はかかるが、一度コツを掴むと結構早い。
二人で盛り上がってゲームをしていると、
「二人ともそんなにずっとゲームをしていると目が疲れるぞ。」
とかクラピカが言ってきた。
マジメなクラピカらしいなあ、とか思った。
俺はゴンとかオッサンとはふざけたりしてたけど、あんまりクラピカと話してない。
嫌いとか苦手ってわけじゃないけど、何故かあんまり話す機会がなかった。
だから、そんなこと言われて、どうすれば良いかと思ったが、
ふとある考えが浮かんだ。
「大丈夫だって!クラピカもゲームやってみようぜ。」
「興味ない。遠慮しておくよ。」
・・・ノリの悪い奴。
でもこういうマジメな奴って、ちょっとからかいたくなるって言うか。
遊びたくなるんだよなあ。
「えー、楽しいって。なー、ゴン!」
「うん、はじめはよく分からなかったけど、結構楽しいよ!
クラピカもやろうよ!」
ゴンの無邪気な笑顔に、クラピカが「う・・・」と迷ったような顔をした。
こういうとき、ゴンは最高に使える奴だと思う。
「なーやろうぜー。こういうのは大勢でやったほうが楽しいんだから。」
「これ、四人まで一緒に出来るんだって!やってみようよクラピカ!」
クラピカは渋っていたが、
「・・・少しだけだからな。」
と読んでいた本を閉じると、俺の横に座った。
「違う違う!そこで右だって右右ー!!」
「え、そこってどこだ?」
「そこはそこだよクラピカ!!今今!今そこそこ!!」
「こ、ここか!?」
「違うってあー!!はい一体死んだー。」
「クラピカってゲーム下手だねー。」
「ゴンより下手かもしんねーな・・・。」
「し、仕方ないだろう!私はこんなのしたことなし・・・」
「俺だって今日がはじめてだよ?」
「こりゃあゲーム音痴だな。しかも重症。」
「ま、まだちょっとしかしてないではないか!まだ決めつけるのは早いだろう!」
「あ、ほらほらクラピカ、喋ってる間にはじまってるよ!」
はじめてみたらクラピカの奴、必死になってるんだから面白い。
さっきまで「目が疲れる」とか言ってたくせに。
これだからマジメな奴は遊び甲斐がある。
・・・というかこいつ、こんな顔出来るんだな。
無茶苦茶悔しがったり、喜んだり。
いつも冷静な奴かと思ってた。
まあこいつだって、年下の俺が言うのもなんだけど、子どもだもんな。
普通にゲームして普通に悔しがって普通に喜ぶ。
殺し屋のエリートの俺だってそうなんだから、子どもっていうのは皆そうなのかもしれない。
50時間はとても長かった。
でも、新しい発見があった。
それはとても小さな発見だけど。
何故か大きな発見だった気もする。
嬉しいような楽しいような。
なんか俺には分からないけど。
ただ、天空闘技場で、暇なとき。
ゴンとゲームをしてると、クラピカとゲームをしたのを思い出す。
「そういえば、クラピカはゲーム下手だったね。」
俺と同じ気持ちなのか、ゴンが呟いた。
「ああ。ある意味天才的だった。」
「また会ったら、違うゲームしてみようよ。違うゲームなら出来るかもしれないよ!」
「それはどうかなー。あいつは基本、ゲームに向いてないと思うぜ?」
ゴンと二人で楽しいけれど、
あの賑やかすぎたハンター試験が少し懐かしかった。