眼前の、赤い着物を着た金髪の人形が、
まさか私自身であろうとは、
目覚めたばかりの私には到底思い至らない事だった。
ここはどこだろうか?
酷く豪華な貴族趣味の内装が施された部屋。
白色を基調に金で装飾された家具類が配されている。
おそらくは部屋の真ん中に位置するのであろう、
天蓋は付いていないが、彫刻が施された後背と脚が
年代ものだと感じさせるデコラティブなベッドに、
赤い、部屋の装飾とは趣を異にする異国情緒な、
民族衣装を着た人形が置かれていた。
髪が黒ければジャポンの人形と云うところなのだろう
この人形は金髪で、緩く結い上げられた髪には、
大きな牡丹の花が二輪、簪の様に飾られていた。
眼の周りには赤くシャドウが施され、
唇はなお紅く、血の色の様。
それは、淡い花柄のシーツで包まれたフカフカそうな羽根の上掛けの上に
少し埋もれるような感じで、
ベッドの中央近く、椅子に腰掛けるように置かれて此方を向いている。
そしてその眼は此方をまっすぐに見つめていた。
ここはどこだろうか?何故こんな所に?
2
確かめるために室内を見渡そうとして、
はじめて自分が動けないのだと気付いた。
身体を動かせないだけではない。視線すら動かせないのだ。
一体何が起こっているのだろうと思うまもなく、
身に触る手の感触と人形に触る手の存在に
人形は私で、鏡が置かれているのだと知った。
壁一面の鏡。
まさか?
私をもてあそぶ手は背後から伸び、
その持ち主は完全に私の体の陰になって判らない。
手が胸元に差し込まれ襟元がはだけられていく。
さらけ出される白い肌。
胸の下で結ばれた帯から肩口、二の腕にかけて
引き出された襟は、丁度腕を拘束する。
こぼれ出たささやかな二つのふくらみ。
頂には淡い桜色。
背後から声がする。まだ細い、子供の声だ。
「毒消しを塗ってあげる。」
3
ひやっとした感触に身がすくむ。
腋下から差し込まれた小さな手が
私の肌の上を滑っていく。
どろっとした感触に、ゲル状の軟膏のようなものが
塗られているのだとわかる。
体の自由は利かなくても、触感は健在なようだ。
くすぐったい
だが声すら出ない今の私は、
刺激を逃すすべが無く身の内に全て蓄積させてしまう
身を捩りたいむず痒さ・・・
小さな濡れた手が
胸元を這い回る。
乳房を避けるように円をかく軌道、
擦り込まれる軟膏も体温を吸ってか生暖かい
ぬるっとした感触に代わってきた。
あンっ!
声が出るのならば、
喘ぎ声にも近い、小さな叫びを上げてしまった事だろう。
つんっと、突然乳首を指先ではじかれた。
じわっとした痺れが全身に広がる。
どうにも出来ないもどかしさに身が疼きはじめる。
4
「感じた?」
くすくすっと笑いながら言う。離れた小さなその手が
弾いた刺激で立ち始めた頂に、新しく軟膏を盛った。
熱を感じ疼き始めた身に与えられたひやっとした触覚。
この熱を冷ますどころか却って煽る刺激。
疼きが一点に集中する。太股を摺り寄せて疼きに堪えたくても、
脚には力が入らず、身動ぎもならない。
もどかしさが暴走して身のうちを駆け回る。
おかしくなりそうだ
「経験あるんだ。」
背後から聞こえる声。
「この位の刺激でこんなになるんだから。」
脇から伸ばされた片手が着物の裾を割り、脚を開かせる。晒される。
鏡に映る自身の・・・
「ほら濡れてる。」
5
耳元で囁く息を吹きかける声。背筋がぞくっとする。更に熱が集中する。
疼く疼く・・
!!
ギュッ。と、急に乳房を掴まれた。白い刺激が意識を弾く。
くすくすと笑いながら、
私の乳房を揉みだした
強く・・弱く・・柔らかく・・きつく・・
乳首を掌で擦ったり、時折抓み上げ捻る。
背後から回された小さな両の掌が
私の乳房を揉みしだく・・・まるで愛撫のように。
一面の鏡が余すことなく現状を見せている。
6
胸元ははだけられ、乳房をもまれ、
開かれたままの脚の付け根は
新たに溢れ出る液が
光を弾きぬらぬらと光っている。
顔そむける事も出来ず、見せ付けられる痴態。
救いは、動けない体。
ヨガリ乱れる様は見なくて済むこと・・・
上がる息の向こうで
ぼんやりとそんなことを考えた。
片手が、腹を撫でまわす。
軟膏を塗りこんでいく。ひやっとした感触が
スグにぬるい生暖かいものに変わる。
吸収がいいのか、滑る感触はいつまでもは続かない。
また新たに塗られ、撫で回される。
帯が邪魔をして胸の下の辺りは塗れない。
下からからげて開かれた着物は
もう、腕と帯で留まっているだけ・・
7
鏡に映る隠微な、だがどこか不自然な姿。
着衣はこれほどに乱れているのに、
髪は乱れず、表情もすましたまま。
だが息は上がっており、目はどこと無くとろんとしている。
足は力なく投げ出され、だがその付け根は
豊かに水を湛え溢れて戦慄いている。
ひくついている。
この一点だけが動く・・・
まるで、性玩具人形。
そこに、小さな指がたてられた。
びくっと体がすくむ。
動ける?なぜ?
「薬、塗ってあげるっていったよ?」
見透かしたように声が答える。
8
ひっ!
つぅっと、生暖かく柔らかいものが奔る。
うなじから背中にかけて。
舌の感触。
息がかかる。
たてられた指は、軽く戻され、そのまま周囲をなで始める。
強い刺激を与えないように。
触れるか触れないかギリギリの際どさで円を描く。
やんわりとした刺激に小刻みに震える身体。
緩やかな刺激にもどかしさが満ちる。
あっ・・あ・あああ・「あ!」
「まだ少し掠れてる。もっといい声で鳴いてよ。」
「ひゃっ!」
軽く咬まれた・・・!
全身がゾクゾクといななく
出口を求めて身の内を駆け回る
乳房が揺れる。
ぶるぶると左右バラバラに。
痙攣の奔る身体。明滅する意識。漏れる声。
9
視界が揺れる。
色香を振りまく、発情した女体・・・
追い立てられ、その先を求めてより一層妖しさをます。
意識が眩む。
与えられない雄を求めて、パクパクとあさましく
液体を吐き出す女の中心。湿気った水音
「あっ・・ああああ・・・んっ・・ん・・・」
「こんな風に男を誘うんだあなた・・・
知ってる?鏡に向かってる理由。」
私の背後に隠れて姿の見えない声。
小さな子供の声のようなのに、
欲情を煽る。
おかしい!おかしいおかしい・・・
疑問はだが、直ぐに拡散してしまう。
「理解できなくなる前に教えてあげる。」
一瞬にして世界が変わった。
眼前の乱れた女は掻き消え、
代わりに現れた薄暗い部屋。
ピンスポットの当る中央にはテーブルが置かれ
その上にある、あれは・・・
「い・・いやっ!・・」
10
血が引くように思考が醒める。
だが背中を這う舌が
混沌の縁へと追い立てる。
緩く掻きまわす指も、正気に戻る事を許さない。
「あうっ!はっ・・ん止め・・」
それでも・・・!
必死に逃れようと、暴れる。
脚はまだ自由が利かない。
可能な限り、動ける限り・・
「逃げようとしているつもりだろうけど、
逆効果だよ?」
真剣に逃れようと足掻けば足掻くほど、
着衣は乱れ身体はわななき
興奮して
よがっているようにしか見えないだろう。
解っている。そんなことは!
「・!・ちがっ・・う・・んっ嫌・・だ・・離し・・」
そんなことは・・!
だが、
ガラスと化した鏡の向こうには、
テーブルには、一見してビデオカメラだとわかる物が置かれていた。
コード類が伸びている。
レンズが冷たく此方を向いている。
11
撮影されている!最初からずっと?!
「ほら、もっとよく見せてあげなくちゃ」
「・・っ・」
左右から回された小さな手が、
逃れようと足掻く私をあざ笑うかの様に
両膝を開いて持ち上げる。
かろうじて腰の辺りに留まっていた片裾が
腰骨から滑り落ちていく。
自由の利かない脚がベッドのヘリに載せられる。
うぃん
・・軽い電子音がして
一瞬にまた視界が変わる。
・・・マジックミラー・・・
淡い花柄の上でより一層と紅い、敷物と化した着物の上に
薄桃に染まった白い身体が乗っている。
M字型に膝を胸の辺りに立てられ、
光を反射しぬらぬらと滑り輝く秘部を晒しながら。
12
見せ付けられる痴態
見止めた途端、キュッと
下腹がいなないた。
とろりと熱いものがおりる。
そこはより一層とぬかるみ
モノ欲しそうに収縮する。
熱を持ちドクドクと脈打っている。
全身に伝わる。
痺れが頭の芯にまでゆっくりと・・
小刻みに
身体が震え力が抜けた。
「・・ひっ・・あ・・」
達してしまったのだ。
柔らかい刺激だけで、
ただ己の乱れる様に興奮して・・・
悔しさで頭がおかしくなりそうだ。
13
汗ばんだ肌
ほつれた髪
潤んだ瞳
上がる息
クタリと力が抜けた身体
膝立ちで晒された秘部・・・
撮影されている。今も。
「気持ち良かったんだ?」
今は私の身体を後ろから支えている、
子供の声が笑いながら囁く。
私の影に巧みに隠れていて姿をみせない・・・
見様によっては、私が一人で
悶えているように見えるだろう。
鏡には私だけが乱れた姿を晒している。
淫乱に。
誘っている。
誘っているのだ、
ビデオの向こうの誰とも知れない雄を。
14
「でも、まだ物足りないでしょ。」
容赦のない声が降る。
同時に、ひょこっと、脇から声の主が姿を見せた。
「!」
想像どうり、それは子供だった。
黒い髪を前髪は目の上
横と後ろは耳の下の高さに切りそろえた髪型の、
私が着せられていたと同じ衣装を纏った
8〜10歳位の・・・
「もっといい事も教えてあげるよ」
ベットから降り、私の前に廻り込む
「ひっ!」
弛緩しきっていた身体に走る刺激。
舌先で突付かれる。
緩やかな刺激しか与えられなかったソコを
濡れた生暖かい舌が舐める。
「イヤァアアアア!!」
15
悲鳴が奔った。
激しく頭を振り逃れようともがく。
髪が崩れ花が落ちる
まだ自由の利く上半身を大きく揺する。
身も世もないあられのない姿 v
「・・いやっ・・あ・アッ・・ん・・ぅん・・や・はぁんっ!・・ン」
だが声は潤み熱を持ち思考は崩壊する、心地よさに。
溢れる雫を絡めるように舐めまわして、舌が翻弄する。
吸い上げられ、身体が震える。
「あぁぁぁァァアアああ・・ンン・・!!」
叫ぶように迸る声。止められない。
大きく仰け反る
ほの赤い頂を震わせて乳房が揺れる
白い脚の間で黒い頭が小さく揺らぐ
ぴちゃぴちゃと洩れる音がいやに耳に付く。
16
「いつもより感じてるんでしょ?」
頭を起して、舌なめずりをする姿は小悪魔だ。
指を差し入れされる刺激に
身体が小さな痙攣を起しだした
絶頂が近い・・・
「薬が効いてるし、
でも、あまり大きな声を出すと、彼が起きるよ?」
「な?・・アっ・・なン・・の・・?」
私を映していた鏡が再度消える。
先程の部屋だ
今はスポットも消えて、
薄暗い空間だけがそこにある・・・
明るい部屋にいる私には、その暗さに目が慣れない
はっきりと部屋全体を掴む事は出来ない。
17
「さっきは一瞬だから気付かなかったんだろうけど、
ほら・・・」
薬?
「テーブルの横」
なに?
「椅子が見えるでしょ?」
椅子?
「ほら、彼が眠っている・・」
見慣れた、ダークスーツの・・・
「・ぁアッ!!・・・」
ドクンと鼓動がはねる。
キュッと締め上げる。
ガクガクッと大きく痙攣して
意識が弾けた。
力が抜ける、そのまま後ろに倒れていく
意識を道連れに
真っ白な淵に落ちていく・・・
・・・あれは・・・レオ・・リ・・・・・
「いっちゃったんだ?」