クラピカは自分のベッドの上で幾度も寝返りをうっていた。
エアコンの装備されていない部屋では、自分の体温すら邪魔で眠れそうにない。
ため息をついて、外で涼んでこようかと思ったとき、
――携帯の着メロが鳴った。

慌てて取り上げて、ディスプレイに表示された名前を確認する。
夜間であるために普段は感じない音の大きさが耳につく。
「……もしもし」
ボタンを操作して電話に出て、それでようやくクラピカは落ち着いた。
電話の相手が久しぶりだとか、そういうことを考える以前に
隣の部屋に聞こえてしまうような音を出すのは出来るだけ避けたかったのだ。
「なんだ、起きてたのか」
相手の第一声がそれだった。
「寝ていると思った時間に掛けてよこしたのか?」
憎まれ口はいつものこと。久しぶりとか、元気だったかとか、
そういうことをあらためて確認する間柄でもない。
「いや、寝る前に声が聞きたくてな」
「何故」
「なぜって、オマエね」
レオリオは電話の向こうで苦笑したようだった。息の音がわずかに漏れてくる。
クラピカのちょうど耳のそばで。