『ZARBANBAL』

シャクシャクの森の夜が更けて、朝を迎えるほんの束の間、 ザーバンバルがやって来た。
想いは蔓草、愛の雨。欲望の 大樹に縁らば怨み爆ぜ、そう怒るなよと夢しずく。
対の獣がかつて兄妹だった頃、ザーバンバルは外国の、遠いとおい外国の、おとぎ話にすぎなかった。
「なんなら監獄の中のグリグラに面会する方が、 うんと格安だったに違いない。」

「兄ちゃんは、あの子の唇に夢中なんだ。」
今日もきまっていつもの場所で、チエコの呟きは空に消えた。
「内緒で今日もお出掛けなんだ。」
明日もきまっていつもの場所で、チエコは声を殺して泣くだろう。
母はそんなチエコに厳しい折檻を与えた。

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「車がない奴は、てんで駄目さ。」
今日もあたらしい場所で、サトルは然も有りなんと息巻いた。
「車がない奴は、てんで駄目さ。」
明日もあたらしい場所で、サトルは敵意剥き出しに息巻くだろう。
父はそんなサトルにたんと小遣いをやった。
ただ堕落させるためだけに。

ザーバンバル

ザーバンバルは刹那の奇跡。泣くのをやめなよ。霧は刹那を曇らせる。汚れゆくように、 朝から夜へ、種から老木へ、ああ、そっちに行ってはいけない、だってそっちは夜じゃないか。未来は濁り、街は腐る、 星が死人の唄ならば、息吹の季節はもう二度と。


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ザーバンバルが無常を問う。永久(とわ)の惰眠を妨げる。せめてかつてに気付いたら、 せめてサチコの呼び掛けが、聾のサトルに聴こえたら。振り返ってご覧よ。夢も希望も、愛だって、新たに芽生えんとしているよ。 天に伸びんと伸びのびて、無垢の粉、命の喝采。
refrain medicine.

シャクシャクの森の夜が更けて、朝を迎えるほんの束の間、 ザーバンバルがやって来た。
対の獣がかつて兄妹だった頃
セカイはふたりを苦しめた。嗚咽の皮膜に覆われた、 ふたりを呼んだザーバンバル
ザーバンバルが無常を問う。対の獣が向かう先、朽ちた蔓草、欲の渦。
ザーバンバルは引き止めない。朝の光が眼にしみる。

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