その島の鳥も人も土も、全てが穏やかな日差しの祝福を受け輝いている。
船からおりたクラピカは目を細めた。
「くじら島か…」
『ゴン君の町らしいわ、生命力溢れる音がする』
横からセンリツが嬉しそうに言った
『面接会場はこの河を上った山の中腹ね、急ぎましょ』
数日前、クラピカは緋の目を所有している女外科医の噂を聞いた。
彼女は別荘の下働き兼守衛を募集しているが安い賃金と黒い噂で人は集まらない様だった
『楽譜の情報を集めていたら彼女の名前がでてきたの、おともさせてくださる?』と言う旋律と共に旅路についた。
正直心強い、がそんな自分への憤りも感じる。こんな気持ちも旋律は見抜いているかと思うと複雑だった。
二人はもくもくと山道を登っている
『‥‥…素敵!雄大、荘厳?言葉が見つからないけど素敵な山道だわ、あなたもいてくれるから』
旋律が恥ずかしそうに微笑んだ 、と、旋律の腕に何かが飛んできた
『キャッ!!!』
茶色のぶよぶよした物体。
「心配無いよ、山ビルだ、血は吸うが害は…」
旋律が呆然としている。
{ヒルがそんなに怖いのか…?いや、違う…}
「どうした?」
『…クラピカ?あなた、胸が…‥‥…ごめんなさい、ずっとおかしいとは思ってたの…あなたにしがみついて確信したわ』
クラピカは動揺を押さえて呟いた
「女は…捨てた」
二人はまた無言のまま先を急いだ
二時間程歩いて目的地についた。
庭には色とりどりの花が咲き誇り、かなりの広さの敷地は高く積まれたレンガに囲まれ、ツタの繁殖をうながしている。
その中央に小さな屋敷があった。
チャイムを鳴らすとすぐに反応があり、若いメイドがドァを開け二人を応接間に通した。
その部屋のやたら大きなソファーには白衣の女性が一人で腰掛けていた。その奥はカーテンでさえぎられていて見えない。
クラピカは妙な違和感を感じた。旋律も不思議そうな顔をしている。
二人が椅子に座るのを待ちかねたかの様にその女性が話し始めた。
「私がここの主のタナです、今から大事なお客様が来るの。彼女をうまく接客できれば面接に合格よ。
その後あなた方の実力を見させていただいて合否を決めるわ」
「えぇと…あなた」
「クラピカです」
「そう、クラピカ、さらしをとりなさい。医者の目はごまかせないわ。女性である事は恥じるべきでも隠すべきでもないのよ」
クラピカは唇をかみしめ一瞬躊躇したが、タナの厳しい目に射すくめられあきらめた。
「わかりました。かわやをお借りできますか」
「できないわ、ここで、ぬぎなさい」
クラピカは唇を噛みしめた。タナは表情一つ変えず冷徹にクラピカを見つめている。
心臓が脈打つ…
使命のためだ…クラピカはそう自分に言い聞かせ、クルタ族の民族衣装に手をかけた。
クラピカの白く細い肩が露わになる。
そっとさらしをはがした。
もう男で通すには限界なのかもしれない。
さらしの痕が赤く腫れている。
クラピカの動きにあわせて、徐々に胸がふくらみを取り戻していく。
赤い傷と透き通る様な白い肌の対比が痛々しく、美しい。
「薬と服をあげるわ。その衣装だと傷にさわるから。」
タナは立ち上がり、引き出しをあさるとクラピカの前に立った。
そして入念に薬を塗り込む。医者で雇い主だからこそ許された特権…
冷たい指がクラピカのふくらみをはう。
血の滲んだ薄赤い突起をなぞる。
初めての刺激にそこは女である事を主張し始めた。
「こんにちわ〜」
いきなり場違いな明るい声が聞こえてきた。
大事なお客様とやらの到着の様だ。
旋律は救われた様に表情をゆるめた。