山下河原 | #1☆2008.06/07(土)01:28 |
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※作者が最近のポケモンをよく知らないため、この物語の舞台は『ルビー&サファイア』です(ぇ) 懐かしい雰囲気(?)に浸ってお楽しみくださいませ。 #1 <死にたがる少年と爆走少女> 「ジジ、みずでっぽう!」 トウカシティ郊外の森で、少年が一人、ポケモンのワザの練習をしていた。 少年の名前はキッシュ。 「よし!チュチュ、でんきショック!」 一緒にいるのはミズゴロウ♂のジジと、ピカチュウ♂のチュチュ。 特訓の後、少年はポケモンたちの頭を撫でながら呟いた。 「ジジ、チュチュ、ごめんよ。君たちはとっても素晴らしいポケモンたちなのに、僕はこんなので…あぁ、今もこの崖から飛び降りたいよ」 そんな彼の発言に、ジジとチュチュは慌てる。 ジジは「おとなしい」、チュチュは「がんばりや」…そしてキッシュは「死にたがりや」である。 キッシュは自分に自信が持てなくなっていた。自分でも原因はよく思い出せないが、とにかく死んでしまいたかった。今は旅をしているが、それも一人になるためにしているのである。 「すごいね!」 「…!?」 いきなり声がして、驚いてキッシュが振り返ると、女の子がいた。 年齢は彼と同じくらいだろうか? 「ワザの練習?」 「あ、うん…」 「ひょっとして、ミズゴロウはオダマキ博士に貰った?」 「そうだけど…?」 キッシュが旅に出たのは一人になりたかったばかりではない。 同じ町(ミシロタウン)に住むオダマキ博士に、特別に研究している三匹のうちの一匹・ミズゴロウを育てるように頼まれたのである。 「私もアチャモ貰ったんだ!紹介するよ。出ておいで、べりー」 彼女はモンスターボールからアチャモ♀を出した。「べりー」というニックネームらしい。さらにラルトス♂の「ますかっと」も見せてくれた。 「そうだ!ポケモン勝負しようよ」 「えぇ…?」 「いいでしょ?」 「いや、僕は…」 「ね?」 「…うん」 いきなり出てきて、しかも「勝負しよう」という少女に、キッシュは戸惑った。 |
山下河原 | #2☆2008.06/07(土)01:55 |
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#2 <ポケモンバトル> キッシュが乗り気にならないうちに始まった勝負。 「私の名前、教えてなかったね?ヒナだよ」 「僕はキッシュだ」 「キッシュ?洒落た名前ね。よろしくね!」 二人はそれぞれボールを握った。 「いけ!」 「がんばれ!」 キッシュ側:チュチュ(ピカチュウ♂) ヒナ側:べりー(アチャモ♀) 「素早さなら負けない!チュチュ、でんこうせっか!」 「べりー、ひのこ!」 チュチュは電気タイプなので素早く、べりーに一撃を喰らわせた。…が、思ったよりもべりーは手強い。 「チュチュ、もう一回!」 「べりー、すなかけ!」 ざっ。 チュチュの目に砂が入った。 「よぉし、たいあたりっ!」 ヒナが叫ぶ。べりーが体当たりをする。 「あっ…チュチュ!」 チュチュはよろけたが、なんとかこらえた。 「がんばれ!でんきショック!」 すなかけとたいあたりのお返しにと、チュチュは電気ショックを放った。 「べりー!」 べりーは倒れた。チュチュは得意気そうだ。 キッシュ側:チュチュ(続) ヒナ側:ますかっと(ラルトス♂) 「ますかっと、べりーの分もがんばって!かげぶんしん!」 ばばばっ。 チュチュの周囲に、ますかっとの分身が並ぶ。 「どれが本物だ…?」 「見分けるなんて不可能だよ?ねんりき!」 「チュチュ、でんじは!」 ばりばりっ。 「あっ、ますかっと…!」 ますかっとは麻痺してしまった。鈍くなってしまったようだ。 「でんきショック!」 「ねんりき!」 ますかっとは電気ショックをかわした。そして強力な念力。 「チュチュ…!!」 キッシュ側:ジジ(ミズゴロウ♂) ヒナ側:ますかっと(続) 「ジジ、たいあたり!」 メンバーチェンジをして、ミズゴロウのジジ。 「ますかっと、テレポート!」 ひゅん!ひゅん! ますかっとがテレポートで色々な場所に移動する。 ジジはそれを目で追っていたが、追いつけない。 「ねんりき!」 「ジジ、こらえるんだ!みずでっぽう!」 二匹の力量の差は互角。 不思議な力で押すますかっと、水で攻撃するジジ。どちらが勝つのか…? 「ジジ、とっしん!」 「ねんりきで攻めるのよ、ますかっと!」 二匹のワザがぶつかった。 「はぁ、はぁ…君、強いね」 キッシュは負けた。あとちょっとだった。 「でも、キッシュも強かったよ」 「…そっかな」 「うん!」 ヒナは笑った。 「僕…自分に自信がなくて、いつも『死にたい』って思ってたんだ」 「え…そうなの?もったいないよ、死んじゃったら」 「どうして自信がなくなったのか、よく思い出せないんだけど…」 「だって、人生楽しまなきゃ損だもん!」 大きな声でそう言うヒナを見て、キッシュも笑った。 「…ねぇ、私と一緒に旅しない?」 「ヒナと一緒に?」 「うん。一人じゃ寂しいし、キッシュとはもう友達になったから」 「……」 「…駄目かなぁ?」 「いや…いいよ。一緒に旅、しよっか」 「本当?」 「うん」 死にたがりやのキッシュは一人になるために旅をすることにしたのだけれど、なんだか、ヒナと一緒でもいい気がした。 |
山下河原 | #3☆2008.07/06(日)21:36 |
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#3 <べりーとジジ> キッシュとヒナは、トウカシティを出た。 カナズミシティへ向けて移動中。 「べりーは、ジジのこと覚えてるのかなぁ」 ヒナが言った。 「オダマキ研究所で一緒だったみたいだけど」 「うーん…僕たちにはポケモンの気持ちはわからないけど、きっと覚えてるんじゃないかな」 「だよねー! 友達だもん」 二人はボールからジジとべりーを出していて、ジジはキッシュの肩の上、べりーはヒナの頭の上にいた。 二匹は話していた。もっとも、トレーナーたちにはポケ語は理解できなかったのだが。 [アチャ…じゃなくて、べりーちゃん、久しぶりだね] ジジが言った。 [気安く呼ばないでよ、ミズゴロウ] べりーは軽くあしらった。 [ジジだよ] [ミズゴロウ] [……] どうやら、べりーはジジに好感が無い様子。 …というか、嫌い? [私はアンタのこと嫌いなのよ?] [うん、知ってるよ] [じゃあ、なんで相手するわけ? あしらわれるってわかってるでしょ?] [僕は、べりーちゃん好きだから] [ちょ、気安く呼ばないでって言って……え?好き?] [研究所の頃から言ってるじゃん。僕は、べりーちゃん好きなの!] [……] オダマキ博士は3匹を特別に研究していた。そのうちの2匹であるアチャモとミズゴロウ。 ツンツンしているアチャモより、のんびりしていて懐っこいミズゴロウのほうが研究所内では人気があったのだ。 どうして、毛並みも良くて可愛くてスタイルも抜群(?)のこの私よりアイツが人気なのかしら…? ということで、べりーはジジが嫌いだったのである。 簡単に言えば、べりーは高飛車で自意識過剰なのだ。 [べりーちゃんが苦手な岩・地面タイプのポケモンには、僕が攻撃して守ってあげられるよ] [……] […無視しないでよ] 二匹の、仲良くなさそうな会話が続く最中、ヒナの悲鳴が聞こえた。 「きゃ…っ!」 [ヒナっ!] べりーが前を見ると、そこには野生のハブネーク。 いきなり現れたものだから、ヒナはビックリしたのだ。 「べりー、ひのこ!」 ぼぉっ。べりーが火の玉を吐いた。 しかし、バシッという音がして、ハブネークはいとも簡単にそれを跳ね返す。 「ジジ、お前も戦うんだ!」 [うん、キッシュ!] 「たいあたり!」 ジジの身体を張った体当たりも、ハブネークには効かない。 「どうしよう…」 「どうにかして、逃げられないかな…」 ハブネークの牙や尻尾を避けながら、ヒナとキッシュは考える。 [くっ…私が、ヒナを…守らなきゃ……] アチャモとミズゴロウな二匹にとって、ハブネークは大きすぎる相手だ。 その一振りで飛ばされてしまう。 「きゃあっ!」 [ヒナ! ……!] ハブネークの尻尾がヒナとべりーに襲ってきた! ――カキン [……!?] いつまで経っても痛みがないので、べりーは瞑っていた目をおそるおそる開けてみる。 ハブネークの尻尾が氷で地面と繋がっていた。 身動きがとれないので、どうすることもできない。 「れいとうビーム、うまくいったな、ジジ!」 キッシュがジジの頭を撫でていた。 [あ、べりーちゃん、大丈夫?] ジジが寄ってくる。 [あ、あんた…れいとうビームなんか使えたっけ?] [キッシュがいちばん初めに僕に教えてくれたワザなんだ] [ふうん…] ハブネークが凍っているうちに、二人と二匹はその場を離れた。 「すごいね、れいとうビーム!」 「わざマシンで教えたんだよ」 「いいなぁ!私もだいもんじぐらいはべりーに覚えさせたいな」 仲良さげに話すキッシュとヒナを横目に、べりーはぽつりと言った。 […強いじゃないの、……ジジ] [……!] ジジはニックネームで呼んでもらえて、とても嬉しそうだった。 |
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