試験前クラピカは師匠のところで暮らしていたという捏造設定です
途中までしかつくれていませんが
お暇でしたらお付き合いください
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『世話になった。全て終えたら、また会うこともあるかもしれない。』
そう言って3ヶ月前に此処を去ったアイツは、案の定ほとんど何も変わらぬ状態で舞い戻ってきた。
変わったことといえば、ハンター証を手に入れ、"念"の存在を知ったことぐらいか。
ほんの少し、筋肉もついたように見えた。だが、それだけだ。
垂れ流すオーラの量は変わっちゃいないし、ブラウンの瞳の奥に宿したどうしようもなく暗く重たい意志のようなものはそのままだった。
覚えた念を何に使うのか、聞かなくたって分かる。
だが、心源流の師範代たる俺が、裏試験の受験生に念を教えないわけにはいかない。何よりこれはあの意地の悪いジジイ直々の指令でもあった。
相変わらずの地獄耳。どこで聞いたんだか知らないが、アイツが同胞を亡くして以来4年間此処で修業を重ねてきたことも分かっているようだった。
とにかく、俺はもう一度クラピカの修業に付き合うこととなった。
いつもの修業場で"念"についてざっくりと講釈をしてやると、ならば今すぐ精孔を開かせろ、と詰め寄ってきた。
この展開は予想するまでもなかった。
「一応言っておくがな、これは外法以外のなにものでもない。下手すりゃ死ぬぞ?」
そうは言うものの、本当にその方法を避けたいのならばそもそも外法など教えなければいいだけの話。
4年間コイツの成長を見てきて、俺の害意なきオーラに打ちのめされるほどヤワな器ではないことは十分に承知していた。
後ろ向きに座らせ、自分自身のオーラを練り上げ、袖を捲った右手に集中させる。
表情は見えないが、どうせいつも通りのポーカーフェイス。
出会ったときからこれまで、ずっとそうだった。
たまに俺が冗談を投げかけても愛想笑いをするでもなく、時には下らないといった目で俺の顔を一瞥するだけで返事をしないことだってある。
時間をかけて高度な体術を会得したときでさえ、ほんの少しの安堵を浮かべただけだった。
喜怒哀楽――そのうち一番よく見せた感情はきっと怒りだったろう。
不幸な人形を笑わせることを早々に諦めた俺は、せめて表情を動かしてやりたくて、わざとコイツの気に障るようなことを言って苛つかせた。
まるで好意を寄せる相手にちょっかいをかけるガキのようだと自嘲したものだ。
そんなことを思い出しながら、小さな背の中心に手を近づける。
まだ直接には触れていないが、オーラを感じ取ったのだろう――身体が少し強張るのが見てとれた。
いくぞ、と声をかけ、集中したオーラをコイツの背中にぶつける。途端、今までゆるく流れ続けていたコイツのオーラが激しく溢れだした。
「これは…生命エネルギーだと言ったな。目に見えるものなのか」
自分の腕や足から迸るオーラを興味深そうに見つめながら身体をこちらに向ける。
ああそうだ、なにか新しい知を見つけたときだけは、僅かに顔が明るくなる。
「ああ、念を使えるヤツなら視認出来る。それより、悠長にしてないで止めねーとしんどいぜ?」
「止める?どうすればいい」
"纏"のやり方を、これまたざっくりと伝えると、オーラはあっけなく身体の周りに留まった。相変わらず、ムカつくぐらい勘のいいやつだ。
「これが"纏"か。…さすがに少し疲れるものだな」
「慣れりゃどうってことはないんだがな。ま、今日はこのぐらいにして戻ろうや。」
「ああ」
…日の暮れる前に修業を切り上げようとしたときは大概不満を言うコイツがおとなしく従うところを見ると、相当に体力を消費したらしい。
精孔を開かせる際に脱いだ上着を拾い上げると、ゆっくりと俺の後ろについて歩く。
変わらない。4年間、何度も連れ立って往復したこの道も、俺とコイツとの距離も。
念を完璧に会得してしまえば、今度こそほんとうに離れていってしまうのだろう。
「にしても、意外と遅かったよな」
数分歩いて山小屋の近くまで辿り着いた頃、ふいに思いついた。
ハンター試験は遅くとも1月中には終わる。コイツならば、そのあとすぐにでも仕事の斡旋所を見つけ出しただろう。
そこで裏試験の壁にぶち当たったのなら、もっと早く此処に戻ってきてもいいはずだった。
「斡旋所の場所はそんなに分かりづらかったか?」
それとも、『全て終えたら』と言った手前、試験に合格しただけで戻ってくるのが躊躇われた――とか。
そんな風に思っていた俺に、意外な答えが返ってきた。
「いや、そうではない。試験のあと友人の家を訪ねてから斡旋所を探したものだから、1ヶ月ほど遅れを取った」
――友人。コイツに?それも、1ヶ月もそいつの家に?
「…まあ、遅れを取ったとは言ってもほとんど修業のようなものだったのだが。」
「いや、ていうか…ダチ、出来たのか、おまえ」
きょとんとして振り向いた俺に、やや不思議そうな顔をして答える。
「まあな。2人は合格して、1人は――不合格だったが、次は受かるだろう。訪ねたのはその友人の家だ」
これはきっと、喜ぶべきことなのだと思った。
試験を受けるまでは友人といえるような関係の人間の話など聞いたこともない。いるはずもなかった。
だが、それよりも。契約ハンターとしての仕事を探すよりも友人の家を訪ねることを優先するような奴だったろうか。
「お前、ちょっと変わったな」
俺の知らないクラピカがそこにいるような気がして、少しだけ、心に影が差した。
ひとりの時よりも品数を増やした夕飯を済ませ、順番に風呂に入る。
風呂だけは、クラピカがいるいないに関係なく、毎日新しい湯を張ってのんびりと浸かるのが常だった。
ルクソ地方は湯船に浸かる習慣がほとんどないらしい。
コイツも最初は俺が出身地からわざわざ取り寄せた大量の入浴剤を見て不思議がっていたが、寒い季節などは割と長く入るようになっていた。
だが、それでも入浴時間は俺の方が長い。焦って入るのがいやだったから、クラピカが先に入るように取り決めた。
そのルールは当然まだ効力を有している。俺は風呂が空くまでの間、茶の間で煙草を吹かしながらハンター協会から送られていた資料を読み耽ることにした。
(キルア=ゾルディック…か。また何とも物騒な友人ができたもんだ。つうか、暗殺一家の屋敷を訪ねたってことか?
それに、ゴン=フリークスってヤツは、どう考えてもあのジンの息子だろう。随分と才能のありそうなお子様たちと仲良くなったんだな。)
主には試験中のクラピカの様子や成績なんかが書き連ねてあるプリントをめくりながら、"3人の友人"の見当をつけていく。
もう1人は…大仰なファミリーネームではあるものの、そこまで特別な血筋を引いているわけでもなさそうだ。成績もそんなに褒められたものじゃない。
だが、クラピカと年も近いし、なかなか男気のありそうなヤツではある。
何より初受験のハンター試験で合格したのなら、それだけの才能は持ち合わせていることになる。
なにか碌でもない感情に侵食されそうになりながら、すっかり短くなってしまった煙草の先を灰皿に押しつける。
と、扉が開き、白い肌を僅かに上気させてクラピカが室内に入ってきた。
髪はまだ濡れており、以前と変わらず白と黒のタンクトップを重ねて着ている。その肩を真っ白のタオルが隠すように覆っていた。
「すまない、少し長風呂をしてしまったようだ。待たせたな」
その言葉に時計を見やると、確かにコイツにしては長いこと浸かっていたらしい。と同時に、いかに自分が資料に没頭していたかに気付かされる。
「いや、構わねぇよ。それじゃ、俺も行ってくるか」
資料を片手に、扉の脇に立つクラピカとすれ違うようにして部屋を出る。自分も毎日使っているシャンプーなのに、どうしてアイツから香るとこうも鼻をくすぐられるような感覚になるのだろう。
…数ヶ月前にはこんな感覚はなかったはずだ。
浴室に向かいながら、俺は自分の中に芽生えた感情の正体に気付き始めていた。
のぼせてしまいそうだった。
湯の温度も、浸かっている時間も、今までと何も変わりはしないのに。
自分で選んだ入浴剤の香りが今日はなぜか少しだけ甘く感じられる。乳白色に濁った湯の色が官能的に映るのは、アイツの浸かったあとだからだろうか。
長風呂をしてしまった、と言ったアイツの顔が不意に脳裏に浮かぶ。見たこともない裸体をその下に想像してしまい、ひとりで気恥ずかしくなる。
一回り以上も年下の弟子にこんな感情を抱くなんて、自分が信じられなくなりそうだった。
だが、こういうのは一度気付いてしまえばそう簡単に滅殺出来る類の感情ではないのだ。
その上これから少なくとも数ヶ月はこのややこしい感情の対象と寝食を共にしなければならない。溜め息が出る。
…せめてアイツが念の基礎を身に付けるまでは正しく師匠として振舞おう。俺は、アイツが此処に居辛くなるような状況を作りだしてはならない。
そう自分に言い聞かせて、ようやく風呂から上がることに決めた。
それからというもの、俺はほんとうによく己を律したと思う。
クラピカが恐ろしいほどに修行に集中していたせいも多分にあるのだが、朝起きて夜眠りに就くまで、俺たちの間に念のこと以外での会話は皆無に等しかった。
息が詰まりそうで仕方のないときは、俺から愚にもつかないような話題を振ってみたりはしたものの、そこから会話が広がることは勿論ない。
しかし、その盲目的ともいえる鍛錬のおかげでヤツはあっという間に裏試験をクリアした。協会に報告がてら、他の合格者たちの近況を尋ねる。
特に、あの3人。ゾルディックの息子は不合格だったから個別に師範代はついていないが、どうやらジンの息子と一緒に修行をしているらしい。レオリオとかいうガキは、念ではなく医大受験のための勉強に勤しんでいるらしかった。
「おまえ、ダチと連絡は取ってんのか」
夕飯のあと、久しぶりにゆっくりと茶を淹れながら話を振ってみた。
卓袱台を挟んで向かいに座るクラピカが湯呑を持ったままこちらを見る。
「…ああ、そういえば久しく連絡していないな。」
「さっきハンター協会の事務からちらっと聞いたぜ。おまえが仲良くしてたちっこい子ども2人は、天空闘技場ってところで修行してるらしい。」
敢えてもうひとりの名を出さずに、反応を探る。
クラピカはほんの少し思案するような表情を浮かべたあと、
「そうか。2人とも才能があるから、きっとそれほど苦労はしないだろうな……もうひとりの友人はどうだか分からないが。聞いていないか?」
と問うてきた。
――念の会得に一所懸命だったとはいえ、ここ数ヶ月俺の話にはろくに付き合わなかったくせに、久しぶりに聞くことがそれか。
自分で誘導するような話の振り方をしておきながら、俺はだんだんと腹が立ってきた。
「…知らねーな。気になるなら自分で連絡してみたらどうだ」
分かっている。これは俺の勝手な言い分で、コイツは悪くない。
それなのに、つい投げやりな口調になってしまう。言ってしまったあと、バツの悪さを誤魔化すように茶を喉に流し込む。
「…私は何か気に障ることでも言ったか?何を怒っているんだ?」
普段俺がどれほど突っかかろうがほとんど無視か生返事で終わらせてきたくせに、修業が一段落した今日は応戦してきた。
「うるせェな…別に怒ってなんか、」
「言いたいことがあるのならはっきり言えばどうだ。大体貴様から話を振ってきたくせに、一体なんだと言うのだ?」
こちらが悪いと分かっているだけに、正論で返されると余計に腹が立つ。だが。
「ああ、じゃあ言わせてもらうけどな!この数ヶ月、俺がどれだけおまえの世話に時間割いたか分かってんのか?
日曜も祝日もなく修業に付き合わせやがって。そのくせ師匠を貴様呼ばわりするは、礼のひとつもありゃしねえ。
たまには背中流すぐらいの気遣いでも見せやがれ!」
矢も盾も堪らず、呆気に取られているクラピカに向かってまくし立てる。
別にコイツのために割くのなら時間など惜しくはなかったし、見返りを求めて面倒を見たわけでもないんだが。
ただ、コイツがそれを当然のものとして享受しているのが、まるで俺の胸中を見透かされているように思えて。
俺が怒鳴り終わると、当惑したような表情で視線を泳がせ、押し黙ってしまった。
「…チッ、余計疲れちまったな。今日は先に風呂入らせてもらうぜ。」
そう言って、湯呑みに僅か残っていた茶を飲み干すと、立ち上がって浴室へと向かう。
自らの大人げない態度を後悔するのに時間はかからなかった。
いつもならクラピカが入れる入浴剤の小袋をピリピリと破きながら、ほんの数分前の出来事を反芻する。
…どう考えたって、俺がガキすぎた。
湯船の半分ほどまで満たされた湯に、白い粉末を振り落とす。
そのままゆっくりと底に沈んでゆこうとするのを右腕でかき混ぜると、だんだんと湯は均一に白く染まってゆく。
軽く身体を洗ってから湯船に入り、あぐらをかいて腰を落ち着ける。
――すると。脱衣所の扉がゆっくりと開き、何者かが入ってくる気配を感じた。それが誰なのかは考えるまでもない。
ここには俺とアイツとの2人しかいないのだ。
立ち上がることも出来ず、こちらから声をかけようにも発するべき言葉がすぐには見当たらず、ただ彼我を遮る擦り硝子の向こうでだんだんと近づいてくる影を見つめるしかない。
コンコン、というノックの直後、扉が開いた。
「……師匠」
ほんとうに久しぶりにそう呼ばれた気がする。声の主は、いつもの白と黒のタンクトップに、足元は白のハーフパンツという出で立ちで現れた。
今まで目にしたことのない、申し訳なさそうな顔をして。
「な、なんだよ…いきなり」
動揺しているのが伝わってしまいそうだ。
「…言われて気付いたのだが、確かに私にも反省するべき点があったようだ。すまなかったと思って…
疲れさせてしまったようだから、その、背中を流させてくれないか」
「…はあ?」
予想もしない言葉に、思わず間の抜けた声が出る。何を言っているんだ、コイツは?
そしてすぐに、俺が先刻怒鳴り散らしたときに漏れたほんの少しの本音が原因だと気付いた。瓢箪からでた駒。
さっきまではあまりのガキくささに嫌気がさしていたのに、数分前の自分に感謝する。
まさかコイツがこれほどしおらしくなるなど、誰が予想できただろうか。
「おーおー、やっと分かったみてェだな。んじゃ、早速お願いするとしようか?」
ああ、男ってのは単純な生き物だ。後悔も嫉妬も忘れて心が浮つき、唇の端がゆるむ。
湯船の縁に手をかけて勢いよく立ちあがると、クラピカが一瞬目を見張り、視線を左右に泳がせた。
まだ別に見られて困る状態でもない。気にせずバススツールを適当な位置に動かし、どっかと腰かける。
一応、今後の自分のためにも下半身はタオルで隠しておくことにする。
「頼むぜ」
「あ、ああ」
そう言って、壁に据え付けられたハンガーフックからバスリリーを取ると、俺の背後で膝立ちになる。
俺の前方の壁には曇り止めを施した大き目の鏡が備わっており、コイツの少し緊張したような表情は鏡越しに確認出来た。
いつも強気で俺の顔色など窺うこともなかった弟子が、今は俺の機嫌を直すべく素直に従っている――
客観的に見れば当然ともいえるこの状況だが、俺は悲しいかな喜びを隠せない。
「力の加減が必要ならば言ってくれ」
ボディソープをたっぷりと泡立てたバスリリーが背中を上下に滑る。
「いや、ちょうどいいぜ」
他人に身体を洗ってもらうなど、一体いつぶりだろうか。丁寧に面をなぞるような動きが心地いい。
肘から下の腕を太腿に預け、前傾姿勢で目を閉じてこの僥倖を味わう。
と、規則正しく動いていた手が止まり、またしても思いの寄らない言葉をかけられた。
「私は、おま……師匠に甘えすぎていたようだな。言われるまでそれに気付かないとは、少々思いあがっていたかもしれない。
すまなかった」
「ん?ああ、もういいってことよ。俺もさっきは言いすぎたしな、気にすんな」
目を開けて少し顔を上げると、鏡の中でクラピカと目が合った。
「…ありがとう」
鏡の中で目を合わせたまま、まだ少しだけ申し訳なさそうに微笑んだ。
その表情に、俺の理性は吹き飛んでしまったらしい。
上半身を後ろに向けると同時にクラピカの右手首を掴み、グイ、と自分の方に引き寄せる。
そうして、何が起きているのか分からないと言った顔をしているコイツの唇に自分のそれを強く押し付ける。
想像していたよりも柔らかい。頭を後ろに引いて逃れようとするのを、空いている方の手で押さえつけ、舌を侵入させた。
「ん!んん…っ」
コイツの方も空いている手で俺の胸を押し退けようと抵抗してくるが、構わず舌を絡め取り、激しく吸うように唇の感触を愉しむ。
「んぅ…ふ…うんっ」
僅かに漏れる苦しそうな吐息が、下半身に熱を集める。
重ねる角度や舌の動きを変えながら口腔を蹂躙し続けると、抵抗する腕の力も弱まってくる。
唾液の糸を引きつつ唇を離すと、呼吸を荒くして潤んだ目で睨みつけてきた。
「き…さまっ、いきなり何をするんだ!」
「なんだよ、結局またキサマ呼ばわりか?」
「私の質問に答えろ!なぜこんなことをする!」
どうしたって俺はコイツを怒らせてしまうらしい。いや、当然といえば当然なんだが。
「いや、おまえが珍しくカワイイこと言うもんだから」
言いながら再び掴んだ腕を引き寄せようと力を込める。
「! やめ…っ」
また同じことを強いられると思ったのか、目をギュッと瞑り、唇を引き結んだコイツを、今度は強く抱き締めた。
「え?な、何……」
「ほんとうにいやなら今すぐ止めてやるよ。…他に好きな男でもいるのか?」
例えば、"もうひとりの友人"――とか。
互いに顔が見えない状態でなければ、こんな嫉妬丸出しのセリフは吐けなかったに違いない。
それに返ってくる答え次第では、俺は二度とコイツと顔を合わせられなくなるかもしれなかった。――だが。
「何を言っているんだ?私はレオリオにそんな感情を持ち合わせてなどいない!」
きっぱりとそう言い切った。
そもそも確かな証拠などどこにもなく、試験中の様子を綴った資料から俺が勝手に推量していただけではあった。
しかし、本人の断固とした否定の言葉によって、俺はこの数ヶ月間苛まれてきた嫉妬という感情からようやく解放された。
「そうか…じゃあココで止める理由もねェな?」
「は?」
論理が破綻しきったセリフであることは百も承知で、抱く腕に更に力を込めて身体を密着させる。
クラピカの服越しに柔らかな胸を押しつぶす感触が伝わる。
同じように押し付けられる俺の股間の硬さに気付いたのか、僅かにクラピカの身体が硬直したのが分かった。
「ちょ、ちょっと待て、意味が…」
言い終わるのも待たず、再び唇を捉えて舌で犯し始める。
「んっ…ふ…」
背中に回した左腕の力は緩めずに、右腕を身体に這わせながら腰骨の辺りまで移動させ、タンクトップと肌の間に侵入させる。
「っ!?ん、ふぁ…」
抗議の声でも出したいのだろうが、俺はまだキスを止めたくはない。
ちゅ、と音を立てるように唇を吸いながら、手の方はだんだんと上にのぼらせてゆく。
先程布越しに感じた柔らかさを、今度は素手で受け止める。ぎりぎり手のひらに収まるほどの大きさの乳房を、ゆっくりと揉みしだく。
親指で先端に軽く触れると、身体がビクンと震えた。
少し力を強めて円を描くように捏ねると、小さなそれはすぐに硬くなった。
「なあ、勃ってるぜ」
ようやく唇を離して、耳元で直接的な言葉を囁く。
「ぁ、違…っ」
指の動きは止めない。今にも泣きだしそうな顔で否定し、両腕で俺の腕をどかそうと試みている。
「違う?ああ、こっちはまだかもな」
そう言うやいなや、触れていない方の乳首を左手で摘む。
「あっ…!あ、あ、やめ…」
「なんだ、違わねぇじゃねーか。こっちは触ってないのに勃ってる」
手のひらで柔らかな感触を愉しみつつ、くりくりと転がすように両方の先端を弄ると、また白い身体がビクビクと跳ねる。