ぴくの〜ほかんこ

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連載[1129] メタモルフォーゼ 〜人間とポケモン〜

メタ仔りっく♪ #1☆2007.11/17(土)18:22
あたしは色違いのメタモン。

名前は“メタ子”。

あたしは特別な能力を持っているんだ。


『人間に変身出来る』


自分からすれば特別でも何でもないだけど。

世間からすると特別なんだって。


‥‥‥‥‥‥‥‥。

そんなあたしは仲間から軽蔑された。

《変な子…気持ち悪い!》

いつもそんな事言われてたっけ。

なにが悪い?

あたしだって望んで持った能力じゃないのに…。


でも、そんなあたしに希望をくれた人≠ェいた。


聖也。
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メタ仔りっく♪ #2★2008.06/23(月)05:56
――ここは多くの野生のポケモン達が暮らす森。
近くには小さな町があるが人間は滅多に足を踏み入れない。
私はメタモンの“メタ子”。
メタ子はいつも独りぼっち。
『あの子だよ…人間に変身出来るって…』
『“メタ子”って子でしょ?ポケモンが人間に化けるなんて…』
今日もか…。
いつも毎日こんな感じ。
『はぁ…』
何がそんなに悪いの?
メタ子にとっては普通なのに。
行く宛てもなく一人水辺へと向かう。
『そんなに変かな…?』

ぱぁぁあ!!
水に映った人間の姿の自分を見てみた。
「…人間でも変わらないよ。メタ子はメタ子だもん!」
人間に変身すれば人間の言葉だって喋れる。
どんな服も身に纏(まと)える。
ただ見た目はやはり人間。
特別な能力…普通じゃない。
『キャー』
『今の見たっ!?』
メタ子の“へんしん”を見たコラッタやポッポが悲鳴に近い叫びをあげた。
「な、何が悪いのよ!!私だって好きでこんな…」
『人間の言葉まで喋ってる!?』
『逃げろ!!』
メタ子が言い終わる前にコラッタ達は一目散に逃げ出してしまった。
また一人取り残される。
「こんなのもうヤダよ…」
その場にしゃがみ込むと自然に涙が頬を伝ってきた。

ガサガサ!!
背後の草むらから物音と何かの気配を感じた。
また誰か来た。
もういいよ…また罵声をあびるだけだ。

「ねぇ?」
ポケモンの鳴き声とは違うはっきりとした声。
…え?
声をした方を見るとメタ子より10センチ以上は背が高い“今の自分”とよく似た体型が立っていた。
「こんなところでどうしたの?」

にん…げん?
そこにいたのは正真正銘の人間だった。

この“人”との出逢いがメタ子の運命を大きく変えた…
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メタ仔りっく♪ #3★2008.06/27(金)22:57
スッとした顔立ちに、パッチリとした目、ふわふわとした茶色の短髪。
人間で言う“男”だと思われる。
何でこんなところに人間が!?
驚きのあまり動けない。
「…泣いてるの?」
そ、そういえば泣いてたんだっけ?
するとその人は、しゃがみ込んでいるメタ子に手を差しのべてきた。
「いやぁッ!?」
メタ子がその手を振り払った瞬間、彼は凄く驚いた表情をした。
「ご、ごめん!?余計な事しちゃって…なんかすごく怯えてたから」
「…。」
そりゃそうだよ…
メタ子は人間に会うのは初めてではなかった。
会う人間はいつも[ポケモンハンター]と呼ばれる者達だった。
そいつらは狂暴で、人間に化けられる色違いメタモンと聞いていつもで力ずくでメタ子を捕まえようといつも突然襲ってくる。
毎回なんとか逃げられたけど一ヶ月間はそいつから必死で逃げ続けなくちゃならなかった。
今でも恐怖の記憶が鮮明に蘇る。
…凄く怖かった。
だからこいつもきっとそうだ…
人間なんか信用できない。
「何かあった?黙ってちゃ分からないよ?」
お前ら人間のせいじゃないか…メタ子はうつ向いたまま何もしない。
「そうだ!ちょっと待って…ハイッ!」
その人は何かを取り出しこちらに差し出してきた。
…キャンディ?
「やるよ!」
少し疑いを向けたものの、メタ子はおそるおそる手を伸ばしキャンディを口にした。
その瞬間、甘味が口いっぱいに広がった。
「…おいしい」
「だろ!」
ニカッと歯を見せ無邪気に笑った時、この人の瞳を見て自然に“疑い”という言葉が消え去った。
「俺は“聖也”!!よろしくなっ!」
せい…や?
聖也という少年はメタ子の隣に腰を下ろした。
「君の名前は?」
「え?あ…メ、メタ子」
「メタ子?可愛い名前じゃん!!」
可愛い?そんなこと言われた事なかった。
なんか、凄く嬉しい。
「…良かった。泣きやんでくれて!」
「え…?」
気が付くと涙は止まっていた。「女の子が一人でこんなところで泣いてるたら男としてほっけないだろ!」
そう言って再び無邪気な笑顔を見せる。
何だろ…?
この温かい気持ちは。

今まで会った人間は最低だった。

けど…
この人は良い人かも…。
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メタ仔りっく♪ #4★2008.07/11(金)20:50
こうして聖也との出逢いは突然訪れた。
「普通に“聖也”って呼んで!俺も“メタ子”って呼んでもいい?」
「…う、うん」
いつぶりだろう?
こんなに誰かと会話したの。
すごく安心感を得られる。
「見ない顔だけど、メタ子はここの近くの子?」
近くっていうかここの森ん中で暮らしてるんだけど…そんな事言えないよね。
メタ子はポケモンなんだし。
「うん、まぁ。」
「よくここへは来るの?」
だからぁ、ここに住んでるんだよ。
「う、うん」
「へぇ。良いよねココ。なんか落ち着くっていうかさ」
あれ?
一瞬だけ淋しそうな顔したような…気のせいかな。
「俺のお気に入りの場所なんだ」
「…森が好きなの?」
「ん?ってか、自然の全てが好き!」
満面の笑みで聖也って人はそう答えた。
さっきのは気のせいだったのかな。
自然が好き…かぁ。
なら大丈夫だ。この人は悪い人じゃない。
だって自然や生き物を愛せる者に悪いやつはいないよ。
ポケモンも人間も。
「知ってる?最近この辺りで密猟者が出るんだって。よく分かんないけど、この近くに珍しいポケモンがいるらしいんだ!」
それって…メタ子の事?
密猟者ってメタ子を捕まえようとした人間達の事だよね。
じゃあ、もしかしてこの人も…
でも悪そうには見えないけど…。
「…俺さぁここも、ここのポケモン達も大好きなんだ!だからどんな珍しいポケモンだろうと関係ない。密猟者なんて俺が許さない!」

―ドキッ
何だろ?なんかすごく…
カッコイイ…
「君は優しい人間なんだね」
「え、そうかなぁ?…よく分かんねぇ」
また笑った。
けどまただ…また悲しい顔をした。
笑ってるのに悲しそうなのは何でなの?
けど他に見た事ある…ついさっきも同じような顔を…
「な、何か俺の顔についてる?」
「え、いや…」
――あっ
思い出した。
さっきメタ子が湖に映った自分の顔と同じだ。
すごく孤独で寂しそうな瞳。
「君は…」
「ん?」
「…一人なの?」
目を見開き、一瞬すごく驚いた表情を見せた。

「…うん」
…―。

そんな顔しないでよ。
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