『夜9時にいつもの路地裏で』

呼び出しのメールを受けて、クラピカは指定の場所に赴いた。
約束の時間よりやや早く着いたが、暫くして待ち合わせの相手が現れる。
軽くセットされた赤っぽい茶髪に冷酷そうなアイスブルーの瞳の奇術師。
いつもと違って見えるのは服装と髪型のせいだろう。
よく見かけた奇抜な格好ではなく、カッターシャツにスラックスという普通の格好だった。
「やぁ◆キミはいつも早いね」
ヒソカは薄笑いを浮かべてクラピカの傍へとやってきた。
「約束に間に合わせるのは当然だろう」
「ふふ…エライエライ」
ヒソカがクラピカの頭をやんわりと撫でる。
「私は子供ではない…」
頭を撫でられて少し困惑したクラピカが呟いた。
その様子を見てクラピカの背後の壁に手を付きながら、ヒソカはクラピカの耳元で囁く。
「そうだね、キミは子供じゃなかったね◆」
「…っ」
ヒソカの吐息が耳にかかり、クラピカは思わず息を詰めた。
ゆっくりと壁伝いに右手を下ろし、クラピカの尻を撫でまわすヒソカを見据えてクラピカが口を開く。
「ヒソカ…用件は何だ」
ふとヒソカの手の動きが止まり、少し考える素振りを見せたかと思うと、とんでもない事を口走った。

「キミとしたかったから」
「…!!じょ…冗談じゃない!」
慌てて通りへと向かおうとするクラピカの手首を掴み、引き寄せる。
見ると、クラピカの顔は真っ赤になっていた。
「…ボクとしちゃうとヤミツキになっちゃうから怖い?」
「ちが……んんっ…」
ヒソカは自らの唇でクラピカの言葉を遮った。
舌を捩じ込まれ、口腔内を弄られて、身体中の力が抜けそうなのをクラピカは必死に堪える。
隅々を探るようにクラピカの柔らかい唇を堪能して、ヒソカはゆっくり唇を離した。
「…あ…」
痺れにも似た感覚にクラピカは甘く息を吐いた。
忘れていたはずの快感が甦る。
―――前にも、この男から快楽を与えられた。
ついこの間のことだったような気もするが、仕事に差し障らないよう忘れ去っていた筈だった。
それなのに。
キス一つで記憶が呼び覚まされ、身体が火照り始めていた。
「だ…ダメだっ…!」
ヒソカの胸板を押し返し、クラピカはふるふると首を振った。
「…どうして?」
追い討ちをかけるようにヒソカはクラピカに詰め寄り、耳を甘噛みする。

「っ…!……溺れて…しまいそうだから……」
「…ねぇ、溺れてよ◆」
「…ダメだ…私は……」
「ボクはとっくにキミに溺れているのに」
「でも…あぁっ!」
ヒソカがクラピカの秘所を布越しに撫で上げると、クラピカは小さく悲鳴をあげた。
クラピカの拒絶が次第になくなっていくのを感じたヒソカは、クラピカのズボンの中に手を差入れ、下の方へと伸ばしていく。
下着の上から秘所に触れると僅かに湿り気を感じた。
「気持ちいいんだね◆濡れてきてるよ」
「ヒ…ソカ…っ」
恥ずかしさのあまり、クラピカはヒソカを睨み付けた。
「私は仕事が……」
「今は仕事のことは忘れて。ボクのコトだけ考えてくれたらいい…」
ヒソカはそう言いながらも愛撫を続ける。
「でも…こんな所で…っ」
「こんな所だから燃えちゃうかもね◆」
「ばっ…!」
クラピカは呆れた。
路地裏の一角でコトに及ぼうとしているヒソカにも、それに流されようとしているクラピカ自身にも。
軽く溜め息をついたクラピカに、ヒソカが視線を落とす。
「どうかした?」
「…何でもない」
「そう」
ヒソカは急にしゃがみこみ、クラピカのズボンを引き下ろした。
突然のことに驚いたクラピカは、ヒソカの手を掴んだ。
「何を…っ!」

ヒソカは指を滑らせて、クラピカの秘部を下着越しになぞる。
「だって、ホラここ…こんなになっちゃって。ボクがキレイにしてあげるから」
「…っ…いらん世話だっ」
少し声を荒げてクラピカが抗議する。
「あんまり声を出すと誰かに見つかっちゃうかもしれないよ◆」
「……ッ」
クラピカが大人しくなったのを見て、ヒソカは下着に手をかけた。
ゆるゆると下着が下げられていき、クラピカの秘部が露になる。
淡く細い金の茂みは産毛のような繊細さでクラピカを守っていた。
クラピカの秘部からは粘液が溢れだし、今にも滴り落ちそうに潤っている。

夜の冷たい空気に素肌が触れ、クラピカは身震いをした。
「寒い?」
滑らかなクラピカの下腹部に掌をあて、ヒソカが見上げる。
さほど体温の高くないであろう掌でも温かく感じられた。
「…大丈夫だ」
この男が気遣いをしたことなどあっただろうか。
そんなことに考えを巡らせていると、生温かい感触が肌を蠢いた。
「ん……」
ヒソカの舌が臍のあたりからゆっくりと下方へ伝っていき、軌道を示す唾液が周りの空気を一層冷たく感じさせる。
脚の付け根から徐々に中心へとソレは繋がっていき、最終的にクラピカの秘所へと辿りつく。
「ふぁっ…!」
「ふふ…溢れそうなくらいトロトロだね」

舌先で突つきながらヒソカはクラピカの表情を見た。
既にクラピカの抵抗は皆無に等しく、それどころか、快楽の渦に飲み込まれようとしていた。
ヒソカが舌に絡みつく粘液を味わう姿を見て、クラピカは昂ぶりを感じた。
「あっ…ぅあ……ッ」
「あぁ、どれだけキレイにしてもキリがないね。全くはしたない子だなぁ◆」
際限なく湧いてくる蜜を、ヒソカは指で掬い取る。
「…あ…あぁ…違う……私はそんな…」

クラピカの潤んだ視線が泳いだ。
乱れていく自分を否定したくて、ヒソカを直視出来ない。
「キミがこんなに淫乱だったなんてね。…ボクとのコト思い出していたのかな?」
そう言いつつ、ヒソカは、また流れ落ちそうなクラピカの蜜を掬い、自らの舌へと絡ませる。
ぴちゃ…と湿った音がクラピカの耳にはやけに大きく聞こえた。
「んっ…そんなこと…な……ぁっ!」
クラピカの否定が途切れ、代わりに甲高い悲鳴が響く。
ヒソカの指先が膣内に潜り込み、クラピカの熱を持った部分を擦りあげると、
クラピカは身体が待ち焦がれていた刺激に力が抜けそうになり、膝がガクガクと震えた。
「あっ?!あぁっ……んぁっ…!」
「すごい反応だね◆今すぐボクのを射れてあげたいけど、ガマン…ガマン…」
指の抜き差しを繰り返しながら、ヒソカはクラピカの表情を眺める。
いつものクールな態度からは想像もつかないようなクラピカの艶かしい姿に、ヒソカは欲情した。
「…あぅっ…んん…くっ……」
ヒソカの指の動きに合わせてクラピカの薄く開かれた口から控えめな喘ぎ声がこぼれる。
速かったり遅かったりと不規則な動きに、クラピカは翻弄されていた。
「んんっ!」
びくん、とクラピカの内腿が震える。
ヒソカが親指で陰核を擦ると、その度にクラピカの身体が大きく揺れた。
「はっ…あ…ぁ……あぅっ!」
クラピカは身体の内から外から刺激を与えられ、止めど無く嬌声を上げている。

抑えきれない欲に支配された身体を、ヒソカは断続的に責め立てていった。
「…あぁ…本当に美味しそうだ…◆」
クラピカの体内に挿し込んでいる指を伝って蜜が流れてくる。
秘部からはチュクチュクと濡れた淫猥な音が響く。
「あっ……ヒソ…カ……ぅんっ…」
クラピカの鼻にかかった甘い声がヒソカの名を呼んだ。
「…ん?」
「わ…私は…もう……」
上気した頬に潤んだ瞳で、クラピカはヒソカに懇願した。
「…イきたいの?」
ヒソカの問いにクラピカは無言でコクンと頷く。
「イイよ◆イっちゃっても」
そう言って、更にヒソカは指を小刻みに動かす。
ヒソカの親指で押さえ付けられた陰核に伝わる震動も、クラピカを昂ぶらせていく刺激となった。
「あっあぁ…んくっ……は…あぁ―――…ぁっ!」
一瞬、クラピカの膣内が収縮しヒソカの指を強く締め付けたかと思うと、身体全体から力が抜けたかのように、
クラピカは背中の壁にもたれ掛かった。
ヒソカは、クラピカの膣から指を引き抜き、指に絡みつく液体をクラピカの太腿に擦り付ける。
「可愛いなぁ…そんなカオされたら、ボクもガマンの限界だよ」
「…あ…」
クラピカは肩で息をしながら、空ろな眼差しでぼんやりとヒソカを見た。

ヒソカはクラピカのズボンと下着から彼女の片足を開放させる。
達した直後で思考回路の働かないクラピカは、ヒソカのなすがままだった。
スラックスのジッパーを下ろし熱くそそり立った自らを取り出すと、ヒソカはクラピカを支えつつ立ちあがり、
彼女の片足を抱えて背後の壁に手を付いた。
「ん、充分濡れたね。ボクもこれ以上ガマン出来そうにないから挿れちゃうよ◆」
張詰めた自らをクラピカに宛がう。
―――ズッ…ヌプププ…
ヒソカの先端が入口に沈んだ後、湿った音を立ててゆっくりとヒソカ自身がクラピカの中へと埋もれていった。
「ひっ…あぁあ……っ!…や…あっ…!!」
先程の余韻にまだ浸っている身体が、新たな刺激にうち震えた。
震える肢体の内を進みながら、ヒソカは舌なめずりをする。
「スゴイなぁ…そんなに締め付けないでよ」
締め付けてくる膣襞の隙間をを少しずつ突き進んで、また後退する。
動く度にクラピカの口から喘ぎ声が漏れる。
「あっ…あ……ダメ…また感じて…」
「またイっちゃいそう?」
ヒソカはそう返すと、動きをピタリと止めた。
「……え…?」
突然停止した動きに、クラピカは驚いてヒソカを見上げる。
「ダ・メ◆イかせてあげない」
見上げられた本人は意地悪そうに口の端を更に吊り上げて、面白そうにクラピカを見た。
「あ…そんな……」
狼狽するクラピカにヒソカは耳打ちをする。
「じゃあ、お願いしてごらん?言えるでしょ、子供じゃないんだから」

耳許に近づいたついでにクラピカの耳に舌先で触れる。
「んんっ…ふぁっ…」
「…言えないのかな?」
「…あ…あぁ……」
恥ずかしさの余りに目を伏せる。
しかし、羞恥を感じるよりも先に身体が快楽を求めているクラピカは、意を決したように口を開いた。
「…ヒソカ…イかせて欲しい…」
「お願いなんだから『イかせて下さい』でしょ」
「イ…イかせて…下さい……」
クラピカがやっとの思いで言葉を紡ぎ終えると、ヒソカは少しずつ腰を引きながら動き始める。
「うん、良く出来ました◆」
自らをギリギリまで引き抜いて、一気にクラピカの内へと打ち込む。
「あぁっ!あっ!!あぅっ…」
激しく揺さぶられ、膣内をヒソカに擦られる度にクラピカは声をあげた。
「おいおい…そんなに声出しちゃ見られちゃうよ?」
「だって…我慢でき…な…あぁっ!!」
「それじゃあ、キミの恥ずかしい姿を皆に見てもらおうか?」
ヒソカがそう言うとクラピカの身体が激しく反応し、ビクンと揺れた。
途端に、クラピカの耳に先程まで届いてなかった通りからのざわめきが聞こえ出す。
車が通り過ぎていく音、クラクションの音、人々の雑踏。
多少離れているとは言っても、クラピカを煽るには十分過ぎるほどの距離の音だった。
「い…いやだ……そんなの…っ」

「ゴン達もキミのこんな姿知らないんでしょ?いつもマジメで冷静なキミが実はとっても淫乱だってコト◆」
「あ…私は…っ……」
熱を帯びた視線がふと、さまよう。
自分の恥ずかしい姿を晒されてしまったら。
ゴン達に知られてしまったら。
クラピカは想像しただけだというのに、身体を熱くさせてしまっていた。
「ふふ…なんだかキツくなった気がするけど…?」
細めた目をクラピカに向けながら、更に突き上げる。
「はぅっ…んっ!んんっ!!」
先程からクラピカの聴覚が過敏に周りの音に反応していることを、ヒソカは感じ取っていた。
クラピカは声を必死に抑えようとしているのだろう、色が変わりそうなほどに唇を噛み締めている。
「そんなに唇噛んじゃ傷がついちゃうよ◆声抑えるなら手伝ってあげるから」
ヒソカはクラピカのきつく閉じられた唇に指先で触れる。
数回撫でてやると色づいた唇に隙間ができ、熱い吐息が漏れてきた。
すかさずヒソカは強引に唇を重ね、舌を捩じ込む。
「ん…んぅっ!」
深く口付けされ、クラピカの声は勢いを落とす。
「ふぅっ……うぅん…んん…」
口腔内を蠢くヒソカの舌がクラピカの舌に絡みつくように激しく動き回る。
弄られて溜まっていく唾液を飲み込めずに、クラピカは唇の端からこぼした。
クラピカの口腔を犯している最中も、ヒソカは止めることなく彼女を突き上げていた。
(…そろそろかな…)
締め付けられる内部の摩擦と扇情的なクラピカの様子に、ヒソカは高まりを感じ始めていた。

自らを高めつつ、相手も追い詰めていく。
相手は自分の為すがままだ。
思うように進んでいく状況にヒソカは酔いそうだった。
(堪らないねぇ…◆)
クラピカの舌を絡めとりながらヒソカの口の端がつりあがる。
「ふっ……んん…ぅん…っ」
苦しそうに少し眉を顰めてクラピカが細い呼吸を繰り返す。
周りにバレやしないかと意識しだしてから、クラピカは大人しくヒソカにしがみ付き、
寄せられた唇に声を抑えてもらいながら、行為を続けていた。
相変わらず、クラピカの耳には周囲の音が聞こえている。
「んんっ…ふ……」
下から突き上げてくる圧迫感が、クラピカをどんどん高まりへと追いやっていく。
すると、不意に唇が開放され、クラピカは思いきり空気を吸い込み咳き込んだ。
「…っ!ゴホッ…」
「おやおや、大丈夫かい?ゆっくり息しなよ◆」
お前のせいだろう、と言ってやりたかったが彼の言葉通りに少しずつ呼吸を整える。
「いや、なんだか苦しそうだったからね◆離してあげた方がいいかなって思って」
突然の開放はヒソカの親切心からだったらしい。
「……」
「ボクもそろそろイけそうなんだけど」

「………」
「まだ、口塞いであげた方がいいかな?」
「…このままでいい」
クラピカは小声で答えると、与えられる衝撃に備えた。
下を向くと深く繋がった箇所から湿った音が聞こえてきて、思わず顔を背ける。
「そっぽ向かないでボクでも見ててよ◆」
クイと顎を動かされて正面に向かい、ヒソカの顔を真正面から見る形となった。
こうしてマジマジと見ていると、改めて端正な顔立ちなのだと思う。
意識なく見惚れていると、ヒソカは薄く笑んだ。
「惚れそう?」
「だ…誰が…!」
条件反射のように否定の言葉が飛び出そうになる。
それを見越したかのようにヒソカはクラピカの返事を軽くあしらった。
「そぉ?ふふ、まあいいか◆…動くよ?」
再びヒソカがクラピカを揺するように動き始める。
「ん…っあ……ぁっ…」
徐々に速くなっていく動きに、クラピカは小さく声を漏らした。
ヒソカの襟首にしがみ付く手に僅かに力がこもる。
身体の内を抉られるような、神経を直接刺激されているような快感に
おかしくなりそうになりながら、クラピカは必死で声を抑えた。
「ヒ…ソカ…っ……あ…」
身体中を支配しようとする快楽にまたも囚われそうなクラピカは、
確認するかのようにヒソカの名を呼んだ。
「ん…もう…少しだよ」
応えたヒソカの息も少しながら上がっていた。
「ヒソ…カ……っ…ヒソカっ…!」

ヒソカは腕の中で自分の名を呼び続ける存在に顔を寄せる。
「…ここに居るよ…?」
思いもよらず優しい声をかけられ、クラピカは切なさを感じた。
胸を締め付けられるような感覚に、思わず涙が溢れてしまう。
「んっ…ヒソカ…ふぁっ…!!」
存在を確かめるように、握り締める指先に更に力が込められる。
それに応じるように、ヒソカはクラピカのうなじにキスを落とした。
「ヒソカ…もぅ……」
消えてしまいそうな懇願の声が聞こえた。
「うん、ボクも…そろそろ限界かな◆」
クラピカを抱き直すと、ヒソカは先程よりもスピードを上げて彼女の最奥を責め立てる。
「あっ…あぁ……ヒソ…カっ!」
達する直前のもどかしさに堪えきれなくなり、クラピカはヒソカを締め付けた。
「あぁ…イクよクラピカ…」
「ア――――――…ッ!!!」
締め付けてくるクラピカに刺激されて、ヒソカ自身も限界を迎える。
数回奥を突き、溜まりに溜まった欲をヒソカは吐き出した。
熱い白濁はクラピカの内を汚し、胎内へと流れ込んでいく。
「あ…あぁ……」
クラピカは胎内の熱い感触に背筋をゾクリと震わせ、うっとりとした息を吐いた。
全てを注ぎ込んで、ヒソカは自らをクラピカから引き抜き、ズボンの中へと収める。
暫くすると、クラピカの内腿を伝って先程放たれた白い欲が流れ落ちてきた。

ふと、クラピカの顔を見ると涙の筋が伺えたので、ヒソカはクラピカを覗きこんだ。
「…泣いていたの?」
「……」
「キツかったかな…?」
「…そうじゃ…ない…」
クラピカの涙の理由の分からないヒソカは少し困惑する。
「?それじゃあ…?」
「…お前が…優しくするから……」
クラピカは耳まで紅くして俯いてしまった。
恐らくコンタクトに覆われている瞳も紅く染まっていることだろう。
想像していなかった彼女の返答にヒソカは目を丸くした。
「…私に優しさは必要ないのだよ…」
俯いたまま、クラピカは小さく呟く。
「……確かに一族の復讐に燃えるキミには必要ないかもしれないね」
そう言いながらヒソカはクラピカの髪を撫でた。
そして、姿勢を屈めて俯いたクラピカの視線上へ無理矢理入る。
「でもね、一人の女の子としてのキミには必要だと思うんだけど◆」
いつもの彼らしからぬことをサラリと言う。
そんなヒソカからクラピカは視線を逸らせずにいた。
「…らしくないコトを言うんだな…」
「そうだね、らしくないかも」
どちらからともなく、くつくつと笑い声が起こる。
「すまない、私もらしくなかった」
クラピカの表情が少しばかり明るくなる。
そして、自分の格好にハッとしたように服装を整えだした。

「…そろそろ戻らないといけない」
携帯の時刻表示では、間もなく日付が変わろうとしていた。
「近くまで送っていこうか?」
「いや、私は一人で戻れるよ」
時間が経つにつれ、普段の気丈なクラピカに戻っていく。
「そう、残念◆また優しさに飢えたら会いにおいで?」
「それなら暫くは会う必要がなさそうだな」
口元に笑みを浮かべ、悪戯っぽくクラピカが言う。
「では、私は戻る。何かあればメールででも連絡を」
ヒソカに背を向けて通りへと歩き出す。
すると、歩みを進めたクラピカの袖をヒソカが引っ張った。
「クラピカ、忘れ物◆」
素早く唇を重ねると、ヒソカはクラピカの袖から手を離す。
「なっ…!」
意表を突かれたクラピカは驚きのあまり、通りまで一目散に駆けて行ってしまった。
クラピカが見えなくなってしまった後、一人路地裏に残されたヒソカは、
最後に彼女に触れた箇所を指先でなぞりながら呟いた。

「ふふ…まだまだ青いなぁ……◆」