ぴくの〜ほかんこ

物語

【ぴくし〜のーと】 【ほかんこいちらん】 【みんなの感想】

連載[1148] 二代目ジームの物語

ステラミア #1☆2008.02/02(土)09:25
☆*プロローグ*☆

[お兄ちゃん、お兄ちゃん!!]
妹のシャワーズが俺を呼んで叫んでいる。その声は、上から聞こえている。

 天を仰いでも、妹の姿は無い。俺はサンダースの素早さを活かして走り出した。
[お兄ちゃん、ジームお兄ちゃぁあぁん……っ!!]

 俺は、ふと立ち止まった。
全力疾走していたはずなのに、全然前に進んでいない。

 [……どう、して来、な、いの?]恨みのような感情がこもっている。
その妹の声が、だんだんスローモーションになって低くなってゆく。
[ワタ、シノ“オ兄チャ、ン”ジャナ、イノ……?]
その声は歪んでいき、気持ち悪くなってくる。
[リジー……ッ!! どこだっ!?]
悔し紛れで叫んだが妹の声はしない。

 [サヨナ、ラ。ダ、レカサ、ン……]
しばらくしてそんな声が聞こえたかと思うと、あたりは真っ暗になった。
それは目を開けているのさえも分からないほどの暗さだ。

 俺は感覚的に、自分が底無しの暗闇に落ちていっていたのが分かった。
そう思っていたら、突然地面についた。ゴンッと頭を強打し、気が遠くなっていく。

 そして、背中の地面はだんだん柔らかくなっていって、ソコは布団の上だったと気が付いたのは、目が覚めてしばらくたった後だった。
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ステラミア #2☆2008.02/02(土)09:26
☆*1*☆
 
 俺は無言のままむっくりと起き上がった。頭が布団から出ていたのか、ズキズキして痛い。それから隣の妹のベットをのぞいた。いつもは遅寝遅起のリジーだが、今朝はベットの上の掛け布団がきっちりとたたまれているだけで、リジーは居なかった。
 
 …まさか、夢の通り何処かへ行ってしまったのだろうか…。
そう思った後、俺は頭を振った。悪いほうへと考えてしまうのは、俺の嫌なクセだ。
だが、あんな変な夢を見た後だ。不安になってしまうのも、仕方が無い。
 
 狭い洞窟の小部屋を出ると、それなりの大きさがある中心の広場だ。
普通の家ならば、両親か何かがにっこりと微笑み、【あまいみつ】を塗った朝食のトーストぐらい差し出すだろう。
 
――が、俺には親が居ない。
…………。
っていうか、覚えていない。

 タマゴのままの妹と一緒に、そこそこ金持ちの門の下に置いて行かれたらしい。
俺達の名前と短文、その走り書きの手紙が添えてあっただけ。
 またその金持ちのヤツは家族の居ない寂しいヤツで。あ、ちなみにそいつは人間だ。
その時、俺達は何故かモンスターボールに入れられなかった。手紙に書いてあったのか?
 そいつには俺の事も、後から生まれたリジーもかなり可愛がられた。が、俺が普通に喋れたり(ポケ語だが)出来るようになった年のころ、俺達はヤツから家出をした。
理由はよく覚えていないが、まぁイロイロあったんだろう。
 まったく、コレだけで本が出せるゼ。題名は『波乱万丈、俺の人生』辺りでもいいか。

 やる事が無いし、俺は外に出る。
秋が近づいていても、この季節の朝日はまだ眩しくて、俺は目を細めた。
そうだ、そういえばリジーは森の中の湖にでも行ったんじゃ無いだろうか。
奴はシャワーズの標準より小さいが故に、よくいじめられる。で、傷ついたココロを癒す為、湖に行くらしい。女って、弱いな。俺だったら噛み付き返す。
 
 まだ弱々しい朝日だというのに、森には沢山の木漏れ日が降り注いでいる。
そして鳥(ムックルか?)の騒々しい鳴き声が聞こえた。
その中かすかに違和感のある音が聞こえる。揉め事のような、耳障りな話し声―――…。
湖の方からだろうか。俺は嫌な予感がして、急いでその方向へ向かった。
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ステラミア #3☆2008.02/02(土)09:26
☆*2*☆

 だんだん日が高くなり、森の中でさえ暑くなってきた。といってもまだ9時だが。
―――湖まで、こんなに遠かったか……。
 そんなことをブツクサいいながら約三分。やぁっと湖に着いた。
ここについた瞬間サァッ……と風が吹き、今までの暑さは一瞬で吹っ飛んだ。
 割と広い湖の水面では、数匹のコイキングがぴしゃぴしゃしている。
何の利益にもならない事を。

 コイキングの他にもギャラドス、トサキント類やヒンバスなどなどが居る。時折キラッと光る虹色の蛇みたいなのは、ミロカロスだろうか。
 だが、水ポケモンばっかりでもなかった。一匹、奥の方でリーフィアが水浴びをしている。その周りには攻撃されると思ったか、水ポケモンは一匹も居なかった。奴らにとって草タイプは効果抜群だからな。それは俺も例外ではない。さっきだって俺を見つけた数匹のトサキントは、悲鳴を上げて深いところまで逃げ出したし。

 だからリジーの事を聞くのは、リーフィアにしたほうがよさそうだ。
水ポケモンを捕まえるだけで一日かかっちまうしな。
 んなワケで俺はリーフィアに近づく。―――…っつーかこいつ、ヤケに派手に泳ぐな。

 「…こんにちわぁ…?」少しはなれたところで話しかけてみる、
が無反応。俺はもう少し近づく。
「……こんにちわっ!!」
……が、またもや無反応。俺は腹が立って、走って奴に近づき怒鳴りかけた。
「こんにちわっつてんだろ」
 
 「た…たす……」「ハァ?」
俺は奴をじっと観察した。あ…これ、派手に泳いでいるんじゃなくて、派手に【溺れて】いるんじゃねぇか? ん、間違いねぇな。
「た、助けて……」ガボガボと沈んでいくリーフィア。
ここは岸から近い所なのだが、いきなり深くなっている様だ。だから溺れるのか?
俺は仕方なく左前足を掴んでやった。
「ほらっ……」
「…………」
「…………引き上げて下さい」まだ顔半分は沈んでいるリーフィア。
「なんでだ?」良心のかけらも無い俺。
「発明した面白いモノ見せます」必死な顔だな、こりゃ。

 ま、少なからずその言葉に惹かれたのも、疲れたのもあり、俺はリーフィアを引き上げてやる事にした。
―――…っつーか、コイツ重い………。
 ぐいっと引っ張った瞬間に力が足りず、俺の重心が前に移動するのを感じた。
―――で、次の瞬間。

>どぼーん!!
物凄い水の音、水しぶきも結構飛んだだろう。

ま……分かるだろうが、俺が湖に落ちたって事だ。
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ステラミア #4☆2008.02/02(土)09:27
☆*3*☆

「―――ったーくよぉ〜、重いんだよお前」
俺はぶつくさ言いながら耳を絞った。……予想以上の水がボタボタ落ちてくる。
「ま、初対面のレディに向かってそれは無いんじゃない?」
 こちらは先程のリーフィア。色違いで、全身真っ白けっけ。耳の先や足の先、ハネてる毛は、ほんのり黄緑色をしている。で、瞳は水色。スゲー。
 で、何故だかデカイ飛行ゴーグルをしている(今は額にずらしているが。小顔なコイツには重そうだ)。
 さっき俺が湖に落ちたせいで、水面には何匹もの弱い水ポケモン達(主にコイキング)が浮いている。……サンダースは、ちょっとビックリしただけで結構な量の電流を流す。
きっとそれに感電したのだろう。
 さっきその浮いてきたかなりデカいコイキングに乗っかって、俺達は岸に上がった。

「それより、コレ(俺は鼻先で水面に浮いているポケモンを指した)どうすんだ?」
水面には、おびただしいほどのコイキングが浮いている。
「ほっとけばいいんじゃない?」「……ま、そうだな。後で「待った!!」…」
 俺がまだ言い終わってないという時、リーフィアはクタクタになっていた耳をピンと伸ばした。そして自分の額にある巨大なゴーグルを装着する。
 ………ゴーグルのガラスは、赤だった。少し前に流行った悪趣味なヤツだ。

「ふふ。ふふふ。忘れていたわ。「忘れていたのかよ」……っ私を誰だと思って?!
 才能あるリーフィア、ヴァーべナ様じゃない! 探検家、空気を綺麗にする会会長、
 ハーブを愛する会副会長、主に発明家をする【べナ様】よ…ちょっと待ってて頂戴」
 長い演説を終えたかと思うと、ヴァーべナらしきリーフィアは自分の荷物をごそごそやった。胴のあたりまで潜って行ったあと、ヘンなスプレーを取り出す。
「コレは“復活させます! にんにくスプレー021号君”ナリ!!」
「…」「……」「………」
「えっとぉ、これはそのまんま。瀕死したのに振り掛けるだけよ。見ててね」
そういうとヴァーベナは、ポチッとスプレーのボタンを押した。

>ぴすぅぅう〜……。
………不発か? ……って言うか、臭っ!!

 もんのすごい腐敗臭の中、ヘンなものをふりかけられて生き返ったコイキング達は、死に物狂いで水の中へ潜って行った。

その様子を見ながら、俺は思ったことをつぶやく。
「……元気のかけら使ったほうが、早くね?」
「………それ、何?」
さっきまで自信満々だった奴だったが、今は鼻をつまんで嬉しいような悲しいような、そんなビミョウな顔をしていた。実験失敗って事か? なんだそりゃ。
 っていうか、野生のポケモンは人間の使う道具を知らないんだっけ。
ちなみに何で俺が知っているかと言うと…めんどくさいな。【☆*1*☆】にある俺の生い立ちを見てくれ。

 俺が心の中でいくつかのツッコミを入れていたとき、湖より更に奥の方から人間の怒鳴り声が聞こえた。
 あ、そこまで臭うか。
 じゃなくて、なんでこんな所に人間が居るんだ? 今のは間違いなく人間の声だ。
ここは野生のポケモンが住んでいる地帯の中でも、そいつらが滅多に近づかない森の中だ。
 ―――…おかしい。とりあえず様子を見てくるか。
森に入る前に聞こえた声は、コイツらの声だったのか?

 俺は、今漂っている臭いを消す道具を探しているベナのゴーグルをわしづかみ、人間の声のした方へ引きずって行った。
 怒鳴っていたベナも(ヴァー付けるのめんどくさいし、自分でベナ様って言っていたし、こう呼ぶ)、途中からは自分でソロソロと歩くようになった。
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[1148]

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