「なーお前女なのか?マジで女!?」
「…しつこいぞ、さっきから」
昼下がりの町を歩く人影が2つ。
一人は不機嫌さをそのまま映し出したような顔、そしてもう一人はしつこく何かを問いかけている。
「えーでもクラピカお前…えぇ〜?嘘だろおい、マジで?」
「くどい!」
我慢の糸が切れたのか、クラピカはダンッと足を踏みならした。
事の起こりはクラピカの一言だった。
遡ること数十分前。
着ていた服がいいかげん古くなってきたということで、レオリオとクラピカは手近な衣料店に入り、思い思いに衣服を物色していた。
「おっ、これどうよ!俺様にピッタリだと思わねぇか!?」
満面の笑みで問いかけるレオリオに、クラピカはきっぱりと言い放った。
「派手だ。大道芸人にでもなるつもりか。」
あっさりと趣味を否定されたレオリオは、自分も何かケチをつけてやろうとクラピカのもっているものを見る。
「……んん?」
自分の視界に入ったものを、確かめるように眺める。
そして、水を得た魚のようににやりと笑い、言った。
「おいおいおい、クラピカさんよぉ。
いくら体がちんまいからって、女物はないだろ女物は!」
その言葉を聞いたクラピカは、怪訝な顔でレオリオを見た。
「いくらなんでも、男としてどうかと思うぜ?」
尚もにやにやと笑いながらからかい続けるレオリオに向かい、クラピカはまたもあっさりと答えた。
「私は女だ。」
「……ぇぇええ!?」
そして、今に至る。
店を出てからも「マジで?」を連発するレオリオ。
いいかげん嫌気がさしてきて早足になるクラピカ。
ずんずんと歩みを進めるクラピカに、レオリオが慌てたように声をかけた。
「おっおい!」
何も聞くものかとばかりに無視を決め込むクラピカ。レオリオは舌打ちをして走り寄った。
そして思い切りクラピカの体を引き戻す。
「お前な、信号くらい見ろ!」
言われて前を見ると、丁度赤になったばかりの信号が見えた。
「すまない。だがお前があまりにしつこいから………おい、レオリオ?」
歩道に戻ってからもいつまでも手を離そうとしないレオリオに、クラピカが怪訝そうに声をかける。
「…なぁ…やっぱお前男じゃねぇの…?」
ぽつりとそう言ったレオリオの手は、クラピカの胸に当たっていた。
―ガツン!!!
回る視界。痛む顎。
今の発言にクラピカの鉄拳が炸裂したことは、言うまでもない。