ぴくの〜ほかんこ

物語

【ぴくし〜のーと】 【ほかんこいちらん】 【みんなの感想】

完結[1003] ブラッキー・ルノンのキモチ

ステラミア #1☆2007.04/25(水)18:20

ぼくにはあこがれていたヒトがいた。
そのヒトは【エーフィ】ぼくのしんかけい。
そんでもってなまえが【アリア】。
そのヒトはぼくのちかくにすんでいた。
【すんでいた】…つまりまえまでのコト。
だからいまはあえない。
だからさみしい。
だからあいたくなる。
だけど…あえない。
だけどあうのもいやだ。
なぜって…さいごのひにぼくがいたずらをしたから。
きらわれてるカモ。
おこられるカモ。
それがこわい。
あのヒトのわらっているカオだけがみたいから。
かなしんでるカオをみたくないから。
おこっているカオをみたくないから。
だから…だから…。
いやなキモチになる。
フクザツっていうのかなぁ。
もしかしたらちがうカモ。
ぼくがよわむしだから。
ぼくがなきむしだから。
にげているだけなのカモ。
つよくなりたいな。
かっこよくなりたいな。
それで…。
それであのヒトにぎゅってしてもらって。
【大好きよ】っていってもらいたい。
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ステラミア #2☆2007.04/25(水)18:45

「ルノン!ルノンってば!起きなさい!」
あれ?リィシャちゃん?
「私の弟なんだから、しっかりしてよ。男の子でしょ?」
うーんとうなってぼくはめをあけた。みずいろのねえさんがすわっている。
そのねえさんはさかなのしっぽをシャッとふった。ひかりがとんだ。
「ほらほら起きなさい。【バブル光線】でかおをあらいたいの?」
ここでウンといったらたいへんなことになる。ベットはびしょびしょ、からだはずぶぬれ。
 ぼくはとびおきた。リイシャちゃんのおくにはナランちゃんがいる。
ナランちゃんはつんつんのきいろいみみのけをなでていた。
そんでそのおくにはフライパンにほのおをふいているフレアちゃんがいる。
みんなぼくをみて、にっこりわらった。
『おはようルノン。』
ぼくもわらった。
「おはよ。リィシャちゃんにナランちゃんにフレアちゃん。こほん」
そんであくびをした。
なんかきょうはからだがあつい。
でもねつはない。
ぼくはいつものクセでのびをした。せなかがゴキゴキなった。
そうそう、ちなみにいっておくけど、ぼくはオッドアイでからだがいろちがいの【イーブイ】。
ま、これはじまんだけどね。
からだはしろくてうすくあおくひかっている。
みぎのめがあか、ひだりがあお。
しんだかあさんによると、ぼくはすっごいめずらしいみたい。
ニンゲンにはつかまらないでねってクチグセみたいにいってた。
それにしてもねえさんたちがやけにニヤニヤしてる。
どおしたんだろう?
そのときリィシャちゃんがみずでかべをつくった。
キラキラひかってる。
そのかべがかがみになった。
ぼくのいるはずのばしょに【ブラッキー】がいた。
ぼくはめをまるくした。
しんかだ!
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ステラミア #3☆2007.04/26(木)18:30

ぼくはあたらしいじぶんをながめた。
めのいろはまえとおなじ。ちぇっ。
からだはあおいつきのわっかに、まっしろなからだ。
いちばんかわったのがおおきさだ。
リィシャちゃんとおんなじ。
ナランちゃんもフレアちゃんよりもおおきくなっちゃった。
…それと、アリアさんよりも。
それでほかのブラッキーとはちがうながーいくせっけ。
ちぇっちぇっまえとおんなじか。
たいへんなんだよね、くせっけって。
ハァ。きがおもくなるよ、まったく。
まいあさくしをとおすたびにけがぬける。
しかもいたい。
やだな、とおもいながらぼくはくしをとおした。
スルッ。
あや?もしかしてのもしかして?
もういっかいとおした。
スルッ。
うれしくなった。
いや…くせっけでもきれいにくしがとおるんだな。
ぼくはくしをながめながら、にやっとわらった。
いやはや、これからがたのしみだねぇ。
まったく。
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ステラミア #4☆2007.04/26(木)18:31

なんか知らないけど、リィシャちゃんに漢字、ナランちゃんにみだしなみのやり方、フレアちゃんには礼儀作法を叩き込まれた。
文句を言って理由を聞くと、みんな口をそろえる。
『もう【ぼくちゃん】時代じゃないからよ。』
ハッキリ言ってちんぷんかんぷん。
5日位で僕はウンザリしてきたから、逃げ出して散歩に行った。
もちろん置手紙は置いて来たからね。
僕は何も考えず、ひたすら歩いた。
そのあと長い草の群れに迷い込んだ。
でも後ろには僕の足跡がある。だから迷わない。
そう思って僕は後ろを向いた。
ほら、ここに…。
ん、やばい。
ここの地面はからからだった。
足跡が無い。
青々としていた草達が、ザワザワと騒いだ。
すーっと空気が冷たくなった。
僕はさっと後ろ足で立った。
すぐ近くの草がざわざわ揺れてる。
誰かこっちに向かってる。
僕はほっとした。
姉さん?と思って僕は前足を地につけた。
その瞬間ひょこっと誰・かの顔が出てきた。
!?えっ、まさか!
でも…額の石の色が同じだ。
黒い…石。
その誰かは【エーフィ】だった。
僕のよーく知ってるヒト。
アリアさん…だった。
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ステラミア #5☆2007.04/28(土)08:41

アリアさんは口をパクパクしていた。
「ル…ル…ル…ルノン!?」
僕は驚きを隠して、さりげなく微笑んだ。
「アリアさん、お久しぶりです。」
アリアさんは深く息を吐いた。
「進化…したのね。あいからわず色違い…。」
僕は目線を落として、アリアさんと目を合わせた。
「えぇ。それに、アリアさんよリ大きくなってしまいました。」
「逃げなさい。今すぐに、ほらっ!」
「は?」
今度は僕が口をパクパクさせる番だった。
「な…なんででしゅ…じゃなくて、なんでですか?」
「私は人間に捕まったの。あの人は色違いポケモンばっかり集めてて…。」
その時何かの声が、僕らの会話をさえぎった。
[ラジム、いあいぎりだ!]
草が根本から切断された。
その先には…人間がいた。その横には…黄色いバシャーモ。
その人間が、アリアさんを見て微笑んだ。
[リジー、ありがとう。見つけてくれたのか。]
リジー??違う、アリアさんじゃないの?
その時、母さんの口癖が聞こえた。
『人間にだけは、捕まらないのよ。』
僕はハッとして、悲鳴を上げて逃げ出した。
[リジー、スピードスター!]
「痛っ!?」
カラフルな星が僕を襲った。そこが焼けるように痛い。
僕は思わず、振り向いた。
アリアさんの目に、涙が浮かんでいた。
でもその目は、殺気立っていた。
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ステラミア #6☆2007.04/28(土)08:43

僕は逃げるのをやめた。
なぜかは分からないけど、戦ってみたくなった。
僕はアリアさんに【噛み付く】をした。
効果バツグン!…のハズ…だったのに。
跳ね返された。
[ラジム!ブレイズキック!]
人間の声…それに続いて効果バツグンの痛み…。
やばい…焦点が合わなくなってきた。
その時、人間が僕に赤と白のボールをぶつけた。
僕はその中に吸い込まれた。
僕は一生懸命あがいたけど、ボールを3回揺らせただけだった。
カチッと何かが鳴った。
赤い所が透き通ってみえる。あ…誰か来た。
リィシャちゃんに…!姉さん達だ!
危ない!こっち来ないで、つかまる!
姉さん達は地面に転がっている僕とボールを見ると、人間に威嚇した。
でも人間は見向きもせずに、アリアさんに僕をくわえさした。
アリアさんは優しい目に戻ってた。
いやいやながら、アリアさんは僕を人間に渡した。
人間はふたつ、空っぽのボールを出して、ボタンをおした。
するとバシャーモとアリアさんはその中に吸い込まれていった。
人間はそれをしまうと、もうひとつボールを出した。
真っ白なハクリューが出てきた。
人間はその子にまたがった。
人間が僕に笑いかけるのを、ボール越しに見えた。
そして僕をアリアさん達のいる所にしまった。
右にアリアさん、左に黒いエアームドがいる。
二匹とも心配そうにこっちを見てる。
僕はそこまで見ると、気を失ってしまった。
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ステラミア #7☆2007.04/28(土)18:49

力がどこからかわいてきた。
ぽんぽんぴぽぴん♪
…なんかダサい音楽が聞こえたような気がする。
その時僕は持ち上げられた。
そのまま建物の外に出た。凄く広い公園だ。
僕は赤いボールの外に出された。
他にも、さっきの黄色いバシャーモ、白いハクリュー、黒いエアームド、黒い石を持つアリアさん、そして青いゴローニャが居る。
人間はぺらぺら喋り始めた。
[この子は新入りだよ。皆。
 そうそうブラッキー君、皆の自己紹介をするね。
 バシャーモがラジム。ハクリューがアンナ。
 で、エアームドがジタン。そしてエーフィがリジー。
 最後にゴローニャがグレン。で、僕がタカシ。
 あ、君に名前を…ジームはどうかなぁ。]
は、じぃむぅ?ち、ちょっとまった。僕はルノン。る・の・ん!
僕はそれを強調させるために、言った。
「僕は、ジームじゃ、ない。ルノン。わかった?ル・ノ・ン!」
人間は微笑んだ。しかも嬉しそーに。
[そうかそうか。嬉しいか。良かったな、ジ・ィ・ム。」
僕はうなだれ、皆はため息をついた。
人間に言葉は通じないのか。
タカシという人間だけがニコニコしていた。
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ステラミア #8☆2007.04/28(土)18:49

人間が今日泊まる所を捜しに行ってる間、僕たちは改めて自己紹介をした。
人間に紹介された順番だ。
「ワシはラジム。そのままや。人間の文字で名前を書いたらこうなったんや。Lvは42。」
「ハイハイ、そーうですか。あ、アタシはりん。ジャポニカ調の名前でしょ。Lvは50よ。」
「私はライル。このなかでは一番最初に捕まった。あとリーダーをつとめてる。Lvは…31…」
「私は…言わなくても分かるわね。アリアよ。Lvは95。ルノン、久しぶり。」
その時僕とアリアさん以外の目が丸くなり、口がポカンと開いた。
そして、黄色いバシャーモ…ラジムが興奮気味に言った。
「分かるやと!?知り合いか?このスッゲー珍しそうな奴と!?
 オッドアイに色違いのブラッキー。しかも長毛!そして色男!…っと失礼
とにかく、色違い同士、しかもイーブイの進化系同士の友達なんや珍し!」僕はその話を聞いてると、少し自分が誇らしくなった。
その時青いゴローニャが言った。
「まだ俺とブラッキー君の自己紹介をしていない様だが。」
コホン、とゴローニャは咳払いをした。
「俺はバイシェ。Lvは60ジャスト。違う人間に捕まって、通信でこっちに来た。交換されたのは緑のゴースト…だからゲンガーだな。つぎ、どうぞ。」
ぼくは言った。
「えっと…ルノンです。28。それ以外は…特に言いたいことはありません。」
そのときハクリュー…りんが言った。
「謙虚ねー!そんな凄い格好してるのに、そんな性格…可愛いわねぇ。
 あと、あんたお姉さん達のこと、“〜ちゃん”って呼んでるでしょ?
リィシャちゃんって感じで。可愛いわねぇ。」
僕は目を丸くした。
「リィシャちゃん達…姉さん達のこと、何で知ってるんですか?」
りんは哀しそうににっこり笑って、ひび割れた胸の青水晶をつついた。
「あたしは天気を操る代わりに、ヒトの心を読めるのよ。」
あの人、と言ってりんは横目でアリアさんを見た。
「あの人のことをどう思ってるかも知ってるわ。」
僕はカッと頬が熱くなった。
その時、人間が帰ってきた。
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ステラミア #9☆2007.04/28(土)18:51

泊まったホテルは小さかった。
でも、皆がボールから出て、くつろぐ位の大きさはある。
(りんの上に僕とアリアさんがのって、もしくはりんの長い体の隙間に皆が入れば、の話だが。)
そして人間は、また僕にちんぷんかんぷんな話をしていた。
[あのね、明日凄く大きなコンテストの大会があるんだよ。だからさ、この中で一番綺麗な君に(りんが鼻を鳴らした。)出て欲しいんだ。]
僕はどうして?と示すために、首をかしげた。
人間はそれが分かった様だった。
[優勝賞品が僕達にとって便利な物なんだ。機械で、お互いの言葉を伝え合えるのが6個もらえるの。僕、前からそういうのが欲しかったんだ。]
人間はそっと僕に手を差し伸べた。僕は避けようとしたが、やめた。
人間の大きな手が僕の頭に触れた。
…あったかいな…
僕は【おすわり】の体勢から【ふせ】になった。
手は背中をなでた。僕の毛は、キラキラと輝いた。
家も無い。姉さん達も居ない。
僕は不安だったけど、眠った。
夢に、姉さん達が出てきた。
皆笑ってる。
僕が眠った後も、背中の方が暖かかった。
きっと、人間が撫でてるんだと思う。
明日のコンテストって言うのがよく分からないけど、きっと大丈夫。
【ショウヒン】も嬉しいし。
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ステラミア #10☆2007.04/30(月)10:57
10
…フーッ。
色違いポケは僕だけ。ギリギリセーフ。
いま、一じ審査。平均で4〜5個ハートをゲットするけど僕は20個もゲットしちゃった。
ウフフ。ダントツ。
だから二じ審査は戦いなんだけど、他の6匹の中で一番強く、かつ美しく可愛くナンタラカンタラ…さんと戦うことになった。
めんどくさ。ハァ。
二じ審査に入った。僕はながめてた。
まずピカチュウVSアゲハント。ぎりぎりピカチュウの勝ち。
次は、グラエナVSアブソル。あっさりアブソルの勝ち。
で、ミロカロスVSゴマゾウ。圧倒的ミロカロスの勝ち。
で、ミロカロスVSアブソル。いい勝負。でも簡単にアブソルの勝ち。
ま、ピカチュウVSアブソルは言わずもがな。
僕はアブソルと戦うことになった。
まずは、戦う前のご挨拶。
僕はアブソルの前に立った。
鋭い目…でも綺麗…。赤い瞳の中に星が輝いてる。本物のように。
僕は思わず魅入ってしまった。
アブソルが口を開くまで、だったけど。
僕はハッとした。
「わたしはアルフィイ。お前のようなモノには理解ができないだろうな。
  ま、せいぜい頑張るがいい。その代わりこっちも本気で行くぞ。」
ムッとするヒトだな。このアルフィイって奴。
声も口調も男か女か分からない。
「僕はルノン。あなたのようなヒトにはバカにされたくないね。でも一応僕も一生懸命頑張るよ。」
僕は(フンッ何とでも言いやがれ)と思いながらいった。
でもアルフィイはフッとにやけただけだった。
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ステラミア #11★2007.05/03(木)08:36
11
悔しいけどアルフィイの方がものすごく強かった。
HPギリギリで僕は残ってた。
でも取っ組み合ってた時、奴に一瞬スキができた。
僕はぐっと身を乗り出した。
その時…すっと奴は口を僕の耳のそばに近づけた。
ささやき声が聞こえた。
「成り上がり者め。運だけではわたしには勝てない。そこらでへらへら笑っているほうがましと言うものだ。大体なんだ?その名前。時代遅れじゃないか。」
頭にきた。ふざけんじゃねぇ。
僕は額を光らせた【月の光】…だ。いつの間に覚えたんだろ。
でもそんなこと関係ない。ただ体力を回復させた。
そしてすらすらと言葉が出てきた。
「僕をもう一度侮辱してみろ!赤く染まった体で帰ることになるよっ!
  それにお前だって人のことは言えない。アルフィイっつー名前はだっさーいよっ!(壊れた)
  わかったぁ?僕の方が相当まし!
  イーブイ家の怒りだ!受ける勇気がある?!」
僕はドンッと前足を地面にぶつけて迫力を増させた。
今戦っている時、体が勝手に動く。でもいい。今は戦うのみだ。
エネルギーが満ちてきた。
さあ、猛反撃だ!
…と思ったとき、会場が盛り上がった。拍手喝采、歓声が響く。
ハッと我に返った。
目の前には、僕以上にぼろぼろのアルフィイが気絶してる。
意味が分からない。なんか30Lvくらい上がった気がするけど、気のせいだろう。
ま、いっか。そう思ったとき、僕にリボンが付けられた。
凄くキラキラ輝いている。
タカシに【ショウヒン】が渡された。
僕とタカシの目が合った。
二人ともにっこりと微笑んだ。
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ステラミア #12☆2007.04/30(月)10:59
12
その瞬間、僕の血の気が引いた。
笑顔が似てる…でもあの子は女の子だった。
でも…趣味が同じだ。それにしぐさも性格も。
爆発するように、僕の封印していた記憶はよみがえってきた。
いや、違う、違うんだ。嫌だ…嫌だ、思い出したくない。
僕は頭を抑えてうめいた。タカシが心配そうに駆け寄ってくる。
ヤダ、来ないで!あっち行って!いやだ、いやだ、いやだ!!
僕は前足をふった。それを観た会場がざわつく。
タカシは僕をボールに入れた。
その瞬間から、僕の頭は闇につつまれた。
さっきよりは…マシだ。でもまだ頭がガンガンしている。
それも、少しずつおさまってきた。
それとともに、光りがもどってくる…。
エアームドのライルとアリアさんは心配そうに僕を見ていた。
僕が目をこすると、ライルが話しかけてきた。
「大丈夫か…?10分くらいうめいていたぞ。まったく…どうしたんだ?」
彼は赤いボール越しから、僕を睨みつけた。
僕は目線をそらして、うつ伏せになった。
嫌な記憶がコポコポと湧き上がってくる。泥の混じった泉のように。
涙がボロボロ出てきた。
ライルが何かを言おうとして、息を吸った。
その時、ライルの隣のりんがささやくように注意した。
「そっとしてあげて。あの子…大津波並みに感情が出てきてる。あなたが声をかけたら、大変な事になるから。だか…」
中途半端なところでりんの声が途切れた。りんが黙ったわけではない。
僕の頭が再び真っ暗になったから。僕はそのまま深い眠りに引きずり込まれたからだ。
夢を見た。
僕のイーブイ時代の夢だ…。
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ステラミア #13☆2007.05/02(水)17:59
xlll
僕はウキウキと森の奥へと進んでいた。
手足は泥だらけ、赤と青の目は好奇心で満たされて、キラキラと輝いていた。
その横には黄色いシャワーズがいる。
もちろんリィシャちゃんではない。セシルさん。アリアさんのお姉さんだ。
そんでもって僕の保護者役。
セシルさんはむっとしていた。
だって僕の足がどろどろだから。セシルさんは泥が大っ嫌いだからね。
その横には人間がいる。女の子でセシルさんの親トレーナー。
手持ちはセシルさん一匹だけ。
なんでかって、彼女は人間には珍しくポケモンの意思によって捕まえるからだ。そして色違いを集めていたからね。
僕やアリアさんも「仲間にならない?」って言われたけど、断った。
その代わりにセシルさんが仲間になった。
だってそうじゃなきゃ危険でしょ?ってセシルさんは言ってた。
ま、そりゃ草むらに入るときは危ないけどわざわざパートナーになら…。
っと話がそれちゃったや。
えっと、とにかく僕たちは森の中心に向かっていた。
昨日僕が探検してた時に綺麗な銀色の羽根が散らばってたんだ。
それが風で舞い上がってきらきら輝いて綺麗だった。
それをこの人たちに見せたかったんだ。

だけど…それが運の尽きだった。
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ステラミア #14☆2007.05/02(水)18:00
xlv
「もうすぐっもうすぐだよっ!」
僕はちょっと振り返って言った。
セシルさんはブスッとした顔で頬をふくらました。
「ルノ〜ンそれ10分前から言ってるよ〜。」
僕はそれを無視して前を向き、スピードを上げた。
ったく言っちゃイケナイ事を言うんだから。
…正式に言うと13分前から。うん、セシルさんは当たってマス。
その時、女の子が叫んだ。
「ルノン!あそこ!?」
(ちなみに、女の子は何でだか僕たちの言葉が分かった。)
僕はセシルさんをまた睨みつけていたのを、ハッと目の前に移した。
僕の目に映ったモノはほとんど昨日と同じ光景だった。
キラキラと輝く銀色の羽根。緩やかな風でさえ舞い上がっている。
触れなく、壊せない空気。張りつめている様で、息さえできない。
その時、突風が吹いた。
羽根達がバサバサと音をたてて散らばった。
上からドスンと何かが落ちて来た。いや…違う。
【何かが】じゃなくて【誰かが】…だった。
その姿は神々しい程に白く輝いていて、美しい。
ルギアだった。最強と言われる程の力を持ち“海の神”とも言われてる。
ルギアが一声力強く咆哮を轟かせると、僕たちはハッとした。
うっとりとするほど白い毛の光沢は綺麗だ。
だけどうっとり気分の僕たちとは反対に、ルギアは怒っていた。
口を閉じ、うなりながらルギアは言った。その声は恐ろしかった。
「我が名はアキュリアス、海の化身!ここは私の聖地だ。
無断でその汚らわしき人間が聖地へ足を踏み入れるとは!神への侮辱か!
無傷では帰さない。手加減はしないぞ、覚悟しろ!」
そして一発破壊光線を発射した。
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ステラミア #15☆2007.05/02(水)18:01
xv
殺人的エネルギー光線は地面へと勢いよくぶつかった。
だけどそこには誰も居なかった。
【居なかった】そう、そこが大事。
セシルさんが僕を突き飛ばし(だって僕の方が遠くまで飛んでいくから。)
女の子をくわえてジャンプしたからだ。セシルさんは水タイプのクセに素早 かった。
そしてセシルさんはルギアに向かってオーロラビームとハイドロポンプを一 気にかっ飛ばした。その技はまともにルギアにあたった。
ルギアが混乱状態になっているうちに、セシルさんがキッとこっちを向いた。
「ルノン!あなた弱いから狙われるわ。今のうちに逃げて!ほら!」
僕はよろよろと後ろにさがった。
「っででもセシルさんは…?」
「コイツが街までついて来たら大変でしょ!?私の方が強いから大丈夫。 狙われたくないんだったら逃げなさい!」
「だけど…」
セシルさんは【ほえる】をした。僕は退散を余儀なくさせられた。
僕は猛スピードで逃げた。でも僕の短い足では、人間ぐらいの速さしかでな い。本当に怖くて怖くてたまらなかった。
あのルギアの目、声、殺人並のパワー。
後ろで物凄い爆発が起きた。突風が吹いてきて、僕は地面に叩きつけられた。
気が遠くなった。

気が付いたら、僕の部屋で寝ていた。目の前には強そうなリザード。
「何…で…?」僕は朦朧とした頭で言った。
「晩御飯に良いかなぁって。品定め。」
血の気が引いて、布団を引っかぶった。ケラケラと笑い声がきこえた。
「嘘!嘘だよ!ほ…本気にしなくても!」
僕はほっとして、布団を戻した。見ると目の前には見たこともないピンクの 猫耳に長い尻尾。変身がとけたのに気が付いたのか、そのヒトはハッとしてにっこり笑った。
「じゃあ。僕が送ってあげたけど、お礼はいいよ。別に。さよならっ!」
その人はテレポートをした。
その時、フレアちゃんの慌てた声が聞こえた。
「大変!ルノン、セシルが行方不明だって、女の子も!」
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ステラミア #16☆2007.05/03(木)08:42
16
ふいに、僕は目が覚めた。遠くで、声が聞こえる。
[だから、あたしはアンナじゃない!りんっつってんでしょ!たく物分りが悪いわねぇ。あんたの脳ミソ何センチ?何センチ?]
[わかって…]
[りん…そんなに攻めなくても良いんじゃないかしら。]
[ふんっ。アリア、自分の方がレベル高いからっていばらn]
[良・い・ん・じゃ・な・い・か・し・ら?]
[…]
[…]
[……]
[あら、ごめんなさい?]
[あーんたねぇ…。]
僕はふらっと起き上がった。ハッとりんが反応する。
[ルノーンひどいのよ〜。]
ここぞとばかりに泣きマネ。
アリアさんはなんかの機械をくわえて持ってきた。イヤホンとマイクらしき物。見てみれば皆『ソレ』を付けている。
[これ、付けて。]
僕はアリアさんに手伝ってもらって、機械を耳の横と首の所に付けた。
アリアさんが話しかけてきた。
[姉さんの夢を…見たの?【セシルさん】…ってうめいてたわ。]
[…はい。]
アリアさんはふっと悲しそうな顔をして、ラジムやエアームドのライルの所へ行った。セシルさんの事になると、アリアさんは悲しそうな顔になる。
[ねぇ、…ジーム?]
タカシが話しかけてきた。
[…何?]
やっぱりタカシはあの女の子に似てる。だけど…嫌な記憶は…もう一度捨てよう。
[何って、君は本当はなんて名前?]
[…ルノン。でも、ジームでいい。捨てたい。今までのことは。]
[…そう。]
タカシもラジムやライルの所へ行った。
僕は、ルノンじゃない。ジームだ。タカシにルノンと呼ばれたら、あの子を思い出してしまう。今までの記憶を、また封印するんだ。
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ステラミア #17☆2007.05/03(木)08:43
17
結局僕以外は本当の名前を使うことになった。
夜、僕のコンテストのばく大な賞金のおかげで、結構大きいホテルに泊まった。
一人(一匹、一頭)ずつにちょうど良いベットがある。
皆は気持ちよく眠っているけど、僕はブラッキーだからかなかなか眠れなかった。もしくはラジムのイビキがうるさくて眠れないのかも知れない。
その時、隣のタカシが話しかけてきた。起きてたんだ。
[あのさ…さっき君と、リジー…アリアが話している時聞いちゃったんだけど、
【セシルさん】って…シャワーズ?…黄色い。]
ああ、掘り返さないでよ。バカ。
[そうだけど。…なんで知ってるの?]
まさか…あの女の子はタカシの…
[妹の手持ちだったんだ。もしかして…アリアのお姉さん?]
はぁ。何でこのヒトは僕を苦しませるんだ。
[そうだよ。…もしかして、まだ行方不明…なの?]
[いや…セシルと妹が一緒に居るならどこに居るか知ってる。]
ドキンと心臓がなった。
[本当なの?!]
突然アリアさんの声が小声で割って入ってきた。
その後ちょっと恥ずかしそうな顔をして、アリアさんはこっちへ来た。
(僕は暗闇でもハッキリと見える。昼間以上に。ブラッキーだから?)
[でも、一緒に居るならだけど、なんでそんなこと知っているの?]
[僕が何で色違いを集めているか知ってる?]
突然の違う話題。
[知らない。][知ってません。]
タカシはふぅと息を吐いた。
[あるヒトからね、守ってるの。セシルはそのヒトに捕まったんだとおもう。]
[あるヒト?]
[そのヒトは伝説のポケモンに色違いポケモンの細胞をいれてるんだ。]
[…それで伝説の色違いポケモンにするのね…。]
[そう。それがすっごい痛いらしくて、かわいそうだから…。
何で僕がこの事を知っているかって、母さんから聞いたんだ。だって…。]
タカシはもう一度、息を吐いた。
[僕の父さんの事は、知っておきなさいって話してくれたの。]
何を思ったか、アリアさんは突然言った。[明日そこへ一発殴りに行きましょ。]
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ステラミア #18★2007.05/03(木)19:46
18
僕もタカシもその事を聞いた皆も大反対したけど、アリアさんがレベルも口もダントツで一番強いせいか結局行く事になった。
場所の手がかりは、【大きなさびれている機械工場、周りは荒野というか草原というか…】という所らしい。
それをりんに言ったら、
[そんなのカンタンよ。]
と言われた。どうやらりんは地理が得意らしい。
[まず荒野というか草原というか…という場所はこの世界には6つぐらいしか無いわ。その真ん中に大きな機械工場は4つにある。でもさびれてんのは1つだけ。どう?私って意外と便利でしょ?]
[では、その場所はどこだ?]
[あ……。わすれた。]
意味無いじゃーんと僕たち。りんは慌てて言った。
[あ…でもデル〇ミルアー何とかって言う所よ。]
その時黙って聞いていたゴローニャのバイシェが静かに言った。
[デルトミルアード…別名【死の荒野】]
うーん…クール!じゃなくて、やったね…てか?
ただの手がかりが場所になった。すごく簡単に。
何か変?簡単すぎない?
…いや、僕の思い過ごし…か。


なんだか別名が引っ掛かる。
【死の荒野】……。嫌な予感ってこんなの?
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ステラミア #19☆2007.05/05(土)08:56
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ポケセンでタウンマップをもらい、ジョーイさんに説明してもらい、赤線ひいて(みんな方向激オンチ)、出発した。
 全員ハイテンションなんだけど、冷や汗もかいている。つかまったら色違いの細胞を抜かれるから?(どーゆー意味かは分かんないケド)
 一部じゃ方向激オンチをいかして行けなかったらいいなーなんて言ってるのもいる。えぇ〜い、しっかりやれっ!

[…もしかして、ココ?りん。]
[もしかしなくても、ここよ。建物他に無いし。]
いま、僕たちは巨大な建物の前にいる。ハイテンションもひっこみ、ぽかんと口を開けて見上げている。
 そして目の前にはドア。ちょっとぐらい警備員がいたっていいんじゃないのかな?ま、幸運に感謝感謝。
 [じゃぁ…行く?]
タカシがおどおどというと、アリアさんがビシッと言った。
[アッタリ前でしょ!いくわよ。]
そういうと、細い前足を一歩前に踏み出した。
>ギギ…ギ
さびついた戸は、自動ドアの様に開く。皆ソレを見てちょっと怖気づいたけれど、顔を見合って走り出す構えをした。
 その時、だった。
後ろの方から叫び声が聞こえた。
[入っちゃ、ダメェ…っ!]
『は?』
振り返ると、いつかのリザードが居た。息を切らして、ゼェゼェ言っている。
[どうしたの?]と言った瞬間、僕は誰かに首根っこをつかまれた。
 リザードがタメ息をつき、皆が息を飲んだ。
振り向いて見えたその人は、タカシに似ていた。でも、タカシじゃない。
…もしかして、例のお父さん?!
 つかまってんじゃん、僕。どうすんのよ。
 僕はぷらぷら揺れながら思った。
  (正面突破なんて、しなきゃよかった…)なんてことを。
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ステラミア #20☆2007.05/10(木)19:01
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「…ついて来い。」
その人は僕をぶら下げながら、あの建物の中へと入っていった。
仕方が無いので、皆ついてきた。後ろのリザードも。
 僕は、広々とした部屋のど真ん中の台の上に乗せられた。すると、直径2mほどの周りを囲む溝から、かぼちゃの形のように柵が出てきた。それらはドームのような檻になった。
 部屋は天井を含め、キカイがびっしりと部屋を囲んでいる。ボタンやレバー、ランプなど、ちんぷんかんぷんなものも沢山ある。
 ふと、横を見ると普通のロコンに、黄色と白のグラデーションの美しいルギアがいた。共に、すやすやと安らかに眠っている。2匹は別々に、大きさの違う僕と同じような檻に入ってた。
 あのルギア、見た事がある気がする…。そして、その黄色い濃淡の加減も。
「気になるか?」僕の視線を知ったか、その人が言った。
「シャワーズからだ。」
[い、いやあァァ……っ!]
アリアさんが叫んだ。がくがく震える足に力が入らないのか、へたり込んでいる。
[今、何て言った?!まさか、ねぇ、今…]
[アリア…。落ち着いて、お願い。]
りんがアリアさんによりそい、なだめる様に言った。
タカシのお父さんは、冷たい目でその様子を見ている。
[ポエシー…、妹は?]タカシが、独り言かの様につぶやいた。
あのヤな人は、無言であの普通のロコンをあごでさした。
「実験台だ。成功したがな。さっき色を決めたところだ。ソコのブラッ…」
[あのっ!あのロコンは野生だったのですかっ?]
リザードがさえぎって、とげとげしく言う。
ヤな人(そう呼ぶ事にした)は、無言でうなずいた。
[モニア…ッ!]リザードは、変身をといた。
緑色の目に、涙が溜まっている。彼は首をふって涙を飛ばすと、キッとヤな人を睨んだ。
[許さないっ……ッ!]
エメラルドの様に澄んだ目が、みるみる紅く染まってゆく。
[絶対に!]
そう叫ぶと、彼のピンクの体がピリピリとエネルギーを帯びてきた。
周りのキカイ達が赤く点滅した。
{容量オーバー。コショウシマス。タダチニ…}
[うおぉぉーっ!]
ピンクの体から、強力な電撃が発射された。
キカイからも強烈な光が出てきて、建物の中はまぶしくなった。
>ズキッ……!
(う゛っ!?)
何…?この感覚…!イタイッ、ウッ…!
 
僕は、ぐぐっと夢の世界へと引きずり込まれ、気を失ってしまった。
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ステラミア #21☆2007.05/11(金)20:14
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>ルノン…起きて。
…あれ?アリアさん?
>…違うわ。セシルよ。
ギクッとして僕は目を開けた。目の前には黄色いシャワーズがいる。
……はずだった。
どう見ても普通のシャワーズだ。少し表面が透き通っているけれど。その横には、もっと色の薄いロコン。
僕も含めた3匹は、暗闇の中に居た。僕たちの周りだけ、ぼんやりと光っている。
(セシルさん…?どうして…?)
>私にも解からないわ。…ルノン、自分の体を…見て。
言われるがまま、僕はうつむいて自分の毛並みを見てみた。
……!黒い!月の輪もちゃんと黄色いし、短毛だ。そして、セシルさんみたいに少し透き通っていた。
この分だと、きっと目は両方紅いんだろう。
 僕は、もう一度セシルさんを見た。種類は違うけれど、完璧にアリアさんと同じカオだ。
……久しぶりに見て、ぼろぼろと涙が出てきた。
(ごめんね、セシルさん…。)
セシルさんは、不思議そうに首をかしげた。
>なぜ?
(僕があんなイタズラを…あんな所に連れてって…。)
セシルさんはにっこりと笑った。
>あれはイタズラではないわ、ルノン。あの風景が見れて、嬉しかったわ。
(ちっ、違うの。あの日ね、アリアさんが、セシルさんに、渡そうとしてたのが、うらやましくって…)
セシルさんは両手を伸ばすと、ぎゅっと僕を抱きしめた。
>私の誕生日だったからでしょ?あれはルノンからのプレゼントになったわ。私がどこかに行ってしまって、(自分のせいだ、僕の…イタズラのせいだ。)って、思い込んでしまったんじゃないの?
…………
>ルノン君、あたし達から皆に伝えて…
>“いつも見ている”って。
セシルさんは、僕の背中をやさしく叩いた。
>大好きよ…ルノン。私たちの最後の力を託すね…。元の世界に戻すわ。
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ステラミア #22☆2007.05/14(月)20:06
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 僕は、長々と息を吐いた。今の夢は、なんだったんだろう…?
ぼんやりと横を見てみる。小さい檻の中の白いかたまりが、苦しそうに転がっていた。焦点が合ってきた時、夢の中に居たロコンと同じカオだと思った。
 ロコンの目が開いた。
右が赤。左が青。尻尾と前髪・足の先がうっすらと青く、それ以外は真っ白だ。
 あれ、僕と似てる色じゃん。
自分の体を見てみた。黒。黄色い月。ちょっと透き通った肌。
 ………。
 もう、どうでもいいと思った。
 その瞬間、聞いた事のある咆哮が轟いた。
金属の潰れる音がしたかと思うと、僕の頭上に薄く黄金に光る長い翼が見えた。
ルギアのアキュリアスは、もう一度咆哮を轟かせた。完璧に目が醒めたらしい。
筋肉を余ることなく使い、ルギアは1mほど浮いた。
それからキッとヤな人を睨むと、天井を破って飛び立っていってしまった。
ついでにあのロコンの檻も、片足で壊して。
 僕はむっくりと起き上がると、ロコンの方へと走っていった。
台の上にジャンプしても、ロコンの目は僕を見なかった。
いや、見てるんだけど、僕を通り越してタカシ達の方へと向いている。
そして、ロコンは立ち上がって、走り出した。
丁度目の前に居る僕を、空気のようにスッと通った。
……え?
[お兄ちゃん!][ポエシー…]
[ねぇ、ルノンが居なくなっている!タカシ、…聴いているの?]
[りん、あの人はそんな状況じゃないわ。][…ルノンはどうでもいいということ?]
 …ナンカ、ヘン。
僕ハ…ココニ居ルヨ?
 
 ぜつぼ→を通り越して、なんか、腹が立ってきた。
あのヤな人に今まで消された色違いの子達を、どうなったか知ってるのだろうか。もしかしたら何十匹も居るかもしれない。この建物にも、まだホウオウやセレビィがいる。
 ……………………
 ま、僕にも良心はある。
この建物、僕が透明になったのを活かしてぶっ潰してやろうじゃない。
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ステラミア #23☆2007.05/31(木)20:01
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 僕は堂々と、カッコつけてるあのヤな人の前を通った。
実験として、派手な動きをしたりしたけど、大丈夫だった。見えてない。
ただ、かるく「あっ」と言ってみたら、反応して軽く周りを見た。声は聞こえるのか。
空耳と思ったのか、あきらめたらしい。
よし、「ルノン様のお邪魔虫作戦」のはじまりぃ〜。
 まず、一撃目にヤな人のスネをそこらに落ちていた分厚い本で、思いっきり殴ってやった。
ヤな人は、ビックリして目を円くする。そこで二撃目。
 痛いのにビックリしているヒマは、ヤな人にはない。お、早速犯人を捕まえようとしている。居場所がバレるので、僕は本を放り投げた。
 スネに肩のとんがった骨をぶつけようとすると、かわされた。アレっと思ったら、どうやらマグレだったらしい。
 ヤな人は、本の方へと駆けて行った。あ〜あ、犯人はココなのに。
タカシやアリアさん達も、不思議そうなしぐさをしている。僕はさっきまでロコンの居たぐちゃぐちゃになっている檻の台の上に立つ。見えてないけど、ピシッと胸を張って息を吸った。
「ばーか!僕はココだッ!」
 その瞬間、時間が止まったかと思った。皆、ビックリして固まっているの? だけどヤな人だけは、それほどビックリせずにポケットを探り始めている。
例の紅白のボールを二つ取り出すと、真ん中のボタンを押した。
毛並みの綺麗なアブソルと、緑色のゲンガーが出てきた。
アブソルは…アルフィイだ。怖くない…?然にあらず。怖い。
 ゲンガーは、前に聞いたバイシェと通信交換されたポケモンなのだろうか。
タカシが、親しげに見ている。
 何でこんなに僕は二匹を観察できてるかって言うと、カンタン。見えてないと自信があるからだ。
 ヤな人もバカだねェ。いちいちこんなん出してきて。前回は僕が勝ったから、今回も勝てる自信がある。見えてないしさ。
 そんなことを考えていたら、アルフィイはしなやかにジャンプをした。僕の乗っている台の上に、音も無く着地する。
……は?
「見えているぜ、ジームさんよ。」
アルフィイは見下す様な表情で僕を見つめた。
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ステラミア #24★2007.06/12(火)14:58
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 チッと舌を打って、僕は大ジャンプをした。出来るだけ2匹から離れようとしている。
2対1。圧倒的に僕が不利だ。
そして、彼等にしか僕は見えない。皆に僕が助けを求めることは出来ない。
 …僕が『見エル』ようにしたい。でも、あのロコンから色を戻すのは難しそうだ。
 そして、そんなポケモンのワザは無い。
 僕は、ハッとアリアさんを見た。エーフィは、超能力を使えるそう。よし、それだ。
「アリアさん、巨大なバケツにはいったペンキをエスパーで作って!」
 普通は混乱するだろうけど、りんほどじゃないにしろ、エーフィは心も読める。アリアさんはすぐに目を閉じると、額の黒い石を輝かせた。
 で、一瞬のうちにバケツ登場。僕はその中に跳びこんだ。
  
 すぐに僕は飛び出た。予想は当たる物。僕はペンキの黒い色がつき、姿が見えるようになった。もちろん黒一色で、お葬式に出てる格好のようだ。
 アルフィイは、鼻を鳴らすとバカバカしげに僕を見た。
僕だってペンキの滴をポタポタ垂らしながらも、負けじと睨み返す。

 数秒後……
「ウェルブっ!」
いきなり大声でアルフィイは叫んだ。それにひるんでしまった僕は、ウェルブというゲンガーの【かわらわり】をまともに受けてしまう。
 効果はバツグン。当たった右肩の感覚がおかしい。
僕は力を振り絞って、出来るだけ強力な技を放った。
 強烈な光が輝く。僕は二匹に見つからないよう檻の後ろにコソッと隠れた。
右肩がジンジンしていて、凄く痛い。【月の光】を使って、体力を回復した。
 僕の『見えるようになれば、皆助けてくれる』という読みは、間違っていた。
アルフィイは、手出しが出来ないほどの強さのオーラが出ている。
 あれこれ迷って戦闘を再開しようとした時、桃色の影がすばやく僕の横に来た。
…………アリアさんだ。
「ルノン……大丈夫?」
 心配そうな顔をする。その表情には、どこにもウソは無かった。
「………うん。」
 ホントは痛いんだけど、僕の方がウソをついた。
すごく近くに、アリアさんが居る。まともに見るのは、イーブイ以来初めてだ。
 「アリアさん、ごめんね…。」「………なぜ?」
セシルさんと全く同じ動き。細い首を傾げている。僕はほぼ放心状態で続けた。
「僕がセシルさんを連れてかなければ、僕達ここにはいないんだろうし。」
「……………。」
しばらく間が空いてから、アリアさんが口を開いた。
「攻めてなんか、無いわ。でも。」
アリアさんは、ため息をつくと微笑んだ。
「でもね、謝ってくれなかったら一生許さなかった。」
アリアさんの大きな目に、涙が光った。
「……アリアさ「ルノン。」ん?」
「“さん”づけしなくていいわよ。もう大きさ的にはルノンの方が大きいし。
 ……それに、もう貴方は立派な大人よ。」
アリア…さんは、両手を伸ばすとセシルさんみたいに僕を抱きしめた。
「あ、アリ…ア?」
「…それでいいの。さあ、あのクソアブソルを倒しちゃいなさいね。
 大好きだから、ルノン。忘れないで。」
そう言って、親鳥のように僕を解放した。僕は今の最後の言葉の意味が分からないまま、アルフィイ達の方へと向かった。
>ルノン、頑張りなさい。私が檻を溶かして皆を開放した時、捕まっていたポケモン達に気をつけて。アルフィイは…好きにしなさい。
 そんなセシルさんの声が聞こえる。次の瞬間檻の柵の部分が赤々と輝き、溶けていくのが見えた。十数匹のポケモン達は、皆さっさと逃げていく。
 僕は深呼吸すると、いきなり一発目に自分の出せる最強の技を出した。
 ブラッキーの誇る力が湧き出てきて、後から絶えることなく真っ黒な光が出てくる。
その力たちは、僕の英気を吸い取っていく。最後の方はクラクラしてきて、何がなんだか上なんだか下なんだか全く分からなくなってきた。
 そして最後。アリアの顔が出てきたのを最後に、僕の頭の中まで真っ黒になった。
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ステラミア #25★2007.06/12(火)22:02
25
 だんだん、光が戻ってきた。
まさか。まさか、私よりLvの低いルノンのはずなのに、こんなに強い技が出せたなんて。
 もちろん、姉さんよりは弱かったと思うけれど。もちろんね。
…姉さん。そう、さっきその姿が見えた気がする。
 ルノンが私から離れた時、ちょっと透けたシャワーズがその上を浮いていた。幽霊?って思ったけれど、シャワーズが振り向いた時姉さんに見えた。色は普通のだけど。 
 
 なぜか分からないけれど、顔が熱い。そういえば、さっきルノンにヘンなことを言ってしまったかもしれない。詳しくは、なぜだか覚えていない…。
 元から赤っぽいエーフィだけど、たぶん今の私はソレを通り越して、真っ赤っ赤だろう。

 ルギアが天井に穴を開けたところから、射してきたのは太陽の光。さっきまでの騒ぎはどこへやら、建物の中はシンとしている。
 ……問題はそこよ。
ルノンやアルフィイの声が聞こえない。でも、檻の影から出てそれを確かめる勇気は無い。 ふと、タカシ達の方を見てみた。
もう出口の方へと向かっている。皆のその背中は、すこし寂しく見えた。置いていかれるのはイヤだから、私は急いでその方向へ走った。

 […アリア。]
タカシが、振り向いた。そして、無言で私を抱き上げた。
 私の背中が濡れてきて、タカシの肩も震えてる。……泣いているの?
私の見える範囲に、皆がいる。
ハクリューのりん、ゴローニャのバイシェ、エアームドのライル、バシャーモのラジム。
 …ルノンの姿は、ない。どこへ行ってしまったのだろう。
あの子は幼い時から目が離せなかった。溺れたり、転んだり、落ちたりと幼いなりに忙しかった。
その後、「…アリアしゃぁあぁん」っていう泣き顔が可愛らしかった。
 今、その子の姿が無い。だが…あの子も、もう大人だ。その内に戻って来るだろう。
 そう、その内に……。

 その後すぐに、皆でこの建物をぶっ壊した。またこういうの事件が起こってしまってはいけないから。
 瓦礫となったこの建物を後にして、私たちはこの忌まわしき地を去った。


昔々あるところに……。そのポケモンはそう話し始めました。
野生のエーフィが、広場で毎日のように子供たちに物語を聞かせています。
その物語は、あるブラッキーが沢山のポケモンを救ったという内容です。他にも色々とあるのですが、エーフィはこの物語が一番好きでした。
 額の黒い石を光らせ、エーフィは澄んだ声でお話を聞かせます。その前には、瞳をキラキラと輝かせた子供たちが座っています。
 
 エーフィは、人間で言う20歳位です。
前まで村の雄のポケモン達は、そのエーフィを奥さんにしようと必死でした。
 それほどエーフィは美人だったのです。でも、エーフィはかぐや姫の様に条件を突きつけていました。『私の大切なヒトを見つけてきたならば、考えてあげてもいいわよ。』と。
 それを聞いたポケモン達は、そのエーフィを諦めました。連れて来たとしても、結婚してくれるとは限らないからです。
 
 お話が終わり、あちこちから子供を呼ぶお母さんの声が聞こえます。
子供たちの数は減っていき、ついにはいじめられっ子のポッポ君だけになりました。
 ポッポ君は、エーフィに訪ねます。
「どうしておばさん(お姉さんです)は、勇者ブラッキーのお話が好きなの?」
 エーフィは、額の黒い石が輝くのを感じました。
「………昔の事を思い出せるからよ…。
 あら、もうお空が赤くなって来たわ。ポッポ君のお母様が心配なさるから、早く帰りま しょうね。そうだ、明日もお話を聞かせてあげるから、ここに来てね。」
ポッポ君は「はぁい。」と返事をすると、翼を広げて飛んで行きました。
 エーフィはその反対側を向くと、住んでいる洞窟の方へと歩いて行きます。
しばらくすると、パタパタと何かが飛んで来る音がしました。
振り向くと、さっきのポッポ君でした。ポッポ君は小さな翼を動かして、着地しました。
 息を切らして、ポッポ君は喋ります。
「あのね、村の入り口に綺麗な色したブラッキーのお兄さんがいたの。
お兄さんは、黒い石のエーフィは居るかい?って言ったの。僕、うんって言っちゃっ た。ヘンなヒトだったら、どうしよう。」
 エーフィは、まさか、と思いました。でも…と、頭の中が疑問符で一杯です。
ポッポ君に「大丈夫よ。」と微笑むと、お家へ帰しました。
 ポッポ君がお家に入った瞬間、エーフィは全力疾走で走り出しました。向かうのはもちろん村の入り口。
 息を荒くしたエーフィの目の前には、品の良さそうなブラッキーが座っていました。
ポッポ君の言った通り綺麗な色で、白い体に青い月の輪、跳ねた長い毛が輝いています。
 彼はエーフィを見ると、赤と青の目を細くしました。
 エーフィは、物凄く動揺していました。
「ル…ルノンなの…?」
 そう言って見えたのは、ブラッキーがうなずく姿でした。
「アリア…ただいま。」
 ブラッキーはそう言うと、アリアというエーフィを抱きしめました。
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[1003]

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ぴくの〜ほかんこ