ゴンは何かの物音で目を覚ました。
起き上がって回りを見渡してみると、足元にキルアが転がっているのが見えた。
さっきまで2人でおしゃべりをしていたはずなのだが、いつの間にか眠ってしまったようだ。
もう一度暗い部屋に視線を巡らせてよく耳をすませてみると、物音だと思ったそれは人の声だった。
うめき声のようにも聞こえるその声は、隣の部屋から断続的に漏れている。
さらによく聞けば、高めのその声に加えて低めの声も混じっているのがわかった。
会話では、ない。
少なくとも、高めに発せられる声の方は意味を成していないようだ。
低い声もボソボソとしていて聞き取りにくい。
「…クラピカ?」
何となく声の見当がつき、寝ぼけ眼をこすりながらベッドを抜け出す。
「……ってぇなぁ…」
はずみで蹴飛ばされたキルアが非難の声のようなものを発した。
「ごめんキルア」
「んー…」
そのまま歩いて声のする部屋に近寄ってみる。
そして、うっすらと開いたドアから中の光景を除き見るやいなや、ゴンは仰天した。
「!!」
ゴンのいる部屋より幾分か明るいその部屋には、レオリオとクラピカがいた。
この2人が一緒にいること自体は何の不思議はないが、ただ一つ違っていたのは。
…2人が裸である、ということだった。


いつもは無用なほど厚着なクラピカが、惜しげもなく裸体を晒していた。
乱れて顔にかかる髪、潤んだ瞳、…艶やかに濡れる唇は絶えず熱い吐息を漏らしている。
レオリオの手に収まるサイズの乳房は、頂に小さなピンク色の突起をたたえている。
その突起はレオリオの指や唇が触れる度に、痛いほど尖って震えた。
同時に声が1オクターブ程上ずり、眉は苦し気に寄せられる。
しかしそれが苦痛によるものではないのは、レオリオの頭を抱えるように回された腕の様子で分かる。
紅潮した肌にはうっすらと汗が滲み、へその辺りの曲線と腰のラインは何とも美しかった。
「…………」
レオリオがクラピカの耳元で何かを囁く。
クラピカは嫌々をするように頭を振ってそれに答えた。
「……×××?」
レオリオは、ゴンの知らない卑猥な言葉を低い声で聞かせる。
「…んぁ…っ、ふぅっ…」
その度にクラピカの喘ぎは激しさを増した。

見てはいけない、理性ではそう分かっていた。
しかし、全てがゴンの知らない美しさであり、その存在自体に目を奪われずにはいられない。
2つの感情に挟まれ、ゴンは動く事が出来なかった。


レオリオはクラピカの身体をくまなく愛撫した。
手のひらは腹の辺りから徐々に下へ下へと移動し、太ももを撫でている。
首筋に顔をうずめてきつく吸うと、その白い肌に赤い花が散った。
クラピカは微かな痛みを感じ、軽く身をよじらせる。
その隙に手は少しずつ足を割って入り、内側を丹念にさすっていた。
…と、突然、秘められた茂みの中へと指が侵入した。
「あ…ッ!」
それまでクラピカの視線は行き場なくさまよっていたが、その刺激に思わず目をつむり、短い悲鳴をあげた。
そんな様子を見ながらレオリオは、触れるか触れないかの軽さで指先を滑らせる。
刷くようなタッチの後でたどり着いたのは、密やかな花芯だった。
「あ、ん…ぁっ」
軽く指で弾くだけでクラピカの身体が跳ねる。
「ん……やっ…!…ふぁ…あ、あ……」
転がされ、時折摘まれ、弄ばれる。
全身の中でもとりわけ弱い部分を執拗にまさぐられて、クラピカは自分を保つ為にシーツを握り締めた。
「う……くぅ…っ」
苦しげな声をあげ、目をぎゅっと閉じて仰け反った。
身体に力が入っている。
レオリオはクラピカのそんな様子に違和感を感じ、動きを止めて見下ろして言った。
「お前…声、我慢してるだろ」
「…………」
荒げた息を整えながら見上げる濡れた大きな瞳は、余計に情欲を煽る。
「隣に、聞こえる…ゴン達……」

ゴンはその言葉を聞いて心臓が飛び上がらんばかりに驚いた。
まさか本当に覗かれているとは2人も思うまい。
この扉の向こうで行われている行為が、2人の秘め事であるということを突きつけられたようで
ゴンの胸は罪悪感でいっぱいになった。
だがその感情とは裏腹に、だんだんと奇妙な感覚が支配していくのがわかった。


ゴンはほとんど性の知識を持っていない。
漠然とした行為の意味は理解していたが、それ以上のことを教えてくれる人はいなかった。
女性の身体なんて、幼い頃にミトと一緒に風呂に入った時のことぐらいしか覚えがない。
しかし、目の前のクラピカの身体は、おぼろげな記憶のミトのそれとは違っていた。
まだ大人に成りきれていない部分も残しつつ、程よくついたしなやかな筋肉。
普段から陽の光に晒されない白い肌は、ゴンの知らないクラピカの女性性を示していた。
そして、今クラピカに向き合っているレオリオも、見知らぬ男性のようにゴンの目には映ってしまう。
ベッドの上の2人はいつもの「ゴンと仲の良い友達」、そんなものではなかった。

2人はそんなゴンの胸中も知らず。

「大丈夫だって。お子様は爆睡中だから起きやしないぜ」
「それはそうかもしれないが…」
「いいじゃねぇか。っていうかオレが聞きたいんだよ」
そう言うとレオリオは俄かにクラピカに覆い被さり、唇を塞いだ。
クラピカはそれを受け入れ、レオリオの首に両腕を回した。
歯列をなぞられてゾクゾクとした感覚が走る。舌同士が絡み合う。
しばらくの間、そうして2人はお互いを貪り合った。
「……何だよ。積極的だな」
唇を少し離して、そのまま至近距離でレオリオが呟く。
クラピカは羞恥に頬を染め、目を伏せた。
レオリオは口の端でちょっと笑みを浮かべると耳元に顔を寄せ、低く囁く。
「イかせてやろうか?」
レオリオは自分の右手の中指をペロリと舐め、クラピカの秘密の入口に触れさせた。


「っ!!」
クラピカは抵抗しようとしたが、濡れたそこは簡単に指の侵入を許してしまう。
「んぅ…っ」
指は難なく収まった。
軽く抜き差しをし、人差し指とも絡めて中をかき回すように動かす。
「ぁ…っ、あ、…ふぁ……」
くちゅ…くちゅ…
わざと音を立てるように愛撫すると、そのいやらしさにクラピカは耳まで真っ赤に染まった。
「…あ、あん……やぁ…あ、あ、…」
慣れた動きで刺激を与え続けると、クラピカの声が次第に上ずっていく。
指を入れたまま、手のひらを使って全体に触れる。
さっき散々嬲られたばかりの秘芯が痛いほどの快感を運んできて、クラピカの目の端に涙が滲む。
「あ、ん……―――ぁっっ!!」
全身に力が入って大きく痙攣したかと思うと、そのままベッドに崩れ落ちた。

「はぁ……はぁ…」
絶頂を迎えた直後でぐったりと力なく沈みながら、クラピカは息を整えている。
汗で額に貼り付いた前髪を重く感じる両手で整えながら、ちらりとレオリオを見上げた。
「いっちょ上がり?」
アハハと笑うレオリオを睨みつける。
クラピカはずりずりとまだ力の入らない身体を起こして、レオリオと向かい合わせに座った。
そして、相手の肩に両手を乗せてぐいと引き寄せると、ちゅ、と軽く口付けた。
「…次は私の番だ」
そう言うと乱れた髪を一回かきあげ、レオリオの股間に顔を寄せた。


その様子を見てゴンは仰天した。
そのような行為があることも知らなかったし、まさかよりにもよってクラピカが…。
そして何より、レオリオの股間にそそりたつモノの存在に。
自分のとは比べ物にならない。
(キルアはオレと似たような感じだったけど…)
(お、大人になったらああいう風になるのかな?)
ゴンには知らない生き物のように見えた。

クラピカは屹立を口に含んだ。
下を向いたクラピカの顔はゴンの位置からはよく見えず、金髪がちらちらと揺れている様子しか窺えない。
しかし、ぴちゃぴちゃという濡れた音がその行為を物語る。
レオリオは眉を寄せ、たまに小さくうめき声をあげた。
その手はクラピカの髪を絶えず梳いている。
ぴちゃ…ぴちゃ……
静かな部屋に卑猥な音が響く。

「…?」
ゴンは下腹部に軽い痛みに似たものを感じた。
(…何だろ。ヘンな感じ……)
身体の奥がむずむずと落ち着かない。
服の裾を握り締めてじわじわと寄せるその感覚に耐える。

「もういいぜ」
レオリオはクラピカの身を起こさせる。


レオリオはクラピカを座りなおさせると、自分はベッドに横たわった。
「はい」
「…『はい』…って?」
戸惑うクラピカに向かっておいでおいでをしながら、さも当然のように言った。
「上からこいよ」
「え……い…いやだっ」
「何今さら恥ずかしがってんだよ。たまにはいいだろ?」
クラピカは俯きながら、レオリオの腰の辺りをまたいで膝立ちになった。
レオリオの胸に手を置き、そのままゆっくりと腰を沈めてゆく。
「……っ」
先端が入口に触れた時に一瞬動きが止まったが、またすぐに挿入を始めた。
「ん……ぅ…っ」
クラピカは、自分自身が押し広げられる異物感に眉を寄せる。
が、すぐに恍惚の喘ぎを漏らして自らその先を求めた。
十分に濡れたそこは、ズプズプとペニスを呑みこんでいった。

屹立が全て収まり、クラピカは荒い息を吐きながら細かく震えている。
俯いた顔に髪が乱れてかかり、目はぎゅっと閉じられて睫毛に涙が光っている。
「よくできました」
その言葉にクラピカが薄く目を開く。
瞳は綺麗な緋色に染まっていた。
「…それじゃ、自分で動いてみな」
クラピカはまた目を伏せると、少しだけ腰を浮かせて動き始めた。


「あ……、あぁ…ん…ふぅ……あ、あ」
クラピカは小さく声をあげながら、腰を前後にこすりつけるように動かす。
その動きと共に、繋がった部分からぐちゅぐちゅと淫らな音が漏れる。
「いい眺めだな」
レオリオがからかうように言うと、クラピカはとろんとした視線を向けた。
「…う…るさ……あんっ!」
両の乳房を掴まれてクラピカは短い悲鳴をあげた。
先端を弾くように触れられると、ぴくんと大きく反応を返す。

ゴンはその場にへたりこんでしまった。
(頭がくらくらする…)
目をつぶって見ないようにしても、甘い喘ぎ声と結合部の濡れた音は聞こえてくる。
そうして声と音が聞こえると、嫌でもさっきの光景が蘇ってくる。
(あんなレオリオとクラピカ、見たくない…!)
見たくないと思っても、脳裏にこびりついたシーンは離れない。
クラピカの身体を弄ぶレオリオ、レオリオの上でよがるクラピカ。
ゴンは自分を抱きしめるようにうずくまった。


レオリオは繋がったまま上半身を起こした。
クラピカが腕を絡ませて唇を求めてくる。
「ん……」
激しい口付けの後、軽く位置をずらすと、クラピカはレオリオの腕の中にすっぽり収まった。
レオリオは、肩に頭を乗せてしがみついてくるクラピカの背中を撫でる。
「いつもより深く入るだろ?」
それに言葉では答えなかったが、より強くしがみつくことで肯定した。
そんなクラピカをちらりと見やり、腰を抱えて軽く動かす。
「あっ…あっ……」
耳の近くで熱っぽく喘がれ、レオリオはより強くその身体を抱いた。
「この前のあれも良かったけど、今日のクラピカも可愛いぜ」
「…あ、……この、前…?」
疑問の声を投げかけるクラピカに意地悪っぽく告げる。
「受付嬢のやつ」
その言葉にクラピカは大げさなほど反応した。
「あっ…あれはもうイヤだ…!」
離れようとするクラピカを腕の力でもう一度抱きすくめる。
「何だよ。かわいかったのに」
不満そうなレオリオに、クラピカは低く呟いた。
「……変態め…」
「どこが変態?」
「…人を何だと思ってるんだ」
「楽しかっただろ?イメクラみたいで」
「それが変態だと言うん……あっ!」
クラピカのセリフを遮るように、中心を深く突き入れた。
その後の会話は成立していなかった。
断続的な甘い喘ぎで薄暗い部屋が満たされる。


(そういえば……)
その会話を聞きながら、ゴンは先日のことを思い出していた。
ある朝、クラピカがビリビリになったストッキングを捨てていたのだ。
『あれ、どうしたのそれ』
『…あ、いや…何でもない』
妙に慌てた様子が気になったのだが。
…………たぶん、そういうことなのだろう。
(オレ、ヘンだ…)
腹の辺りが疼く。身体の中心に何もかもが集まってくる感じがする。
「……ぅ…」
その部分を押さえて、ゴンはさらにうずくまって押し寄せる波に耐えた。
心臓がドキドキしている。血液が体中を激しく駆け巡るのを感じる。
どうしたらいいのかわからずに、ゴンはひたすら耐えた。

部屋の中から絶えず聞こえてくる喘ぎ声と、たまにまじる卑猥な会話と。
ゴンはそこから動くこともできずに、自分を襲う奇妙な衝動を感じ続けていた。