「キ…キルアどうした?」
とろんとした目をするキルアにクラピカは問いかけた。キルアの肌は
紅潮し、少し熱を帯びたような危うげな瞳をクラピカの方に向けてい
る。こんな表情のキルアを見るのは初めてだった。
「こんなになるまで酒を飲むとは。だいたいお前は未成年ではないか。
とにかく横になるんだ」
「うぅん……」
そう言ってクラピカは強引にキルアをベッドに寝かせていた。そして
、泥酔しきっている相手に気をきかせて水を持ってくる。
「いいか?酒は成人してからだ。お前のような年端もいかない子供が
飲むものではない」
クラピカのその言葉に、水を受け取ろうと伸ばしたキルアの手が一瞬
止まる。
「俺、子供かなぁ……」
「当たり前だろう」
少しの間もあけずに断言するクラピカに、キルアは不服そうな表情を
向けた。
「少なくとも、あんたよりは大人なつもりだけど?」
反省の色の全く見えないキルアにクラピカは半ば呆れながらも、所詮
相手は酔っ払い。ここでムキになるのは帰って大人気ない。
そう考えたクラピカはあえて強く反論することを避けた。
「もういいから休みたまえ」
「言っとくけど、俺はあんたが思ってるほど、子供じゃねーんだぜ」
「あぁ、わかったから、もう……」
「………っ!俺、あんたのそういう態度、大ッ嫌いなんだよッ!!」
突然に逆上したキルアが、クラピカの腕を勢い良く掴む。
「……っ…」
ドサッ……とそのままベッドに倒され、先ほどとは見事に互いの位置
が入れ替わっていた。と言っても、ベッド脇からキルアを見下ろして
いただけのクラピカとは違い、キルアはこれでもかというくらいにク
ラピカの顔に自らの顔を近づけていた。
キルアの刃物よりも鋭利な爪先が鋭く光り、痛々しいほどにクラピカ
の生白い腕に食い込んでいる。暫くは、クラピカは何が起こったのか
を理解できずにただ目を見開いていた。自分の上には顔色一つ変えな
いキルアがいて、下に組み敷かれたクラピカを平然とした顔で見下ろ
している。
「何の冗談だ……」
「俺、前々からあんたのその人を見下したような態度が気に入らなか
ったんだよな。良い機会だから教えてやるよ。俺はあんたが思ってる
ほど子供じゃないって」
「何を愚かな……」
言いかけたクラピカの唇がキルアの唇によって塞がれ、彼を戒めよう
としたその言葉は途切れさせられる。
「………っ…」
一瞬何が起きたのか理解できない。クラピカが目を見開くと、視界は
瞳を閉じたキルアの顔で埋まってしまっている。
自分に圧し掛かっている彼の身体を押しのけようと、胸板を両手で力
いっぱい押し返すがどうにもならない。こんな子供のどこにこんな馬
鹿力が蓄えてあるのだろうと疑問に思うほど、キルアの力の前ではど
うにもならなかった。
クラピカは唯一自由に動かせる首を逸らせてキルアの唇からなんとか
逃れようとした。
「やめろっ」
自分を押しのけようと必死になっているクラピカをキルアは見下ろし
ていた。案の定、クラピカの瞳にはキルアに対する怒りの色が宿って
いた。しかし、まだ緋色になるほどではない。
「キルア!冗談にしても限度というものがあるっ。いくら酔っている
からっといって」
「じゃあ、酒の席だから…ってことにしといてくれよ」
「なっ……調子に乗るのもいい加減に……」
力量の差を見せ付けられても決して屈することの無い相手の言い分を
聞く前に、キルアはクラピカの服に手をかけていた。剥ぎ取るように
して脱がせると、美しい白い肌が眼前にさらけ出されていた。
「なっ……無礼なっ」
とたんに頬を赤くして抵抗をするクラピカに、一方のキルアはむしろ
余裕の笑みさえこぼしている。
ようやくと自分の置かれた立場を理解し始めたクラピカの瞳には、先
ほどの怒りよりも、怯える色の方が強くなっていた。
普段から頑なな態度を崩すことの無いクラピカのような者を、自分に
屈服させることにたまらなく悦楽を覚えるキルア。そのまま鎖骨付近
や胸元のあたりに軽く口付けていく。
クラピカの怯えるような目がキルアの情欲を駆り立てる。獲物を追い
詰めて今から食そうとする狼になったような気分になり、それはなん
とも気持ちの良いものだった。
キルアに罵声を浴びせながら必死になって抵抗を続ける相手に構わず
、念入りに抱いた証をつけていく。
そして、無防備に自分の目の前にさらけ出されている未成熟な小さな
乳房の突起部にそっと口付けると、その身体はビクンと跳ねる。その
反応に浸りながら、そのまま口に含み、軽く吸い上げた。
「やっ……やめ…ろっ…」
クラピカの頬は見る見るうちに赤く染まり、身体も心なしか熱を帯び
始めたようだった。ふと相手の顔を見ようとして、キルアは眼を見開
く。クラピカの碧玉のような瞳が、ゆっくりと緋色へ変化していくそ
の瞬間に思わず見とれてしまっていた。素直に、目の前の相手を美し
いと感じた。
その瞳にはうっすらと涙を浮かべている。そんな表情をすることがか
えって逆効果だということを相手は知らないのだ。その恥辱に濡れた
瞳はかえってキルアの目には扇情的に映っていた。
「何故、このような愚行を…っ…」
自分の乳房をまるで赤ん坊のように貪り弄ぶキルアのこの行為がクラ
ピカには理解できなかった。
「これで、少しは俺が子供じゃないってことがわかっただろ?」
そう言って薄く笑うと、キルアはまたクラピカの乳房を口に含み、舌
を程よく使って念入りに刺激していく。
「わかった……わかったから、もうこんなことは……」
「あんた何もわかってねーな。ここでやめたら生殺しじゃんか。それ
に、あんたが男か女か、この眼でたしかめなきゃな」
「わ……私は男だっ……」
「そう。じゃ、たしかめさせてもらおうかな」
「い……いやっ……だッ……やめ……!」
クラピカの必死の哀願にもキルアは耳を貸そうとはせず、無理にも下
半身の服を脱がせる。情けをかけるどころか、彼の右手はクラピカの
さらに奥を目指して、太ももを撫でる指を上へと移動させていった。
それに反応するように上げられるクラピカの声が、キルアの脳のある
一点を強く刺激する。
「足……もっと開けよ」
昂る気持ちを抑えられずにキルアはそう促すが、当然クラピカがそん
な要求を聞き入れるはずはない。ただひたすらに嫌がるだけの相手に
しびれを切らしたキルアは、強引に両足の間に割って入り、力ずくで
大きく開かせていた。
「いやだぁっ……レオリオ…っ」
まるで愛しい男に助けを求めるかのように、クラピカが他の男の名を
口にしようとも、キルアはその行為をやめようとはしなかった。むし
ろその一言で、キルアの心にますます火を点けたと言っても過言では
ない。下着越しに秘部に指を這わせる。最初はゆっくりと、周りをな
ぞるようにして念入りに責め立てる。クラピカの身体は、それまでに
ないくらいにひどく跳ね上がった。
「なんだ。やっぱり女じゃん」
「………!!」
今まで男として生きてきたクラピカにとって、この状況がどれほどの
屈辱を与えているかは計り知れない。
どんなに抵抗する意志はあっても、身体は未だキルアの強い力で押さ
えつけられ組み敷かれたまま。彼の指が自分の女の部分をまさぐって
いるなど、クラピカには耐えられないことだった。まだ十分に潤って
いないにも関わらず、我慢できずにキルアはクラピカの下着をずり下
ろし、完全に脱がせていた。乱暴に指を秘所に押し込んでいく。当然
のことながら、容易には侵入できそうもなかった。
「ひっ……い、痛…っ」
「へぇ、痛いの?まだ一本しか入れてないよ」
クラピカの痛がる様子をまるで楽しんでいるかのように、キルアは少
しも手の動きを緩めることはなかった。これでも加減している方だが
、クラピカが彼を拒んでいるため、それはキルアの指も、クラピカ自
身をもひどく苛んだ。ようやく少しは慣れてきたところで、キルアは
容赦なく指をもう一本増やす。
「痛いッ………頼むからキルアっ…」
「何?」
キルアはニヤニヤと笑んでわざと相手に聞き返す。
「指を……抜い……っ…」
クラピカはやっとの思いでその言葉を口にした。
「……しゃーなしだぜ」
キルアは意外にも、あっさりと二本の指を引き抜いていた。やっと痛
みと刺激から解放されたクラピカはぐったりと力なく横たわっていた
。しかし、キルアにはこのままクラピカを見逃してやるつもりなど微
塵もなかった。
彼は先ほどクラピカが持ってきた水に念を注ぎ込む。そうして、ドロ
リとした液体に変化した水を指ですくうと、クラピカの秘所に念入り
に塗りつけていった。
「やっ……やめろ何をっ……」
「大丈夫。蜂蜜みたいなもんだからさ」
「き…気持ち……悪い…っ…」
指と冷たい液体という異物感が、クラピカには耐え難いものでしかな
かった。
「潤滑油みたいなもんだよ」
クラピカの秘所は、キルアの塗った液体のせいでまるで充分に潤った
かのように湿り気を帯びていた。キルアの指二本なら、それほど難な
く受け入れられるようになっていた。
キルアは入れていた指を引き抜いて、その指をペロリと舐めた。
「うん、甘い」
自分の秘所にあてがった指を躊躇いも無く口にするキルアを信じられ
ないような眼で見つめるクラピカ。
そして、そんなクラピカに構わずにキルアは手早くベルトをはずし、
ズボンのジッパーを下ろした。クラピカは、キルアのその行動の意味
を理解し、自分の血の気が引いていくのを感じていた。
「キルア、頼むから……頼むからやめてくれ……これ以上は……」
「今さら。もうやめられるはずないだろ」
キルアは恐怖に凍りつくクラピカの顔をわざと見ないようにして、彼
女の足を割って強引に押し進んでいった。クラピカが悲鳴を上げる。
「いやだ……本当にやめ……」
「力抜けよ」
「いやだぁっ怖いっ、レオリオっ…」
泣き叫ぶクラピカの悲鳴を聞かぬ振りをして、キルアは自身の先端を
彼女の秘所にあてがう。そうしてゆっくりと、だが確実に彼女の内部
へと侵入をはかっていた。クラピカの身体は痛みと恐怖のためひどく
痙攣し、それは彼女との交わりを通してキルアにも伝わっていた。
「……ッ…」
「痛くて声も出せない?」
キルアは、狭いクラピカの内部に自身を苛まれながらも、最後まで彼
女の中に侵入することをやめなかった。暖かい内部はいつまでも繋が
っていたいような、そんな気分にさせられるほど居心地が良かった。
クラピカは、ただ瞳を閉じて涙を流していた。裂かれるような痛みに
耐えるため、彼女は必死にシーツを掴んでいる。キルアは、そんな彼
女を見ると、ますます情欲に駆られた。
「動くぞ。……力抜いてろ…」
キルアはクラピカの内部をゆっくりと出入りし始めた。目の前の少女
は明らかに経験がないことはキルアにも充分にわかっていたため、出
来る限り優しくしてやろうとは思うが、それはキルアにとっても同じ
ことだった。慣れていないこの行為の最中に、しかもこんなに昂って
いるというのに、クラピカのことを思いやってやれるような余裕はキ
ルアにはなかった。身体の方はもっと早く動くことをせかすような衝
動に駆られる。
いくら身体だけとはいえ、クラピカを自分のものにすることができた
悦びは計り知れない。クラピカは普段キルアのことを男として微塵も
意識したりはせず、そんな彼女に、自分は「男」で彼女は「女」なの
だということをはっきりとわからせてやりたかった。
「も……もう……許し…っ…」
あまりの激痛に、泣きながら息も絶え絶えにやっとの思いでそんなこ
とを口にするクラピカ。無論、キルアがやめるわけはないのだが、彼
女にはそうやって許しを請うことしかできなかった。もういっそ意識
など手放してしまいたかった。
「やっぱあんた女なんだな。ほら、わかる?俺があんたの中に、入っ
てるって」
クラピカの気持ちをわざとかき乱すため、キルアは言葉でも彼女を責
め立てる。泣きじゃくることしかできないクラピカに、さらなる仕打
ちと言わんばかりにキルアはいきなり奥まで強く突いた。
「……っ………」
「声出してもいいんだぜ?何でそんなに我慢するんだよ」
我ながら、なんて意地が悪いんだろうと自分でも思う。処女を相手に、
しかも無理矢理襲っておいて、そんな言葉を吐ける自分のあまりの外
道ぶりが、逆に滑稽に思えて笑いがこみ上げてきた。
今、こんなことをしておいて笑っていられる自分を、クラピカはどん
な風にその瞳で捉えるのだろうか。奇異なものを見るような目で蔑む
だろうか。それとも、焦げるような視線を向け怒りを滾らせてくるだ
ろうか。
今はそのどちらでもなく、虚ろな眼差しをただ空に投げ、こちらを見
ようとさえしてくれない。
何にせよ、これからは当然もう元の関係には戻れない。クラピカの自
分に対する信頼を、キルアはあえて自らの手で、粉々に打ち砕いた。
彼の腰の動きは休むことを知らない。時間が経つに連れて加速してい
くその激昂に、ただクラピカは身体を揺さぶられるだけだった。
「もう………やめ……」
「大丈夫だよ。中には出さねーから」
そういう問題ではないことはわかっていた。男として最低のことを言
っているというのも承知の上だった。しかし、もう自分ではどうする
ことも出来ない。
彼女の太ももを伝って、引き裂かれた証ともいえる鮮血が数本赤い筋
を作り、そのまま流れて白いシーツに跡を残していた。キルアの眼に
は、それが自分がクラピカを壊した証のように映っていた。
どうして、大切に思っているはずなのに、いつも自分から壊してしま
うんだろうか。
キルアは荒々しく息を吐きながら、ぼんやりとそんなことを考えてい
た。
罪悪感などない、と言えば嘘になる。
けれど、ならばこの行き場のない気持ちはどうすれば良かったのだろ
うか。
心中穏やかでない自分を偽るが如く、キルアはわざと今の状況を楽し
んでいるかのように無邪気に笑ってクラピカに問いかける。
「ねぇ、どこに出してほしい?顔?それとも胸?」
クラピカは虚ろな眼差しを空に彷徨わせたまま、何も答えない。
キルアは相手のそんな反応に苛立ちを覚え、自分でも驚くほど意地の
悪いことを口にする。
「あんたの中すげー気持ちいいから、お望みならこのまま中に出すけ
ど?」
すると、ようやくクラピカが小さな悲鳴のような声をあげる。
「それ……だけは……」
おそらくは、泣き叫ぶ意外のことで声を出すなど、きっと余裕もない
はずだろう。しかし、振り絞るようにようにしてか細い声をあげ、彼
女はキルアに向かってそう呟く。
普段は決して他人に屈することのないクラピカが、自分を犯す男にそ
うやって哀願する様は、なんとも健気でいとおしく思えるものだ。
それだけ嫌がっているということだろうが、そうまで拒絶されると、
逆に相手の嫌がる行為をわざとしてやりたくなる衝動に駆られる。
しかし、いくらキルアでも、まだそこまでクラピカを追い詰めるつも
りはなかった。
「キル……ア……、頼む、から………」
「―――わかってるよ。さっきのは冗談だって。素直なあんたって、
意外と可愛いのな」
“そんな風な態度は、俺意外にはするなよ。
さもなきゃ、次は冗談なんかじゃなく、本気で―――――――――”
キルアは内心でそんなことを考えながら、まだ女の中に留まっていた
いという感覚に襲われてやまない昂りをずるりと引きずり出していた。
クラピカの震える小さな乳房が、白濁した液体で穢される。
彼女はそのまま脱力するように、ベッドにうな垂れたまま動かない。
ぼんやりと視線をさまよわせ、ただ涙を流すだけのクラピカにわざと
瞳を伏せて、キルアは不安定なため息を吐いた。
「俺が憎い?」
相手の答えが返ってくることを期待して問うたわけではない。
彼の中に留まる無意識のうちの罪悪感からついた言葉だった。
「どれだけ恨んでくれても構わないけど、でも、今日このことは、俺
にとってもあんたにとっても、決して消えることのないもんだから」
“どう足掻いたって悔やんだって、あんたの初めての相手は俺だから”
そんな思いを言葉の裏側に隠して、キルアはクラピカにそう告げてい
た。
一糸も纏わぬ姿のクラピカに毛布を掛けてやり、そのまま部屋を去ろ
うとするキルア。
それを遮るようにキルアに言葉をかけたのは、意外にもクラピカ本人
だった。
「ま……待て、キルア……」
クラピカが苦痛そうに身体を起こし、毛布を抱きしめて自らの胸を隠
しながら、涙で濡れたままの顔をこちらに向けていた。
キルアは歩を止めて、視線だけを彼女に投げる。
「頼む。私が……女だと……」
「―――何?」
「私が……女だと、誰にも話さないで、ほしい……。でなければ、私
は……」
自分は男としてしか生きていくことができない、とクラピカは嘆く。
そんな彼女を前に、キルアはただ黙って頷いていた。
「OK。いいよ、誰にも話さない」
その代わり――――と言って、キルアはゆっくりとクラピカに近づい
ていく。
彼女が必死で抱きしめている毛布を払いのけ、キルアはその小さな頼
りなげな胸にそっと頬を寄せる。
身体を強張らせるクラピカをそのまま抱き寄せて、彼はこう囁いてい
た。
「明日の夜、またこの部屋に邪魔させてもらうから。―――俺の言っ
てる意味、わかるよね?」
「そん……な―――」
「ばらされたくないんだろ?」
キルアは意地悪く笑うと、小刻みに震えている相手の乳房の先端部を
軽く舐める。
「やっ……」
「大丈夫。次はちゃんと優しくしてやるって」
俺の気が向けばな。
心の中でそう呟くと、キルアはクラピカを解放するように、そのまま
部屋を退出していた。
クラピカの絶望するような顔を、見て見ぬ振りをしながら。
“手に入らないんなら、いっそ壊してでも奪うしかねーじゃんか”
キルアの中でそんな言葉が響いていた。
その顔には、冷たい笑みを浮かべて―――――――――
END