ちらちらと真っ白な粉雪が空から舞い降りてきた土曜日の午前中。
ツナはその降り続いている雪の中を背中にショルダーバッグを背負い、急いで待ち合わせの店の前に急いでいた。
出掛けに玄関で『いってきます』といって靴を履いていたツナにディーノが『またあいつに会いに行くのか?』と尋ねてきたことが忘れられない。
確かにここ最近ツナは、週末はディーノ風にいうと『あいつ』と過ごしてばかりいるのだ。
不思議なことにツナの中で「恐怖」や「恐れ」の象徴だった『あいつ』がいつの間にか「愛情」や「愛おしい」という気持ちの対象となっていた。
大きな通りのコンビニの前に『あいつ』はただ1人たたずんでいる。
上から下まで真っ黒な服しか着ていなくて・・それがまたかっこよくてツナはよけいにスピードを上げて『あいつ』に駆け寄った。
「お・・遅くなってすいません。」
元々運動が得意ではないツナは少し走っただけでぜぇぜぇと肩で息をしている。
その様子を見て今まで空を見つめていた『あいつ』はふっと微笑むとツナの肩を抱いて少し早足で歩き始めた。
「あ・・あの・・」
「気にしてないよ・・。家に着いたら綱吉にしっかりと暖めてもらうから・・」
そう爽やかな笑顔でさらりと黒いことをいったのは黒い髪に黒い瞳をもち、群れている奴らをみると隠しトンファーで殴り倒すという風紀委員長、雲雀恭弥だった。
「え・・・!?」
その言葉に何を想像したのかツナの顔が一気に真っ赤になるのをみると雲雀はますますおもしろそうにツナの肩を抱き寄せる。
「君は本当におもしろいね・・。みててあきないよ・・」
「ひ・・雲雀さん!」
・・・ツナと雲雀が学校以外でこうしてあうようになったのはつい最近だ。
ある日、いつものように不良に絡まれていたツナを雲雀が助けたのがきっかけで2人の仲は少しずつ変化していった。
そして1ヶ月前・・・応接室で『僕とつきあってくれない?沢田綱吉くん』という告白(?)を経て、毎週の土曜日、日曜日。
ツナは雲雀の家に行くことが習慣になっているのだ。
「コーヒーでいいよね?砂糖、ミルクたっぷりで・・」
とてつもなく大きな部屋に通され、落ちつきなく辺りを見回すツナに向かって雲雀はいつも通りそういうと内線電話で使用人に連絡を取っている。
「あ・・はい・・」
コートを脱ぐとツナはそれを手に持ちソファに腰かけた。
「雪・・・ひどくなってきたね」
雲雀がぽつりと呟いたのを聞き、窓の外を見ると確かに雪は先ほどまでの粉雪ではなく今は大きめのぼたん雪が大量に降っていた。
「これ・・・積もりますよね」
「うん。明日が日曜日で良かったね。」
そういいながらツナの隣に雲雀が座るとツナの胸は一気に高鳴った。
そのまま雲雀はツナの髪を優しい手つきで梳き始める。
それは2人で決めた「合図」だ。
「雲雀さん・・」
「2人でいるときは・・恭弥・・でしょ?」
雲雀が親指でツナの唇をゆっくりと輪郭に沿ってなぞる。
「ンっ・・・」
そのくすぐったさにツナが微かに笑ったのをみると雲雀は「かわいい。」と呟きそのままツナの唇に自らの唇を重ねる。
ただ重ねるだけの幼いキス・・。
「ん・・ッ・・」
ツナが瞳を閉じると雲雀はツナの腰を抱き寄せ、少しだけ長いキスをしてツナの唇を吸うとすぐに離し、今度は啄むようなキスをする。
「綱吉・・好きだよ・・」
お互いの吐息がふれあうほど近い距離にいて、キスの合間に降ってくる言葉にツナは嬉しそうに微笑んだ。
「俺も・・恭弥さんが好きです」
そして今度は自分から雲雀にキスをした。
「・・・・・。」
外では雪が降り続いている。
あたりは物音一つしない。
そんな静寂の中、雲雀はなにやら難しそうな本を眼鏡をかけてゆったりとした姿勢でそれを読んでいる。
ツナは・・その隣で雲雀の肩にもたれるようにしていつの間にか眠りに落ちていた。
時折、寝心地がいい位置に頭を動かすツナの肩に腕を回し雲雀はその様子をみて微かに微笑んでいる。
そばにはさきほどメイドが持ってきた大きなカップが2つ置かれていた。
雲雀は本を閉じるとツナの唇に再びキスを落とす。
「・・本当に君は目が離せないな・・綱吉・・」
そういうと雲雀もツナの頭に顔を埋め瞳を閉じた。
外はみるみる銀世界に変わっていく。
あたりは静寂に包まれていた。
そんな中、2人分の心地よさそうな寝息が部屋に微かに響いていてた。
<FIN>
postscript
初、ヒバツナです!鬼畜な雲雀さんも好きなんですが・・(爆)
たまにはこういうほのぼのもいいなぁ・・と。
05’ 2.3