魔王の花嫁・6
「兄………ッ、あ、あああーっ…………!」
媚薬と思われる混ぜ物とギルファスの愛撫に蕩かされた箇所。
そこへとうとう押し入ってきた指ではないのものに、リトレスは高い悲鳴を上げた。
「うあ、あ………っ、兄……っ、い、痛いっ……!」
「すぐに悦くなる……可愛いリトレス。愛しい弟にして、愛しい妃よ……」
あやすようにつぶやいて、ギルファスは腰を揺すり始める。
どれだけの前戯を受けていたところで、初めての狭い通路は男を拒もうと必死だった。
ましてや相手はただの男ではない。
実の兄。
そして、父を殺した男。
「ギル……っ、こ、こんな、こんなこと、許され………っ、ん……っ……!」
一番太い亀頭の部分までを、強引に挿入された瞬間のことだ。
ずるりと滑った男根を根本まで受け入れてしまい、リトレスはきつく眉根を寄せる。
ついに兄の全てを入れられてしまった衝撃だけではない。
太くて長いそれに内部を擦られる感触が、痛いばかりだった行為にかすかな快感を呼び覚ましたせいだった。
「……ほら、悦くなってきたな、リト……」
わずかな反応をギルファスは見逃さない。
すかさず始まった激しい抜き差しに、リトレスは観衆の目も忘れて声を上げてしまった。
「……ん、あっ……! あっ、兄上っ、だめっだめですっ」
寝台の揺れを利用しての突き上げは強烈だ。
一突きされるたび、薬に浸された体をじんじんとうずかせる。
「思った通りだ…………やはりお前も、私を欲していたのだろう……? きゅうきゅうと絡み付いて、締め付けて…………」
「違うっ……! もうっ、もう突かな………、あっ、あっ……!」
口ではそう拒んでも、粘着質な音を立てて出し入れされる肉棒に彼の内部は絡み付いて離さない。
すでに痛みなど意識から消し飛んだ。
いつもの穏やかさはどこへやら、与えられる快感に切なげに潤んだ瞳は淫らそのものだ。
いつしか硬くなった性器の先からとろとろと粘液を零し始めたリトレスを見て、ギルファスは満足そうに笑った。
「優しくて穏やかなお前。父にそそのかされ、ラズウェイとの融和を望むなど愚かなことだ……だが許そう」
ねっとりとした腰使いで自在にリトレスを鳴かせる彼の額にも、うっすらと汗が浮いている。
「今宵お前の全ては、私の物になるのだから………私の妃として、しっかりと教育し直してやるからな……」
「……あ…………っ」
深く入っていた肉棒が引き抜かれていくことに気付き、リトレスは身を震わせる。
弟の足を一際高く持ち上げ、ギルファスはくいとシーファーにあごをしゃくって見せた。
心得顔の大司教は、繋がった二人の上に片手を差し上げてこう言った。
「大神の寿ぎと大司教シーファーの承認を受け、ギルファス・イルハザールとリトレス・イルハザールは今ここに結ばれました」
肉欲の熱に浮かされたリトレスの頭に冷水を浴びせるような言葉の羅列。
婚儀の聖句。
しかし抗議の声を上げる前に、彼の体はまたしても兄の欲望の上に降ろされた。
「あぁっ……、あっ、あああ…………っ!」
自分の重みによって根本まで深く突き刺さった肉棒が、内部で厚みを増す。
ふくらんだそれが弾け、奥に熱い飛沫が叩き付けられる生々しい感触がはっきりと分かった。
「あ………っ、ぁ……、あ、つい……兄上の、がぁ……」
どくどくと放たれる精液が、リトレスの聖域に注がれていく。
汚されていく彼の姿を、兄と将軍と聖職者が見つめている。
将軍の手に髪を掴まれ、ぶら下げられた父王の首も。
「軍の動きは?」
「ご心配には及びません、すでに私の名で……」
ギルファスとグランセスが何かしゃべっている。
しかしリトレスは兄に背を預けたまま、ぐったりと目を閉じ全ての感覚を遮断しようと努めていた。
後に世界を巻き込んだ大戦を引き起こし、魔王と呼ばれた男の妻とされてしまったことをこの時の彼はまだ知らなかった。
〈終わり〉
***
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