7月29日−夜。眞魔国−血盟城。
軽やかな音楽が流れ、広間には笑いが満ちあふれている。
そんな中、俺−渋谷有利原宿不利・・・は大広間から抜け出し、自分の寝室へと向かっていた。
今日は俺の誕生日だ。
朝から、何人もの人に『誕生日おめでとう』といってもらえて・・・プレゼントも持ちきれないほどたくさんもらった。
それはすごく嬉しかった。
けど・・・。
「はぁ・・・」
知らず知らずのうちに溜息を吐き、寝室へのドアを開け中に入るとそのままベッドにダイブする。
少し離れた机の上には皆からもらったプレゼントが山積みになっている。
ちなみに、ギュンターからは手に抱えきれないほどのバラの花束を、グウェンダルからはかなり大きな白いライオンのぬいぐるみを、グレタからはグレタお手製のグレタ人形をもらった。
サヤさんからは万年筆だったし、門崎からは手作りの野球のボールだったっけ・・・。
俺はふかふかのベッドの上で足を思い切り伸ばす。
う〜・・・気持ちいい・・・。
でも、心はなぜかもやもやとしたままだった。
「・・・コンラッド・・・」
俺の護衛兼保護者兼名付け親・・・そして恋人でもあるウェラー卿コンラート。
ダークブラウンの髪に銀を散らした薄茶色の瞳を持つ好青年は、一昨日から任務によりここ、血盟城にはいなかった。
『明後日までには必ず帰ってきます。だから、そんな顔をしないで下さい。』
コンラッドが任務に出発する直前、少しだけ寂しくてコンラッドの手を無意識に握ってしまったのだ。
あの時、彼はそう言うといつも通り爽やかな笑みを浮かべ俺を抱き寄せて・・・口づけをしてくれた。
「俺の誕生日、終わっちゃうじゃんか・・・。バカコンラッド・・・」
天蓋付きのベッドに仰向けになるとうつらうつらと眠気が襲ってきた。
考えてみれば、今日は朝早くからヴォルフラムに起こされてたし、それからは俺の誕生日パーティーの準備だとかいって何かとばたばたしてたもんな・・・。
「眠い・・・でも、寝ちゃ・・駄目・・だ」
瞳を擦りながら俺は呟くがいつの間にかすぅっと眠りに落ちていった。
「んぅ・・・?」
どれくらい時間がたっただろうか、俺は自分の髪を大きな手が撫でるような感覚に体をもぞつかせた。
すると、頬に何か温かい壁のようなものにぶつかる。
って・・・壁!?え、俺、ベッドで寝てたよな!?
思わずその壁をたどるように手をはわせると耳元でくすくすという笑い声が聞こえてくる。
・・・え・・・?この声って・・
「・・コンラ・・ッド・・?」
「おはようございます、ユーリ。」
そのまま耳にチュッと口づけを落とされてバッと目を開けた。
「うわぁあ!?あ、あんた!何してるんだよ!!」
俺をしっかり抱きかかえているコンラッドに驚きながら辺りを見回す。
どうやらさきほど俺が壁だと思っていたのはコンラッドの胸だったらしい。
つまり、俺はコンラッドの胸に顔を埋めるようにして眠っていたわけで・・・。
それにここは・・コンラッドの部屋?
「あまりに気持ちよさそうに眠っていたので起こすのは申し訳ないと思い陛下を抱えて俺の部屋に連れてきたんです。」
耳元で囁かれ顔をそちらへ向けるとそこにはウェラー卿コンラートが俺を抱きしめたまま顔をのぞき込んでいる。
「コ・・・コンラッド・・?いつ、帰ってきたんだよ!」
「ついさっきです。広間に貴方がいないと聞いたときは少し焦りましたけど・・・」
そういうとコンラッドは瞳を細めて俺の頬に手を添えた。
「ごめん・・、あんたの帰り待ってるつもりだったんだけど・・。今日は少しばたばたしてたから・・」
申し訳なさそうにいうとコンラッドは小さく首を振り俺の唇に自分のそれを重ねる。
「いえ。俺の方こそ、すいませんでした。今日までには帰ってこようと思ってたのですが、こんなに遅くなってしまって・・」
遅く・・・?
その言葉に俺は自分の腕の時計をバッと見つめた。
PM23:59・・・。
そんな様子の俺を見てコンラッドは苦笑いをしながらも俺の腕時計を外し出す。
「コンラッド・・・?」
「ぎりぎりだったみたいですね。でも、間に合って良かった。・・ユーリ、誕生日おめでとう。貴方に会えたことを何より幸せに思うよ。」
その言葉を聞いた途端、俺の胸はすぅっと晴れていった。
そっか、俺、この人に言って貰いたかったんだ。
誰よりも俺のそばにいる、コンラッドに・・・。
俺の腕時計を外すとコンラッドはそれをサイドボードの上に置き、俺の手をそっと取る。
「これは、俺からの誕生日プレゼントです」
そういうと彼は俺の手首にブレスレットをはめた。
小さなプレートが付いているシルバーの細いチェーンのブレスレットだ。
「コンラッド・・・。」
「なかなかいいのが無くて・・・。グウェンダルに頼んで休みを貰っていたんですが・・遅くなってしまいました」
そういって苦笑いを浮かべるコンラッドに俺はきょとんとしてしまう。
え・・・。じゃあ、コンラッドがいなかったのは任務じゃなくて・・・俺のプレゼントを買いに行ってたのかよ・・
「・・・そんな、俺へのプレゼントなんかそこらへんに売っているものでよかったのにどこまで買いに行ってたんだよ」
「地球です。それに・・・どうしても貴方にそれを差し上げたかったんです。貴方はその魔石のペンダントを俺とジュリアの思い出が詰まった大切なものだといった。でも、前にもいったとおりユーリを護るのは俺です。だから・・・これからは俺との思い出を作っていって欲しくて・・。これから、ずっと・・・」
俺の胸にある蒼い魔石のペンダントを見た後、コンラッドは自分の軍服の襟元を外した。
「あ・・・」
そこには俺が貰ったものと同じ形をしたネックレスがかけられている。
「・・・コンラッド・・・これ・・」
コンラッドの胸元に手を伸ばしそのネックレスに触れるとコンラッドが俺の手をそっと掴んだ。
「もう1つ、プレゼントがあるんです。」
「・・・え?」
そのままコンラッドはとさっと俺をベッドに押し倒す。
・・・え・・、コ・・コンラッドさん!?
「プ・・・プレゼント・・・?」
嫌な予感をひしひしと感じながらそう尋ねるとコンラッドは今までで最高の笑みを浮かべながら俺の耳元でこう囁いた。
「もう1つのプレゼントは俺自身・・なんてどうですか?」
数秒後、コンラートの部屋からガタンッという音が響き、『お、俺はこのブレスレットで十分だって!ありがとうな、コンラ・・・ッ・・!』というユーリ陛下の声が聞こえてきたのは内緒の話だ。
Fin
Happy BirthDay
〜貴方に出会った日〜
〜あとがき〜
遅くなりましたがユーリ陛下誕生日記念小説です!!(ヲィ)
本当はフリー小説にしようと考えていたのですが・・・時間が・・時間が−!!(汗)
ちなみにコンラッドとユーリのネックレスとブレスレットはペアです(笑)
始めはプレートの所にお互いの名前を・・・(ぇ)
と、とりあえず・・・(こら)
ユーリ陛下、お誕生日おめでとーーー!!