トガ | #1☆2007.07/01(日)03:37 |
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Episode 1 ―「バトルフロンティア」って知ってます? …ケッタイなルールでバトルする所。あながち間違ってはないですね(苦笑) 掻い摘むと、普通のバトルスタイルに飽きた人、あくなき記録を求める人達が集まるアツい場所です。 …そうそう、よく知ってますね。あそこには変な…じゃない、個性的な施設とそれらの施設のブレーンが7人いますよね。ホント、いい意味でぶっ飛んでいるというか…。 お気に入りの人、います? ―あぁ、あの人ですか、いいチョイスしてますよ、それ(笑) え?何でこんな話するのかって?実はですね、私、面白い話知ってるんですよ、バトルフロンティアに関する。聞きます?…あぁ、逃げないで…言い方がまずかったです、聞いてください; じゃあ…どこから話しましょうかねぇ…。あ、まずどの施設が関わっているかどうか、知りたいですよね?じゃあ、ここは是非当ててみて下さい。 チューブ、ん〜違いますね〜。ドーム、ん〜残念。…お、パレス!正解です!いやぁ、お見事。さっき、7つの施設と7人のブレーンがいる、って話はしましたよね? パレスもその中の一つな訳ですが…私が皆さんにしようとしているお話しは、この2つが大いに関係しているんですよ。 っと、前置きが長いですね;そろそろ本題に入りましょうか― ―バトルパレスは…皆さんご存知ですよね? …そう、自分からはポケに指示が出せない、ケッタイな施設の一つです(苦笑) ってことは、そこのブレーンもご存知で?…まぁあれだけ特徴があれば十分ですよね; ここのマスター、パレスガーディアンが結構鍵を握ってるんですよ―。 |
トガ | #2★2007.07/01(日)03:44 |
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Episode 2 バトルフロンティア―様々な思惑が飛び交うアツいアツい場所。 その一角に建つ宮殿、バトルパレス。神聖な雰囲気漂うその建物の中からは… 「喝!」 建物には似つかわしくない声が今日も響く。 「お前はまだ相棒を信頼しきれていない…出直して来い!」 今日も挑戦者に厳しくも暖かいゲキを飛ばす、バトルパレスの主。最近ホネのある 挑戦者が現れていない為か、いつもよりゲキのレベルが高い。そんな不機嫌なベテランは、休憩の為、パレスの裏庭へと足を運ぶ。 「ふぅ…」 ベテランの呼吸は多少まだ荒い。 「相変わらず激しいな、爺さん。やりすぎると体に毒だぞ?」 「…でもそれがウコンらしいけどね。」 やって来たのは無精髭が似合う工場長と、フロンティアのシンボル、タワーの主、 タイクーン。 ―皆さん彼らの事は知ってます?…そう、ダツラさんとリラさんのことです。前者が担当されてる施設もまた、ケッタイなルールがありますよね(苦笑) …ブレーン同士が一緒に居ることもあるのか、と?それはあるでしょう、仮にそういう機会が無くてあれだけのチームワーク力があるとしたら、それは脅威ですよ; っと、話が脱線しましたね、続きをお話ししましょう―。 「大きなお世話、という言葉を知っとるか?」 「ま、そう僻みなさんなって…爺さんが元気良すぎるから、心配して来たんだ。 …お!お前らも元気そうじゃねぇの!」 言ってベテランの相棒らに向かう。 「どうだか…大方暇つぶし、というところか…違うか?」 「フフ…それで合ってると思うよ。」 何でも無い会話。それがブレーン達を少しだけバトルから遠ざける。 最近ではカントー、ジョウト、ホウエン地方だけでなく、シンオウ地方からもトレーナーが押し寄せ、ブレーン達はシンオウ地方特有のポケモンと、今まで以上にアツいバトルを繰り広げている。 「ところで…ワシに何か用か?」 改めてベテランはタイクーンに問いただす。 「うん、ちょっとね…前々から気になってたことがあるんだ。」 「?」 「そのフロンティアパス…ちょっと変わってるなぁと思って。」 「…あぁ、コレのことか…。」 昔を懐かしんだのか、ベテランの顔が穏やかになる。 ―皆さんは今のブレーンさん達がどうやって選ばれたか知ってます? …そう、フロンティア設立者「エニシダ」によって選ばれた、一般的にはそのように 言われています。でも彼ら(彼女ら)も、いきなり選ばれた訳ではないんです。ちゃんと シンボルを集めた人達の中から、特に優れた腕を持った人…それが今のブレーンです。 つまり…今のブレーンは、先代のブレーンを打ち破った、ということになりますね。ん〜 アツいですねぇ…― 「そう、それ。ボクらのパスとはちょっと違う…そのぽっかり空いた妙なスペース とかね。」 「…相変わらず鋭いの、おまえさん。」 ベテランはため息まじりに話す。 「そんなに気になるか?こいつのことが…。」 「うん、なる。」 「別に話しても構わんがな…長くなるぞ?それに今で無くともいずれ」 と、そこでベテランの言葉は遮られた。 「いいや、今聞かせてくれよ、爺さん。こういうのは後回しにすると結局話さなくなる ケースがあるからな。」 先ほどまでポケ達と戯れていた工場長が断言する。それを聞いて観念したのか、 ベテランは口を開く。 「…途中で寝たら承知せんぞ。」 「爺さんこそ、喋り倒れん程度に話してくれや。」 「フフ…」 そして、ベテランはゆっくりと語りだした。 |
トガ | #3☆2007.07/01(日)03:49 |
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Episode 3 「お前達がエニシダに召集されたのは何時頃だ?」 ベテランは2人に問う。 「俺は…そうさなぁ、もう3年前になるか。いやだね、年を喰うってのは…。」 「ボクも3年前、かな。」 「ふむ…という事は、ワシを含めて7人がエニシダに召集されたということだ。」 ベテランは至極当たり前の事を口にする。 「そうなるけどよ…それがどうかしたのか?爺さんだってあん時居ただろ?」 工場長は疑問を投げる。確かに、さっきからベテランの言っていることには、どことなく 違和感があった。その違和感は次の一言で更にその威力を増す。 「うむ、ワシも居たな。呼ばれたのは2回目だがの。」 …しばしの沈黙が辺りを支配する。その後、工場長がゆっくりと口を開く。 「…爺さん。」 「…なんじゃ。」 「熱、あるだろ?」 「…燃やされたいか、御主。」 ベテランの相棒の一匹、ウインディがじりりと近寄る。 「熱云々は冗談だよ…でもよ爺さん、2回ってのはどういうこった?」 事実、工場長は、シンボル収集に明け暮れていた時、何度かベテランの姿を見たことがあった。更に、何度か手合わせした経験もある。それを考えると、矛盾が生じる。 「気になるか?」 ベテランが悪戯に笑う。 「いや、別に。」 「ほぉ…なら話は終わりに…。」 「…んなわけないだろ、爺さん。気になって仕方ねぇ。」 工場長が華麗なフォローを入れる。知識を要するファクトリーの長を務めるだけの事はあり、ボキャブラリーは豊富だ。 「んむ、そうか。ならば聞かせよう…と思ったが、ちょいと疲れた。そこら辺りの事、話してやってくれんかの、おまえさん。大方の察しはついとるんじゃろ?」 そういってタイクーンに視線を送る。 「うん、いいよ。」 「いいよ、ってお前…知ってんのか?」 話の展開を汲み取れているタイクーンに対し、工場長は多少混乱している。 「一部だけどね。先代のタイクーンにも少し聞かせてもらった。ねぇ、フロンティアがどのくらい前からあるか、知ってる?」 「どのくらい前って…俺らがシンボル集めてた時は当然在った。ってことは3年前にはもう在ったことになるな。」 「そう。3年前、かつてのボクらのように、先代のブレーン達に挑んでいたトレーナーが大勢いた。そしてボクらはブレーンになった。勿論、ウコンも一緒にね。それが二回目ってことは…もう分かったでしょ?」 「あぁ、ばっちり分からねぇ。」 「…もう、ウコンの事、さっきから呼んでるじゃないか。自分で答え言ってるようなものだよ。」 「爺さんのことか?そりゃ爺さんはじいさ…」 言って、工場長はようやく気が付いた。 「…成程ね、そういうことか。爺さん、話の流れは分かったぜ!」 それを聞いて、ベテランが再び動き出す。 「ようやっと分かったか。工場長にしては理解が遅かったの。ほいじゃ、続きを話すぞ。ご苦労だったな、おまえさん。」 タイクーンに労いの言葉をかけたあと、再びベテランは語りだす。 「…ところでよ、爺さん。何で3年前、俺らと同じようにバトルしてたんだ?」 「御主が此処に来た理由と同じ事よ…バトルしないと体が鈍るでな。」 「そりゃまた単純な理由なこって…。」 辺りにベテランの豪快な笑い声が響く。 ―へ?何のことだか分からないって?うんうん、ちょっと難しいですよね。…答えを教えて欲しい?いやぁ、それは何と言うか…勿体無いですよ(苦笑) じゃあ…フロンティアの歴史はそこそこ古いということ、ウコンさんがブレーンとして召集されたのは2回目だということを言っておきます。ほら、もう分かりましたよね? え…まだ分からない。ん〜…頑張って考えましょう!― 「さて…このフロンティアパスの話じゃったの。」 自分のパスをしげしげと眺めながら、ベテランは語りだす。 「まだお前達の先代ブレーンが現役だった頃、ワシも彼らと共にバトルに明け暮れていた。当時はまだこのバトルパレスのような施設は無くての、トレーナーに必要な要素は何か、エニシダとよく話し合うとった。その結果、8つの要素が必要で、それを試す施設を作ろうという流れになった。」 「ほぉ〜…って、8つ?7つじゃねぇのか、爺さん?」 工場長が矛盾に気付く。 「まぁ、聞け…。そうなると、その要素に長けた者、用はブレーンが8人必要となる。フロンティアの方向性もそれで固まり、順調に計画は進んでいった。」 「じゃあ、そのパスの空いたスペースは…」 タイクーンが察したように言葉を漏らす。 「そう、本来なら8つ目のアレが入る…はずじゃった。」 「はずじゃった…とは気になる言い方じゃねぇの。こりゃもっと話をしてもらう必要があるぜ、爺さん。」 工場長の興味は徐々に高ぶっていく。 「…そのようだの。」 そう言って、ベテランの話は過去へと溯って行く。 |
トガ | #4☆2007.07/01(日)03:54 |
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Episode 4 「8つの要素を試す施設を作る」 それが、僕が聞いた始めの言葉だった。なんでも、あそこのサングラスにアロハシャツの男…エニシダが言うには、トレーナーにはいくつか必要な要素が必要らしい。僕に割り当てられたのは、「絆-スピリット-」。正直、何のことだかよく分からない。僕の他の人達も、「運-ラック-」だの「戦略-タクティクス-」だのを割り当てられていて、困っている様子だった。今、この場に来ていないアイツを除いては。 外に出た。将来、ここには大きなバトル施設が立ち並ぶらしい。けど、今は本部を除けば、そんなに目立ったものは無い。広い公園みたいな土地だ。エニシダは此処の事を「バトルフロンティア」なんて呼んでたけど、今の現状からして、かなりギャップがあった。しばらく散策していると、アイツの姿が見えてきた。 「ん、終わったのか、ウコン?」 なんて暢気な言葉をこぼす。 彼の名はマサ。彼もまた、僕と同じブレーン召集を受けていた…けど、サボったようだ。 「…何で来なかったかって?今日は行くなって俺の本能が言ったからな、それには従わんと。」 僕は自分が信じている道を常に選択するマサの考え方が好きだった。それは、バトルに対しても同じだった。 「ん?俺に割り当てられた要素…?あー、言うな言うな!面倒っぽい香りがプンプンする。それより…1発バトルしようぜ。」 マサは自分の手持ちを一切変えようとはしなかった。僕の手持ちが分かっていようとも。僕のウインディにメタグロスで挑んだり、スイクンにボーマンダで挑んだり。スイクンには、苦手タイプに対する対抗策として、れいとうビームを覚えさせた。にも 関わらず、マサはボーマンダをぶつけてくる。 「そろそろお前のスイクンのれいとうビームに対する抵抗が出来てきたぜ!」 なんてとんでもないことを平気で言ってくる。でも、マサのその考え方が僕は好きだった。何より、闘っていて楽しかった。 そのバトルも、結局僕が勝ちを収めた。 「…手持ちを変えないのかって?それは無いな。こいつらでどこまでいけるのか…試してみたいし。」 その時僕は、マサは最強のブレーンになる、そう感じた。 数日後、僕はマサに呼ばれた。何でも大事な話があるとか。 「…よっ、来たか。実はな、少しの間、此処を離れることになったんだ。」 僕は大いに面食らった。 「なんでかって?そりゃ強さを求める為…って言いたいところだが、こないだサボったのがバレてよ…しばらく修行して来い、だと。場所は…[俺地方]とかいう所らしい。全く…変な土地だよな?」 なるほどね―僕は苦笑いした。いきなり見知らぬ土地に修行して来い、と言われて、何ら動揺していないところがマサらしい。行き先は…多分[オーレ地方]のことだと思う。ここからは随分遠く、文化も異なっていると聞く。寂しくはなかった。寧ろ嬉しかった。 見知らぬ土地で修行する事で、マサのバトルにも幅が出るだろうし、帰ってきたときは、今まで以上にメタグロスやボーマンダへの拘りが強くなっているだろうし。 「…無理はするなって?なぁに言ってんだよ、人の心配より自分の事だぞ。強くなった俺にあっさり負けないようにしとけよ!約束だ!」 そう言って、翌々日、マサは出発していった。 それからしばらくの日々は、僕にとって、とても満足の行くものだった。マサの言葉を思い出しながら、多くのトレーナーとバトルを重ねた。そのおかげで、僕に割り当てられた役割―「絆-スピリット-」がどういうものか、少しだけ分かってきた気がした。 |
トガ | #5☆2007.07/01(日)03:57 |
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Episode 5 それから半年余りの月日が流れたある日、ふと他のブレーンから、「マサが帰ってきた」という声をふらっと聞いた。直接こちらに向かっているらしいので、僕はフロンティアの入り口まで出迎えに行った。 「…久し振りだな、ウコン。」 マサが静かに言う。修行の成果が現れているのか、半年前と比べて雰囲気が違う。 目つきも鋭くなったというか…そう、確実に以前より強くなっている事は感じる事ができた。 それから僕たちは、フロンティア内をふらふらと歩いた。 「ほぉ〜…また此処も変わったな…。」 マサは終始辺りをキョロキョロと見回していた。この半年で、此処もようやく「バトルフロンティア」らしい姿になってきた。各ブレーンが所属する建物が立ち並び、僕にも施設が与えられた。マサにも施設が与えられたけど、マサは困っていた。 「別にこんな大層なモン無くてもいいんだけどな…。」 否定はしていたが、マサの顔はどことなく嬉しそうだった。そして僕は、もう一つ重要なことをマサに伝えた。 「試験的なバトル?ほぉ、で、何時からだ? ―3日後か…勘弁してくれよ、まだ帰ってきたばっかでしんどいのによ…;」 確かに今のマサには多少キツいと僕も思った。でも、お互い修行の成果を試すいい機会、といういかにもな理由を説明して、マサを説得した。 「…んまぁ、それもそうだな…。」 そうして僕らは、3日後、試験的ではあるものの、ブレーンとしての初仕事を行うことになった。 「とまぁ、こんな流れでフロンティアは運営を開始した訳じゃ。」 と、ベテランが工場長とタイクーンに言葉をかける。が、二人の反応は無い。 「寝とる…訳ではないか。」 ベテランが一息つこうとした刹那、工場長が口を開く。 「…爺さん。」 「ん、どうした、眠くなったか?」 「なんで今までそんなおもしれぇ話を隠してたんだ!」 「な…」 珍しく、本当に珍しくベテランが怯む。 「何だよ〜…こんなおもしれぇ話なら、もっと早く聞いときゃよかったぜ、なぁ?」 興奮冷めやらぬ工場長。その隣には、多少興奮している(ような)タイクーンが居る。 「うん、実際に詳しく聞くとやっぱり面白いよ…!」 「ほぅ、そうかそうか。」 2人の反応に、ベテランは喜びを隠せない。しかし、それもつかの間だった。 「…あの時ワシが気付いていれば…フロンティアが7つの施設になることは無かったんだがの…。」 ベテランがそう呟くと、2人の興奮は急激に抑えられていく。 「爺さん…そりゃどういうこった…?」 工場長が尋ねると、話は再び過去へと向かう。 |
トガ | #6☆2007.07/01(日)04:01 |
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Episode 6 そして、僕たちの仕事は始まった。僕に割り当てられた「絆-スピリット-」を試すために考えた方法、それは「ポケに命令を与える回数を制限する事」だった。少ない指示で、どの程度戦い抜けるか、その結果でトレーナーに必要な「絆」を試せると思った。マサもとりあえず、何かしらの方法でバトルをしているらしい。はじめの内はよく会って近況を報告しあっていたけど、次第に忙しくなって、顔を合わせることが稀になってしまった。 それからしばらく経ったある日、僕は奇妙な光景を目にした。 久しぶりにマサの様子を見に行こうと思い立ち、マサが居る施設へと足を運ぶ。その時、トレーナーが一人、施設から出てきた。挑戦者かな?と、最初は思った。けど、そのトレーナーの様子は明らかにおかしかった。トレーナーは、青い顔をして、ポケモンセンターの方へと歩いていった。僕は少し様子を見ることにした。 その光景は異様だった。さっきと同じ、青い顔をしている人、泣きながら出てくる人…。 一人として、普通の人は出てこない。僕は次第に怖くなって、マサに会わず、そのまま自分の施設へと帰った。気にならない、といえば嘘になる。でも、この謎も、数日後のブレーン召集で明らかになった…。 その日の召集では、珍しく、エニシダが怪訝な表情を見せていた。そして、マサに対して話しはじめた。 「…マサ、君の担当している施設についてだけど。」 「…はぁ、何か?」 マサは力無く聞き返す。 「君の施設に挑んだトレーナー達から[やりすぎではないか]との苦情が来ているんだ。 それだけじゃない。君の施設に挑んだトレーナーがポケモンセンターへ相棒を預けた時、完全には回復できないケースが多いとセンターから報告があった。」 「…。」 「手を抜け、とは言わない。だけど、今後このようなことが続くようなら、こちらも考えなくちゃいけない。それを覚えておいて欲しい。いいね?」 「…分かりました。」 マサへの注意で、その日の召集は終わった。 マサは自分の施設へと戻っていく。僕はその後ろを歩く。 声を掛けようと思った。けど、掛ける事が出来なかった。何となく、怖かった。 不意に、マサの方から僕に話しかけてきた。 「…なぁ、聞いたか?やりすぎだってよ。ありゃ誇張しすぎだぜ。確かに俺は常に全力で、訪れたトレーナーの為にバトルしている。その影響で相手の手持ちを傷つけてしまう事もあるけどよ…ウコン、どう思う?」 答えられなかった。あの光景を見てしまった以上、そう簡単に答えるべきものではないと思った。 「やっぱ…お前もやりすぎだと…思うか?」 …無理だ。それには答えられないよ、マサ。その時の僕には「分からない」という言葉を搾り出す事が精一杯だった。 「そうか…そうだな、へへ、悪かったな、妙な事聞いちまって。やれやれ、俺も疲れてるんだな。今日はゆっくり休むとすっか。じゃ、またな、ウコン。」 そう言ってマサは自分の施設へと帰っていった。少し元気を取り戻したマサを見て、僕は安心した。…けど、この「またな」の意味を、この時はまだ理解していなかった…。 |
トガ | #7☆2007.07/01(日)04:08 |
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Episode 7 翌日、僕はエニシダの声に起こされた。 「ウコン、起きてるかい!?起きてたら、すぐにマサの施設へ来てくれ!いいね!?」 その声の様子から、寝ぼけ頭の僕でも、非常事態が起こったことは推測できた。急いで準備を整え、マサの施設へと向かった。 ―そこには「無」があった。昨日まで存在して当たり前の物、ヒト。それらが消えて無くなっていた。 マサに割り当てられた施設は、完膚なきまでに破壊されていた。施設は、何か強力な力によって砕かれたようだった。そして、何か鋭いもので切り裂かれたような後も見られた。 そして…この施設の主も、ポケと共に忽然と姿を消していた。 その日、僕たちブレーンに緊急招集が掛かった。理由は勿論、今朝起こった出来事についてだ。 「あれだけ派手に破壊されていたんだ、誰かその音とかに気付いた者は…?」 エニシダが僕たちに問うてくる。不運な事に、昨日の召集の後、エニシダは所用でフロンティア外部へ、他のブレーン達も、同様に外部へ出払い、今朝方帰ってきたらしい。僕はというと、昨日の出来事、それまでの疲れが一気に噴出したのか、深い眠りに落ちてしまっていて、誰も目撃者が居ない状況となった。 「…とにかく、マサが居なくなった今、フロンティアの運営は難しい。マサが見つかるまで、フロンティアへのトレーナーの訪問を、当面の間禁止しようと思う。それでいいね?」 確かに、状況を考えれば、エニシダの策は妥当だった。僕たちはその提案に従い、マサの行方を捜し始めた。 僕は、本部にエニシダと残り、他ブレーンからの連絡を待つことになった。 「ウコンは…調子が悪いみたいだから、私といっしょに此処で連絡を待ってほしい。」 自分ではそう思っていなくても、顔色は正直みたいだ。 ―お前もやりすぎだと…思うか?― ―ウコン、またな― 昨日のマサの言葉が、さっきから頭に過ぎる。 あの時、僕がちゃんと否定しておけば…。さっきから考えがネガティブな方向へと流れていく。何か…何か嫌な予感がした。何も起こらないで欲しい。そう願う気持ちとは裏腹に、嫌な予感だけ僕を支配していった。そして、数週間後、その予感は的中してしまった。 僕たちの元に、「運-ラック-」を割り当てられたブレーンが帰ってきた。そして、その報告は、僕が最も聞きたくない報告だった。 「ここより北方のホウエン地方にて、各地のジムが襲撃されるという事件が発生しています。ただ、人物に危害は出ておらず、ポケモンに対し、徹底的に攻撃を加え、危険な状態まで追い込むといった状況です。」 「…で、その犯人さんが従えているポケというのは?」 エニシダがため息をつきながら話す。 「襲撃を受けたポケモンの打撃痕、及び傷口から判断した結果、恐らくメタグロスとボーマンダであると思われます。」 「そうか…とりあえず、残りのブレーン達に、一度戻ってくる様、伝えてくれないか?」 「了解しました。では、失礼します。」 エニシダの様子を見る限り、彼は犯人をマサと特定したようだった。でも、僕は信じたくなかった。もしかしたら、その2体のポケモンをマサと同じように所持している別の犯人かもしれない。少しでも可能性のあるほうへと考えを導く。そうでもしないと、僕はおかしくなってしまいそうだった。 その後しばらくして、ブレーン全員が本部へ戻り、これからの事について、話し合いが行われた。ホウエン各地を調べたブレーンによると、いずれのジムも同じポケモン、メタグロスとボーマンダに襲撃を受けていること、その被害はポケモンに対してのみという事だ。 「これらの結果を見る限り、犯人はマサである可能性が高いと思われます。」 「しかし、それを裏付ける証拠がまだ不十分であることも事実です。」 ブレーン達は議論を続けている。けど、僕にはその内容が頭に入ってこなかった。耳から声が入り、もう片方の耳から抜けていく感覚。今の僕に「記憶」という仕事は出来そうになかった。エニシダの[ある言葉]を除いては。 「私も各地のジムから報告を受けているんだけど…少し妙な報告があってね。襲撃した犯人は、例え自分が不利なタイプの技を出されても、構わず攻撃してきたそうだ。普通なら交代させるとかの方法があるんだけど…まぁ、気にする程の事ではないけどね。」 ―気にする程の事ではない…?確定事項じゃないか― 「とにかく、引き続き調査に当たって欲しい。…あんまり考えたくはないけど、マサを犯人として想定することも忘れずにね。」 エニシダの言葉で、ブレーン達は再び調査へと戻っていった。 「…ん?ウコン、何処へ行くんだい?」 ―少し、頭を冷やしてきます。適当な理由をつけて、僕は自分の施設へと戻ってきた。 ブレーン達の報告、エニシダの一言。マサが犯人だ。僕には確信があった。 でも、何も出来なかった。マサに会えたとして、どうすればいいのか。分からなかった。 …それからどのくらいの時間が経っただろう。辺りはすっかり暗くなっていた。 フロンティアへの一般立ち入りが禁止されているせいか、僕の周りは恐ろしいくらいの静寂に支配されていた。月明かりだけが、穏やかにフロンティアを照らす。その時。 カツン。何か物音がした。カツン、カツン―その物音は、確実に僕の方へと近づいてきた。 そして、僕の丁度正面で、その物音は止まった。 「…何やってるんだ、こんな所で。」 懐かしい声だった。顔を上げると、見慣れた人物の姿があった。 「…それはこっちの台詞だ、って?へへ、それもそうだな。」 僕は少しだけ、気分が楽になった気がした。でも、顔は笑っていなかったみたいだ。 「そう怖い顔すんなって…。安心しろ、それを話すために此処へ来たんだ。」 マサは、静かに今までの事を話し出した―。 |
トガ | #8☆2007.07/01(日)04:13 |
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Episode 8 「まず、率直に言おう。ホウエン各地のジムを襲撃したのは、俺だ。ここの施設を破壊したのも、俺だ。」 僕はこの時点でマサに掴みかかりそうになった。けど、まだこれだけでは真意が分からなかった。僕は出来るだけ落ち着いて、続きを話すよう、マサに言った。 「ウコン、俺はな、新しい真実を知ったんだ。半年前、オーレ地方に修行に行ったときの話さ。そこには此処とは比べ物にならないくらい、強そうなトレーナーがわんさか居たんだ。…楽しみでしょうがなかった。俺の手持ちで、どこまでいけるのか、試せると思うとな。ところが…実際バトルを重ねる内に、どうも限界があることに気付いてな…勝つためには、どうしても『力』が必要だと思ったんだ。そんな時、ある男がこんな事を言うわけだ。『あなたのポケモンに対する拘りが、邪魔をしているのではないか』って。」 マサの声が、静かに静寂を切り裂いていく。 「それでな、一度その『拘り』を考えないようにしてみたんだ。そしたらどうだ!今までの不調が嘘みたいに吹っ飛んだ訳よ。俺は確信したね、勝つために必要なものは『力』でこれを此処のトレーナー達にも教えてやろうって。」 ―違う。 「それを踏まえたバトルをやってたら、俺、エニシダにあんなことを言われただろ?あん時は痛感したな、『こっちのトレーナーというか、人は考え方が甘い』って。だから俺は、あの施設を破壊した。もう此処へ戻ってくる必要は無いと思ってな。」 ―それは違うよ、マサ。 「その後は…お前も察しの通りさ。此処だけでは甘さが判断出来かねんからな。ホウエンのジムに行って試した訳よ。ところが…結果は此処と同じだった。 甘さは変わることは無かった。それで再認識したんだ、『力』の必要性を、な。」 ―それは…ソの強サは…。 「それで、更にそれを確実なものとするにはどうするか、って考えたら、お前の事が浮かんだわけよ。ほら、前に言っただろ、強くなった俺にあっさり負けないようにしとけ、って。それを試させてくれ。…最も、今、俺は誰にも負ける気はしないがな…!」 ―ソノ強サハ、所詮偽リノ物ダ。 その刹那、ウインディの「神速」をマサに向けて放っていた。そして同時に、「僕としての意思」は、そこで消え失せた―。 「爺さん、消え失せた…ってどういうこった…?」 「言葉通りじゃが。」 「はぐらかすなよ…『神速』を放ったって事は、バトルしたってことだろ?でも爺さんの意思は消えた。どうやって…というか、まともに闘えたのかよ?」 工場長は、いつになく真剣な表情でベテランに詰め寄る。 それを汲み取ったベテランもまた、真剣な表情でそれに答える。 「正確には『ワシとしての意思』は、ちゃんとあった。マサの姿や言動、互いの相棒は、きっちりと認識出来た。ただ、体だけは、ワシの意思とは無関係に動き、バトルしていた。だから、とりあえずは普通にバトルは出来とった。」 「んな…そんなこと出来るのかよ…。」 工場長は、想像の範疇を超えたベテランの話に、若干置いてけぼりを喰らいそうになる。確かに、そうそう信じられる話の内容ではない。 「ワシが話しても説得力が無いの…お前さん、説明してくれんか?」 「えっ…ボク…?」 突然、ベテランがタイクーンに責任転…ではなく、話を振る。最近、ベテランは窮地に陥った際の回避法を取得したらしい。恐らくこれもその一つだろう。 「う〜ん…多分、その時ウコンの体を操ってたのは、もう一人の『ウコン』だったんじゃないかなぁ。」 「また難しい話か…なるべく噛み砕いた解説、頼むぜ。」 工場長の愚痴をよそに、タイクーンなりの解説が続く。 「マサの姿や言動、互いの相棒は、きっちりと認識出来たって事は、「今までどおりのウコン』は確かに存在してることになるよね。で、マサはウコンを倒す為に戻ってきた。バトルの間、ウコンを動かしていたのは『マサを倒すと考えていたウコン』なんじゃないのかなぁって、ボクは思った。先代のタイクーンも、『人』という一つの器には、複数の人格が入ってもおかしくない、って言ってたから…。」 「ほほ…流石だの。どうじゃ御主、少しはワシの状況が分かったか?」 「分かったか?って爺さんが言えた口かよ。爺さんだって、今の説明で納得したんじゃねぇのか?」 「そう、ワシは上手く説明できんから、説明を頼んだ。それで納得してはおかしいか?」 流石はベテランである。開き直りというか、そこら辺の対応は素晴らしい。 「へいへい、そうだな…。で、バトルはどうなったんだ?」 工場長が呆れながら聞き返すと、ベテランは静かに、再び語り始めた―。 |
トガ | #9★2007.07/01(日)04:20 |
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Episode 9 ウインディの神速により、マサが居た場所の地面が抉れる。 「…不意打ちか、お前らしくないな。」 どうやら避けられたみたいだ。声の方向を見ると、マサと、メタグロスがいる。 「へへ…あの時以来だな、お前とバトルするのも…。半年間の成果、見せて貰うぜ…!」 言って、メタグロスの姿が消えた。…来る。ウインディにその場を離れる用、僕の体は指示を出す。 その刹那、コメットパンチが地面ごと吹き飛ばす。避けれた…と思った矢先、蒼き腕がウィンディを襲った。メタグロスに、ウインディの素早さに対応できる技…僕には思いつかなかった。 「『バレットパンチ』だよ。あんまり威力自体は期待できないが…素早さをカバーするために習得させたんだ。」 怯んでいるウインディに、更にメタグロスがバレットパンチで攻めて来る。…間に合わない。そう思ったら、無意識の内にスイクンを繰り出していた。メタグロスの腕にれいとうビームを撃ち、隙を作る。案の定、一瞬メタグロスの動きが止まり、ウインディは体勢を立て直した。 「お、2体目か…。そうだな、出し惜しみしててもつまらんな。」 そう言って、マサはボーマンダを繰り出す。 それにしても…さっきから何かおかしい。バトルの判断は、間違いなく僕自身のものだ。 でも、体の自由があまり利かない。他の誰かが操ってるように感じる。でも、そんなことを気にしてる場合じゃなかった。 「せっかく2体揃ったんだ。…いいもの見せてやるよ。」 マサの言葉を受けて、僕とウインディ、スイクンは身構える。が、それも無駄だった。 ウインディとスイクンが、僕の後方へと吹っ飛ぶ。一瞬だった。マサの方を見ると、ボーマンダとメタグロスから、黒いオーラが発せられていた。 「ウコン、これが俺が手に入れた『力』だ。今のは…そうだな、この『力』を具現化して攻撃してみたんだが…どうだ?」 ウインディ達の傷を見ると、確かに黒い『力』で傷付けられた後があった。しかも、最初は軽度のダメージかと思ったけれども、予想外に効いているみたいだった。 「この『力』…どうやらタイプの影響を受けないらしいんだ。常に最大のダメージを与える事ができる。…なぁ、ウコン、お前のウインディとスイクンにも、この『力』を与えたいんだ、俺は。そうすれば、お前も、もっと強くなれる。今のお前は…以前の俺と同じだ。」 ―ダカラ、ソノ強サハ違ウッテ言ッタダロウ!! そう思った瞬間、僕の体の自由は完全に無くなった。 その後の光景は、「あり得なかった」。 僕自身の意思はしっかりとしていたから、バトルの様子は認識出来た。でも、体が全くいう事を聞かない。僕の意思とは無関係に、体はウインディとスイクンに指示を出していた。 ウインディが再び『神速』を繰り出す。今度は確実にメタグロスを捉えたようだ。が、同時にボーマンダをも吹き飛ばす。 「な…」 マサが後ろを振り向く。それと同時に、僕のウインディとスイクンは、マサの相棒に向かい、突撃する。そこからは、一方的な展開だった。僕の相棒は、攻撃を止める気配すら無かった。 「く…この力、どこから出てきてやがる…!」 その間、マサの相棒も黒い『力』で迎撃を繰り返していた。確かに、それによって僕の相棒は、ダメージは喰っていたように見えた。でも、それ以上に僕の相棒は攻めていた。 それは、最も残酷で、最も美しい光景だったのかもしれない。しばらくして、ウインディ、スイクンは、マサのメタグロス、ボーマンダをあと一息のところまで追い詰めていた。 「…へ、へへ、これは何かの間違いだ…この『力』があれば、俺は最強になれるはずだ…。」 マサは搾り出すように、独り言のように、虚ろに呟く。その視線も定まってはいない。 傍から見れば、マサはもう元には戻らないと見えたかもしれない。でも、僕はそうは思わなかった。時間が掛かるかもしれないけど、きっとやり直せる。そう思った矢先、僕の体はウインディに指示を出した。体重を落とし、衝撃に備えるこの構え…はかいこうせんを指示したらしい。どうやら、僕の体は、完全にマサにとどめをさそうとしているみたいだ。 止めたかった。でも、体がどうしても言うことを利かない。そして、はかいこうせんは、マサとマサの相棒めがけて放たれた―。 |
トガ | #10☆2007.07/01(日)04:30 |
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Episode 10 「…それで、その後ってのは…」 工場長が聞きづらそうにベテランに尋ねる。 「…気が付くと、その場に倒れとった。こやつらと共にな。その後マサを探してみたが…はかいこうせんの跡しか残されておらんかった。」 「それは…結構ツライね…。でも、マサは元に戻れない程、病んでいたんでしょ…?それなら、ウコンの判断は正しいと思うよ。」 タイクーンも、ベテランを気遣ったのか、搾り出すように答えた。が、返ってきた答えは意外なものだった。 「いや、案外アイツは生きとるかもしれんぞ。」 一瞬、工場長とタイクーンは呆気にとられる。 「…あのな、爺さん。はかいこうせんをモロに喰らって生きてる可能性は…」 そこまで言ったところで、ベテランは持っていた杖先を工場長の口へ向ける。 「順を追って説明する。そう焦るな…。」 工場長は黙って頷いた。 「まず、ワシの体の状態についてじゃが…はかいこうせんが放たれた瞬間に、体の自由が利くようになった。それで、咄嗟にこやつに、はかいこうせんの軌道を変えるよう指示ができた。従って、直撃はしておらん。もう一つ、マサについてじゃが…あやつは完全に病んでいたわけでは無かったみたいでの。ワシがはかいこうせんの軌道を変えたのは何故じゃと思う?アヤツ、自分の相棒の前に蹲(うずくま)りおった。それが見えたから咄嗟に…な。」 それを聞いた2人は、少し胸を撫で下ろした。そして、工場長が改めて尋ねる。 「でもよ、爺さん。直撃はしていなかったとしても、実際には放ったわけだろ?」 「うむ…恐らくはその衝撃で、此処の周りの海へ放り出された可能性がある。じゃが、アヤツの相棒に致命傷を与えた訳ではない。ある程度の活動は出来るよう、加減してあった。」 「…という事は、マサは相棒にその後助けられて、どこかで生きている可能性もあるんだよね?」 タイクーンは自分事のように、何処と無く嬉しそうに言う。 「そう願いたいものよ。その後、ワシはこの事をエニシダを始め、他のブレーン達にも報告した。そして、此処のルールを「トレーナーは、手持ちに対して一切の命令を出すことを禁止する」ことにした。直接的な指示を出して、あのような目に遭ったからの…。それからしばらくして、トレーナーとして必要な要素が7つであることが本部で決定され、今のようなフロンティアが出来上がったという訳じゃ。このフロンティアパスの穴は…自分への戒めかの。あの出来事を忘れぬようにするための。これで長話は終わりじゃ。」 全てを語ったおかげか、ベテランの顔は清々しい。他の2人も、いつか聞こうと考えていた話の詳細が聞けて、満足顔だ。 「いやぁ、いい話聞かせてもらったぜ、爺さん。マサも、アツい奴みてぇだし…。ところでよ、マサに割り当てられた要素って何だったんだ?」 「ボクもそれ、気になるな。それに、それもシンボル化されてたんでしょ?何て言うシンボル?」 話し終わって疲れ気味のベテランに、容赦なく質問が投げかけられる。 「お?言ってなかったか?それはすまなんだ…。アヤツに割り当てられた役割は…」 そうベテランが言った瞬間、工場長の携帯がけたたましく鳴る。ぶつくさ小言を言いつつ、電話に出る。 「何だよ、こんないい時に…おう、俺だ。どうかしたのか。…何!?アイツが来たのか!よし、分かった、すぐ行くぜ!爺さん悪いな、呼び出しが掛かっちまった。また今度詳しい話聞かせてくれや。じゃあな!」 言って、工場長は自分の持ち場へ帰っていく。 「何じゃ…自分から来ておいてからに…。そんなに気になるトレーナーが居るなら、そやつの相手をしてればよいものを…のぅ?」 ベテランがタイクーンに問うたが、タイクーンからは答えが無かった。何やらバトルタワーの方を向いて、目を閉じている。 「どうかしたか、お前さん。」 恐る恐る、ベテランが問いただす。 「…感じる。」 「?」 「ごめんね、ウコン。ボクもちょっと急用ができちゃった。また改めて聞きに来るから…その時に質問の答え、教えてよ。」 そう言って、タイクーンは駆け出していく。咄嗟に、ベテランがある質問をする。 「待った。お前さんのお気に入りのトレーナーとやらは、どんな奴だ?」 しばらく考えて、タイクーンは言った。 「う〜ん…マサみたいな人、かな。」 「ふふ、そうか…全力で闘って来い。」 静かに、確実に頷き、タイクーンは駆けて行った。そして、再びベテランは一人になった。 「さて、これからどうするかの…。」 再び暇に襲われそうになるベテラン。しかし、その不安は杞憂だった。 ―ウコン殿、挑戦者です。 「ほう、今回はどやつだ…前にスピリットシンボルを与えた少年…おお、あやつか!とうとう此処まで来おったか!よし、待っておれ、すぐ行く!」 そうして、今日もブレーン達は、バトルに身を投じていく―。 |
トガ | #11☆2007.07/01(日)04:34 |
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Final Episode ―いかがでしたか、私のお話。いやぁ、自分で話しているうちにアツくなってしまいました(苦笑)フロンティアやブレーンさん達は、ただ強いというだけでは無い事、お分かりになりました?何か考えた浮かんだ方は、それが得たものだと思いますよ…あっ。 あの〜、すいません。そう、そこのあなたです。私のお話、どうでした? …えっ、あまり聞いていなかった。う〜ん、それは残念;PCも面白いですけど、私のお話も面白いんですよ〜。もう1回お話ししますね。え〜っと…。…やっぱりやめます。話すより実際に行ったほうが分かり易いですからね。さぁ、私と一緒に行きましょう! …え、バトルにはあんまり自信が無い?フフ…すいませんが、好きなポケモンは居ます? ―おぉ、いいポケモンじゃないですか!大丈夫、好きなポケモンが居れば、それだけで楽しいところなんですから。ささ、急ぎましょう― バトルフロンティア。普通のバトルスタイルに飽きた人、あくなき記録を求める人達が集まる、アツい場所。 かつてここには、8人目のブレーンが存在していた。 ブレーンの名はマサ―「正義-マサヨシ-」。誰よりも正義を愛したアツい男。 彼の姿は無くとも、彼の根底に存在した「ポケモンへの拘り」は、フロンティアを訪れる全てのトレーナーに宿っている。そのトレーナー達の中で、「ジャスティスシンボル」は金色の光を放ち続ける―。 |
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