「おとり厳禁の段」その後(六年生)


「そういやぁ、仙蔵今日エノキタケ城の姫の護衛らしいよ。」

ある天気のいい日の午後。善法寺伊作は忍たま長屋の自室で自らの部屋に集まった友人達に湯飲みに入った茶を配りながら話し始めた。

「そうなのか?」

その茶を一口啜り、尋ねたのは潮江文次郎だ。

「うん。それで、乱太郎、きり丸。それに喜三太としんべヱも一役かったらしいよ」

伊作の言葉に自分の前に置かれた饅頭を手に取った食満留三郎がふと気が付いたように伊作を見遣った。

「そういわれれば、喜三太としんべヱ委員会の時いなかったな。」

「…きり丸もいなかった」

留三郎に続いて中在家長次も口を開く。

「やっぱり?僕のところも乱太郎がいなくてさ。」

土井先生に尋ねたら教えてくれたんだよ、と伊作が付け足す。

「でも、しんべヱと喜三太か。仙蔵大丈夫かな?」

饅頭を美味そうに頬張っていた七松小平太が心配そうに呟いた。
−あの二人と一緒だと仙蔵いつもぼろぼろになって帰ってくるからさ。

確かにあそこまでぼろぼろの仙蔵など、少なくても過去五年間で見たことは皆無に等しかった。

「仙蔵、本当にあの二人と相性悪いよね」

コポコポとお茶を湯飲みに注ぎながら伊作が苦笑するとその場にいる全員が頷く。

「でもまあ、いつも偉そうなあいつが弱ってるのをみるのも一興だがな」

そう言って文次郎がにやりと人の悪い笑みを浮かべた。
その言葉に留三郎が眉根を寄せる。

「…お前、あとでどうなってもしらないぞ」


ガラッ


次の瞬間。
部屋の出入り口の腰高障子が開けられ、今回は傷一つ無い立花仙蔵が入ってきた。

「「「「「!!」」」」」

ほんの一瞬前まで噂していた本人の登場に五人が息を飲む。

「はー…」

そんな五人の様子を知ってか知らずか仙蔵は大きく溜め息をつき伊作の隣に腰を下ろした。

「お帰り〜仙蔵」

「ああ」

真っ先に気を取り直し笑いかけた小平太に仙蔵が短く答える。

「お疲れさま、大変だった?」

伊作は湯飲みをもう一つ用意し、お茶の用意をし始めた。

「ああ。大変だったし、いつもの倍以上疲れた。ということで文次郎」

「なんだ?」

不意に真っ正面にいる文次郎に仙蔵が声をかけた。

「一発殴らせろ」

「あぁ!?なんでだよ!」

「先ほどからむしゃくしゃはしていたがお前の顔を見たらよけいに気分が悪くなった」

いきなりの発言に思わず声を低くした文次郎に対して仙蔵はどこまでも涼やかにさらりと言い放った。

今はむしろそれが怖い。

というか理不尽すぎる。

「どういう理由だ!?」

「問答無用だ。では文次郎覚悟はいいか?」

文次郎が慌てて反論するがすでに仙蔵は話を全く聞いていない。

「え、ちょっと仙蔵!待って…」

見かねた伊作が思わず口を出すが、仙蔵の手にあるものを見て目を見開いた。

それは…

「焙烙火矢ーーー!?」

しかもその数は一つではない上にすでに導火線には火がついていた。
仙蔵はそれを文次郎に向かって投げつけた。
というかこんな部屋でそんなことされたら巻き添えは必至だ。

『万事休す』

そんな言葉が仙蔵以外の五人の頭をよぎる。

「おい、仙蔵!」

「…もう間に合わない」

「ちょ、なんで長次そんなに冷静なんだよ!」

「う…うわぁあああああああ!!!!!」


ドーン!


一瞬後、辺りに爆発音が響いた。


この爆発による被害として、六年は組の長屋は一部半壊。
中在家長次と七松小平太が軽傷。
立花仙蔵は無傷。

そして潮江文次郎・善法寺伊作・食満留三郎が重傷という結果に終わった。



+あとがき+

「おとり厳禁の段」で仙蔵がいつもよりぼろぼろにならなくてほっとしました。
いやけして、物足りないなんて思ってないよ!(殴)
え〜…うちのサイトの場合、6は2人はものっそい不運です。
ってか、食満も伊作の影響で不運です。
…全てをそれでまとめちゃ駄目ですかね(汗)

(旧雑記にて2008年5月14日掲載)