ぴくの〜ほかんこ

物語

【ぴくし〜のーと】 【ほかんこいちらん】 【みんなの感想】

連載[1001] 短編集「ポケノート」

糸杉美理佳 #1☆2007.04/24(火)14:25
予告通り(ぁ)短編集にしました。
ネタが降ってきたら突発的に書き綴っていきます。

001:一粒のチョコレート
それは2月の寒い折。私は思い切って告白することにした。
「(今日こそサスケ君にこれを…!)」
そう、今日はバレンタインデーである。
「サスケ君」とはこの町に住むポケモンの中でもとびきり美形なニャルマー♂で、他の♀ポケ達の憧れの的であった。
私、サクラもそのうちの1匹(因みにエネコ♀)。幼い頃からずっとサスケ君だけを見続けてきた。
私も、あんな風になれたらいいな…と思いながら。
確かに、私は能力的にも至って平凡だし、技も普通の技ばかりで何の取り柄も無さそうに思える。それが私の最大のコンプレックスだった。
だからせめて、彼の傍にいられるだけでもいいと思っていた。
物陰から様子を伺ってみると、やはり彼は数多くの♀ポケモン達に取り囲まれキャーキャー叫ばれていた。
「サスケ君!受け取って!」
「徹夜で作ったの!」
四方八方から差し出される、チョコレートの入った箱をうんざりと眺めながら「俺は甘いものは嫌いだ…」と素っ気無く言い放ち、サスケ君は近くの木の枝に飛び乗った。
「(やっぱり、あの調子じゃサスケ君は受け取ってくれそうにないわね…ましてや、こんな私なんかじゃ…)」
溜め息をついて引き返そうとすると、私の目の前には何時の間にか多くの♂ポケモン達がいた。しかも全員期待に満ちた目でこっちを見ている。
まさか…皆、私からチョコを貰いたがっているわけ?
「サクラちゃ〜ん!そのチョコ俺らにくれ〜!」と叫んで突進してくる。
「いっ、嫌よっ!これはサスケ君のために…!」
「はぁ?サスケぇ?あんな薄情な奴なんか諦めて、俺のものになっちゃいなYO☆」
「いーや、俺のものに…!」
「ちょ、ちょっと、やめ…!」
じりじりと追い詰められる私。と、その時。
「おいてめぇら、俺のサクラに手ぇ出すんじゃねぇ!」
聞き覚えのある声がした。

え。
「俺の」サクラに…?

「ひゃぁぁっ!」
噂には聞いていたが、サスケ君は本当に強かった。進化してはいないが、それでも十分な強さがあった。私が見ている間に、彼はあっという間に♂ポケモン達を追い払った。
「大丈夫か?」
「う、うん…でも、『俺のサクラに手ぇ出すんじゃねぇ』って…本当に…?」
「ああ。俺は知ってたんだよ、お前が俺みたいになりたいって思ってたこと」
サスケ君は、ちゃんと私の気持ちに気づいてたんだ…。それだけで嬉しい気持ちが湧き上がってくる。
「でもな、お前には俺に無いものがある。さっきの♂ポケどもを見ただろう?」
「え?」
「お前にもちゃんと魅力ってものがあるんだ。お前だけの魅力がな。それを大切にしろよ」
「…うん!」

サスケ君が私の気持ちに答えてくれた。
そして、そのことで私は自信を持てた。

「それだけじゃねえ」
「何?」
「俺には兄貴がいるが、そいつは遠い存在だった。力の差がありすぎたんだ…だから俺はいつか兄貴を超えたいと思って、毎日修行に明け暮れていたんだ。それで俺は何時しか周囲との係わり合いを知らず知らず拒んできた…だがな、お前だけは違った。他の♀ポケ達と一緒にキャーキャー騒いでいるのかと思ったが、自分と俺とを比較して人知れず思い悩んでたんだな…俺と全く同じだ」
「え…」
「同じ思いを持つ者同士、引き付けあうみたいだな。それにお前は乾ききった俺の心に安らぎを取り戻してくれた…」
「サスケ君…」
「お前に無いものは俺がやろう。だからお前も、俺に無いものを補ってくれ」
「うん…」
「それと…そのチョコ、貰ってやるよ」
「本当に?…ありがとう!」

チョコを受け取ってくれたのは、私の気持ちが伝わった証拠。
だけど、それだけじゃない。
同時に、私は大きな自信を貰った。

001 終幕
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糸杉美理佳 #2★2007.04/24(火)21:27
002:俺の日常。
「はぁ…」
俺は本日何度目かわからない溜め息をついた。俺の苦労が何時から始まったのかというと、それは数週間前に遡る。
あれは激しい雨が降りしきる、もう春だというのに一段と寒い日のこと。
「ん?」
俺は大木の根元にうずくまっている小さなイーブイを見つけた。
誰かに捕まりそうになったのか、酷い怪我を負っており、だいぶ弱っていた。
「おい、大丈夫かよ?」
手を差し伸べると、イーブイは威嚇するように鋭い目でこっちを睨み付けたが、すぐに弱々しく息をついて崩れ落ちた。
「こりゃ大変だ、今すぐ助けてやるからな!」
俺はそのイーブイを抱き上げると、すぐにポケモンセンターに駆け込んだ。

夜が明ける頃にはイーブイはすっかり元気になっていた。俺がポケモンセンターを後にしようとすると、そのイーブイが尻尾を振りながら俺の後を追っかけてきた。
「何だ、お前も一緒に行きたいのか?」
すると、イーブイは「ぶいっ!」と一声鳴いて俺に飛びついてきた。どうやら俺のことを気に入ってくれたようだ。
そして俺はこいつを連れて行った…が、それがそもそもの間違いだったのかもしれない…。

「おいロッコ、飯だ飯!」
紹介が遅れた。俺はロッコ、ソノオタウン出身の、これでもいっぱしのポケモントレーナーだ。
「何だよズーク、さっきポフィンやったばっかりだろ」
俺はあのイーブイに「ズーク」と命名し、手頃な特訓場所は無いものかと思案し、選んだハクタイの森でたんまりバトルの経験を積ませてやった結果、今じゃ立派なリーフィアだ。
しかしこいつ、ポケッチで確認してみると「たべるのがだいすき」ときていやがる。毎日のように何かにつけちゃぁ「飯よこせー!」とせがんでくるのだ。
「嫌だい嫌だいあれっぽっちじゃ俺の腹は膨らまねーんだよー!もっと腹の足しになるようなもん食わせてくれよー!」
お前一体何時の間に「じたばた」なんぞ覚えていやがったんだ?と一瞬思ったほど、ズークは地面に転がってばたばた暴れていた。
「やれやれ、でもこの近辺には木の実のなる木は生えてないし、ポケモンセンターまで遠いぞ?それにお前のための飯代で俺の金も底を突いてきてるんだし、暫く我慢しろ。さもねぇとお前、カビゴン以上に太って『え、それリーフィアなの?;』って言われるぞ。太ってると色んな病気にかかりやすくなるし、動けなくなって酷いときには足を切り落とさなきゃならなくなるんだぜ…それにお前、光合成できるんならそれで養分作れるはずだろ?」
「いやあれはバトルで体力を回復させるだけで養分は作れねーんだよ!てかお前俺を本物の植物と勘違いしてるんじゃねーだろな!?」
「やれやれ…;」
俺はほとほと困り果てた。もう毎日こんな調子だから俺はいい加減こいつのわがままを聞いてやるのが嫌になってきた。
はぁ、こいつの頭に「ダイエット」という言葉は存在しねぇのか…?
と、丁度目の前を一人のトレーナーが通りかかった。
「ん、お前はトレーナーだな?」
「え?あ、ああ…」
「丁度いい、俺とバトルしようぜ!」
そんなわけで、俺はそいつとバトルすることになった。
「行け、ズーク!」
「嫌だよー俺今腹減ってパワーが出ねーんだよー」
「アホかっ!」
そのトレーナーは呆れ顔で今のやり取りを見ていて…噴き出した。
「おい、そのリーフィア、お前のか?随分食い意地が張ってるな」
「だろ?お陰で色々と苦労してんだよ」
「しょうがねぇなぁ、んじゃお前が勝ったらこれをやるよ、そのリーフィアに食わせてやんな」
そう言って、トレーナーはポケットからどこか見覚えのある、黄色い箱に英語で何やら色々書かれた箱を取り出した。
「おー!それ、カ○リーメ○トの最新フレーバー、ポテト味じゃねーか!」
と、途端に目を輝かせて立ち上がるズーク。
「よっしゃー、行くぜー!」
ズーク、お前の最大の原動力は食い物なのか…?どうやらこいつのプライドとかそういうのは、食い物の前ではまるで無力なようだ。

結果、ズークの食い物にかける意地と情熱で俺達が勝ち、奴からカ○リーメ○ト・ポテト味をせしめることに成功した。
「うめぇうめぇ」
やっぱ一運動した後の飯は最高だな、とかほざきながら、ズークは大喜びでカ○リーメ○トにかぶりついている。しかし俺はまだ浮かない顔をしていた。
「俺の飯代が…奴もそんなに金持ってなかったから少ねぇよorz」
ズークと一緒にいる限り、俺の苦労は消えないのだろう。バトルして稼いだ端からこいつの食費と消えていくんだから。
あーあ、どっかにいいバイト先は無いかな…こいつの腹と俺の財布を満たせるほどの。

002 終幕
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糸杉美理佳 #3★2007.06/09(土)22:59
003:コンテストは命がけ?
ここはミナモシティ。今日はポケモンコンテストが開かれるというので、大勢の観客が詰め掛けていた。
「すげぇな、ここがポケモンコンテストの総本山か…」
それまでコンテストには見向きもしなかったキョウヘイも、興味津々で観戦することになった。
今までにもハルカ・シュウ・ヒカリなどといった一流コーディネーターがこの大舞台で活躍していた。果たして、今日はどんなトップコーディネーターが誕生するのか。
「まずはエントリーナンバー1番、ホナミさんです!」
まず舞台に登場したのは可愛い少女。その瞬間キョウヘイはあっ、と声を漏らした。そして今のでふと、彼女と目が合った気がした。
果たして彼女は、どんなポケモンでどんな演技をしてくれるのか。
「行くのよ、プラチナ!」
そう言って繰り出したのはピクシーだ。見たところ毛艶も綺麗だし、コンディションも問題なさそうである。
「まずは挨拶代わりに、にほんばれよ!」
「きゅいきゅいーっ!」
ピクシーは天に向かって何事かを叫んだ。すると俄かに日差しが強くなった。
ホナミはにたり、と意味深な笑みを浮かべ、次なる指示を出す。
「いっけー、ソーラービーム!」
ちゅどーん!
「ぐわー!」
な、なんとそのピクシーはあろうことか観客席に向かってソーラービームをぶっ放したのである!しかもキョウヘイに直撃した。
「続いてかえんほうしゃ!」
「きゅぃぃーっ!」
ぼごぉぉ!
「うわ!あちち!熱い、熱いって!」
他の観客たちは悲鳴なんだか歓声なんだかわからない叫び声をあげて床に伏せたので無事だった。
「お次はみずのはどう!」
どごぉん!
「ぐぇーっ!」
これで熱いのは収まったが、あまりに勢いよく、しかも顔面に直撃したので頭がクラクラしてしまった。
「とどめの10まんボルト!」
ばりばりばりりぃっ!
「ほぎゃあぁ○×△□☆♪〜!」
キョウヘイは たおれた!(おい…;)
「…い、以上ホナミさんでした…;」
司会者は呆気に取られた様子で言った。キョウヘイは関係者に介抱してもらい、選手控え室に寝かされた。
そこに出番が終わり、1次審査の結果を待つホナミが戻ってきた。やけに清々しい顔をしている。
「ぐぎがが…おいホナミ、こりゃ一体どういう…」
「どういうも何もありゃしないでしょ!まさかあの時の恨み、忘れたとでも言うんじゃないでしょうねぇ?」
「え、あの時…って、あぁっ!」
思い出した。確かあれは彼女がコーディネーターを目指したときのことである。
『へー、お前そのピッピで挑むつもりか?』
『そうよ、この子はいろんな技が覚えられるから、きっと活躍してくれるわ!』
『ふぅん…俺はそうは思えねーな』
『何ですってぇ!?そんなのやってみなきゃわかんないでしょ!』
『だったら俺とバトルするか?身の程知らずって言葉、思い知らせてやるぜ!』
『望むところよ!』
あの時の俺は思い上がりすぎていた。大人気ない戦法で彼女をけちょんけちょんに負かした挙句に「だから言っただろ、そんな雑魚ポケじゃ勝てねーよ、へへんだ!」なんてな暴言を吐いたのだから。
その後の彼女の泣き顔が鮮明に蘇る。普通なら「ちょっと言い過ぎたな」と反省して謝るところだが、その時の俺はいい気になってそのまま彼女をほったらかしてしまったのだ。
「…ごめんなさいorz」
「今更謝られてももう遅いわよ(黒笑)」
ホナミの全身からどす黒いオーラが放散されている。そして先ほどキョウヘイを狙い撃ちしたピクシーも。
その後彼がどうなったかは推して知るべしだろう、自業自得というやつだが。
因みに、今回のコンテストはホナミが優勝した、ということである。

003 終幕
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糸杉美理佳 #4★2007.05/02(水)22:37
004:有り得ないこともあるもんだ
ここはウバメの森の中。セレビィの祠の辺で、グレイシアとシャワーズが何やら話し合っていた。
「なあユキ、こんな面白いこと考えたことないか?」
「どんなこと?」
「例えば『もしもギャラドスとミロカロスの性格が逆転していたら』気性の荒いミロカロスと心優しいギャラドス…どうだ、有り得ないだろ!」
「それがどうかしたの?」
「だからさ、『普通なら有り得ないことを考えてみよう』ってことだよ」
「へぇ、面白そうね。じゃ、こんなのはどう?『普通に攻撃できるソーナンス』」
「持ち技を全部使い切ったら『わるあがき』で攻撃できるけどな。じゃあさ、これはどうだ?『自由自在に進化・退化が出来る』」
「それって漫画のネタにあったわよね…後はポケモンカードでも可能よね」
「それがあったか…。じゃあさじゃあさ、こんなのどうだ?」
こんな調子で二人は延々「実際には有り得ないが本当にあったら面白そうなこと」を語り合っていた。
「それじゃあさ…『こんなことがあってたまるか』ってのは?」
「それは…」
二人は同時に答えた。
『ろくな戦力じゃないくせに反則的な強さを誇る奴!』
「そうですよ、私あいつに2度も負けてるんですから!全く酷いですよ!」
「わっ、何時の間に!?」
何時の間にやら、二人の傍には仏頂面のエーフィがいた。
「申し遅れました、私の名はティファナ。お二人は?」
「私?私はグレイシアのユキ。こっちはシャワーズのウミオよ」
「おっす、よろしくな。こうしてイーブイ系が揃うのは何か運命的な物を感じるな(笑)それで、本当にいるのか、そんな奴?」
「ええ、最初はコンテストで、2度目はバトルタワー(しかもレベル100)で…。こっちの攻撃は全然効かないし、しかも唯一の攻撃技が寄りによって『はねる』だしおまけにそれが効果抜群の一撃必殺技だし…」
ティファナは延々と2匹に愚痴を垂れ続けた。これには2匹も冷や汗を垂らすしかなかった。
「まさか現実に存在するとはな…;しかし卵の分際でこんなにも有り得ねぇ奴とはけしからん!」
「そうよ、こうなったら設定を変えさせましょ!」
そこで3匹はその卵――ゆでォを生み出した者のところに急ぎ、「このままでは他の者達も、そして最終的には自分をも不幸にしてしまう」と訴えかけ、漸くゆでォは「ごく普通の孵化を待つ卵」に成り下がったのであった。
「これでひとまずは安心だな!」
「ええ、でもあいつが孵化した後が大変ですよ…?;」
「大丈夫よ、その時はその時でまたどうにかさせるわ!」
「(本当に大丈夫かしら…?;)」

004 終幕
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糸杉美理佳 #5☆2007.05/07(月)19:43
005:真面目すぎるのはかえって退屈じゃないかと思う
俺の名はライカ。「まじめ・とてもきちょうめん」な性格のルカリオ♂だ。
色々あってミオシティに住んでいるが、俺の周囲は実に…よく言えば個性豊かな、悪く言えばろくでもない(というかついていけない)連中だらけである。
見栄っ張りな奴に終始ぼーっとしている奴、食いしん坊な奴、悪戯好きな奴に暴れん坊な奴…ほとほと頭が痛くなってくるような性格の連中ばかりである。
今日も今日とて奴らは奴ららしくあっちでわーわー、こっちできゃーきゃー騒いでいる。こんな調子なので俺は「こりゃ俺が暴れだすのも時間の問題だな」と思い続けていた。
中でも一番の悪戯好きな奴―エテボースのリアラが、これまたいつものように俺に絡んできた。最初のうちこそ無視していた俺だが、「仏の顔も三度まで」である。
「…ええい、お前達!もういい加減にしないかッ!」
とうとう俺も理性を失ってしまった。しかし奴は平然とした顔でこう言い放った。
「ライカァ、そんなカリカリしてると寿命縮まるぜ?」
「お前達の所為だろうがッ!」
「まあまあ、同じ人生(ポケ生?)楽しく暮らしてたほうがいいだろ?」
「…まあ、それはそうだが…;」
「だろ?だからお前ももうその真面目一辺倒キャラから脱却したらどうだ?正直疲れてんだろ」
「いや、これが俺というものだ;…しかし確かに疲れるな;」
「そうだろ?」
「お前達の相手をしているお陰でな!」
「それじゃライカが俺達に合わせてみろよー」
「そうか?;…じゃ、やってみるぞ…」
とんでもない方向から打球が飛んできた。そこで無茶を承知でその打球を捕らえてみたら…

「うっひょ〜ん、俺様はこのミオシティ一クールでかっちょいいポケモンだぜ〜ィ!」

「うわ〜、ライカが壊れた〜!;(泣)」
俺だって半ばやけくそなんだよッ!(涙)
「…はぁ;(溜め息)…やはりキャラに合わないことをするのは大変だな;」
「そ、そうだね、やっぱライカはライカのままがいいよ…;」
やっぱり俺は俺らしく生きているのが一番だ。そして大切なのはこいつらと上手く折り合っていくことなんだな、というのがわかった。

005 終幕
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糸杉美理佳 #6☆2007.05/17(木)22:55
006:テンガン山の頂上で愛を叫ぶ
「あ〜あ…あいつら、ずっとあの調子だぜ…;」
俺はギラティナの「マホガニー」。普段は「もどりのどうくつ」の奥で息を潜めているんだが、時々こうして外に出て、「やりのはしら」にいる数年来の友達・ディアルガの「ホリー」とパルキアの「オーク」の様子を窺いに行くんだが…
あいつら、ちょっと見てない間に何時の間にそんなにラブラブになってたんだ!?;
今だってほら、ホリーがオークに愛妻弁当(というのか)を食わせてやってるぜ…「はい、あーんvv」なんて具合に飯(よく見ると今日は竹の子ご飯のようだ)を箸でつまんで食わせてやがる。
「うめぇ〜vvやっぱホリーの作る弁当は美味いぜ〜vv」
あーあー、オークの奴すっかり顔の筋肉緩めて…「空間の神」と呼ばれている伝説のポケモンの威厳が台無しだぞ、オイ。
「あ、ご飯粒ついてるわよ」
「えっ?何処にだ?」
「ほら、ここよ」
ぐわーっ!ホリーがオークの頬にひっついた飯粒をぺろっと、ダイレクトに…!(あまりのことにマホガニー錯乱中)
…ハァハァ、落ち着くんだ俺。素数を数えろ。
しかしああまで俺をさて置いてイチャイチャしてるのはどうにも気に食わん。いっちょ俺も自分に相応しい相手を探すとするか。何しろ俺ってば「もどりのどうくつ」の奥で引きこもり的生活をしてたからな;(誰だ、自業自得とか言った奴は!)
そこでポケモンワールド中を飛び回って、俺と気が合いそうな(出来れば可愛い)ポケモンを探すことにした。
まずは調査も兼ねてシンオウ地方中を見てみることにする。まずはコトブキシティか。
何だ何だ、あのニャルマーとエネコは。ホリーとオークの2号か、「サスケ君…」「サクラぁvv」なんて甘い声で語り合いやがって。
その後もあっちこっちと見て回ったが、猫も杓子も、コイキングでさえカップルを作っていやがる。
…もしかして、相手がいないのは俺だけか!?(涙)
「いや、お前ばかりが独り身の悲しさを背負ってるわけじゃねぇぜ」
「ほぎゃっ!?;」
突然声をかけられて、俺は心臓が口から飛び出しそうなほど驚いた。
「と、突然話しかけんな!驚かすんじゃねぇ!;」
そういや俺はゴーストタイプもあるから、同じゴーストタイプである技「おどろかす」は効果抜群なんだったな(^^;)
落ち着いてよく見ると、そこには俺と同じように人生に疲れたような顔をしたトレーナーがいた。
「お前はギラティナか。こんなところで出会うとは意外だな」
「ああ。俺にゃ一応『マホガニー』って名前があるんだがな」
「そうか、それがお前のニックネームか。それなら俺と一緒に来ないか?何か俺と似た波長を発してるとライカが言ってたからな」
ライカ…何時ぞや聞いたミオシティ在住のルカリオか。こいつのポケモンだったんだな。
「いいのか?仮にも俺は伝説のポケモンだし、それに『やりのはしら』に友達がいるんだ…でもそいつらにも問題があってだな、俺をさて置いて何時の間にやら深い仲になってたんだよ(涙)」
「そこなんだよ問題は。実は俺もモテなくて、彼女いない歴十数年なんだ(涙)似たもの同士ってところだ」
「ほんとか?…それなら二人で一緒に歩いていくか」
「そうだな、そして運命を変えていこうぜ」
こうして、こいつと俺の間に奇妙な形ではあるが友情が芽生えた。
俺が似合いの相手を見つけるのも、そう時間はかからないだろう。…そんな奴がいればの話だがな(涙)

006 終幕
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糸杉美理佳 #7☆2007.06/04(月)16:20
007:「愛さえあれば」とはいうが
どーも、俺はゼット。ハクタイシティ近辺出身のブイゼルだ。
俺のご主人・リョウジは料理の腕はぴか一だが、『実験』と称して毎回突拍子も無いレシピを考え付いてくれる、とんでもないトレーナーだ。人は彼を「料理界のマッドサイエンティスト」と呼ぶ。
この間なんかポフィンに「くさやの干物」を細かく切ったやつを混ぜ込んで「臭いが気になるって言ってたからな、これなら食えるだろ!」って自信満々に俺によこしたんだが、正直あれは食えたもんじゃなかったorz
他にも「暴君ハ○ネロ(+同・辛さ1.5倍)」やら「辛いカレー・L○E30倍」の唐辛子パウダーやらをしこたまぶち込んだキムチチゲ鍋を知り合いに振舞って悶絶させていたし(あのスープの毒々しいまでに赤い色はいまだに忘れられない…)、ノメルの実を生搾りしたやつにシークァーサーの果汁(しかも濃縮還元原液)を加えて水で割るなんてことはしないでそのまんま、蜂蜜も何も加えずに俺に飲ませたし(飲んだ瞬間むせたし「責任持って全部飲め」と半ば脅迫に近い強制を受けたので泣く泣く全部飲んだ…喉が焼けるかと思ったぜ(涙))、まさに悪魔の申し子とでも言うべきか。
たまにまともな料理を振舞ってくれることもあるがそんなのは極々まれで、自分もその料理を食べる日、つまり自分の誕生日とかクリスマスとかくらいである。地獄のレシピがあまりに酷すぎるもんだから自分で作っておきながら自分は食べない。あくどいにも程がある。
「おいゼット、新作できたぜ。食ってみるか?」
キター(AA略)。「今度はどんな代物を食わされるんだろう」と恐怖に震え上がりながらリョウジの元に近づく。
「ほれ。どんなもんだ?」
差し出されたそれはゼリーだった。黄金色に輝き、中には木の実の欠片と思しきものが浮かんでいる。
意を決して一口放り込む。しかし次の瞬間、予想外の事実に俺は我が目を…否、舌を疑った。
「…美味い」
「だろ?へへっ、いつもお前には変なものばかり食わせてたからな、たまにはまともなのも食わせてやらんと気の毒かな、って…だってお前は俺の大切なパートナーだしな」
その言葉が胸に染みる。そして今まで味わったことも無い美味さが口いっぱいに広がる。
「若○者をゼリーにして、中にピュア○ルグミを入れてみたんだ。試しに自分で試してみたが、結構美味かったんでこの感動を伝えるためにお前の分も作ったってわけだ。どうだ、俺もちょっと本気出しゃぁこれだけ美味いもんが作れるんだぞ」
「へへっ、馬鹿野郎…いつもそうしろってんだよ」
こんなトレーナーでも、俺はついてきてよかったと思ってる。おいリョウジ、今度から俺達に出す料理もそのくらいまともなレシピにしろよ!
ただし、新しくゲットしたポケモンに「恒例の新人歓迎の儀」と称してあの地獄のレシピを振舞うことだけはやめてくれよな;

007 終幕
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糸杉美理佳 #8★2007.06/17(日)19:52
008:1個だけが普通なロシアンルーレットというのもいいかもしれない
唐突だが今回はロシアンルーレットをすることになった。面子はこれまで登場したポケモン達だ。
準備されたのは人数分のポフィン。しかしこの中には一つだけ、リョウジお手製の内容からして凄まじいポフィンが混じっているのだ。無論それを食べたやつの負け(笑)
「おいゼット…お前のご主人が作ったんだろ、あれ…?;」
「ああ、あいつのポイズンクッキングは巷じゃ有名だからな…ポケモンもトレーナーも、あれの犠牲になったやつは数知れず…。トラウマになったやつも少なくないだろな…多分;」
「うわ〜、そりゃ強烈だな…出来れば当たりたくないな;」
参加者一同は真っ青になって震え上がった…食い意地の張ったズーク以外は(笑)
「よーし、それがどんな代物なのか俺が確かめてやらぁ!俺に食えないものはねえ!」
「…命知らずなチャレンジャーだな;」
というわけで各々一つずつ恐怖のポフィンを手に取り、「アーメン」と祈りを捧げて口に放り込んだ。
『…』
全員普通の反応。落ち着いて深呼吸し、周囲を見回す。そして確認をとってみると…

ライカ「…普通だ」
リアラ「俺もー」
ホリー「私も普通よ」
オーク「俺もだぜ」
マホガニー「俺も…よかったー(涙)」
プラチナ「全然平気よ♪」
ゼット「う、美味い〜(感涙)」
ユキ「普通だわ…ホッ(^^;)」
ウミオ「セーフ!(笑)」
サスケ「普通に食えるぜ…」
サクラ「美味しいわぁ〜!」
ズーク「美味い美味い」

…あれ?;
「…おい、確実に1個リョウジ謹製のハズレ混ぜといたんだろ?それなのに全員平気ってどういうことだ;」
「皆、まだ飲み込んでないだろ?1・2の3で口を開けて見せてみよう。それなら誰がハズレを引いたかわかるはずだからな」
というわけで皆で口を開けて、中のポフィンを確認してみた(そこ、汚いとか言うな!)。すると…
「…うぎゃ――ッ!ズーク、口ん中が凄まじいことになってる〜!;(涙)」
そう、ハズレを引いたのはズークだった。それなのに平然としており、しかもそれを「美味い」と言った。流石だ…。
「で、具は何なの…?;」
「えーと…確認できる限りでは唐辛子・練りわさび・粒マスタード・イカの塩辛・もずく・納豆・とろろ芋…うげーっ、見てるだけで気持ち悪くなってきたぜ…;」
「納豆!?うへーッ、俺は匂いを嗅いだだけで寒気がするほど納豆が嫌いなんだ!;」
「お、お前…筋金入りの食道楽だな…舌も胃袋も鋼鉄だよ;」

リョウジのポイズンクッキングは最早伝説の域だが、それにもびくともしないズークはそれよりもっと凄いやつだということが今回の実験で判明した。

008 終幕
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糸杉美理佳 #9☆2007.06/17(日)20:30
009:もしも願いが叶うなら
ポケモンの世界にも七夕は存在する。ポケモンもトレーナーもジラーチの形をした短冊に思い思いに願い事をしたため、天の川に思いを馳せる。
「なぁアーモンド、お前は何を願ったんだ?」
「僕?僕はねぇ…」
「アーモンド」と呼ばれた小さなイーブイは、隣に来たピカチュウの「レモン」に何を願ったか尋ねられて、こう答えた。
「…今までと違う自分になりたいな、って」
「今までと違う自分?」
「うん。僕は小さくて力も弱いし、いつまでもこんな頼りない姿じゃいられないと思ってね」
アーモンドは悲しげに耳を垂れた。
「レモン、君には取り柄があっていいよね。それに比べて僕なんて…」
「何言ってんだ!お前にだっていいところは沢山あるじゃねぇか、そんな悲観的になってどうすんだよ!」
「えっ?」
「いいか、確かにイーブイのままでは弱いと言われるかもしれねぇ。だがそれが何だ、その気になればレベルの高いポケモンも打ち負かせるかもしれねぇんだぜ?俺だってピカチュウのままでここまで来て、殿堂入りを果たしたんだ。やってやれないことはねぇんだ」
「本当に…?」
「ああ。それにお前、最近『僕って一体どの方向に向いてるんだろう…』ってこぼしてたようだが、何だ?進化のことか?」
「うん」
「それだったらなぁ、そんなに悩むくらいならいっそのこと進化しない手もあるぜ。理由はさっきも話したとおりだ」
それからレモンはアーモンドのいいところを必死に説明した。お前は心優しいやつだから誰からも愛されるんだとか、その素早さはお前の天性だから大切にしろとか。
「最後に、一つお前が変わるべきはその弱気な態度だ。もっと自分に自信を持て!そうすりゃどうにかなっちまうもんなんだよ」
「自分に自信…?」
「そうだ。お前は自分自身に臆病になりすぎてる。だから何も進展しねーんだよ。いいか、一歩踏み出さなきゃ何も変わんねーんだ。変わりたいと思うなら、まずは自分の弱いところを変えろ。そうすりゃ自ずと道は開ける。おお、もうお前の願いは叶いかけてんじゃねーか」
「…。うん、ありがとう!」
アーモンドはにっこり微笑んだ。
「ところで、レモンは何を願ったの?」
「俺の願いか?それはな…」
…お前の笑顔がいつまでも見られること、だよ。

009 終幕
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糸杉美理佳 #10☆2007.07/30(月)23:32
010:恐怖の夏の風物詩
夏といえば夏祭り。祭りといえば肝試し(ぁ)てなわけで、リノアご一行様はポケパークの新アトラクション「ポケモンタワー迷路」に来ていた。
このアトラクションはお化け屋敷と迷路を合わせたもので、複雑な迷路の随所にゴースト&あくポケモンが現れて人々を驚かしまくっているのだ。勿論スタッフもお化けの仮装をして、驚かしに加担している。
「さーて、入りましょか」
「うん。ここまで来た甲斐があったわね♪」
「え…マジでか!?;」
マッスルとブレインはもう入る前から腰が引けている。しかしエレキはノリノリだ。
「だって、折角の新しいアトラクションだもん。楽しまなきゃ損でしょ?」
あっさりと言い放つエレキに、ブレインは信じられないと言わんばかりの顔をした。
「『楽しまなきゃ損』、ったってなぁ…;」
「おいリノア、気は確かなのか?公式サイトに載ってた体験者の声読んだら『あまりの怖さに寿命が5年は縮むかと思った』ってあったくらいだぜ…?;」
既に冷や汗を垂らしているマッスルに、リノアは平然と答えた。
「そんなの個人的な問題でしょ?暴君ハ○ネロだって、『辛さの感じ方には個人差がある』ってパッケージに書いてあるし」
いや、それとこれとは話が違うだろう。そう言いたかったが、やめておいた。
「それじゃ早速突撃よー!レッツゴー!」
『ひぇ〜!;(顔面蒼白+滝汗+涙)』
完全にビビっている2匹を引きずって、リノアとエレキは迷路に入っていった。

中はかなり薄暗く、内装も「もりのようかん」に負けず劣らずのおどろおどろしさである。崩れかかった石とレンガの壁に蔦が絡みついたリアルなデザインで、ひんやりとした空気に包まれている。
『うわあぁ!出たぁーっ!;(滝汗+泣)』
早速現れたゴースに悲鳴をあげるマッスル&ブレイン。しかしリノアもエレキも全然意に介さない様子。
「何よあんた、その程度で私達が怖気づくとでも思ってるの?」
「怖いのは仲間を失うことだけよ!」
『(な、なんちゅう精神力の強さだ…;)』
そうこうしているうちにご一行様はあまりの迷路の複雑さに迷ってしまい、リノア&エレキ組とマッスル&ブレイン組に分かれてしまった。
「ど、どうすんだ、俺達迷っちゃったぞ;」
「落ち着け、素数を数えるんだ…って違った、こういうときこその『みやぶる』&『ミラクルアイ』じゃないか」
そういえば自分達はそれらの技が使えたっけ、と今頃になって思い出す2匹。鈍すぎる…。
「写輪眼!」「白眼!」などと某漫画の能力名を叫びながら、マッスルは「みやぶる」、ブレインは「ミラクルアイ」を発動した。2匹の目から車のヘッドライトのように光がほとばしり、そこら一帯を明るく照らし出す。物陰に隠れていたポケモン達&スタッフはすわ何事やあらんと大慌てだ。
「ふぇーっ、これでどうにか無事に突破できそうだな」
「ああ。早いとこリノア達と合流するぞ!」
と、その時であった。
『うぎゃ〜っ!;(泣)』
『な、何だっ!?;』
突然聞こえてきた悲鳴に振り向くと、何故か命からがら逃げていくポケモンとスタッフ達。よく見ると…
「おらおらおらーっ!私達をナメんじゃないわよー!」
「あんたさっきお化け役なのをいいことに私に抱きついてきたでしょ!この変態!」
リノア&エレキだ。物凄い形相で驚かし係を追い掛け回している。
「り、リノア!エレキ!;」
「わーっ、俺達まで巻き込むな!;」
他の参加者(とマッスルとブレイン)によると、このアトラクションで一番怖かったのは、お化けではなくこの怒り狂ったリノアとエレキだったという…。

010 終幕
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糸杉美理佳 #11☆2007.09/11(火)01:07
011:「今何時?」と聞かれて「親父」と応えるギャグはもう通用しないと思う
(注:今回は「狼と7匹の子山羊」のパロディです)
昔シンオウ地方のあるところに心優しいピカチュウのお母さんと、仲の良い7つ子のピチュー兄弟が住んでいました。
ある日のこと、お母さんピカチュウは「これからトバリシティに買い物に行ってくるからいい子で留守番しててちょうだい。でもお母さん以外のやつが来てもドアを開けちゃ駄目よ」とピチュー達に言いました。ピチュー達は「はーい、お母さんも気をつけていってらっしゃーい」と元気よく返事をしてお母さんピカチュウを送り出しました。
ところがその様子を物陰から覗いているやつがいました。ロケット団シンオウ支部から派遣されたニャースです。ボスの命令でピチュー達を捕らえに来たのです!
「どうにかしてあのピチュー達をガッポリいただいていきたいニャ。でもどうしたらいいのニャ?」
ニャース、暫し沈思黙考。そして素晴らしいアイディアが浮かびました。
「そうだニャ!あのピチュー達の母親の振りをすればバレないニャ!ふふふ…」
そう言うとニャースはいそいそと支度を始めました。何処からか持ってきたボイスチェンジャーを装着して、準備万端です。
とんとんとん。
「誰だい?」
「お母さんよ、開けてちょうだい」
「あっ、お母さんの声だ!」
早速絵に描いたように引っかかってくれたわい、とニャースはほくそ笑みましたが…
「でも待てよ、誰かがお母さんの振りをしているだけかもしれないぞ」
「あ、そう考えればそうかもしれない…よーし、それなら尻尾を見せてみろ!」
「(え゛――!?;)」
突然の無理難題にニャースはドッキリしてしまいました。
「(ふふっ、心配無用ニャ!こんなこともあろうかと思って…)」
ニャースはまたしても何処から持ってきたのか、ピカチュウの尻尾の張りぼてを取り出して、ドアの隙間からそれを見せて振りました。
「…ん〜、お母さんと同じ尻尾にしては何か違和感があるな」
「そうだね、あんなに厚ぼったくないし、第一縫い目がある時点でおかしいよ」
「(な…あっさりバレてる――!!;)」
「やいお前、一体何者だ!?何の用かは知らないがお引取り願おうか!」
「く、くそぉ…こうなりゃヤケだニャーッ!」
とうとう自暴自棄になったニャース、乱暴にドアを蹴破って突入。
「オイラはロケット団シンオウ支部のニャースだニャ!ボスのご命令でお前達を捕まえに来たんだニャーッ!」
「やっぱりそうか。薄々感づいてはいたんだよなー、僕達を狙う悪い奴がいるんじゃないかってな」
「がびーん…」
ニャース、ピチュー達に成す術も無く完敗です。
「まあとりあえず悪者は退治するっきゃないな!皆、行くぞ!」
『おう!』
「な、何ニャ…;」
ピチュー達は激しい電撃を身に纏いました。そして…
『食らえ!ボルテッカー!!』
「ぎゃ〜、やな感じニャ〜!(泣)」
あっさり撃退されてしまいました。実はニャースは、そしてロケット団の連中は気づいていなかったようですが、このピカチュウ一家はシンオウ地方最強のピカチュウ一家だったのです。
こうしてピチュー達の無事は守られ、お母さんピカチュウも何事も無く山のような買い物をして帰ってきました。彼女が買い込んだのはマックスアップやらタウリンやら…これでは最強と呼ばれるのも無理はありません(笑)。
「さあさあ、ご飯の時間よ!皆いらっしゃい!」
『は〜い!』
今日もまたピチュー達の明るい笑い声が辺りに響くのでした。

011 終幕
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糸杉美理佳 #12☆2007.10/23(火)15:16
012:雪解け間近
雪が降る。
何処までも白く、冷たい雪が。
自分の心に、降り積もる。

俺はその辺にいるのと変わらないブラッキーだが、数年前かつて信頼していたパートナーに見捨てられた。
何故かはわからない。でも、奴が最後に「ごめんね…」と呟いて涙を流していたことだけははっきりと憶えている。
その時から俺は、全てが信じられなくなった。
事実を受け入れることができなかった俺は、ただ泣き続けた。
声が嗄れ、涙が出なくなるまで泣いていた。
その日は大雪で、何処を見渡しても奴の姿は無く、ただ一面に降り積もった真っ白な雪だけが俺を取り囲んでいた。
白く、冷たい雪。
そして、人の心もこれほどまでに冷たいものかと思うと、やりきれない思いで胸が張り裂けそうだった。
それ以来俺は心を閉ざし、誰を信じることも無く暮らしてきた。
何時しか「本当の自分」さえも失って。
何だかあの大雪で、自分の心も凍り付いてしまったようだ。

月日は流れ、数年前のあの日と同じように凄い雪が降った。おまけに酷い吹雪で、何も見えない。
厳しい寒さがこの身を貫く。同時に、忌まわしい記憶も蘇る。
このまま雪に埋もれて、誰に気づかれることも無く俺は消えてゆくのか…
生きることにさえ絶望し、ここから消えることまで願うようになってしまったとは。思わずゾッとした。
その時だった。
「ライト!」
聞き覚えのある声がした。目を凝らすと、人影が近づいてくる。
果たして、その正体は俺を捨てたトレーナーだった。俺は身構えて、こう言い放った。
「俺を捨てておきながら…今更撚りを戻そうってのか?」
口から飛び出した言葉も、冷たく鋭くなっていた。俺の心がすっかり凍ってしまっていた証拠だろう。
すると、奴は必死で首を横に振った。よく見ると、涙で顔が崩れていた。
「違う…違うんだ!」
「じゃあ何故あんなことを…!」
「それは…っ」
そして、彼の口から思いもよらぬ事実が語られた。
「本当は…お前と一緒にいたかったんだ」
「…」
言葉を失う。しかし、まだ信用が置けない(こうも疑心暗鬼になってしまった自分を情けなくも思った)。
「嘘をつくな!本当はどうなんだ!?はっきり言え!」
「…」
奴は俺の前に崩れ落ち、嗚咽を漏らした。
「今まで黙っていて、本当にごめんっ…実は僕、父さんの仕事の都合でマンションに引っ越すことになってたんだ…でも、そこの管理人さんが大のポケモン嫌いで…昔湖で遊んでいたら水草と間違えてギャラドスのひげを掴んでしまい、怒らせて…それがトラウマになったって…だからお前を一緒に連れて行けなかったんだよ…!」
喉の奥から搾り出すような声で奴は言った。
「でも管理人さんもかなりの歳で、今年の夏に心不全で亡くなって…若い人が新しく管理人になったんだけど…その人はポケモンが好きだから、入居規約から前の管理人さんが入れてた『ポケモン禁止』を消したんだ。だから…これでまたお前と一緒に暮らせる、と思って…迎えに来たんだ…!」
「…」
そうだったのか。胸の奥で俺を苦しめていた氷が、少しずつだが溶けていくのを感じた。
「お前にも悲しい思いをさせてしまったね…ごめん、本当にごめんっ…!」
奴は俺を抱きしめ、声を上げて泣いた。
そうだったのか、奴も本当はあんな酷い仕打ちはしたくなかったのか。
抱きしめられた温もりが心の氷を一気に溶かし、冷え切った体と心を蘇らせる。
何時しか涙が頬を伝い、零れ落ちていた。零れた涙が雪を溶かし、小さな穴を開けた。
「馬鹿野郎…何故それを早く言わなかった…!」
俺も奴の胸に縋って泣いた。同時に、忘れかけていた「本当の自分」が戻ってくるのを感じた。
不意に「ヒロヤー、早く戻ってらっしゃい!風邪ひくわよー!」という声がした。奴の母親だ。
「うん、わかった!…ライト、おいで!」
「…ああ」
今はまだ寒さ厳しい冬の盛りだが、俺の心は雪解けを迎えた。
そして、これからも俺は奴と一緒だ。そう、永遠に…

012 終幕
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糸杉美理佳 #13☆2007.12/26(水)22:23
013:大晦日とか新年とかそんなの関係無ェ、と嘆く奴は本当に哀れだと思う
トレーナーにもポケモンにも、元日とかクリスマスとか「何だかわからんがめでたいものは兎に角祝っとけ」的なイベントは重要な意味を持つものらしい。今回も皆で集まり、クリスマスはどうだったかとか、来年の抱負は何だとか色々と話し合っている。
「そろそろ年明けだねー」
「そうだね、来年は一体どんな年になるんだろう…」
鏡餅を飾りながらリノアは寒空を見上げた。ヒロヤもリョウジと一緒に門松を並べながら目を輝かせていた。
「おいリョウジ、いくら無礼講の許された新年会とはいえ、おせち料理をてめぇのポイズンクッキング一色に染めたら承知しねぇぞ!…まあもっとも、ズークにゃ関係無い話だがな;」
「大丈夫だ、そこまではしないから^^;」
ポケモン達はポケモン達で新年の迎え方について盛り上がっているようだった。
「新年か…身が引き締まる思いだな。俺ももっと精進しなくちゃな…」
「あはは、ライカは相変わらずお堅いわね^^;私はコンテストで鍛えた演技で派手に見せるわ」
「俺は出演者同士で親睦を深めようということで、カルタ取りでも楽しみたいな。凄いことになりそうだけど(笑)」
「とりあえず初詣も必須よね。えーと、第一に『これ以上マッスルとブレインが迷惑を掛けませんように』かな」
「うわ、エレキ切実だな^^;俺だったら『リョウジが一刻も早くポイズンクッキングから手を引きますように』だな」
「お前も同じこと考えてるじゃねぇか(笑)」
彼らの思惑を知ってか知らずか、空気は日増しに冷たく澄み渡り、1年の終わりを予見させていた。
何時しか太陽は傾き、夕空に茜雲がたなびいていた。
「皆、夕飯が出来たわよ!今夜はとりわけ冷え込むっていうから、お鍋にしたわ」
『わーい、やったー!』
筆者の私が願うこと。それは、彼らの…多少ドタバタはしているものの、平穏無事な姿が見られることだ。
彼らにとっては、「友情」こそが最高のお年玉となることであろう。
読者の皆さんも、よいお年を。

013 終幕
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糸杉美理佳 #14★2008.01/18(金)11:53
014:出会いと別れと恋心が全てを大きく育てるというのはあながち間違っちゃいないだろうと思う
ここはとある場所にある「青葉の森」と呼ばれている森。
その森の一角に、1匹のサーナイトが住んでいる。彼女の名は「リアン」。つい最近キルリアから進化したばかりだという。
大木の穴で彼女は暮らしているのだ。朝には柔らかな日の光が差し込み、夜には虫の声が聞こえる静かな場所である。
さて、進化してからリアンの様子がおかしい。普段は元気で少々気が強い彼女だが、このところ大木の家に篭り、窓の外を眺めてはため息をついてばかりいるのだ。
「リアン、どうしたの?何だか最近元気が無いわね」
森のポケモン達も心配して彼女の元を訪れるが、リアンが元気になる様子は一向にない。皆は「もしかして彼女は心に何か抱え込んでいるのではないか」と悟り、どうにかしてリアンを元気付けようとした。
「早く元気になって出ておいでよ、いつもの明るい君の姿が見たいんだ!」
「どうした?そんなに塞ぎ込んでばかりでは何も解決しないぞ。何があったのか相談してごらん」
「皆、そんなに私のことを心配してくれて…ありがとう、何があったのか教えてあげるわ」
そしてリアンは淡々と事の経緯を説明した。

まだ自分がキルリアの姿だった時のことだ。ある雨の日のこと、何者かに襲われたのか道に迷ったのか、ともかく弱って倒れていた別のキルリアを見つけたのが発端だという。
『大丈夫!?しっかりして!』
『う、うぅ…』
リアンは早速そのキルリアを担いで自分の住居に連れて行き、必死で介抱した。
その甲斐あって夜が明けた頃にはそのキルリアもすっかり元気になっており、リアンは一安心した。
『いやー、夕べは助かったよ。ありがとう…ところでお前、名前は何て言うんだ?』
『私?私はリアン。あなたは?』
『俺の名はキルト。実は幼い時からの友達である少女とはぐれてしまい、その上スピアーの大群に襲われて逃げ惑っているうちに迷ってな…それにここんとこポケモンを狙う悪い奴らが増えてるっていうから、そいつらに捕まったらどうしようと思って…』
『なるほど、そういうことなのね。わかったわ、ご主人様が迎えに来るまで私が保護してあげる』
『ほんとか!?こいつぁありがてえな』
こうしてリアンは暫くの間キルトと同棲することになった。甲斐甲斐しく面倒を見ている間に、何かが彼女の内側で目覚めたようだ。
『(何だろう、この気持ち…)』
その後暫くしてキルトのご主人様と思しき人間がこの森にやって来て、キルトは無事彼女との再開を果たしたのである。
『ありがとう、心優しいキルリアさん。あなたも一緒に連れて行きたいんだけど、あいにくまだ私は正式なトレーナーじゃないからモンスターボールであなたを捕まえるわけにもいかないの…ごめんね、でも私がトレーナーになったらあなたも仲間にしてあげるから。絶対ね!来年で10歳になって、トレーナー免許も取れるから…』
『短い間だったけど、世話になったな。ありがとう、リアン…』
そう言い残し、キルトと少女は名残惜しそうに去っていった。程なくリアンは進化し、彼女が憂鬱なのはその時からだという。

「なるほど、それってもしかして恋ってやつか?お前が進化したのも、切ない気持ちが募り募って、恋愛の経験値が貯まったから…じゃないのか?」
「…」
リアンは真っ赤になって俯き、黙りこくってしまった。どうやら図星らしい。
「1年越しの遠距離恋愛か。かーっ、泣かせる話だねぇ…」
「ちょっと、からかうのはよしなさいよ!」
わいわい話し込んでいた、その時である。
「おーい!リアンー!」
聞き覚えのある声がした。振り向けばそこにはあの時以来随分成長した少女、そして傍らに1匹のエルレイドが。姿は変われど、その声は間違いなくキルトのものだった。
「キルト!あなた、進化したのね!」
「ああ、お前も進化したんだな!」
思わずキルトの元に駆け寄り、彼を抱きしめるリアン。その様を見て森の住民一同はどよめいた。
「ああ、会いたかった…!あれからずっと、私はあなたのことを思い続けてきたのよ…」
「俺もだよ、リアン…俺もずっと寂しくて、またお前に会いたくて仕方が無かったんだ。でも、(少女のほうを見て)あいつのご両親が俺を元気付けてくれたんだ。あいつの誕生日が来たらお前に会える、ってな」
「そうだったの…でもよかったわ、まさかお互いに進化してたなんてね」
リアンとキルトは顔を見合わせて破顔一笑した。
「リアン…だっけ?あの時は本当にありがとう。私もこの通り、トレーナーとして旅を続けていけるようになったから、あの日の約束通りあなたも一緒においでよ!」
「ええ、勿論よ!…うふふ、ありがとうね」
「これでこれからもずっと一緒にいられる、ってわけだな」
こうしてリアンは森の仲間達に見送られ(ついでに熱い声援なのか冷やかしなのかわからない囃し声をかけられながら)、悲願だったキルトとの新生活を送ることになった。
たまにはこういうベタな話だっていいじゃない、にんげんだもの。

014 終幕
pl337.nas928.p-kanagawa.nttpc.ne.jp
糸杉美理佳 #15☆2008.02/15(金)20:39
015:2月14日を「バレンタイン?それより煮干の日だろうよ」と述べる身にはなりたくないものだ
「皆、残念なお知らせがある…」
ゼットが何時になく暗い顔をして、並み居る♂ポケモン一同に告げた。
「何だ、どうした…?」
深刻な様子に、思わずライカは尋ねた。
「昨日は2月14日、世で言うバレンタインデーだったわけだが」
「ああ、♀ポケモン一同からチョコを貰って俺達有頂天だったわけだが、何だ?あの後あいつらが『ホワイトデーでの2倍・3倍返しは当たり前でしょ〜w』とか脅しをかけてきたのか…?;」
「違う、ホワイトデーのプレッシャーなど本当の恐怖に比べたら蚊に刺されたくらいしかない」
「じゃあ何だ?もしやお前のご主人の恐怖のポイズンクッキングによる、とてもチョコとは呼べない産物か…?;」
「それに近いんだが…奴を上回るとんでもねぇのが来た…!」
♂ポケモン一同、ごくりと息を飲んだ。
「作者が『一日遅れだけど、これを皆に』って、俺らにチョコを作ってきたんだ…」
「なーんだ、そんだけか」
「アホか!お前は作者の真の恐ろしさをわかってないだろ!;」
呑気に返事を返すリアラに、ゼットは光の速さでツッコミを入れた。
「いいか、作者は某ライトノベルのヒロインのように、自分の意のままに物事を転がせるんだ。だから彼女の気まぐれで、この後の展開や事態の背景なんてどうとでもなるんだよ!;」
そのことに気づいた一同の時間が、数秒停止した。
「そ、それじゃ『鋼鉄の舌と胃袋を持つリーフィア』と名高い俺でもぶっ倒れそうな代物が飛んできた、とかなるんじゃ…?;」
流石のズークも嫌な汗をかいている。
「ああ、そういうことにもなりかねん」
哀れ、マッスル&ブレインはエレキに叱られている時以上に縮み上がっていた。滝のような汗を流して固まっているキルトの後ろに隠れて震えているウミオも、ただでさえ青い顔を益々真っ青にしていた。
「ど、どうするんだ俺達!?このままこの世ともお別れなのか!?それは嫌だぜ創造主さんよ!;(泣)」
「安心して、別に毒らしきものは入ってなかったわ」
「!?」
突然響いた声に一同が一斉に振り返ると、そこには何時の間にやらプラチナが。
「ぷ、プラチナ!何故そう言い切れるんだ!?;」
「事前にあなた達のご主人も毒見と称して十字を切りながら食べてたけど、その直後に『ほろびのうた』を食らったかのようにばたばたと倒れた、なんてことはなかったのよ。皆普通に美味しいって言ってたわ」
『そ、そうだったのか…』
全員に安堵の表情が浮かんだ。
「ただ、一つ言うとするなら…」
「何だ?」
プラチナは口ごもりながら、驚愕の事実を告げた。
「言いにくいんだけど…あれには一種のフェロモンが混ぜてあったみたいなの。しかも、異性じゃなくて『同性を』惹きつけるものをね」
突然窓の外からけたたましい悲鳴が聞こえてきたので、一同がその言葉を理解するのに数秒とかからなかった。
「…つ、つまり作者は同性をメロメロにする惚れ薬を開発して、それをチョコに混ぜ込んだ、ということか」
「そういうこと。あなた達が先に食べなくてよかったわ…そうでなかったら今頃、窓の外で必死に♂ポケモン達から逃げ回っているご主人様達みたいになってたわ」
これには一同苦笑い。そして、「おーい、ご主人ー!フェロモンの効果が切れるまではむやみに入ってくるなよ、俺らまでメロメロになったら困るからなー!」とからかいの言葉を窓から投げかけた。

015 終幕
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糸杉美理佳 #16☆2008.05/20(火)19:27
016:台風なんてありがたみも何もないただの迷惑な代物だと思ったら違う
「…では次のニュースです。南の海上で発生した台風12号は現在ホウエン地方沿岸を通過し、ジョウト地方沖合いを時速20kmで北上中です。この影響で暴風雨による土砂崩れなどが懸念され…」
「…こりゃひどいな」
テレビの台風情報を見ながら、俺は呟いた。
俺はこれまでに幾度と無く気象災害を見続けてきた。古来から神の怒りといわれ恐れられてきた、大いなる自然の力。
人間にはどうすることもできないこの力を、ポケモンはいともたやすく操ってしまう。神に近い存在なのだろうか。中には神そのものとされるポケモンもいるだろうが。
しかし俺は生憎そう簡単に奇跡を信じたりはしない。むしろ諸行無常を儚んでいる。
テレビのニュースを見ていたって、昨今は犯罪や不祥事が相次いでいる。これではこの国も長くは持たないだろうな。
窓から外を見れば、どんよりと黒い雲が空を覆っている。風も強く、雨も降っている。
「こんなときにこそ頼られるんだよな、俺は…」
俺は深々と溜め息をついた。そして重い腰を上げ、外に出た。
吹き付ける風が俺の顔を掠めていく。そんなことも構わず、俺は進んだ。
そして、足を止めたのは…波止場だった。
「まったく、俺もいいように使われて、困ったもんだぜ…」
目を閉じれば、雨音と風の音に混じって荒れ狂う波の音がする。この天気なのでさすがに誰もいない。
俺は神を信じてはいない。何故なら…
「俺自身が神と呼ばれているからだ…」

その日、沖合いを進んでいた台風はナナシマ近くで突然消滅した。その原因ははっきりとはわかっていないが、その前後に巨大な銀色の竜のような生物が飛び回っているのが確認されていた…と、その晩のニュースで流れた。
「全くもう!あれほど目立っちゃ駄目だって言ってたじゃない!」
「すまねぇ、でも落ち着かなかったんだよ…それに、何だか島の住民が放っておけなくて…やれやれ、島の守り神も辛いぜ…」
ナナシマに程近い「へそのいわ」と呼ばれる無人島で、妻であるホウオウに小言を言われながら、ルギアはのそのそと自室に引き上げた。

016 終幕
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[1001]

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ぴくの〜ほかんこ