Meeting With Its Lover



その日は、珍しく「仕事」のオフと休日が重なっていた。

「ふぅ・・・結構買ったよな」

俺−−が、両手に買い物袋を下げ自室にあるマンションに着いたのはすでに空が茜色から紺色へと綺麗なグラデーションを描いている時間だった。
なんせ1人暮らしの上、高校生と「」という名のアーティストの2重生活。

買い物なんていけない日の方が多い。

こういう時にしっかりと食料確保しておかないとな・・・

そんなことを考えながら、マンションの近くの歩道までさしかかった時、いきなり車道とは反対側にある茂みから手が伸びてきた。

「う・・・わっ!?」

咄嗟のことに反応できず、その手に腕を掴まれ茂みに引きずり込まれる。
ちなみに茂みの向こうにあるのは寂れた公園だけだ。

まさか、痴漢!?変質者!?

・・・ってか俺男なんだけどーーー!!

思わず腕から逃れようとするが、袋が邪魔をしてうまくいかない。
そのままぐいっと引き寄せられると俺は簡単にバランスを崩し、腕の持ち主の胸に倒れかかる。

「わ・・・っ!?」

「見つけた」

瞬間に瞳を閉じた俺の耳に聞こえてきたのはくすくすとどこか軽い笑いを含んだ声。

・・・この声・・・もしかして

声の持ち主に1人だけ該当する人物を瞬時に思いだし、俺は瞳をあけた。

「・・・連?」

俺の腕を掴んだまましっかりと抱きしめている一目連がふっと笑みを浮かべる。

「あたり。探してたんだ、のこと」

その言葉と同時に唇が降りてきて、俺が何か言う暇さえも与えず唇が俺のに重なった。

「っ・・・ン・・・れ・・・」

俺の腕を解放した連の手が腰と・・・尻に回される。

「れ・・・連?」

な・・・なんで尻に回すんだよ!

「ん・・・やっぱりがいいな」

連はにこりと笑みを浮かべると俺の尻を撫で始めた。

「ひっ・・・ァ!?」

体がぴくんと震え、口から声が漏れてしまい慌てて口を塞ぐと俺は連を睨み付ける。

しかし、連はそんな俺にお構いなしで尻を撫で回した。

「れ、連!やめろ・・・っ・・・って、もう!」

連の胸に顔を埋めながら相手の服をぎゅっと握りしめる。

こ・・・これ以上はやばいって・・・!

「やめない。」

・・・連?

一瞬だけ連の声が低くなったのを感じ、少しだけ顔を上げると連はいつも通りに笑っていた。

でも・・・

「・・・何か・・・あったのか?」

そっと連の頬に触れながら尋ねると連は瞳を細め再び口付けてくる。

「別に。ただちょっと欲求不満・・・かな?最近、に触れてなかったし」

「よ・・・っ・・・!?・・・ふ・・・ふざけるな!!」

ダァン!と思い切り連の足を踏みつけると連は「いってぇ」と声を上げ蹲る。

「何が欲求不満だよ!心配して損した!!」

顔を真っ赤に染めながら叫ぶと連は俺をじっと見つめる。
その瞳は少しだけ怒っているようにも見えた。

・・・連・・・?

連は立ち上がると俺を地面へと押し倒す。

「れ・・・連・・・!?」

慌てて名前を呼ぶが、連は瞳を少しだけ細めただけで俺の両手首を1つに纏めると地面に押さえつける。

やば・・・本気で怒ってるよな、これ。

俺に覆い被さるようにしている連の唇がいつもより少しだけ乱暴に重なった。

「んっ・・・!」

でも・・・

嫌じゃないのは俺、やっぱり好きなんだろうな、連のこと。

そう改めて実感すると俺は体の力を抜き、先ほどから俺の唇を舌でこじあけようとしている連のために少しだけ唇を開いた。

「・・・?」

その行動に連が驚いたような声をあげ、そっと俺の腕を解放する。

「何だよ、抵抗した方がよかったのかよ?」

体を起こしながら尋ねると連が俺の髪に触れた。

「・・・嫌じゃないのか、いきなりあんなことされて」

「・・・好きな人にされたこと、なんで嫌がる必要があるんだって」

頬がかぁあああっと熱くなるのを感じながらそう答えると連はふっと笑い、俺の唇に己のを重ねる。

「っ・・・」

優しく抱き寄せられてするキスがとても気持ちいいことだって教えてくれたのは誰でもない、一目連だった。

連は唇を俺の耳元に移動させる。

・・・好きだ」

そのままぎゅっと抱きしめられると俺は自分から連に口付ける。

「お・・・俺も好き。連のこと」

小さく囁くと連は嬉しそうに微笑み、俺の額に唇を落とした。




ちなみに俺が買ってきた食料は連に押し倒された際、地面に叩きつけられていた。

今は、その袋を1つずつ持ち、連に肩を抱かれながらマンションへの道を歩いている。
辺りはすっかり暗くなっていて空には1番星が輝いていた。

「あ・・・そういえば、連、お嬢達は?」

ふと気が付き尋ねると連は段々と見えてきた俺のマンションのある1室を指さす。

「あそこにいるよ」

え・・・あの部屋って・・・

「俺の部屋・・・?あ、もしかして連のさっきの『探してた』って・・・」

確信を持って尋ねると連が小さく頷く。

の部屋に行っても誰もいなかったから、俺が探しにいくことになったってわけさ。」

「何だ、そうだったんだ」

理由が分かり、思わず苦笑いを浮かべる俺に連は笑みを向けた。

「俺としてはと2人きりがよかったんだがな」

「・・・っ・・・!」

その言葉に一気に真っ赤になりながらも俺は誰にも聞こえないほどの声で「・・・俺も・・・だよ」と呟いた。



「ただいま」

リビングのドアを開けると、ソファには輪入道、骨女、そしてお嬢が座っていた。

「よう、邪魔してるぜ」

「うん、今お茶入れるからゆっくりしてってよ」

俺は3人に笑みを向けるととキッチンへと向かう。

「ずいぶん、遅かったね。あ、まさかのこと襲ってたんじゃないだろうね?」

俺の後ろから着いてこようとしている連に骨女が話しかけた。

「さぁ、どうだろうな」

それをさらりとはぐらかしながら連がキッチンへと入ってくる。

、これどこにおけばいい?」

「あ、そこの机の上で良いよ。連もリビングにいてよ、今お茶持っていくから」

「あぁ」

やかんに水を入れながら言うと、かさっと袋を置く音が微かに聞こえ、連がリビングに移動する気配を感じた。

−お嬢達がこの部屋に来るのは約1ヶ月ぶりだ−

というか連に会うのでさえ、3週間ぶりで・・・

『欲求不満』という先ほどの連の言葉を不意に思い出して頬がかぁああっと赤くなる。

「欲求不満はどっちなんだか…」

連に押し倒された時、もっとキスして欲しい、触って欲しいという感情があったからこそ、抵抗しなかったのもある気がする。
っていうか、もっとして欲しかったっていうのが本音だ。

「俺…マジで欲求不満かも…」

溜め息をつきながら小さな声で呟くとやかんを火にかける。

でも、そんなこと連には言えないし・・・。

その時だ、不意に後ろからぎゅっと抱きしめられた。

こんなことするのは1人しか・・・いないよな

「っ・・・連?」

そう声をかけると連は俺の耳元に唇を近づけ囁く。

、ごめん。俺、余裕ないから手加減できないと思う」

「なっ!?」

いきなりの言葉にぼっと頬を染めながら連を見ると、俺を抱きしめていた連の手が服の中につっこまれた。

「れ、連!!今は待てって!」

思わず連の手を掴み制止すると連が不満げな表情を見せる。

「欲求不満だって、言っただろ?」

俺の耳に舌を這わせながら囁かれると体が小さく震えた。

「き・・・聞いたけど・・・ッ」

「久しぶりに好きな奴に会ったんだ。余裕なんてないって・・・」

服の下で動く連の手を感じながらも俺はそっと体の力を抜く。

?」

「・・・俺も・・・そうだから。・・・久しぶりに連に会ったら・・・我慢なんて・・・出来ない」

段々小さくなっていく俺の声を聞くと連は嬉しそうに瞳を細めながら、もう何度目か分からない口づけを俺に送る。


−空にはいつの間にか淡い光を宿した月が昇っていた−




                             

                              



                          

                                                         Fin




〜あとがき〜

「流星雨の子守歌」2周年記念SSです!!
何ヶ月前のだよ・・・orz

遅くなってしまい本当に申し訳ありません(泣)

・・・え〜っと、アンケート1位だった「甘々一目連夢」です!

・・・甘々?(ぇ)

甘々というよりかはエ・・・(自主規制)

地獄少女の甘々が書けるようになりたい・・・!(切実)

本当に遅くなってしまいすみませんでした!
「Meeting With Its Lover」少しでも楽しんで頂ければ幸いですv

ここまで読んで頂き、ありがとうございました。

07' 3.15 氷月涼華 拝



*お持ち帰り期間は終了致しました*