「スカートなんか履きたくなかったのだが」
そう言ってスカートの裾を所在無く引っ張るクラピカの隣に、ひどく目立つ長身の男が並んだ。
顎まであるもみあげを触りながら「そうか、結構似合ってるぜ」と目をそらして言う。
男の名はレオリオ。
「何故、お前がここにいるのだ。」
「見りゃ分かるだろ。留年って奴だ」
「威張って言うものじゃないだろう」
そりゃそうだ、とレオリオは後ろめたそうに言った。
2年も留年しているレオリオだが、決して頭は悪く無い筈。その意図をクラピカが知るのは、もう少し後になってからだった。

「君、新入生。可愛いね。ボクは数学の教師、ヒソカ。よろしくね」
教師にしては奇抜な恰好をした男が話しかけて来た。しかも馴れ馴れしい。
握手を求められたが、何となく気持ち悪いのでクラピカは無視をした。
残念、とヒソカは口を窄めて言った。

学校に入学してから、その髪色のことでクラピカは校長に呼び出されていた。
数学の教師も奇抜な恰好をしていたではないかと口にしたが、教師だから良いのだ、と腑に落ちない理由で片付けられてしまった。
「これは地毛です」
「地毛で無くてもそうであっても、その色は目立ち過ぎる。俺の言うことを聞けないというなら、致し方ない。しかるべき対処を取らなければな」
ノストラードと名乗る校長は、不敵な笑みを浮かべた。
「こっちへ来て服を脱げ」
「は?」
「地毛かどうか確かめるんだ。早く脱げ。言う事が聞けないなら、お前は明日から丸刈りだぞ。ん?どうした?丸刈りが嫌なら早く脱げ!」
ノストラードの魂胆は丸見えだ。校長という権力を翳し、生徒であるクラピカに如何わしい事をしようとしている。
「無理です。」
拒絶するクラピカにノストラードは眉間に皺を寄せた。そしてデスクの抽斗からバリカンを取りだした。
「じゃあ、剃るしかないな」
坊主か脱ぐか。どっちを選んでも屈辱になることには変わり無い。
クラピカは仕方なくスカートのホックに手を掛けた。するするとスカートは地面に落ち、薄い下着に包まれた若い女の下半身が曝け出された。
「下着も取るんだ。脱がないと分からないだろう」
クラピカは下着に手をかける。膝までおろし、証拠となるものをノストラードに見せてから、下着を元に戻した。
「本当だったようだな。しかしもう少し間近で見なければ分からないだろう。染めているという可能性もある」
「そんな…。こんな所染めれるわけが無いでしょう」
首を振るクラピカにノストラードは近付いた。
「もう一度脱ぐんだ。早くしろ。」そしてバリカンを見せる。
躊躇うクラピカに苛立ったのか、ノストラードはクラピカの下着を思い切り下げた。
「あっ…」