ぴくの〜ほかんこ

物語

【ぴくし〜のーと】 【ほかんこいちらん】 【みんなの感想】

連載[1155] 大切な思い出

#1★2008.04/03(木)19:28
登場人物

*まさる…11歳の少年。本編の主人公。
*『何か』…まさるの傍にいるなぞのもの。
      その正体は色違いのゴース。
*父さん…伝説に関することを調べるために世界各地を旅している。

話がUPされるごとにつけたされていきます。


そう、あれは俺が11歳くらいの時の冒険
   
   
   ―――今でも忘れられない大切な思い出―――
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#2★2008.04/02(水)09:19
手の中にある懐中時計を見つめ俺は歌う  
父さんから聞いた、あの歌を

  空を見渡し そよ風乗って
  ふわふわふわり 夢を見る
  はるか昔に 抱かれた
  金色光る 鳥を見る
  きらきらきらり きらきらり
  ふわふわふわり ふわふわり

「父さんから聞いたあの話、本当のことだったんだな…」

―「まさる。その鳥はな、とても神秘的で、虹色に輝いているんだ。
   七色に輝く身体と翼に長い尾を持ち、世界中を飛び続けている。
   そして心正しいトレーナーの前に姿を現すと言われているんだ」
  「父さんは見たの…?」
  「小さな頃にな…それ以来、父さんは伝説にまつわることを調べているんだ。
   なぁ、まさる。父さんと約束してくれるか?」
  「何?」
  「けっしてポケモンを悪用しないって、大切にするって約束だ」
  「できるよ!」
  「そうか…あともう一つ、その鳥を見ることができたなら―へ旅立ちなさい」
  「―?」
  「そうだ、きっとお前ならそこで何かを知ることができるだろう」―
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#3★2008.04/02(水)09:20
―パチン―

懐中時計のふたを閉め、俺は思い出そうとした。
あの時、父さんはどこへ旅立てといったのか。

…そこだけ思い出すことができない。
けど旅に出たら何かわかるはずだ。

「まさるー?ご飯できたわよー」
「んー今行く」

俺は懐中時計をしまって、テーブルについた。
こうやって一緒にご飯を食べることもなくなるんだろうな…
俺はスプーンを皿においてちゃんと話をしようと思った。
母さんを残して行くことはちょっと悪いと思うけど、俺はもう一度、自分の目で確かめたいから。

「なぁ、母さん」
「何?」
「俺、旅に出てもいいかな?」
「…旅って…そんないきなり…」

俺が話した瞬間、母さんの顔から笑顔が消えた。

「母さんには悪いと思うよ。
 でも…父さんとの約束なんだ!それと俺、もう一度見たいんだ!金色に光るあの大きな鳥を!」

そう、どうしても見たいんだ。もう一度。
昼間見た、あの綺麗な鳥の姿を。

母さんは少し目を瞑り考えていたが、しばらくすると「しょうがないか」といって微笑んでいた。

「…ならエンジュシティに行きなさい」
「エンジュシティ…?」
「えぇ、パパの故郷で、あなたも3歳のときまでエンジュにいたんだけど、覚えてないか…
 エンジュシティはシンオウ地方でもカントー地方でもない、ジョウト地方にある町よ。」
「ジョウト地方…エンジュシティ…」
「そうよ、シンオウ地方にも神話と呼ばれるものがあるけれど、ジョウト地方にも長い歴史に渡る伝説があるの」
「伝説…」
「貴方が見たポケモンというのは、たぶんその伝説に関係があるわ。
 でもやっぱりパパの子ね…ほんとうにそっくり。それでいつ旅立つの?」
「明日」
「明日?本当に急なのね」
「ごめん、でも俺がんばるから」
「わかったわ、それじゃあ今日は荷物をまとめたらゆっくり休むのよ?」
「わかってる」

そうして夕食は終わった。
そのあと俺は荷物をまとめはじめた。
途中までは順調だったのに、タウンマップを入れようとしたら『何か』が俺の手にしがみついていた。
その『何か』が何なのかは今でもわからない。
でも俺が物心ついた頃にはもういて、危険な目にあうと助けてくれたり、集中していたらイタズラされたり…
まぁ良くも悪くも今では当たり前になっていること。
けど今回の行動はイタズラなんかじゃなくて、まるで行くなと行っているようだった。
とりあえず俺はその『何か』に話しかけた。

「なぁ、離してくれねぇか?今、準備をしてるんだ」

そういっても、その『何か』は俺の手から離れようとしなかった。

「なぁ、もしかして家出とか思ってんのか?
 それなら違うぜ、俺旅に出るんだ。エンジュシティってとこに。
 んでその町はジョウト地方にあるらしいんだけど、俺ジョウトは知らないんだ。
 3歳まではエンジュシティにいたらしいんだけど、覚えてねぇから…だからタウンマップは必要なんだ」

しばらくたつと俺の手から『何か』が離れた。

「サンキュー、お前も旅についてきたかったらついてきていいぜ」

俺がそういった言葉に『何か』はどう思ったんだろう。
声も聞こえないし、姿も見えないから、どういう反応をしてるのかわかんないけど、俺はこいつのことが大切なんだって改めて思った。


持ち物チェックも終わって、布団の中で懐中時計を眺める。

「父さん、俺も旅に出るよ…伝説をめぐる旅に…」

懐中時計をしまうと、俺は眠りについた。

        ―希望と夢を抱きながら―
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#4☆2008.04/03(木)19:27
ポッポー、ポッポー

「んっ…朝…」
ポッポの目覚まし時計を止めて目を開けると、窓から快晴の空が広がっていた。

草一面を照らし出す金色の光
風に揺られる緑

「旅立ち日和だな」

一度大きく伸びをしたら、俺は全ての支度をととのえ母さんのところへ急いだ。

「おはよう、母さん」
「おはよう、まさる。…もう準備はできているようね。彼はそこにいるのかしら?」
「彼…?」

母さんは俺の少し上を見ながらそういった。
目線の先を見てみると色違いのゴースが現れた。

「ゴース、ゴース」

現れたゴースは俺の頭の上に乗った。

「えっ、うえっ?!な、なななな!何だこいつ!?」
「まぁ、その言い方はないんじゃない?今までもずっといたのに」
「ゴスゴース(まったくだぜ)」
「…?!こいつ、今、しゃべっ…」
「そりゃポケモンですもの、鳴き声くらい」
「そうじゃなくて!俺、こいつの話してることわかるんだ!」

何がなんだかわからなかった。
俺はポケモンの鳴き声はわかるけど、言葉がわかることなんて今までなかった。
俺んちはそだてやをやってるからポケモンは結構いるけど、今までに言葉を理解できたことはない。

「あぁ、そういえばそうだったわね。
 貴方は昔から怖がりで、なのに幽霊が見えて…幽霊やゴーストタイプのポケモンが現れるといつも泣いてた。
 けど皮肉なことに、貴方は怖いと感じるゴーストタイプのポケモンの言葉だけ理解することができた」

「ゴスゴス!(そうそう!)」

「(そだてやにはゴーストタイプはいないからわからなかったんだ…)
 …なるほど…でも何で今までゴースの姿が見えなかったんだ?」

「ゴスゴスゴース(そりゃ俺が見えないように隠れてたからさ)」
「…それじゃあ今までの『何か』の正体って…」
「ゴース!!(俺だ!!)」
「マジ…?」

「そうよ?この子はエンジュで貴方が最初に出会ったゴース。
 貴方は怖がってすぐに泣いたけれど、ゴースが怪我をしているとわかると、泣きながら治療してたわ。
 それ以来ずっと一緒にいて、それをきっかけに怯えながらだったけど、他のゴーストタイプのポケモンとも仲良くしてたのよ?
 けど引越しが決まって、皆とは離れ離れになってしまった。
 ただこのゴースはついてきちゃったんだけどね。
 最初はゴースも姿を見せていたのよ?
 けど貴方が『ゴースの言ってる言葉がわかるんだ』と近所の子に言ったら、皆が気味悪がって貴方から離れた。
 その後、貴方がゴースに何か言ったわけではないけど、ゴース自分から姿を現さなくなった。
 ただ不思議なことが起こるから、姿は見えないけど貴方のそばにいると確信できたわ。
 まぁ貴方は覚えてないでしょうね…引っ越す前は物心がまだついてなかったし、その事件のことは貴方にとってよっぽどショックだったのか、次の日にはまったく覚えていなかったんですもの」 

(…そうだったのか…)

「さぁ、ゴースも現れたことだし、お母さんからの贈り物よ」

そういって手渡されたのは新品のモンスターボール5コとポケモン図鑑
そしてちょっと古い感じのモンスターボールと船のチケット
さらに一枚のCDと一冊の本

「モンスターボールとポケモン図鑑、船のチケットについてはいいわね。
 あと、そのちょっと古めのモンスターボールはそのゴースのボールよ。
 そしてここからがちょっと大事な話。
 この一冊の本とCDにはジョウト地方の伝説についてまとめられているの。
 これはパパが調査して、作り出したものよ。
 パパは今シンオウ地方の調査をしていて自分でエンジュまで出向けないから、変わりにエンジュのジムリーダーに届けといてくれと言われていたの。
 私が行こうと思っていたけれど、まさるが行くのもエンジュ…何か縁があるのかもしれないし、お願いしてもいいかしら?」

「わかった、ちゃんと届けるよ」
「ありがとう、…それじゃあ、いってらっしゃい」

俺はそれらをしっかりと受け取り家の門をくぐった。

「いってきます」

さぁ、俺のたびはこれからはじまるんだ!
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#5☆2008.04/10(木)20:06

第一話「はじめのはじめの第一歩」


大きな汽笛がなっている船着場で、まさるはマップを広げていた。

「まずはクチバシティまで船で行って、そのあとヤマブキシティ、でそっからリニアでコガネシティ…
 んで自然公園を通ってエンジュシティか…なげーな…」
「ゴースゴース(さっそくかよ…)」
「だってよ〜こんなにあんだぜ?行く前から疲れちま…っつ?!」
「ゴス?(どうしたんだよ?)」
「足になんか…」

どうにも足が重いと思って足元を見れば、一匹のヒメグマが俺のズボンのすそをぎゅっと掴んでいた。

「何だ、こいつ?」

とりあえずズボンからヒメグマを離し、抱き上げてみる。

「…これは…」

そう、そのヒメグマはフリフリのドレスを着ていた。
多少のフリフリとかスカートなら可愛いと思うけど、さすがにこのデザインは…

「ゴ〜スゴスゴス!(あ〜おもしろ!にしてもドレスはねぇぜ!)」

そのゴースの言葉が引きがねになったのか、ヒメグマは泣き出した。

「あーもう、しゃあねぇな。ゴースも余計なこと言うなよ」

俺はヨシヨシとヒメグマの頭をなでながらゴースに言った。

「…ゴース…(…だってよ…)」
「あ゛ぁーもう頼むから泣き止んでくれよ」

すっかり困り果てていると、後ろのほうから何かがすごいスピードで走ってきた。

「なんだぁ?…っ!」

何かと思って後ろを振り向いた瞬間に思いっきり顔面を殴られた。
条件反射で右手で顔を抑えていると、そのすきに俺の左腕からヒメグマが取り上げられた。

「…なにすんだよ!」
「なにすんだよ!はコッチの台詞やドアホ!うちのティアラちゃんになにしてくれとんねん!!」

いきなり顔面パンチをくらわせてきやがったのは女だった。

「ゴース?(大丈夫かよ?)」
「あぁ、大丈夫だ。それより俺らはそのヒメグマになんにもしてねぇよ」
「そんな嘘にだまされると思ってるんか?ティアラちゃんが泣いてるのが最大の証拠や!ちゃっちゃと白状し!」

「あ゛ぁ?そのティ、何だっけ?まぁいいか、そのティーちゃんが俺の足にしがみついてきたんだよ。
 それでその服装を見てゴースが『ドレスなねぇな』って言ったんだよ、そしたらそいつが泣き出したんだ」

「ティーちゃんやない!ティアラちゃんや!!しかもゴースが言うたやて!?
 そんなんわかるわけないやん!
 しかも、そのドレスはないやて…!?
 それはどういう意味や!!これはあたしがティアラちゃんのために特注で作ってもらったもんなんやで!
 それを…よくも!一回視力検査うけにいったほうがええんとちゃう?」


…カチン…


「なぁ、なんかこいつすっげームカつくんだけど」
「ゴス。ゴース、ゴスゴス(同感。俺さぁ、このヒメグマの気持ちわかるよ)」
「なんでだよ?」
「ゴース、ゴースゴース…、ゴース?(だって『やっぱり男の子がドレスなんて…』って言ってんだぜ?)
 ゴースゴス、ゴースゴスゴス(だからさ、こいつは男なのにこんな服を着せられたことで泣いてんだよ)」
「ふーん、なるほどな」


「(な、なんやこいつら?あの男のほう…ゴースにしゃべりかけて一人で納得しとる…)
 なんやあんた不思議なやっちゃな、ホンマにゴースの言うとることわかるんかいな?」
「んぁ?わかるさ」
「それじゃあポケモンと話せんねんな!」
「いや、俺が話せるのはゴーストタイプのポケモンだけだ」
「なんや…そうなんかいな…(せっかくティアラの気持ち聞けるか思うたのに…)」

目の前の女は、急にしょんぼりして俯きやがった。
いったいなんなんだよ…
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[1155]

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