鬼畜大魔王ゾーマ 後編
大魔王により朝陽を奪われた世界、アレフガルド。その中心部の孤島に位置する城こそ、かの大魔王ゾーマの牙城であった。
暗澹の瘴気渦巻く、金城湯池の瘠土。その地に足を踏み入れるは、高を括った愚かな勇者達のみ。しかし、どれだけの軍勢が押し寄せようとも、ゾーマがその重い腰を上げることは無い。
ただ人間達の無力を嗤い、その艱苦に喘ぐ悲鳴に耳を躍らせるのが、大魔王の何よりの愉悦だった。
そして、大魔王の玩弄物に成り下がった勇ましい者が、また一人――。
「んぅ……わ、私は……」
僧侶が穢れ切った身体――だが不思議と、衣服には何の乱れも無い――を徐に起こすと、そこは冷たい石畳の上だった。
陰鬱と奸佞を湛える妖霧に侵されたその大部屋。最奥に佇む豪華絢爛を極めた玉座は妙なまでに物々しく、また場違いにも感じられた。
「気が付いたか、僧侶よ」
言葉で嘗め回されているかのような不快感。
その声の主に振り向くと、僧侶を影で覆うようにして見下げる大魔王ゾーマの威容が在った。
「大魔王……ゾーマ……」
「ゾーマの触手共を充足させたことに関しては、礼を言わなければなるまい。御前は今まで見た女の中で最も美しく、また淫靡だった」
煤けた息吹が掛かるほどに近くで、言い聞かすように大魔王は言う。
その言葉で、僧侶は総ての記憶を脳裏に蘇らせる。
凄惨たらしめる、数々の辱め。大魔王の触手に良いように蹂躙され、その精の有りっ丈を注がれてしまった。
僧侶はそれをフラッシュバックさせる程に頬を高潮させ、また抑え切れない羞恥と悲憤に震えた。
「だが、ゾーマはまだ満ち足りておらぬ。御前にはさらに尽力してもらう他無い」
「そ、そんな……! もう良いでしょう? お願いですから、勇者様だけでも解放して……」
僧侶は溢れ続ける憤怒を只管に押し殺し、大魔王に許しを請う。
自分がどんなに怒ったところで、それは犬の遠吠えに過ぎない。勇者を救う唯一の術は、自己犠牲の他に僧侶は思い付く筈も無かった。
「そんなにも勇者が大事か?」
大魔王は何を思うか、にんまりとほくそ笑んだままに僧侶を流し目に見る。その答えの分かり切った問いに、僧侶は握り拳を作って「当たり前です」と大魔王を睨んだ。
「諒承した」
「え?」
突然の赦免。
それは僧侶の目を瞬かせ、彼女の眉をも容易に顰ませた。
だが大魔王は調子を崩さず、「勇者を解放してやると言ったのだ」と付け加えてみせる。
僧侶はあまりに短兵急な展開に訝しむことを忘れられなかったが、勇者が解放されるならとぱぁっと表情を明るくさせる。
しかし、大魔王はそれに釘を刺すように「ただし」と濁声を張った。
「勇者の前で自慰せよ。それを成し遂げれば、勇者は自由だ」
「そ、そんなこと……っ!」
やはり大魔王は悪逆無道の権化だった。僧侶はそれを改めて思い知り、恥辱に我知らず唇を噛む。
歓喜から一転、思うように表情を歪めた僧侶に満足したか、大魔王は口元をぐいと吊り上げる。
「御前に異存を述べる権利は無いことを知れ、僧侶よ。だが見るが良い、勇者は未だお前の痴態も知らずに眠りこけている。今のうちに済ませるのが上策とは思わぬか?」
言い、大魔王はのんべんだらりと首を回し、勇者をその鋭利な眼光で捉えた。
身体を十字にしたまま磔にされた勇者。今も血汁は止め処無く流れ、襤褸雑巾のように破れ汚れた衣服へと染み渡っていく。それでも未だ息があるのは、やはりそれが勇者たる所以なのか。
「せめて御前が堕ちる前に、自らの痴態を勇者に見せなければな? 勇者もさぞ喜ぶことだろう」
僧侶は大魔王の厚顔無恥に並べ立てられた言葉を受け流し、ゆっくりと勇者の下へ足を運んでいく。
自分が自慰さえ行えば、勇者は塗炭の苦しみから解放される。大魔王の言葉を鵜呑みにしている訳ではないが、大人しく従っていれば自分達に厭きてくれるやも知れない。そんな矮小にも満たない希望に縋りつつ、僧侶は勇者の前で腰を下ろした。
「さあ、股を開くが良い」
僧侶は言われるがままに股を開くと、ふと――大魔王からすれば漸くと言ったところか、衣服に疑問を覚える。
半ば全裸とも言える程に脱がされた僧服が、まるで卸し立ての如く直されている。しかし股を開けばすぐさま下着が露呈し、穿き物だけは修復されていなかった。
「衣服は我が魔法で修復してやったのだ。残念ながら下の部分だけは記憶に無かったが故に、修復も出来なかったがな」
大魔王の嘯いた物言いに、僧侶はまたも羞恥に赤面することとなる。
最早自らの身体は全て大魔王の思うが儘。僧侶は、そう自覚せざるを得なくなっていた。
「んぅ……んふぅ……」
僧侶は諦めとも取れる感情を渦巻かせたままに、勇者の前で自らの陰唇をなぞり始める。
羞恥はある。憧れの勇者の前で自慰など、恥辱のあまり卒倒しそうなほどだ。だが弄り始めたばかりだというのに、僧侶は熱く火照った嬌声が自然と零れてしまう。
僧侶は自らの身体の異変に怯え、恃むように大魔王を見上げた。
「どうした? 僧侶よ」
しかし、大魔王は僧侶の哀願を知ってか知らずか、何食わぬ顔で彼女を見つめ返す。
僧侶は最早憤激することも忘れ、ただ大魔王のシナリオに身を任せる他術を知らなかった。
「あふぅん……はぁぁ……」
僧侶は自らの陰部に触れる度、面白いように痙攣して愛液を滲ませる。
今までの自慰では到底得られなかった、津波のように寄せ掛ける快感の波。既に僧侶の下着の前は濡れていない箇所が無く、彼女はかつて無い快感に惑溺してしまう。
「ど、どうして……? ひぁ……どうして私、こんなに気持ち良く……」
「勇者の前だからであろう? なんと淫猥な聖職者か」
消散していく意識の中で、ただ僧侶は性の快感のみを求める。
視界が漸次暗転していき、敬愛していた勇者の姿が己の黒に飲み込まれていく。
それなのに僧侶は、勇者を気遣う理性を追い出し、ただ自身の股間を弄る手を早め続けた。
「はぁぁぅ……もう、我慢出来ないよぉ……」
勇者にこんな醜猥な箇所を露出したいわけではない。
だが僧侶は覚えぬまま、愛汁でべっとりと密着した下着部分をずらす。そして、己が欲望に導かれるがままに指を膣口へと潜り込ませた。
「く……ぅっ……!」
雫で滴るその秘裂に指を通すのは、あまりにも容易過ぎた。
湧水の如く濡れそぼった蜜壷は彼女の指を迎え入れ、彼女自身もまた飛沫を散らせてそこを掻き混ぜる。膣壁を擦る度に腰が戦慄き、僧侶は未曾有の快感に身悶える他無い。
「くぅ……っ!」
その低く呻く声は、僧侶のものでも、ましてや大魔王のものでもなかった。
靄掛かった惑う意識の中を身動ぎし、ただ光を掴まんともがく勇者その人のものであった。
「勇者……さま……?」
勇者が目を覚ました。
それは僧侶の渇を癒す随喜だったが、それも夢幻のようにすっと消え失せていく。自身の中を絶望というひたすらの黒が這いずり、埋め尽くしていくのみだった。
「こ、ここは――」
「お目覚めかな、勇者よ」
ゾーマはさして魂消ることも無く、また膨れることも無かった。
ただ彼の覚醒を待っていたかのように目を細め、歓迎とも取れる言を発するに留める。
「なっ、一体何をっ――? ゾーマ、貴様……何をしたっ!」
大魔王のあまりにも大きな体躯に眼を奪われていた勇者だったが、一度逸らせばそこにはあられもない姿で自慰に耽る僧侶が在った。勇者は我知らずぎょっと瞳孔を窄めたが、ゾーマに御されているのだとその矛先を向ける。
しかし、眼光ばかりの威圧で大魔王が後退ることも無く、「何もしていない」と軽くあしらうだけだった。
「勇者よ、この女は自ら自慰に耽っているのだ」
何を戯言を。勇者はそう突っ撥ねようとはした。しかしその目下に在る痴態は、その甚だ淫靡な様は、操られているとは思えないほどに生々しく、艶かしかった。
「だ、ダメなのに……ゆ、ゆうしゃさまぁ……っ!」
「そ、そんな馬鹿な……!」
勇者の慌てふためき狼狽するその姿に、大魔王は滑稽だとばかりに呵呵大笑を放つ。
欲望に身を任せ自慰に耽る哀れな僧侶、それを観て色欲渦巻かんとする傀儡勇者。これほどの道化は見たことが無い!
大魔王は蛮声を轟かせ、二人の羞恥を悪戯に高めていく。
「ではここに打ち立てようではないか? 穢れを知らぬ雄など有り得ぬことを!」
大魔王がけたたましく雄叫びを上げたかと思うと、その黒光りする爪甲で勇者の下衣を切り裂いてしまう。その先に鎮座していたのは、勇者の意志に反して屹立する欲塊だった。
僧侶はただただそれを言葉にすることが出来ず、勇者もまた遁辞の一つも浮かばぬままに目を泳がせた。
「男とはかくも愚かなものよ。どんなに勇ましく我を罵ろうが、ペニスにその欲望を露骨に表しているのだから」
「くっ……!」
その言の何一つを否むことが出来ず、勇者は偏に鉄味滲ませて唇を噛んだ。
色欲に理性を奪われたわけではない。だが良く知る僧侶が……それも好色とは無縁と思われた少女が、眼前で自慰に耽っているのだ。
勇者は交錯する欲心に頭を痛めながら、己の無力さを憾む他無かった。
「僧侶よ、愛する勇者のペニスを充足させてやるが良い」
「は、はい。魔王様……」
「な、何を……? や、やめろ、やめてくれ……!」
勇者はまるで怨霊に迫られているかの如く声を震わせ、我が身の不純が露見することを怖れた。
僧侶の前では、魔を滅ぼす為に一身を捧げる偉丈夫でありたかった。誰も憧れる、いつかそんな男になったときにだけ初めて、彼女に――。
「何を嫌がることがある? こんなにも美しい少女に己のペニスを慰めてもらえるのだ。愉悦の限りであろう?」
大魔王は勇者の惨めな涙顔を蔑むように、にたりとその鋭利な血糊の牙を煌かせる。その間にも、僧侶はそっと細指で勇者の怒張を擦っていた。
「お願いだ……お願いだ……っ!」
勇者は涙ながらに訴えるも、僧侶はただ勇者の肉棒をぼんやり眺めるのみ。
勇者を救う為に従っているのか、最早淫欲に溺れ切った姿なのか、それを知るは既に僧侶を除いて他に居ない。
「勇者……さま……、今、楽にしてあげますから……」
蚊の鳴くようなか細い声ながらも、どこか艶やかなそれを勇者にのみ響かせる。
ゾーマの触手で慣れてしまったのか、滾った肉棒を扱くその手に迷いは無い。
「勇者様……気持ち、良いですか……?」
僧侶は上目遣いに勇者に問うも、無論彼がそれに答える余裕など無かった。壊れそうなほどにいきり立ったそれに触れられるだけで、勇者は呻きを抑えることが出来ない。肉棒を通して駆け巡る快楽に、ただただ目線が定まってくれない。
勇者は思う。いくら想い焦がれる僧侶の手淫にしても、ここまでの快感が有り得るだろうか? 稲妻のように奔り抜けるこの感覚は、さながら絶頂。理性という理性を擂り砕いていくかの如き、不自然なほどの快感。
不審と悦に眉を顰める勇者の眼の先には、満足気にしたり顔で嘲笑う大魔王の姿があった。
「ゾーマ、貴様ぁぁああっ!!」
「私ではない、御前だ。御前が恥を忘れて肉欲に感けているだけではないか」
彼奴の魔法だ!
勇者はそう叫号せんとするも、僧侶の亀頭を揉む指先に言葉を呑んだ。
あたかも硝子細工を扱うように丁寧な、ひたすら優渥に満ちた僧侶の手淫に、勇者はえも言われぬ充足感が広がっていく。既に先走りが僧侶の指を悉く濡らし、てらてらと淫靡に輝きを増していく。雁首から根元まで一に扱き続け、かと思えば亀頭を円を描くように撫で擦る。それは皮肉にも、かつて手淫した触手の反応から得た知識だった。
「うぅ……ぁ……っ!」
「最早焦らす必要もあるまい? その淫猥な唇で、穢れた肉塊を包んでやるのだ」
「はい……」
僧侶は魔王に促されるがまま、勇者の怒張を咥え込む。その小さな口許では亀頭を隠すのがやっとであったが、僧侶は大童になって喉を開いていく。すると見る見るうちに怒張は彼女の口の中に消えていき、勇者は快感に腰を震わせた。
「くうっ……! ゾーマ、貴様だけはぁ……っ!!」
「我だけは何だ? 許さぬとでも言いたいのだろうが、浅ましく男根を屹立させた御前に云えたことか?」
勇者の魔王を睨む眼光も、押し寄せる快楽に気炎諸共翳りを見せる。
憎き大魔王が、世界を闇に染める元凶が眼前に立っていると言うのに、勇者である自身は僧侶に奉仕されている。
そのあまりに格外な現状が、そして魔王の魔術が、彼の意思に反して加速度的に増していく。それは如何に心身共に屈強な勇者と言えど、抗える術などあるはずも無かった。
「んぐっ、うむぅ……」
剣幕迫る勇者を宥めるかのように、僧侶は官能に悶える彼の男根を懸命に舐めしゃぶる。
柔らかな舌先で鈴口を穿り、裏筋を揉むように根元にも手を添える。勇者がいくら顔を顰めようにも、僧侶の空隙無き陰徳は彼の逸物を嫌でも充足させていった。
「だらしなく男根が震えておるわ。耐乏することは無い、射精したいのであろう?」
「誰がっ……!!」
歪む理性の中での抗弁。しかし刹那に僧侶が彼の亀頭を甘噛みし、勇者は喘ぎ声を抑えるだけで手一杯だった。
僧侶は如実に表れる勇者の愉悦に気を良くしたように、その口淫も目に見えて激しさを増していく。淫らに垂れ下がる涎を拭おうともせず、ただ肉棒をなぞるようにして唇を往復させる。
ぷっくりと小振りに存在を主張する花唇。淫液にぬらぬらと濡れそぼつそれは、とても聖職者に付いているものとは思えなかった。
「本当にっ……やめてくれ。これ以上は……っ!」
いよいよ勇者は魔王を睥睨することも忘れ、自身の肉棒に集まる欲望に耐えかね始める。一瞬でも気を抜けば、蝟集した性衝動が暴発してしまう。勇者はそれを、最早恐怖とすら感じていた。
「んぶっ、んじゅぷ、じゅるっ――」
僧侶は勇者の言を聞き入れず、待ち切れぬとばかりに逸物を吸い上げる。先走りに塗れた唾液は石畳にまで滴り、尾籠な水溜りを誂えた。
身の限界を感じた勇者は、挙措を失ってまで腰をくねらせ、なんとか僧侶の奉仕から逃れようとする。しかし度外れなまでに強固に縛り付けられている彼は、その望みすらも叶えられない。
「くうぅぅっ……!!」
勇者は享楽の津波を噛み殺しながら、僧侶の口に肉棒を埋めたまま果てた。
僧侶は絶え間無く繰り出される白濁を喉で受け止め、彼の精を搾り取りかの如く更に手淫で責め立てる。
そうしてようやく色欲の髄まで吐き出されたそれを、僧侶は表情を変えずに飲み下して見せた。
「ふん……その矮小な男根でも、精を垂れ流すことは出来るのか」
魔王は吐き捨てるかのように呟くと、醜く滑り、既に垂れ下がった勇者の男根を睨める。
勇者に気勢は無く、身を重力に任せたままに俯いていた。どんな形であれ僧侶に醜態を見せた傷みは、彼にとってとても筆舌出来るものではなかった。
「ではそろそろ見せてやろう。勇者の男根が如何に空疎であるか、これで御前達は思い知ることとなる」
暗澹とした雰囲気の中、魔王は色めき立ちつつ自らの外套に手を掛ける。そして潜ませていた体躯が晒され、二人は我知らず息を呑むこととなる。
「なっ……?」
「魔王様の、大きい……」
言葉に詰まる勇者の前、僧侶は身も蓋も無くぽつりと口走ってしまう。
鱗の如く総身を覆う錆浅葱と色を同じくする、魔王の逸物。それは人間では考えられない威容であり、見る者を総毛立たせる。赤ん坊の頭すら彷彿とさせる亀頭に、威圧的なまでに隆起する疣々。それは到底性器と呼べる代物でなく、さながら一差しの兇器であった。
「僧侶よ、この熱く滾ったゾーマの男根を迎え入れたくなったであろう」
「そ、それは……」
にんまりとしたり顔で迫る魔王に、僧侶は真っ向から否定出来ず、そのまま口篭ってしまう。
それに恐怖を覚えないわけではない。しかし、今の僧侶はそれ以上の期待がどうしても滲み出てしまっていた。
あの巨根が自らの淫裂を貫いた刹那……一体どれだけの快楽が押し寄せるだろう?
僧侶は魔王に貫かれる自らの淫姿ばかりが脳裏を蹂躙し、愛液がだらしなく太股を伝うのを感じた。
「安心するが良い。今すぐに、御前のその淫乱な膣を満たしてやろう……」
「ひぁあ! だ、ダメっ!」
魔王は軽々と彼女の太股を掴み上げ、勇者に陰部を晒すように股を開かせた。気持ちばかりの抵抗も赤子の如くあしらわれ、僧侶はだらだらと涎を垂らす自らの肉溝に恥辱心を煽り立てられた。
「見るが良い。聖職者でありながら御前の男根を咥え込み、挙句はこのゾーマの巨根を見るや蜜を滴らせる――。もはや御前の知る僧侶は、此処には居らぬ」
「その手を離せ! 貴様、それ以上その手で触れたら――!!」
「触れたら、如何するのだ?」
魔王の辛辣な声色に、勇者は我知らずその火勢を失う。
四股さえも呪われたこの状況――口だけでも動かさなくては魔王の思う壺だ。だがしかし、魔王はそれさえも軽く受け流しては、勇者の自失を嗾けてくる。
もう既に、勇者達は魔王の術中に囚われてしまったのだ。
「弁え給え、勇者よ。御前は演劇の観衆に過ぎぬ。上演の妨げは止めて頂こう」
そう言い放つと、魔王は徐に僧侶の膣口へ自らの亀頭を近付ける。僅かな理性が恐怖を呼び起こし、僧侶は思わず小さな悲鳴を上げた。それでも彼女の身体は本能に支配され、その陰唇は物欲しそうにひくひくと脈打っていた。
「ま、魔王様、お、お願いしますっ! 勇者様の前は、いやぁああ!!」
「勇者なぞ直ぐにお前の視界から消え失せよう。さあ、わしの腕の中でもがき喘ぐがいい――」
「んぅ……っ! うぁあああああっ!!」
悪魔的な程に大きな亀頭を、僧侶の膣はまるでそれが当然のように呑み干してしまう。
それでも僧侶はその身を裂かれるような思いに叫号し、見開かれた瞳孔から紅涙を流した。
「やめろ……やめろぉ……!!」
「何を言うか。僧侶の膣はまるでゾーマの為に誂えたかの如く、我が逸物を咥え込んでしまったではないか。んぅ……亀頭に絡み付いてくるわ……」
魔王が僧侶のその身を降ろすと同時に、亀頭が彼女の膣内を乱暴に抉っていく。僧侶の膣口は醜猥なまでに拡がり切り、だがそれでも魔王の肉杭をひたすらに受け入れていた。
「くうぅぅ……っ!!」
「おおっ……仍少し、仍少しで全て入るぞ……」
魔王は濁声を躁の色に染め、見る見るうちに自らの欲望を僧侶の膣に埋めていく。僧侶は腹を削られるような錯覚に苛まれ、ただ自身の大粒の涙に溺れるしかない。彼女の悲鳴は石畳に反響しては木霊し、勇者の鼓膜に嫌でも突き刺さっては消えていた。
「いぎっ……か、はっ……!」
魔王の肉棒はついに僧侶の子宮口を抉じ開けてまで根を張り、勇者から見てもそれは痛々しく彼女の陰部にめり込んでいた。それは本能的な快楽からなのか、痛苦からの膣の締め付けからか、小刻みに頼りなくふるふると震えていた。
「よくぞ忍従した、僧侶よ。その痛み、直ぐに快楽へと変えてやろう……」
「ひぐぅっ! いあっ、ああぁっ!!」
自己防衛的に窄まんとする膣壁を無慈悲に穿ち、そして無秩序に引き抜く。淫欲のみに塗れたこの動作を繰り返し、魔王は一人悦に酔い痴れた。僧侶は底の見えぬ天井に揺れる視線を預けながら、ただ疼痛を忘れんが為に喚き散らす。しかしそれは魔王の興を更に駆り立て、結果ストロークを早めることに繋がってしまう。
「っく……ぁぁ……はうぅぅ……っ! ゆうしゃ……さまぁ、助けて……。私、もう、どうにかっ……なっちゃう……」
遮二無二快楽を打ち付けられ、自我の喪失の恐怖が彼女を狂わせる。理性の砂を繋ぎ止め、僧侶は届く筈の無い細指を勇者に伸ばす。無論、それに勇者が応えられる訳も無く、彼女の腕は支えを失ったようにだらりと垂れた。
「今以て勇者に助けを乞うか……。だが、その虚飾をいつまで握り締めていられるかな?」
「ひああぁぁぅ! わたし……どうしてっ……うう、じんじんするよぉ……っ」
突如としてたわわに実った乳房を揉みしだかれ、僧侶は涎が口元を滑るのを抑えられない。かと思えば、はち切れんほどに膨張した乳首まで弄ばれ、僧侶はあられもない嬌声を次々と絞り出していった。
「おお……愛しておるぞ僧侶よ……。もっと愉悦を求めるのだ、このゾーマに……」
「ああっ……魔王……さまぁ……」
僧侶はついに心を魔王に向けてしまい、蠱惑的に揺れる瞳を彼に注ぐ。それを認めた魔王は蛇のように撓る舌を彼女の口に近付け、その唇を淫らに濡らしていった。だが僧侶はそれに眉を顰めることは無く、寧ろ更に先を求めるかの如く扇情的に唇を開ける。
魔王はその味を愉しむように舐め上げると、いよいよ舌を彼女の口内に侵入させる。ぴちゃぴちゃと淫靡な水音をかき鳴らしながら、二人は互いの舌を、唾液を舐め合った。
「んちゅ……うむぅ……」
喉奥が痺れるような感覚に、僧侶は徐々に頭の中を真っ白に書き換えられる。自分に向かって叫んでいる声も段々と遠く聞こえ、自分にとって必要なものだけ――魔王だけが眼前に入ってくる。他では味わえぬ快楽を教えてくれる、それはあまりに崇高な存在だった。
「んぁっ……、もっと、もっと奥を突いてくださいぃ!」
いよいよ縋っていた理性にも別れを告げた僧侶に、魔王は肉杭を打ち付ける勢いを上げてそれに応えた。口内を好き放題に舐め回され、膣内を巨根で掻き回される。最早僧侶はそれに嫌悪感を抱くことなど有り得ず、全ての行為に悦楽だけが引き出されていった。
「勇者よ、刮目せよ! この女が快楽に溺れる様を!」
「はぅぅっ! 良い、良いです! もっと、もっと欲しいですっ!」
「くっ……!」
僧侶は既に勇者の存在も忘れ、己を悦ばせてくれる肉棒の虜になっていた。
勇者の喉はもう枯れ果て、胸中の半分は諦めの色に染まっていく。額を濡らす血汁は彼の足元に血溜まりを作り、意識すら遠退いていってしまう。彼を繋ぎ止めているものは、もうほんの小さな気骨だけだった。
「良いことを教えてやろう、勇者よ。僧侶は既に我が触手を二本食らい、こやつの膣口は拡がり切っているのだ」
「なっ……?」
「最早お前の矮小なペニスでは、僧侶を満足させることは出来ん。見よ、この愛液の量を――」
魔王はしたり顔で細い眼光を勇者に向ける。そして彼に近付いては、自身の肉棒を僧侶の膣内で乱暴に振り乱した。
「んはあぁぅ! 気持ち良いよぉ……」
その結合部分からは止め処無く淫液が溢れ、肉を打ち付けあう度に飛沫を上げて飛び散った。それは容易に勇者の肌を穢し、彼の絶望を更に決定的なものにさせたのだった。
「愛おしい、愛おしいぞ僧侶よ……」
魔王は高揚もそのままに彼女の唇に貪り付き、力任せに吸い上げる。しかしそれさえも今の僧侶には快感すら覚えるのか、彼女もまた強請るようにして口を押し当てていた。
「ではそろそろ終幕ぞ……。我が精を受け、悦び喘ぐが良い!」
「あっ、あっ、あふぅぅううん! も、もう私もイッちゃう! お願いします、イカせてください、あはっ、もう、イクぅぅぅううっ!!」
半狂乱にも似た金切り声を上げ、僧侶は魔王の腕の中で絶頂する。びくびくと彼女の身体が痙攣する中、その膣は急速に魔王の肉棒を締め上げ、彼の射精を煽り立てた。
「んんっ……締まるわ……! 儂も、出るぞぉぉお……!」
魔王は白目を剥いて呻き、その巨根から一切の透き通りを知らぬ精液の有りっ丈を注ぎ込む。黄ばみさえ見える凶悪なまでの量の白濁が彼女の子宮を埋め尽くし、結合部分からもどろどろと漏れ出していった。
「出てる……魔王様の、精子がこんなにもっ……たくさん……」
子宮を叩かれる未曾有の感覚は、僧侶の悦の余韻を更に高めた。魔王の子種がいくら子宮を埋めようが不快感は無く、寧ろ彼女にはそれが誉れのことのように感じられていた。
魔王は徐に肉杭を引き抜くと、ごぽりと下卑た音を立てて膣口から精が滴り落ちる。僧侶がそれを愛おしそうに眺める中、魔王はその太い指で白濁を掬い上げた。
「御前は既に我が肉奴隷。ゾーマが望むことは全て為す。そうだな?」
「はい……その通りです……」
白濁で汚れた指を近付けられると、僧侶は躊躇無く――否、喜んで口を開いた。そして魔王に促されるままにそれを舌で転がし、実に旨そうに飲み下して見せたのだった。
「見るが良い、勇者よ。僧侶はゾーマの子を孕み、ただゾーマのみを愛するようになる。残念だが、最早御前は僧侶の眼中に無い。そうだな?」
「は、はい……。私はもう、魔王様のおちんちんじゃないと、満足出来ません……」
「そ、そんな……」
未だ衰えを見せぬ淫液に塗れた肉棒を、僧侶は陶酔した眼差しで眺めつつ、緩やかに扱く。だがしかしそれだけでは我慢出来なくなったのか、自らそれを口内に迎え入れた。
「勇者よ、慶ぶが良い。御前が生きている間、ゾーマと僧侶の性交を永久に観賞させてやろう――」
魔王は嗤い、勇者の自我喪失を見送った。
彼が生きているか死んでいるかも分からないというのに、僧侶はただ魔王の肉棒を音を鳴らして舐め上げる。
魔王の呵呵大笑はいつまでも響き渡り、それはアレフガルドの絶望の鐘でもあった。
2010年 6月 14日
瓦落多