時間はすでに24時をとうの昔に過ぎている。
しかし、今日ばかりはどの家の窓にも電気がこうこうとついていた。

一年で一番めでたい祝い事。-元旦-

「おやすみなさい、跡部部長。宍戸さん。」

一番始めに口を開いたのは氷帝学園テニス部現部長-日吉若だった。
その口から吐く息は白く色を変え空中に出されている。
新年1日目・・いや正確に言うと大晦日の23:00から氷帝学園テニス部元レギュラー+現レギュラー+元マネージャーは初詣へと繰り出していた。
そして今はその帰り道・・・。

「ほら、鳳!宍戸の腕にしがみついてないでいくぞ!」

岳人がそういって先ほどから宍戸の腕を掴んで離さない長太郎の腕をぐいぐいとひっぱるが現レギュラー2年の鳳長太郎は全力で首を横に振った。

「宍戸さん、俺んちにきてくださいよ!2人で初日の出見ましょうよ~~!」

「だーかーら、俺は今から跡部んちにいくっていってるだろうが」

自分の腕を掴んだまま離そうとしない後輩を怒鳴りつけながら宍戸亮は半分げんなりしていた。

「跡部さんとはいつだって会えるじゃないですか!・・・でも、俺とはあんまり会えなくなるんですよ!?」

「・・・当たり前だろ、お前は2年で俺たちは3年なんだから」

どこか論点がお互いに(特に宍戸が)ずれている2人の様子をみて聖はただ苦笑いを浮かべている。

その言い争いに終止符をうったのは宍戸の彼氏である跡部自身だった。

宍戸をぐいっと引き寄せるとその腰に腕を回す。

「あ・・・跡部っ!?」

その行動に宍戸の顔は一気に真っ赤に染まるが跡部は特に気にした様子もなくちらりと樺地をみた。

「樺地、さっさと鳳を引き離して連れて帰れ」

「ウス」

跡部の言うことが絶対の樺地は力づくで宍戸の腕にしがみついている長太郎を引き離すとそのまま長太郎を自分の肩に担ぎ上げた。

「・・・長身が長身を担ぐって・・微妙やな・・」

「すっげぇーー!樺地!」

ジローが目をきらきらと輝かせながら叫んだ。
そういうジロー自身、いつになったら忍足におぶわれていることにきがつくのだろうか・・・(汗)

「うわぁああ!?樺地~~!下ろして~~!!」

そのある意味でとても微笑ましい2年生2人を見て3年生の一部はどこまでも遠い目をしている。

「あ、そういえば日吉。俺の後釜のマネージャーは決まったのか?」

そんな中、聖はふときがついたように日吉に尋ねた。
すると日吉は少しだけ眉を寄せ「はい・・一応」とだけ答える。

「そっか。なら安心だ・・・。」

聖は自分のマネージャー時代を思い出しながらそう呟いた。
思えば、良く働いたものである。
しばらくすると全員がそれぞれの帰路につき始めた。

「さてと・・今度こそほんまにお休みなーー!」

「じゃあ、また。新学期にな」

最後まで一緒の道を歩いていた忍足と聖はそう言うと跡部達とは違う道へと歩いていく。
それを見送ると跡部は宍戸の腰においていた手をそっと離した。

「・・・いくか・・」


「そうだな・・」

そういうと今度は2人並んで歩き始めた。
夜が深まり空気は段々冷えていく。
少しだけ肌寒くなってきたのか宍戸は自分の手をごしごしと擦り合わせはぁ・・と息を吹きかけている。

「しっかし・・寒いよな・・。手袋とか持ってくればよかったぜ・・」

さすがにこんな時期にトレーナー1枚はきつかったと呟きながら歩いていると突如として手をぎゅっと握られた。

「あ~ん・・?なにいってやがる。そんなものなくてもこうすれば十分温かいだろうが・・」

握られた掌から跡部の体温が伝わってくる。
その温かさに宍戸は小さく微笑みそうになるがすぐにはっと我に返った。

「あ・・跡部っ!?」


慌ててその指を離させようとするが跡部は手を握る力を強めるだけで決して離そうとはしない。

「冷え切ってるじゃねぇか・・。んなに寒いならもう少し厚着してくるんだな」


「うるせぇよ・・!」

思わずそう言い返すと跡部の足が不意に止まった。

「・・・跡部?」

いきなり止まった相手に宍戸は不安を微かに覚えながら声をかける。
すると跡部はいきなり自らきていた高そうなコートを脱ぐと宍戸の肩にフワッと羽織らせたのだ。

「・・・え?」

「よごしたら体で支払って貰うからな・・」

にやりと笑いながらそういうと跡部はすたすたと歩き始めた。

「か・・体って!ちょっとまて!」

慌てて文句を言おうとして後を追うが跡部が微かに寒そうに肩を震わせたのを見てそれは思いとどまった。

今、言うべき事はそうではない、そうじゃなくて・・・-。

「・・・サンキュ・・」

小さな声で礼を言うと跡部がふっと微笑んだ。



「・・なぁ、跡部。・・今日やけに神妙な顔をして手合わせていたけど・・何お願いしたんだよ。」

しばらく歩いた頃、宍戸はさきほどの初詣の様子を思い出しながら跡部に尋ねた。

跡部があそこまで真剣にお願いすることに興味があったのだ。

「俺様が言ったら、当然貴様も言うんだろうな、亮」

「・・・てめぇ・・。・・って今----!?」

いつも通りの跡部の態度に苦笑いに近いものを浮かべた宍戸だったが後半の言葉に驚いたように眼を見開いた。

「あぁ?何驚いてるんだよ、2人っきりなんだしいいじゃねぇか。」

「そりゃ・・そうだけど・・。いきなり呼ぶなっての・・恥ずかしいだろうが」

ぼそぼそと答える宍戸に対して跡部はふっと悪戯を思いついたように瞳を細めた。

「ほぉ・・・なら、もっと恥ずかしいことしてやろうか・・?」

跡部はそういうと立ち止まり宍戸を振り返る。

「・・跡部・・?」

その様子に少しびくついたように宍戸が跡部を呼ぶが跡部はお構いなしに宍戸のそばによると腰を抱き寄せた。

「あ・・跡部・・?!」

そのまま跡部はこつんと額と額をぶつける。

「・・・景吾だろ、・・亮・・」

そう至近距離で囁かれ宍戸の顔が一気に真っ赤に染まった。

「・・景吾・・」

それでも小さな声で名前を呼ぶとその唇に跡部の唇が静かに重なる。

「ん・・・」

やがて唇が離されそのままそれが耳元まで持って行かれた。

「・・気になるか・・?俺の願い事・・」

耳元で囁かれる刺激に体がぴくんと反応して宍戸の頬がよけいに赤く染まる。

「・・・そ・・そりゃあ・・まぁな・・」

しどろもどろになりながらも宍戸がそう答えると跡部はふっと笑みを零した。

「え・・・?」

「一度しか言わないから良く聞いておくんだな・・・」



-俺の願い事っていったら1つしかねぇだろう・・。
「亮とずっといっしょにいられますように」だ-

                       

                               
                                                      
FIN

A Shrine On New Year’s Day

沙紀様7000HITおめでとうございましたv大変遅くなりすいませんでした(土下座)
リクエストは「跡宍中心で初詣」でした。

跡宍中心・・・・?中心・・・・・?(こらこら)

拙い文章ですが喜んで頂ければ幸いです。

それではリクエストありがとうございましたv


     *ブラウザバックでお戻り下さい