「第一試合!404番ヒソカ対、44番クラピカ!」

「相手に参ったと言わせれば勝ち、ね・・・」
ヒソカは愉快そうに口元を歪めた。彼にとっては今からの対戦相手をいたぶり、叩きのめすことは造作もないことだったが、今回のルールはそれで勝つことはできない。この試験にもそろそろ飽きてきたことだし早めに合格しようと考えていたが、誇り高い彼女のことだ、拷問したところでそう簡単に負けを認めさせられるとは思わなかった。
「まあ、楽しませてもらおうじゃないか」
殺さなければ、何でもOKなのだ。ヒソカにはとっておきの切り札があった。




試合が始まった。
「いいよ、抜いて」
「・・・そのつもりだ」
十分に警戒しながらゆっくりと武器を抜くクラピカを眺めながら、手の中のトランプを弄ぶ。あえて余裕たっぷりの態度を示すことで、怯むどころか敵意をむき出しにしてくることは計算済みだ。
「そうそう、そうやってしっかり握っておいたほうがいいよ」
試験管や受験生のほとんどが注目している試合だ。特にゴン、レオリオは固唾をのんで見守っている。
そんな中始まった攻防において、はじめは両者互角のように見えた。だが次第にヒソカにクラピカが押されていくのが分かる。クラピカは息が乱れ、額に汗を浮かべているがヒソカは余裕の笑みを崩さず、遊ぶように次々攻撃を仕掛ける。
(この子は甘すぎる。ボクのように圧倒的に敵わない相手に対しても、無駄な怪我をさせないように気を使っている。しかも、無意識のうちに
・・・そろそろかな)


突然空気の変わったヒソカに異変を感じると同時に、クラピカは腹部に拳を打ち込まれていた。
「かは・・・っ」
横なぎに倒れ、せき込む身体が起き上がろうと腕をつく前に、ヒソカに覆いかぶさられていた。明らかな体格差により、クラピカはほとんど身動きの取れない状態になる。
「クラピカッ!!」
レオリオとゴンが揃って前のめりになり、叫ぶ。キルアは横目で二人の様子を確認し、どちらかが飛び出そうものならすぐさま止められるよう、左足の位置を少しずらして準備した。
(クラピカは何があろうと、こいつらに助けてもらおうだなんて考えは持たないだろう。それこそ怒り狂って、オレに八つ当たりでもされたらたまったもんじゃないしな。ヒソカも、ただ痛めつけるだけならわざわざあんな体制をとる必要はない。何考えてるか分かんないけど、下手なことはしないほうが無難だぜ)


クラピカは、何とか自分の上の男をどかそうと躍起になっていた。先ほどの攻撃で武器は吹っ飛び、完全に丸腰だ。まだ隠し持っているものがいくつかあるが、胸から下が完全にヒソカの下敷きになっているためそれを出すことも敵わない。
「クラピカ」
名前を呼ばれ、渾身の憎しみを込めて睨みながらヒソカの顔を見ると、両手で壊れ物を扱うように優しく頬を包まれる。そのまま耳たぶを触られ、クラピカは顔の血が上るのを感じた。いいようにされる怒りからか、女のようにされる恥辱からか分からない。ただ、周囲にはゴン達を始め試験をともに勝ち進んできた仲間がいるのだ。公衆の面前で自分が今どんな体制を強いられているか、想像したくもないことだけは確かだ。
「んんッ!」
口づけが降ってきた。啄むように何度も唇を吸われた後、長い舌が侵略するように潜り込んでくる。わざと音がするようにナカを嘗め回され、上をくすぐられるようにされると背中が震える。
思わず目をつむってしまい長いまつげを不安げに震わせる姿を間近で観察しながら、ヒソカは意のままにむしゃぶりつき、噛みつきたい衝動を必死に抑えていた。
(やっぱり、道具としての価値も玩具としての価値もありそうだね。たまらないな)
右足を組み敷いた両足の間にもぐりこませ、開かせると膝で敏感な中心を刺激する。
比較的に自由になった両足だが、抵抗する術もなく、ただ与えられるじわじわとした快感から逃れようと伸ばしたり縮めたりするしかできない。逞しい肩を押し返そうとしていた両手はそのうちに力を失い、今は床に置かれている。
レオリオが猛烈に何か叫びながら抗議しているのが聞こえる。ヒソカに成すすべなく蹂躙されているこの姿を奴に見られているというだけでも頭の中が焼き切れそうになった。
首筋を撫でていた手がゆっくりと這ってゆき、青い民族衣装の下に潜りこんだ。
さらしを巻いてもやはり完全には隠しきれない膨らみを上から揉みしだくようにされ、視界が一瞬赤く染まる。
「女だって、気づいていたよ」
囁きながら膝をぐりぐりと押し付ける。
「うあっ」
「そんなかわいい声も出せるんだね。ボク、止まらなくなちゃいそう。参っちゃうなあ」
「この・・・!ッひあ」
胸の突起を探し当てられて弄ばれる。体にどうしても力が入らず、自分の無力さにクラピカは思わず涙が出そうになった。
「泣かないでよ。ちょっとしたお遊びじゃないか」
ヒソカはクラピカの貝殻のような耳に一層口を近づけると、息を吹き込むようにしながら何かを呟いた。
クラピカの目が今度こそ緋の色に完全に染まった。抵抗を止め、動かなくなった身体から「よいしょ」とどくと、ヒソカは自分の服を払い整え、その場を去ろうとする。
試験官は我に返り、その背中を呼び止めようとする。
「ボクの負けでいいよ」



クラピカは一気に自分の身に降りかかった出来事を処理できないようにしばらくそこに横たわっていたが、ゴンに大声で呼びかけられてハッと我に返った。今が最終試験の真っ最中で、ヒソカにいいように弄ばれた上にそれを皆に見られた事実も思い出し、とにかくこのまま無様に倒れているわけにはいかないと身体を起こす。
試験官はクラピカの勝利を宣言した後、何も言わずに明後日の方向を向いていたため、そのままゴン達の元に歩いていく。
「クラピカ、大丈夫!?」
「ヒソカのやつ、絶対許さねえ!」
いきり立つ二人に、笑いかける。
「大丈夫だ。私は無事だよ」
「まったく、こいつら二人怒り爆発って感じでさあ。マジ止めるの大変だったんだぜ」
「すまなかったな、キルア」
「・・・別に」
ちょっと、想像しちゃったしね。
例えばゴンとレオリオが寝静まった後。クラピカの部屋に忍び込む。俺が気配を消せばクラピカは気づかいはずだから、さっきヒソカがやった体勢に持ち込む。
・・・そしたらこの身体、好き勝手にできんじゃ・・・
キルアは、まだ収まり切らないレオリオを宥めているクラピカの横顔を眺めながら、内心溜息をついた。
無防備すぎて、逆にできねーよ。マジで簡単にできそうだし。それでもなんだかんだ許してくれそうなのが余計怖えー。
おわり