レオクラ<未来編>

「頑張れよ、もうすぐ終わるからな」
レオリオが目の前で横たわり、彼による手術を受けている子どもに声をかける。
「レオリオ!血圧がっ……」
助手を務めるクラピカが声をあげるとレオリオは大丈夫だ、と目で応えてみせた。
元々、貧しいために治療が受けられないどころか
十分な栄養を取ることすらできなかったこの子どもの体力は
手術に耐えられるかどうかギリギリの線だった。
本来ならばもう少し体力をつけさせてからするべきだったが
病の進行は思った以上に早く、レオリオが駆けつけてすぐ手術に移らざるをえなかったのだ。

しかし彼の念能力は、こういう時のためにこそある。
「いくぞ」
彼の能力は、自身のあらゆる「力」を他人に貸し与えること。
つまり、彼なら耐えられるであろう病や怪我に対する抵抗力を持たぬ者に自身のそれを貸し与えるのだ。
レオリオの「力」を受けて、子どもの容態が安定する。
「よし、これならいけるぞ」


「力」を貸し与えている間、彼は当然普段に較べて格段に脆くなる。
人並み以上の体力を持つレオリオだが、場合によっては少しの怪我で
出血多量による死に陥りかねないほどにまで弱くなるのだ。
ただでさえ戦闘に向かない能力の彼は、ハンターとしてはかなり弱い部類に入る。
いつ何時、良からぬ輩に襲われぬとも限らない。
そのため、クラピカはレオリオのボディガードとして共に旅をしている。
ブラックリストハンターとして名高い彼女が傍にいるだけで大抵の者は逃げ帰る。
レオリオとしては素直に恋人だから共にいるのだと言ってほしいのだが
固い彼女は妙に恥ずかしがって他人の前では「私はただのボディガードだ」と言い張るのだ。
それがただの照れ隠しなことくらい、知古のものにはバレバレなのだが。
しかしそんな彼女をレオリオは可愛らしいと思う。

彼は今かなり幸せで、充実した日々を送っている。
医者になり、様々な怪我や病に対処できるよう幅広い知識と経験を身につけた。
そして、貧しさ故に病院に通うこともできず苦しむ人々に無償で治療を施している。
初めは完全に自らやクラピカの負担でそれを行ってきたのだが
ゴンやキルアをはじめ、多くの仲間が彼の活動を支援してくれている。
それに何より、クラピカの笑顔を毎日見ることができるようになった。
クラピカは彼の助手として、ボディガードとして、そして恋人として、彼と同じ時間を共有している。

こんな日々がいつまでも続けばいい。
無事手術を終えた夜、レオリオは隣で穏やかに寝息をたてるクラピカにそっと口付けた。