*懲りずに投下 愛なし&イラマ NGな方はスルーでひとつ
娘から取り次がれた電話の相手の声は、男にしては高く、女にしては低かった。辛うじて感じ取れたのは、殉職したらしいダルツォルネの代理に立つにしては若い、ということくらいだ。
自家用の飛行船で夕食を取っている最中にかかってきた電話に応じるオレを、女は終始不機嫌な顔で眺めていた。昨晩、ダルツォルネから娘の占いの結果が気になるとの連絡を受け、予定を繰り上げてヨークシン・シティに向かうと言ったときからこの調子だ。自分を飾ることと、セックス以外に使う脳みそは全て胸と尻に収まっているのではないかと思えるような女だが、それはそれで気に入っている。久しぶりに旅行に連れ出したはいいが、こんなトラブルに見舞われるとは。
あのダルツォルネが死んだかもしれない。念使いがそう簡単に殺られるわけがない、と思ったが、裏街道を歩む自分にも一生関わりはないと決め込んでいた「幻影旅団」の名に、万が一でもヤツの生存はあり得ないと改める。護衛団のメンバーについては、採用も処分も全てヤツに一任していた。一人消したと聞いていたから、その補充要員なのだろう。初めて名前を知る新入りらしい電話の相手の話の進め方は、若いながらも頭の回転の速そうな印象をオレに与えた。
信用に足るかどうかはすぐに判った。娘の機嫌を損ねることに懸念を示したオレの意見を一蹴し、娘の安全を最優先にすると答えたのだ。権力に曲げられることなく、その状況に適した最善の判断を進言できる人間。名前と声しか知らないその相手に護衛団のリーダーを継がせると決めた。
通話を切った指で、ヨークシンに送り込んだ組の者に電話をかける。コミュニティーの今後の動きに関する情報をより多く集めなくてはならない。非難がましい目でオレを見る女を視界に入れないようにしながら、これからどう立ち回ればこの世界でさらに上へと行けるのかを考える。
■
天候不順の中、不満顔の女に組の者を一人つけて途中の街で降ろし、ヨークシン・シティに到着したのは深夜だった。突然予定を繰り上げたせいで部屋の予約など取っていない。フロントでやや強引に話を押し込んだ結果、なんとかスイートルームを押さえることができた。その部屋に娘と護衛団の面々を集め、事の顛末を聞く。
新顔の目立つ護衛団のメンバーの中から一歩進み出て口を開いたのが電話の相手だった。どう見てもこの世界には向いていない容貌。年齢は娘とほとんど変わらないようだ。旅団の一人を捕らえたというが、にわかには信じられない。身体の線の目立たない服から覗く首筋や手は細く、その姿はオレが勝手に想像していた屈強な若造とは程遠かった。
採用されて間もないのに大役を任せられたせいか、化け物並みの相手を捕獲した疲れのせいか、やつれて見える。それを差し引いても、造作の整った少年とも少女ともつかない顔立ちはオレの関心を誘った。ガキにも男にも興味はない。しかし今、目の前でこれまでの概要を手際よく語る姿は生ける人形のようで、ぼんやり眺めていると話の内容が右から左へと流れてしまいそうになる。こいつに、触れてみたい。
打ち込まれた文章を出力するような理路整然とした人形の報告を聞き終えてから娘の処遇を結論づけ、部屋から追い払った。娘に仕事の話は聞かせたくない。盗みだの殺しだのという言葉が出るなら尚更だ。
不貞腐れた様子の娘がドアを閉める音を確認してから葉巻に手を伸ばした。飛行船の中で集めた情報を伝えながら火を点け、煙を吐き出す。ここからが本題だった。旅団暗殺チームへの、人材の組み入れ。成果など出さなくてもいい。チームの中にノストラード・ファミリーの名があったとコミュニティー上層部に伝われば充分だ。
護衛団のメンバー全員の前でこの人形を暗殺チームに参加させることを表明する。誰からも異論は上がらなかった。すなわち、こいつにはそれだけの力があると認められているということだ。計らずも人払いの口実が出来上がったことに気付く。
「暗殺チームの件で君と打ち合わせがしたい。他の者は外してくれ」
ごく自然な直立不動の姿勢を保つ人形の顔を見て告げると、他のメンバーは各々頭を下げて部屋を出て行った。
「暗殺のプロ、と仰いましたが?」
誰もいなくなった部屋に、低いがよく通る声が響いた。生真面目なヤツだ。オレがなんのために部屋に残したのか、まるで感付いていないらしい。一応、不自然にならない程度に話を繋いだ方がいいかもしれない。
「ゾルディック家を知っているか?」
「…ええ」
「十老頭が雇ったのはヤツらを始めとする手練れの殺し屋だそうだ。ファミリーから構成員を出すのはオレの組のみ。だが、無理をすることはない。あくまでも名を売るための参加だと思ってくれ」
「…はい」
返答の度に妙な間が空くのはこいつの癖だろうか。
「市内のホテルでチームのメンバーの顔合わせと最終的な打ち合わせがある。オレも同行しよう」
葉巻の先を灰皿に押しつけ、火を揉み消す。
「…判りました。では、私は準備を」
一礼して踵を返そうとする人形の手首を、ソファから立ち上がって掴んだ。握った手応えのなさに驚く。若木の枝でも掴んだかのような、頼りなく細い手首。女か。胸中、安堵した。この際、男でも構わないと思ってはいたものの、元々そんな趣向はないのだ。
「…なにか?」
温度の感じられない眼が、ただオレを見ていた。媚びも畏怖もない。だからといって見下している感もない。つまりは、無関心だった。オレとの間にある透明な壁。それを作っているのがオレではなく、この小娘だということがひどく許し難いことに思える。手首を掴んだまま再びソファに腰を下ろすと、人形はオレに引きずられもせず手を振り払いもせず、そのときと同じ間合いを保ってこちらに足を進めた。実際に壁を隔てているような距離の取り方が小賢しくて気に入らない。
人形を囲う場所を作るために、ソファテーブルを足で蹴り退ける。威圧を込めた視線を人形の顔に据え、ベルトを緩めながら一言だけ言った。
「しゃぶれ」
一連の動きを見つめる大きな眼が少しだけ細められたが、動揺した様子はない。飛行船の中で飲んだ酒はとうに醒めているはずだった。酔った勢いではありえない。酔いに任せて女に絡むことほど無粋なことはない、と数多くの例を見て知っているからだ。では、たった今オレが目の前の小娘に言ったことは。
「私の仕事の基本はお嬢さんの警護のはずです」
今までの妙な間を置いた返事が嘘のように、艶のある唇が即座に言葉を紡いだ。その声にも、やはり温度は感じられなかった。
「そのリーダーを命じたと思ったがな。お前はオレの直属の部下だ」
いつの間にか「君」などとすかした呼び方はしなくなっていた。掴んだ手首を引き寄せようとしたが、わずかに手前に振れた後は微動だにしない。そういえば、ただの小娘ではなかった。護衛団の人員採用に際し、ダルツォルネに伝えた最低条件はひとつのみ。「強い」こと。こいつはそれをクリアしてここにいるのだ。その気になれば、オレの腕をへし折ってこの部屋を出ることもできる。
「直属の部下であっても、私のすべきこととは思えません」
力の均衡を保ったまま、オレの手から抜けるでもなく抑揚のない声が返ってきた。おかしな意地が湧く。いっそ金切り声を上げて総身で拒否するか、商売女じみたやんわりとした逃げを打つなら、こっちも笑って手を離してやるものを。短くなった煙草を橋の上から川面に捨てるような無頓着さで人形の手首を投げ放つ。意地を押し通すために口を突いて出たのは、ひどく稚拙な脅しだった。
「そうか。明日、今日までの報酬を用意させる。ご苦労だった」
「…それが嫌なら従え、と?」
ガラス球めいた瞳の奥が暗く光る。専横な命令と自尊心を天秤にかけているようだった。裏社会で急速に頭角を現し、成長を続けるオレの組の下で伸し上がっていく算段でも立てているのだろうか。意外だった。先見の明はあるようだが、野心を持つタイプには見えない。なにかを推量する表情が消えないうちに次の言葉を落とす。
「どうとでも取ればいい。お前次第だ」
沈黙した人形の視線がわずかに泳いだ。相手の心の揺らぎを利用しない手はない。ちょっとした賭けだ。こちらに傾きかけた天秤が浮き上がる前に、畳みかけるように命じる。
「選択肢をやろう。選べ。ここに跪くか、この部屋を出るか」
結果如何では有能な護衛要員としてのこいつをむざむざ手放しかねないのに、それでも這いつくばらせたいという欲求が勝る。自分がつまらない支配欲に血迷っているだけだということは判っていた。人形は身じろぎもせずオレの顔を正面から見ている。腹の底が冷えるような閉塞感。ただの悪ふざけだ、と笑ってごまかしてしまおうかと思いかけた頃、空気は動いた。開いたオレの脚の間へと踏み出した人形が、そこで膝を折ったのだ。
これまで仰ぐように見上げていた白い顔が、今は視界の底部にある。足許から這い上がってきた震えが腕へと回り、肌をざわめかせた。この震えがなにに起因するものなのかはすぐに理解できた。常人たる自分と比較して明らかに身体能力の勝る小娘を、持てる権力の一枝のみで制圧する悦びだ。
女に対して直接的に権力を振るうのは外道のすることだと思っていた。どんな高慢な女にも紳士然として接し、面倒事になりそうなら取り繕うように甘やかして回避してきた。こいつには、恐らくそれが通用しない。それゆえに、取り澄ました顔で単調な受け答えをするこの人形が解雇をちらつかせただけで首を垂れる様が、たまらなく快かった。
ボタンを外し、ファスナーを降ろす。下着の中から勃ち上がったものを取り出して、人形の注意を引くように軽く腰を動かし座り直した。
「咥えるんだ。お前が自分の男にやっているようにな」
人形が、初めてその顔に感情を浮かべてオレを見た。一瞬の閃光のようにすぐに消え去った表情は、激しい怒りに見えた。懇ろな間柄の男のことでも思い出したのかもしれない。
「どうした? 早くしろ、時間がない」
そう言うほど時間がないわけではなかった。少なくとも小娘の唇の内側にモノの世話をさせるくらいの時間はある。躊躇いがちに小さな唇を開く人形を、ソファに背中を預けて眺め下ろした。まるでそのための奴隷、それも場末の娼館から堕ちたような年増ではなく、借金漬けにした良家の生娘をそのカタに取って奉仕させているような錯覚に捕らわれ、興奮する。
人形の唇が一瞬だけモノの頭に触れた。それ以上は緊迫した熱い吐息がかかるだけで、ゼンマイが切れたように動かない。苛立った。
「もったいぶるな。焦れったいヤツだ」
上から頭を押さえつけてやる。オレの膝に手をかけ、首に力を入れて拒もうとするのをさらに強く押し下げると、温かく湿った感触に包まれた。人形の喉の奥から上がった嘔吐くような声とそこから伝わる振動に、モノの硬度が増すのが判った。途中、歯が当たったことなど気にもならない。
ふと疑問が湧いた。旅団の者を捕らえるだけの実力があるというのに、こいつはなぜこの新興ファミリーに流れてきたのだろう。頂点に近づきたいのなら、大手や古参の組へ売り込みをかければいい。いや、やめよう。理由はどうあれ、今はオレの部下だ。
人形は根元まで突っ込まれたまま、まだ苦しげに嚥下反射を繰り返している。どうやらこいつには経験がないらしい。震える舌と口蓋に挟まれ続けるのは悪くない感覚だが、胃の中身をぶちまけられてスーツを汚されるのは勘弁願いたかった。
「最初にしゃぶれと言わなかったか? 舐めるなり吸うなりできるだろう?」
頭を押さえていた片手を横にずらし、もう一方の手を添えて両側からこめかみを鷲掴みに抱えた。人形の頭を持ち上げ、また沈める。呻き声と咳き込む音がオレのモノに直接響き、得も言われぬ快感が駆け上がってきた。触覚だけが反応しているのではない。小生意気なガキに無理やり咥えさせているこの状況に高揚するのだ。
オレの膝に掌をつき、肘を曲げて昆虫の脚のような形に突っ張らせた腕が、人形の拒絶具合を如実に表している。繰り返し両手の中の豊かな金糸を上下させているうちに、頂点が見えてきた。ガキを相手にこんな真似をする趣味はなかったはずだ。最後の高まりに目を閉じて、これを機にいろいろと仕込めば大きく化けるかもしれない、などと不埒なことを考える。その過程で見るであろう人形の歪んだ表情がいやにはっきりと頭に浮かび、年甲斐もなく抑えが利かなくなった。
「いいか、全部飲み込め。その顔と服を汚したくないならな」
人形の背中に緊張が走った。掴んだ頭を動かすのをやめ、腰を使って喉壁に叩きつける。細い指がオレの膝に強く食い込んだ。…射精る。
「ぅ…ぐっ、んぅ…っ、ん…」
脚の間で金色の頭が震え、辛苦する声が低く続いた。突き抜ける強烈な快感。オレの言ったように顔や服を汚す気はないらしく、人形は隙間から取りこぼすまいと唇を締める。口淫の技量など皆無だった。それなのに、あの女の卓越した舌技に果てるときよりも充実しているのが不思議だ。
モノに密着した唇がゆっくりと先端へと滑り、やがてカリを小さく捲り上げて離れた。眉を顰め、不本意そうに瞳を潤ませた人形の口許がわなないている。ひどく残酷な感情がどす黒い霧のように胸裏に立ち込めた。襟の詰まった暑苦しい服の胸座を掴んで引き上げる。肉付きの薄いあごを浮かせてオレの視線を避けようとする顔は、見紛うことなく「女」だった。
「見ててやる。さっさと飲め」
その味など知らないが、美味いものではないということくらいはわざわざ舌の上に乗せずとも判る。なにか言いたげな表情を、人形は目を閉じることで押し隠した。あごの位置をさらに高くして首筋を伸ばす。やがて、襟元から覗く白い喉が大きく動いた。精を飲み下す音が、広い部屋の静寂をさざめかせる。再びオレを見た人形の眼に、卑屈さは微塵もなかった。対して、その漆黒の瞳が映し出す顔には明らかな狼狽。
人形の唇を凌辱することで、そいつとの間にある得体の知れない壁を打ち砕いて終わりにするはずだった。そう何度もできる年齢でもない。だが、落ち着いたかと思われたモノは、その手の薬物に頼っているかのように勃ち始めていた。壁は依然としてそこにある。それどころか、透明度を保ったまま厚みを増している感さえあった。
「後ろを向いて、そこのテーブルに手をつくんだ」
狼狽を取り繕うように、先ほど蹴って遠ざけたソファテーブルをあごで指す。なんとかこの強情そうな小娘を屈服させてやろうと考えつくことといえば、結局こんな下卑た真似だけだった。人形は黙って床についた膝の向きを変え、言われたとおりテーブルに手を置く。
「なにをしている? オレの目の高さにケツを持ってこい」
やけになったのだろうか。オレの言葉を受けた人形は、今度は躊躇なく尻をすっと上げた。まっすぐ伸ばされた脚の上の丸みは思っていたよりも高い位置にある。腕を挙げ、予告もなしに丈の長い外套のようなものを捲り上げた。細身のわりには、今にも弾けそうなそそる尻をしている。堪えきれなくなって穿いているものを下着ごと乱暴に掴み、膝まで下げた。
ひん剥いてしまえば、尻そのものよりも髪と同じ色の毛が薄く覆う裂け目とわずかに周囲の色素の濃い小さな穴に視線が吸い寄せられる。指を伸ばして裂け目をなぞった。ぴくりと動く尻を鼻で笑い、指を押し込んでやる。裂け目の縁の肉が指にまとわりついて、すんなりと入らない。淡い桜色をした秘肉は、男を受け入れる準備など全くできていなかった。本物の人形並みの反応の薄さに腹が立つ。
「処女か?」
答えはない。まあ、いい。入れてみれば判ることだ。小刻みに震える白い尻を眺めながら、歯や舌を使って自分の頬の内側を刺激する。そうしてたっぷりと湧き出た唾を掌に吐きかけた。目の前に剥き出しになっている人形の陰部にその手を密着させる。跳ね上がった尻に唇の端を歪ませ、濡れた掌をぐりぐりと押しつける。捲れ、捩れて、拡げられていく花弁の感触が伝わってきた。みるみるうちに陶磁のような肌が粟立つ。オレに触れられるのがよほど気に入らないらしい。
人形の神経を逆なでしてやるために、その尻をべろりと舐め上げた。冷たくなめらかな肌。細腰が踊った。
「嫌ならやめてもいいんだぞ? ただし、契約は今日で終了だ」
泣いて許しでも請え。なにに対する許しなのか、自分でも判らない。だが、それだけでオレは自分に歯止めをかけることができる。
「…時間が、ないのでは?」
数秒の間の後で、思いのほか冷静な言葉が返ってきた。後ろから尻を剥かれ陰部をまさぐられながら、こいつはそんな台詞を吐く頭を働かせていたのか。場合によっては引き返せるかもしれないと放さずにいた手綱が、音を立てて千切れた。
「間に合うようにお前がなんとかすればいい」
くびれた腰を絞めるように掴んで引き寄せる。立ち上がり、唾に濡れた割れ目にモノを押しつけた。花弁を巻き込みながら、先端が人形の中に消えていく。が、そこまでだった。まだ滑りの悪い襞が邪魔をして一気に押し入ることができない。舌打ちをして人形のシャツを片手で引き乱し、腹から上へと掌を滑らせた。
「少しは気分を出せ」
指に触れた下着を捲って、柔らかく実った乳房を握る。人形が息を呑んだ。
「随分と貧相だな」
余裕の残る掌に率直な印象を口にするが、反応はなかった。張りだけはある小振りな乳房から手を離して、その底辺に突出している芽を摘んで捩る。
「んん…っ」
瞬間、尻を震わせて人形がようやくそれらしい声を出した。同時に膣内がじわりと湿り、収縮する。わずかにモノが奥へと誘われた。口の筋肉が引き攣るように笑みの形を作るのが判った。
「なんだ、ここがイイのか?」
人形の啼きどころを見つけた優越がオレを調子づかせる。もう一方の手指で余っている若芽をしごきそのまま縦横に動かすと、乳房全体が揺れた。今までとは打って変わり、濡れて抵抗の少なくなった膣肉を攪拌するように腰を回しながら進んでいく。
「んぅ…は…ぁっ!」
「なかなかかわいい声で啼くじゃないか、ん?」
双方の芽を摘んだ状態でまた乳房の肉を握り、その身体を手前に引いた。人形の重みを受けて、倒れるようにソファに腰を落とす。一瞬にしてモノが温かな泥濘に根元まで埋まった。
「あ…ぅ」
自分の体重で奥まで突き入れられた人形は声を上げて締めつける。破瓜に痛がる声ではない。肩透かしを食らったような気分になった。手を乳房から尻に移し、浅くかけた腰を引いて結合部に目をやる。出血は見られなかった。色恋沙汰に興味のなさそうな顔をしているからもしかしたらと思ったが、お手付きだったというわけだ。根拠のない勝手な思い込みを棚に上げた失望があった。それはやはり根拠不明の怒りに似た感情にすり替わる。
深く打ち込まれたモノから逃げるつもりなのか、ソファの肘掛けに手をついて腰を浮かせようとしている人形の白い尻朶に指先を沈めた。背もたれに両肩で寄りかかり、大きく腰を突き上げる。
「うぁ…あぁっ」
人形が背中を反らせて啼いた。馴染んだ女が聞かせる甘ったるい声とは違う苦痛に耐えるような声は、これまで気付かなかった自分の中の加虐心を肥大させる。こいつが組に留まることに執着するのなら、気の向く限り何度でも犯しぬいてやる。尻を掴む手にいっそう力を入れて、また人形の奥深く欲をぶつけた。ガキのくせに、いや、ガキだからか相当に具合がいい。一突きごとに肉の鳴る音が響き、人形が抑えた呻きを吐く。
若く未熟な身体を有無を言わせず割り裂く興奮は、二度めとは思えないほどの勢いでオレを絶頂に近づかせた。なにか別のことでも考えないとすぐにでも達してしまいそうだ。
「はぁ…ぅん!」
どこか好みのところにでも当たったのだろうか。突然、人形が鋭い声を上げて身体をびくつかせた。あまつさえきつい締めつけが、モノを食い千切らんばかりに強くなる。別のことを考えつく間もなく、モノの中央を精が抜けた。間隔をおいて、搾り取られるように残っているものが人形の腹の中に注がれていく。指の食い込んだ柔らかな尻を引き下げ、隙間なく腰を押しつけてその余韻を楽しんだ。乱雑なオレの呼吸と、儚げな人形の呼吸の音が重なりもせずに繰り返される。
程なく人形の中のモノは猛りを鎮め始め、オレは息を吐き出しながら天井を仰いだ。同時に尻を掴む手の力が緩んだのを察知したのか、人形が肘掛を支えにオレの上からそっと立ち上がる。一瞬だけ、このまま離れずにいて欲しいと思った。だが、自身を包む温もりは去り、少しばかり縮んだモノは情けなく横倒しになった。
顔を俯けて崩れた服を淡々と直す人形は、オレを振り返ることもなく優雅にも見える所作で首を巡らせ、バスルームのある方向で視線を止める。
「失礼します」
そのまま短く告げて、むだのない動きでバスルームに消えた。こうまでされて、なぜこのファミリーにこだわるのだろう。人形の痛々しいほどの忍耐ぶりと不自然なまでの事後の平静さが、先刻と同じ疑問を再び頭に浮かばせる。娘の占いさえあれば、オレは着実に上へと進んでいける人間だ。側にいて損はないと言い切ってもいい。だが、それは反発もせずオレに身体を嬲らせる理由になりえるのだろうか。
一分と経たずに耳に届いた水洗の音に我を取り戻した。すでにだらしなく萎えたモノを小娘の目に留めるのは間が抜けすぎている。淫液と己の精に濡れたそれを拭うのを諦めて、手早く片付けた。
改めて姿を現した人形からは強姦じみた情交の気配は欠片も感じられない。こちらに向かってくる歩みを相応の距離を取ったところで停止させ、感情の読めない黒い瞳をまっすぐにオレに向けた人形の口が開く。
「…行きましょう。道が流れていれば遅れずに済むかもしれません」
「お前は…」
直接疑問をぶつけかけて、言葉は途切れた。先を促すように、人形がゆっくりと瞬きをする。目的など、訊く意味はないように思えた。それよりも知りたいことがある。愚かしい問いだと判っているだけに、その目を見て訊くことはできなかった。目蓋を下ろし、深い溜息でごまかしながら続ける。
「…これでもここにいるつもりか?」
「あなたが、それをお望みなら」
オレが望むなら、甘んじて受け入れるのもやむを得ない。言辞の上では当否を濁しながらも、明確にそう伝わる答えだった。自分の娘と同じ年頃の部下を手篭めにした後悔はない。まだ熟れきらない身体を弄ぶという新たな愉しみに目覚めたわけでもない。この世界のどこへ行っても認められるであろう優れた実力を持ちながら解雇を盾にするだけで一切の抵抗を封じることのできる、この生意気な顔をした人形がいいのだ。
「もう出られますか、ボス?」
何事もなかったような平坦な声が、チームの打ち合わせに出向くための確認を取る。気位の高そうなこいつが、オレの持つ要素の一体どれに拘泥してこの足許に跪いたのかは、ようとして知れない。ただ、悲壮なまでの覚悟を内に秘めてこの場所に立ち続けようとしていることだけは判った。ならば、任せた仕事の後で、夜ごとオレの欲に仕えさせるまでだ。
「ああ、行こう」
手荒さを否めない情事で髪が乱れているかもしれない。両手で頭を撫でつけ、ソファから腰を上げた。決められた時刻には間に合わないだろうが、どうせ仕切っているのは無能な豚野郎どもだ。慌てる必要はない。オレの先に立ってドアを開ける人形の後姿を下から上まで眺めた。仕事を終えてこの部屋に戻ったら、後ろの穴の皺一本残さず身体の隅々まで可愛がってやる。