−『…−−ッ−−』−
どこまでも広がる深い闇。
その中でまどろむような感覚を覚えていた俺は誰かに「名」を呼ばれた気がしていつの間にか閉じていた瞳をゆっくりと開けた。
た だ い ま
−序章−
「…あ…」
開けた瞳に飛び込んできたのは鮮やかな赤い色。
いつからだろうか、俺は大量の彼岸花の中で仰向けに寝ころんでいた。
空は太陽が赤く輝く夕焼け空。
「…そっか、ここは…」
見覚えのある空に今自分がいるところを理解し、俺はゆっくりと上半身を起こす。
綺麗な川が流れるほとりに茅葺き屋根の家が見えた。
懐かしさを感じながら立ち上がると軽くポンポンと尻に付いた土を払い、その家を目指す。
家の中に入るとカラカラカラ…と糸車を回す音。
その音につられるようにそちらをみると障子に移る老婆の影。
彼女が「おばあちゃん」と呼んでいた人物だ。
「…−」
俺が障子に声をかけるよりも早く糸車の音が止み、代わりに落ち着いた老女の声が耳を打った。
「久しぶりだねぇ。待っていたよ」
待っていた、その言葉に俺は全てを理解した。
あぁ、そう言うことか。
「もう心は決まっているんだろ」
「…はい。」
俺が静かに頷くと障子の向こうから小さな溜め息が聞こえてくる。
「悲しませることになるよ?それでもいいのかい?」
誰が悲しむかなんて聞かないでも分かる。
『彼ら』は、きっと悲しむだろう。
それでも…−
「これは、俺が決めたことですから」
一度瞳を閉じ、ゆっくりとそれでもはっきりと言葉を紡ぐ。
そう、これは誰でもない俺の意思。
自分が選んだ道だから、もう後戻りは出来ない。
「そうかい。ならもう何も言わないよ。」
老婆が俺に告げると同時にこの家には不釣り合いなものが目にとまる。
純和風な家の中、埃を被ったパソコンが一台。
そして、小さな起動音と共にそれまで真っ暗だったパソコンの画面が赤く光り、その中央にはよく見知った刻印−円を内側から突き破るように描かれた炎の刻印−がしっかりと記されている。
「…迎えに来たよ」
突如として背後から聞こえてきたまだ幼い少女の声に振り返ると家の入り口にセーラー服を纏った少女の姿が見えた。
腰まである黒い綺麗な長髪、その顔はまるで人形のように整っていた。
「久しぶり。…お嬢」
そう声をかけると少女−閻魔あいは小さく頷き、まっすぐに俺へと手をさしのべてきた。
「本当に、いいの?」
「ああ」
彼女の祖母と同じ事をいうお嬢に思わず苦笑いを浮かべながら差し伸べられた手へと自らの手を伸ばす。
その白くて冷たい手に手が触れる瞬間、お嬢の口が小さく動いた。
「ごめんなさい」
俺はその言葉に返すようにお嬢の手を優しく握る。
「お嬢。お嬢のせいじゃないよ。俺が決めたことだから、誰に強制されたわけでもない。俺が一緒にいたいだけなんだ、お嬢達とさ」
そう言って微笑むとお嬢の綺麗な赤色の瞳が微かに細められ、俺の手をそっと握り返してくるのを感じた。
「…一緒に来なさい、」
「ああ。お嬢」
+Comment+
地獄少女第3期ネタ連載の序章です。
ってか…短くてすみませんorz
時間の流れとしては1話と2話くらいの間のつもりです。
漫画だと第2期と第3期の間って10年経ってるんだけど、それはアニメでも同じなのでしょうか(汗)
(…それ以前に1期と2期の間も結構時間経ってたよね/汗)
え〜…っと。一応少なくても10年は経っていること前提で今のところ書いています。
ただし、夢主の姿は第1期の時から変わっていない設定です(ぇ)
それはなぜか。
…それについても書けていけたらいいな。(と思っています/汗)
2008.12.31