ぴくの〜ほかんこ

物語

【ぴくし〜のーと】 【ほかんこいちらん】 【みんなの感想】

終了[1182] たとえ時空を越えても

しっぽ #1★2008.12/20(土)13:07
★プロローグ★ ―希望を託す時―

これは、1人の少年が人間の世界からポケモンの世界へ行き、
ポケモンの世界を救い、友達と再会する、時空を越えた物語です。


「…みんな、どこ行ったのかな」

ボクは言葉をもらした。

ボクはたった1人。いつもの友達が、みんないない。
ある日突然、いなくなってしまったのだ。


「…あなた、友達に会いたい?」

どこからか声がした。聞きなれない声。
誰か近くにいる。だが姿はない。

「…うん」

ボクはうなずいた。
ただ、友達に会いたい一心で。

「よく言いました。今から独りぼっちのあなたに、希望を託します。
 ポケモンの世界を救うことで、友達と再開できるでしょう。
 友達を…ポケモンの世界を救って下さい」

 パァァ―――

突然、目の前が輝かしい光に包まれ、そして光にのみこまれた。
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しっぽ #2★2008.12/20(土)13:02
★第一話★ ―ポケモンの世界―

「…起きて!起きてってば!」

すがすがしい風が吹く中、誰かがボクを呼んでいる。
一体誰だろう…。

「うーん…」

「良かったー!気が付いたみたいだぞ!」

ボクは目を覚ました。光の届かない森の中。
目の前には、心配そうな顔をした、2匹のポケモンがいる。

「オレの名前はキモリのサスケ!」

「あたしはアチャモのパールよ!あなたは?」

「え?ボク?名前は…」

なんと、ダイヤはポケモンの世界にいるではないか。
ボクは驚きつつも名前を思い出そうとした。頭がボーっとする。

「ダイヤです。実は…」

「…えっ!?実はダイヤは人間なの!?
 どこからどう見てもミズゴロウだよ!」

パールは驚いた表情をした。ダイヤはそう言われ、自分の体を見つめた。
なんと、体はミズゴロウになっていた。

「確か…あの時…」

ダイヤはここに倒れる直前のことを思い出した。

“よく言いました。今から独りぼっちのあなたに、希望を託します。
 ポケモンの世界を救うことで、友達と再開できるでしょう。
 友達を…ポケモンの世界を救って下さい”

この言葉を聞いて最後、ダイヤは人間からポケモンになったのではないか。
ダイヤはそう思った。
しかし、名前とそれ以外は何も覚えてない。それを、ダイヤはサスケとパールに話した。

「そうか…。
 どうせならオレとパールについてこないか。
 お前…独りぼっちなんだろ」

「…うん。ありがとう」

ダイヤはただ、黙ってサスケとパールついていくのであった。
きっといずれ、自分がここに来た、明確な理由が分かるであろうから…。
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しっぽ #3★2008.12/16(火)16:12
★第二話★ ―この世の中の現状―

ダイヤ達は薄暗い細道を歩いていた。
しかし、道はあまりにも静かで、かえって怖い。
ダイヤがポケモンの世界に来る前の話を、覚えている範囲で話す、ちょうどその中で――

「ダイヤ。確かお前…友達とポケモン界を救うために、この世の中に来たんだって?」

「うん。はっきり覚えてないけど…。
 誰かにそんな話をされた覚えはあるんだ」

あの時聞こえた、聞きなれない声と言葉。
ダイヤはただただ、サスケに聞かれるままに、話をするのであった。

「そうよ!ならば、ダイヤの話につじつまが合うわ!」

「…えっ?」

その場で一度立ち止まった。気づくと、周りは黒い霧におおわれていた。
進むにつれて、霧は厚くなる。視界も悪くなる。
そして、目の前には、グニャリと折れ曲がった木が、何本か倒れていた。
どう見ても、自然に折れたように見えない。不思議な力で無理矢理に曲げられた感じだ。

「最近、こんな感じに木が折れ曲がったり、時にはおかしな災害が起こったりするの」

無残すぎる。ダイヤはそう強く思った。

「恐らく、ダイヤが言う“ポケモンの世界を救う”って、
 この現象を解決させることが、ポケモン界を救うことにつながるんじゃないかな」

パールはそう思っていた。しかし、どうすれば解決できるのだろう…。

「…ヒゲおやじなら何か知ってるんじゃあないか?」

「そうね。
 ヒゲおやじさんはいろんな事を知っている、物知りなポケモンだもんね!」

今の現状を知るには、物知りなポケモン、ヒゲおやじしかいなかった。

「決まりだね。ちょうどもうすぐ、ヒゲおやじさんの家に着くよ!」

「うん。急ごう」

ダイヤ達は、今の現状と解決方法を知るために、ヒゲおやじへのもとへ向かうのであった。
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しっぽ #4★2008.11/30(日)10:57
★第三話★ ―ヒゲおやじ―

ポツンとした、一件のレンガの家を訪ねた。
ここがヒゲおやじの家らしい。

「すみませーん!ヒゲおやじさーん!」

「…今から行きます」

 ギイィィ――…

古びた扉は怪しげな音を立てた。
すると、扉の向こうから、ヒゲをはやしたポケモンが顔を覗かせた。

「ワシがフーディンのヒゲおやじだ。
 キミ達、どうしたのかね?家に入りなさい」

そう言うと、ダイヤ達は大人しく部屋へ入ったのであった。


中へ入ると、暖かい暖炉と、あじが出た腰掛けがあった。
その腰掛けの上には、時空伝説≠ニ書かれた書物が置かれている。

「暖まりながら話をしようか」

「あのー、ヒゲおやじさん…」

「何じゃね?」

ダイヤ達はこれまでの話を、暖炉の前でヒゲおやじから頂いたホットミルクを飲みながら話した。
そんな中、ヒゲおやじは真剣に話を聞いている。

「…そんな事があったのか。
 まさか時空伝説≠ェ本当だとはな…」

「そ、それってどういう事!?」

ダイヤ達は話にのめり込んでいた。
今の現状が、解決法が分かるかもしれない。

「今から話すぞ…」

そして、ヒゲおやじは時空伝説≠フ書物を手にした。
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しっぽ #5★2008.11/30(日)11:00
★第四話★ ―謎の爆音―

ヒゲおやじが書物の1ページ目をめくったその時。

 ズボォォ―――ン…

突然、耳をふさぎたくなるような、大きな爆音が鳴り響いた。
外の木々が衝撃波で揺らぐ。
砂煙が起こり、葉も一斉に飛んでいく勢いだ。

「ハッ!
 今の爆音はもしや…」

ヒゲおやじは爆音が鳴った瞬間、何かを感じ取ったらしい。
彼は深刻な顔つきになる。
何か危険な事でも起きたのだろうか。

「…時間の塔で何かが起こったに違いない。
 キミ達、ついてきてくれ」

家をもほったらかして、ヒゲおやじは家を飛び出した。
ダイヤ達はヒゲおやじと一緒に、北にある爆音が鳴った場所へ急ぐのであった。
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しっぽ #6★2008.11/30(日)11:16
★第五話★ ―時間の塔―

北に向かってへ走ると、荒れた広場に出た。

「あれは…!」

なんと、無残にも時間の塔の上部が砕け散っていた。
石のようなもので出来ている時間の塔だが、周りにはその破片が転がっている。
しかし、あまりにもひどく荒らされていた。

「…石の塔の中にあるはずのこんごうだま≠ェない。
 もしかしたら何者かに盗まれたのか…」

どうやら、時間の塔の中にはこんごうだま≠ェあったらしい。
何者かに荒され、中に収められていたこんごうだま≠ェ盗まれたようだ。

「時間の支えとなるこんごうだま≠ェないと、世の中が大変な事になる。
 …一刻も早く止めなくては」

ヒゲおやじは、真剣な顔だった。
こんごうだま≠ェなくなった影響で、今のポケモンの世界が乱れ、災害が起きている。
ダイヤはそうじゃないかと思った。

 …―――!

今、ヒゲおやじに何かがよぎった。

「…多分、盗んだヤツは次に空間の塔にあるしらたま≠狙うのだろう。
 今、ワシの『みらいよち』でそう感じ取ったのだ」

ヒゲおやじは、『みらいよち』という不思議な超能力が使える。
本当に不思議なすごいポケモンである。

「もし、それが本当ならば、早くしらたま≠守らないとな!
 行こうぜ!しらたま≠ェある空間の塔へ!
 犯人を捕まえるために」

サスケは手を握りしめ、強く言い張った。
しかし、空はすでに夕日でオレンジ色に染まっていた。

「…今日はもう遅いし、そこまではかなり遠い。
 明日から一緒に行こうではないか」

「うん。分かったわ。明日、頑張ろう!」

こうして、ダイヤ達は明日、しらたま≠守るために、
そして盗んだヤツを捕まえることにしたのであった。
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しっぽ #7★2008.11/30(日)11:06
★第六話★ ―不思議な夢―

ダイヤ達は、ヒゲおやじの家へ泊まっていた。
そして、暗い夜中に見る夢の中にて――


――…

「…ダイヤさん。聞こえますか?」

夢の中、どこからか声が聞こえてくる。
でも、どこかで聞いたことがある声。
うっすらだが、相手の姿が見えてきた。
しかし、見たことがないポケモンである。

「…ダイヤさん。夢の中になりますが、やっと会えました」

「やっと会えた…って?」

ダイヤは首を傾げた。
なのに、思い当たらない相手から、何かを語りかけてくる。

「実は、あなたに真実を伝えるために、私はあなたの夢に出て来たのです。
 あなたがこの世界にやって来た理由を明らかにするためにも…」

ダイヤは理由に驚いた。
自分に真実を伝えるために、夢に出てくるだなんて…。
きっと、相手は自分がこの世界にやって来た明確な理由を知っているに違いない。

「世界を救うためにはまず、西の方角にある空間の塔を訪れれば、
 きっと…きっと道は開きます…」

――…


パァァ―――ッ

すると、夢の世界からかけ離れ始め、外の光が差し込んだ。
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しっぽ #8★2008.12/10(水)18:15
★第七話★ ―時空伝説―

ダイヤ達はしらたま≠見つけるために、朝早くから西へ向かっていた。
西へ歩き始めて、少し時間が経った頃。

「ダイヤはそんな夢を見たの…」

ダイヤは夜中に見た夢を語りながら道を歩く。
木が何本も連なる道のりの中で。
確かあの夢には、聞き覚えのある声と、うっすら見えた姿があった。
何だか気になってならない。

「ダイヤ。
 夢の中でしらたま≠フある空間の塔へ行けば、道が開くだろうと言ってたと。
 やっぱり、時空伝説は本当なのかもしれないな…」

「えっ…?」

ヒゲおやじは手に持つスプーンを光らせ、語りだした。

「時空伝説の時空とは、時間と空間を表している。
 この時空があるからこそ、今の世界が維持されているのだ」

ヒゲおやじはパールの言うとおり、ものすごく物知りである。
ダイヤ達にも分からない事だって、たくさん分かる。

「最近、何らかの影響で、時空にゆがみが生じているらしい。
 あのこんごうだま≠ェ時を、つまり時間を支えている。
 ゆがみなどの災害が広がる中、今まで時間を支えていたこんごうだま≠ェ何者かに盗また。
 そして世界は更に狂いだし…」

「つまり…災害が増えるのか?」

サスケは立ち止まって聞いた。

「…その通りだ」

ヒゲおやじは頭を少し抱えていた。
そう言われると、気の茂みからわずかに見える夕空がちょっぴり暗く見えた。
薄い赤い空に浮かぶ雲と太陽は、少しずつ動いている。

今のままでは、世界が…。この世界を救うために…ボクはやって来た。
そして、いずれボクがやって来た理由が分かるはず。ダイヤは気持ちを強く持った。

「世界を守るためには…行こうよ!
 しらたま≠フある場所へ!」

「そうよ!世界のためにもっ!」

目指すは空間の塔。
きっと、道が開くはず。世界を救えるはず。ボクはあの夢を信じていた。
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しっぽ #9★2008.12/26(金)14:25
★第八話★ ―丘の上の夜空―

すでに日は沈んでいた。

「今日はここの大樹の下で寝ようか」

長い距離歩いた先、そこは広い広い丘の上。1本の立派な大樹がある。
その大樹と丘からは、何か不思議な雰囲気を感じられた。
そして、夜空が綺麗だ。星が点々と輝いている。

「しかし…今日はだいぶ歩いたよなー」

サスケは大樹を登り、枝の上で寝そべった。
そこから見る星空は、とても輝かしいものだった。

「今日はもう遅いから、寝ようよ。
 みんな、お休みー」

パールは木に寄り添ってもたれ掛かり、寝始めた。


あれから30分くらい経過した。木に登ったサスケもとっくに寝付いていた。
空は更に藍色になってゆく。まるで、これから時が停まるだなんて、全く感じさせないぐらいだ。
でも、災害で、この綺麗な夜空が崩れると思うと残念である。
その中、ヒゲおやじとダイヤは星空を眺めながら話をしていた。

「ダイヤ。確か“ポケモンの世界を救う”という目的以外に、
 “友達と再開”を果たすためにこの世界へやって来たんだってな」

「うん…」

ダイヤは疑問を抱いていた。
この世界へやって来る時に聞こえた声の事で一つ。

“ポケモンの世界を救うことで、友達と再開できるでしょう”

ポケモンの世界を救うためにやって来た自分だが、
何故それが“友達と再開”に関係するのか、全く分からなかった。
あれだけ詳しいヒゲおやじも、思い当たる事が無いらしい。
ダイヤはただ、気になってならなかったのであった。

でも、でもきっといずれ分かる時がくるだろう。
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しっぽ #10★2008.12/10(水)18:17
★第九話★ ―夜中の仲間割れ―

ダイヤ達もすっかり寝入った頃だった。
そのころ、深い森のある場所では――

「しつこいなぁ。我はお前らについていかないと言ったはずだ」

「…相変わらずなヤツだぜ」

暗い夜道に、3匹のポケモンが何やら言い合っていた。元々は仲間だったらしい。
狭い道で1匹のポケモンを、2匹のポケモンが両側から囲む。
2匹のポケモンは鋭い牙を剥き出して問う。

「お前は一緒に素敵な世界を作ると決めたはずだ。なぜ逃げようとするのだ?」

「我は気付いたのだ。この世の中を壊すと…心に悪影響を及ぼす。
 くっ…。それに、これ以上耐えられない。気が変わった我は…世界を守るっ!」

我と名乗るポケモンは、きっぱり言った。
それを聞いた2匹は顔を見合わせ、目を尖らせる。

「…フン。
 裏切ったお前は本当に残念だ。お前とは絶交だな。なあ?」

「まあ、ここまで言い張るなら…ね。同行なんてやれっこないわ。
 アンタとなら、一緒に頑張れると思ったのにね…」

2匹のポケモンは下を向いていた。彼らは容赦なく言葉をぶつける。

「…絶対に我は心を、そして身を犠牲にしてまでも、世界を救うから…な」

「勝手にしろ」

2匹のポケモンは黙って去ってしまった。
散々言われたポケモンはどこか苦しげだった。とても辛い。なぜか心に闇が襲ってくる。
まさにそれは、正気と闇の戦いだった。
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しっぽ #11★2008.12/10(水)18:18
★第十話★ ―チェリー―

朝が来た。日差しが眩しい。空気が気持ちよい。

「おはよー…」

パールが上を見上げると、サスケが朝日を眺めていた。
今日も頑張ろう。そんな気持ちになれる。その日差しを皆、起きて浴びる。
だけれども、何だかかえってまぶしい。

「今日は良い天気だぜ…。なあ?ダイヤ?」

「そうだね。昨日、すごい夜空がきれいだったから…。
 今日こそ早く空間の塔へ向かわないとね」

「うむ…。
 今日中には着きそうだが、この周辺の道はあまり詳しくないからな…」


すると、向こうから何やら誰かがやって来るのが見えた。

「すみませーん。
 あのー、聞いたところですと、あなた達はこれから空間の塔に行くみたいね。
 良ければわたしが案内するわ!」

「ホントか!ありがとう!」

彼女の名前はチコリータのチェリー。頭の葉っぱがチャームポイント。
どうやら、彼女は空間の塔について詳しいらしい。

「じゃあ、ついて来てねっ!」

新しい仲間、チェリーが加わった。
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しっぽ #12★2008.12/10(水)18:19
★第十一話★ ―空間の塔―

「ここが空間の塔がある場所よ」

昼過ぎに、空間の塔が建つ場所に着いた。
時間の塔の時と同じように、塔の辺りは広い広場となっている。
その真ん中に、塔は建つ。
収められているしらたま≠ヘ薄いピンクに輝く。

「わたし、この辺には詳しいの」

「そうか…。ありがとうな」

チェリーとヒゲおやじはお互い軽く頭を下げた。

「誰か来たみたいだわ!」

パールが見る目の前には、何かががこちらに向かって来るのがうっすら見える。

「…とりあえず隠れましょ」

「わぁっ!」

チェリーはダイヤ達を引っ張って、近くの草村の茂みに身をひそめた。
ダイヤは思わず声を上げた。


向こうから2匹のポケモンが、空間の塔に近寄って来る。
そのポケモンの正体はクロバットとヘルガーだ。やたら辺りをキョロキョロ見渡す。

「俺は諦めないな。アイツは絶対に許せない。
 だから、先にしらたま≠ナも盗むか」

「先に貰っちゃいなよ。あんなヤツ、恨まれて当然じゃない」

 ズボォ―――ン…

「ああっ…」

チェリーは陰から思わず声を上げた。

クロバットが作り出した『エアカッター』が塔に命中。
無数の風の刃が襲いかかった。おかげで塔は粉々に。
相当古いらしく、かなりモロくなっていたようだ。
それにしても、塔が簡単に砕けるのは理解しがたい。

「だいぶゆがみの力が増しているんだな…。
 へっ、塔も簡単に砕けるわけだ…」

クロバットは口を少し上げて微かに笑った。

「あの2匹以外にも、しらたま≠狙うヤツはいるみたいだな…。
 しかし、今は…絶対に…ッ」

ヒゲおやじは小さな声でつぶやいた。彼の顔はやはりするどかった。
両手に持つスプーンは輝いてない。そして、無駄に手に力が入り、スプーンと一緒に大きく震えていた。
何だか嫌な予感を感じさせる。

「さあ…。
 ここは引き上げるか」

クロバットとヘルガーがしらたま≠持って足早に逃げ出そうとした。

「い、いけない!」

ダイヤ達は体が前へ出そうになる。

「だ、ダメよ…。
 今行ったら…わたしのお…」

「オレ達は今はそれどころじゃあ…ッ!」

横からチェリーが必死で止めようとしたところを、サスケはつい口を挟んでしまう。
チェリーは泣いていた。

相手がどんなポケモンでも、盗もうとするポケモンは止めないと、世の中が…危ない!
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しっぽ #13★2008.12/06(土)17:05
★第十二話★ ―思い出の場所 そして思い出の友達―

「ああ…。行っちゃったわ」

パールはがっかりして、クロバット達が逃げた方向を見ていた。
奴らは逃げてしまったのだ。

「チェリーが…」

「そんな…。わたしはただ、思い出の場所が壊されるのを見て…」

「お…思い出の場所?」

ダイヤ達は首を傾げる。
チェリーは半泣きしながらも語りだした。

「わたし、昔からこの場所が、友達との集いの場所だったの。
 いつも、一緒に空間の塔を眺めながら…毎日を過ごしていた」

チェリーは砕け散った塔を見て、破片を取り出し触れながら話す。
辺りは何だかしんみりとしていた。

「しかし、最近はゆがみなどの災害が頻発し、更には友達と離れ離れになったの…。
 今は…この塔にしか思い出が残っていなくて…。
 だから、わたしは空間の塔を、残っていた思い出を、壊されるのを見ていて悲しくなって…グスッ」

 …―――ポタッ

涙がこぼれた。
一気にどっと涙が溢れた。
ほほを伝って、細い透明な道を作って流れる。
目には大きな涙の粒が溜まっていた。

「わたしの…あの時の楽しかった思い出が全て…なくなっちゃうのよッ!」

チェリーの悲しみは限界に達していたかのよう。
彼女は大きな声をだして泣いた。
ダイヤ達はチェリーを囲って、そっと温かく見つめた。

「チェリーの気持ち、分かるよ。
 あたしにも昔、仲の良かった友達がいた。
 だけど突然、何も言わずいなくなってしまったの。
 …だから、友達がいない辛さはすごい伝わるの」

なぐさめるようにパールは言った。
パールが、チェリーを優しく包み込むように寄り添う。

「さっきは責めてごめんな。
 …ならば、アイツらを追って、しらたま≠奪い返そうよ」

サスケは謝り、声をかけた。
ならば、やり返してスッキリしよう…と。

「そうね。取り返そう!
 …わたしの友達も、空間の塔がいつまでも残っていることを望んでいるはず。
 行こう!しらたま≠手に入れるために!
 そして思い出の空間の塔を残すためにも!」

「よく言った。
 明日からになるが…行こう」

空はまた、夕焼けに染まっていた。
最近はやたら日が沈むのが早いらしい。

「…これも、災害のせい…かなぁ?」

いつもより、空が暗く感じた。

目標は…しらたま≠取り返すこと。
ダイヤ達は一致団結し、気を引き締めた。
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しっぽ #14★2008.12/10(水)18:20
★第十三話★ ―不思議な夢 再び―

今日も野宿だ。ダイヤ達の泊まる暗い洞窟の中は、パールが薪につけた火が灯っていただけ。
ヒゲおやじとチェリーは、明日の計画を練っていく。
最終的にはダイヤ達も含め、みんなで話し合って決めた。
そしてみんな、眠りについた頃――


――…

「ダイヤさん…。また会えました」

あの時の夢だ。そして、あの時と同じ声。
姿は前よりハッキリ見える。優しい目をしていた。

「申し遅れました。私の名前は…クレセリアです」

あの姿の正体、彼女はクレセリアというポケモンだった。
そして、ダイヤの周りを一回りする。

「そうね。見事空間の塔へたどり着きました。
 ダイヤさん…すごいです」

「…でも、ダメだった。しらたま≠ヘ盗まれてしまったよ。
 それに、こんごうだま≠盗んだ犯人も分からない…」

ダイヤは下を見て話す。
クレセリアはうなずいて聞いていてくれた。
まるで、相談に乗ってくれているかのよう。
ひょっとしたら、クレセリアはダイヤの相談役…なのだろうか。

「大丈夫!あなたなら絶対にいつかやり遂げるわ」

「うん…ありがとう。
 次はちゃんとした目標があるよ。しらたま≠取り返すこと!」

ダイヤは自信を持って言った。明日、絶対に取り返す。
クレセリアはそれを見てにんまりした。

「良かった…。なら大丈夫ね。
 …次会うならば、夢の中じゃなくて…現実で出会いたいものね」

お互い、笑いあった。夢の中だけど、2匹は出会い、話し合える。
そしてダイヤにとって、大事な仲間、心の支えの一つでもあった。


「…ハッ!この感じは…」

クレセリアが何かを感じ取った瞬間、2匹の間にきれつが入り、引き離されてしまった。
この雰囲気。何だか邪悪な空気だ。辺りは真っ暗な世界に一変した。
クレセリアの姿はもう、無い。

「…フフッ。そうはさせない…」

 シュババ―――ッ

「わぁ―――っ!」

突然、悪魔が忍び寄ったかのよう。別のポケモンがこの夢に侵入してきた。
そして催眠術でダイヤを、深い深い眠りにつかせた。

――…


辺りの更に真っ暗な世界から、気が遠くなった。
まるで、暗闇の深海に沈められたかのように。
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しっぽ #15★2008.12/10(水)18:07
★第十四話★ ―時間の停止―

 ―――ガバッ

「はあはあ…」

ダイヤは多量の汗をかき、飛び起きた。夢を見てうなされていたのか、何だか怖い。

みんなが目が覚めた時、外では信じられない光景が広がっていた。

「な、なにこれー!?」

なんと、今は時間的に朝のはずなのに、外はまだ真っ暗だった。
しかし、実はそれだけではない。

辺りは異常なくらい静まり返り、ダイヤ達以外には誰もいない。
草木は斜めに揺れたまま固まっている。風が全く吹かないのだ。

空だって、普通の夜空と違う。
星もない。雲もない。空は藍色じゃない。黒一色のペンキを、空一面にこぼしてしまったかのよう。
本当に真っ暗で真っ黒な世界だった。

「ヒドイわ…これ」

パールはずっと空を見上げていた。しかし、見ても空は黒一色。
本当に空には何も浮かんではいなかった。

「とうとう…始まってしまったか…ッ」

後ろからヒゲおやじが頭を抱えながら来た。“しまった”とでも言うかのような表情だった。

「ヒゲおやじさん…これは…?」

「時間が…停止してしまったのだ」

「な、なんだとぉ!」

サスケとチェリーは聞きつけて飛び出してきた。そしてダイヤは寝ぼけながら駆けつけた。

「時間の停止…。時が停まると、外は真っ暗な世界。
 風は吹かず、空は真っ暗…。朝は来ない。永遠に真っ暗な、暗黒な世界が続くのだ」

ヒゲおやじは鋭い目つきで話す。ダイヤ達も真剣に話を聞く。

「恐らく、こんごうだま≠ニしらたま≠ェ両方盗まれてしまったからだ。
 両方の玉が力を発揮する場所、その塔から離れてしまい、時空のバランスが崩れた。
 そのせいで、災害の力が強くなる。そして、災害の一つ、時間の停止。時間が停止した…」

「ううっ…。怖いよ…」

ヒゲおやじは頭を抱えたまま。みんな、怖いと感じていた。
そう、この世界では時が停まっているのだ。
信じられないが、これは事実。だからこそ、ダイヤ達は強く気持ちを持った。

「玉を取り返すことができれば、時は元に戻るんじゃないか?」

サスケはそう思っていた。

「なら…探そう!玉を取り返そう!」

みんなは暗い中、気持ちを統一した。

“世界を…救いたいっ!”
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しっぽ #16★2008.12/10(水)18:58
★第十五話★ ―フレウス―

「見つけたよ。クロにレナ…」

「ちっ…。
 何でおれらの名前が分かるんだよ」

暗い森の一角で、会話が聞こえてきた。
クロとレナ、それに加え、見知らぬ1匹のポケモンがいる。

「私の名前はバシャーモのフレウス。ポケモンバトルの最高峰、P―1のチャンピオンだ。
 私はお前達の欲望を止めるために来た」

あのポケモンの名は、フレウス。
悪党、クロとレナを追うべく、フレウスは行動している。
彼はチャンピオンだけに、何かしらと強さが感じられる。
クロとレナは息を飲み、後退りしてお互い顔を見合わせた。

「うぐぐ…。なんてヤツだ…」

「どうやら時間を停止させ、世界を暗黒に変え、この世の中を乗っ取るだとか聞いたが…」

フレウスはズバズバ話す。
しかし、クロ達には何故そのようなことを知られているか分からなかった。

「アンタ…やたら詳しすぎるわね!何故か言ってよ…ねぇ?」

レナは鋭い目つきをして、フレウスを睨みつけたその時。


「ああっ!しらたま≠盗んだ奴らだ!」

ダイヤ達がその場に出くわした。

「キミ達、聞いてくれ!そこのクロバットとヘルガーはとんでもない計画を立てている!」

「な…!」

ダイヤ達はフレウスと見合わせ首を縦に振り、クロ達を見た。
やることは一つ。相手を倒すこと。
クロとレナは更に後退りする。

「仕方ない。シャドーボール!」

2匹は『シャドーボール』を繰り出した。両サイドから、攻撃がくる。

「ボク達ならやれる。一斉攻撃だ!」

 シュビビ―――ッ

「タネマシンガン!」
「ほのおのうず!」
「みずのはどう!」
「はっぱカッター!」
「きあいだま!」

ダイヤ達はそれぞれ得意な攻撃をため、1つ塊となって発射された。
その威力は、とてつもないものだった。辺りは眩しく輝く。
相手の『シャドーボール』は跡形も無くかき消された。

 ボォゥ―――…

「うわぁ―――っ!」

クロ達に攻撃は命中した。
体はボロボロである。だが奴らは立ち上がり、攻めに入った。
“これでもか”と、言ってもいいくらいだった。

「私に任せろ!」

フレウスは前に出る。前にダッシュし、体を白色に輝かせた。
助走をつけ、地面を勢い良く踏み出し、相手に突っ込んだ。

「かっけぇ…」

サスケは言葉を発した。
鳥のような形をしたもの。あれは『ブレイブバード』だ。

 シュバァ―――

「ぐはッ!」

2匹は倒れ、体力は殆ど無かった。
ダイヤ達は近寄る。相手は抵抗する力も無かった。

「詳しく話を聞こうか」

フレウスは振り向いた。
そして2匹を落ち着かせて話を伺うことにした。
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しっぽ #17★2008.12/16(火)16:12
★第十六話★ ―心許す時―

フレウスとヒゲおやじ、そしてチェリーは、盗みを犯したクロとリナから話を伺う。
一方、ダイヤ達は疲れ切って寝てしまっていた。
暗い洞窟の中。薪に火がつくだけ。
時間が停止して、約一日程経つ。時間が動く、本来なら…。

「アロマセラピー!」

チェリーはクロとレナの疲れ、そして傷を治してあげた。
そこら中に心地良い香りが広がる。

「俺ら…こんなに優しくされたの、初めてだぜ…」

「そうね。アタイ達、敵なのに…」

クロとレナは鋭い表情から穏やかな表情に一変する。
もはや悪気はなさそうに見えた気もした。

「ありがとうな」

クロとレナは少し歯を見せて笑った。
何か相手の心が動いた瞬間だった。

「お前らなら話せる。
 …俺らがなぜしらたま≠盗んだか。
 それは…俺らはどうしても世の中が憎いと思ったからだ。
 だからしらたま≠盗み、世界を変えようとした」

クロとレナは真実を語る。
3匹は真面目に聞いていた。

「もしもしらたま≠ェ塔から離れれば、
 世界のバランス――いわゆる空間のゆがみに、他には時間の停止などが引き起こされる。そして…」

「もういい。何故そんなことを…」

「フン…分かった。アタイ達はもう諦めたわ。あなた達は本当に優しいヤツだから…ね」

「つまりしらたま≠ヘ返すのだな?」

「そうよ。好きにしたら?」

レナはすぐに袋からしらたま≠取り出した。
しらたま≠ヘ薄いピンクをして輝いている。
玉は無事だったのだ。

「やった…。しらたま≠ヘ無事なのね!ありがとう!」

袋から出るしらたま≠見て、チェリーは嬉しかった。
これで、親友との思い出の空間の塔に、しらたま≠塔に収めることができる。
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しっぽ #18★2008.12/10(水)19:01
★第十七話★ ―謎の悪夢―

その一方、ダイヤはパール達に寄り添って眠っていた。
本当なら夜の時間帯。朝から空は真っ黒だけど、ダイヤ達は眠かったのだ。
…というより、何故か不思議なことに、ダイヤ達だけ眠かった。
まるで、催眠術を突然仕掛けられたかのように――


――…

キーン コーン カーン コーン…

懐かしい音が流れる。ここは…学校だ。
ダイヤは元々は人間。その時ダイヤは学校に通っていた。
今、それを思い出した。しかも、体は人間になっていた。

「ダイヤ君、遊ぼー!」

2人の友達がダイヤを遊びに誘った。
人間の男の子と女の子の2人。正直誰か覚えていない。
すると、2人は後ろを振り向いた。

「…また囲まれているわ」

そこにはなんと、ある1人の男の子を前に、5人もの人が集まって、1人の男の子を睨みつけていた。

「…やめて。何で自分だけ…」

「うるさいな!今からコイツを…」

すると、5人は一斉に1人の男の子に手をつけだした。
もはややりたい放題。見ているだけで、心が締め付けられる。
そう…ダイヤはほうっておけなかった。
思わずダイヤは、そちらに向かって駆け出した。

「や、やめるんd…」

なんと、ダイヤが駆け出した先には、黒く丸い穴が突然出現した。
ダイヤはみるみるうちに、穴に足を取られ、体をも引きずり込まれる。
これも、邪悪な雰囲気が感じられた。

「わああ―――っ!」

ダイヤは穴にのみこまれた。
暗い空間をもがいて、暴れ出す。まるで、水の中で溺れているかのように。

「フハハッ…。そうか、苦しいか」

「うぐっ…。やめろぉー…うっ」

目の前には、この前夢に出た、邪悪なポケモンがいた。
こちらを笑って見ている。不気味だった。

そしてダイヤは気が遠くなった。
更に真っ黒な世界へ運ばれるかのように…。

――…


この夢は…一体何だったのだろうか。
ダイヤにとっては“悪夢”にも見えた。
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しっぽ #19★2008.12/10(水)18:04
★第十八話★ ―悪夢を見る理由―

「そしてあの時、みんなの心を悪夢に包もうと考えたわねっ…。
 アタイ達は、今はもうそんな気にはなれないわ」

「…ふむ。なるほどな」

話は2時間程も続いた。
クロとレナは今、この事を打ち明け、だいぶ心が落ち着いたようにも見えた。
“悪夢”とは、何を指しているのだろう。

目を覚まして、何気に聞いていたダイヤには心当たりがあった。


――…

「…フフッ。そうはさせない…」

 シュババ―――ッ

「わぁ―――っ!」



「フハハッ…。そうか、苦しいか」

「うぐっ…。やめろぉー…うっ」

――…


あの時見た夢は、突然邪悪な雰囲気の世界へ引きずり込まれたかのよう。
ダイヤはそれを話してみた。勇気を振り絞って話してみた。

「…間違いねぇ。それは恐ろしい“悪夢”だぜ」

クロは答えた。ダイヤが見た夢は“悪夢”だった。
今思うと、ダイヤはゾッとしてならない。怖かったのだ。
近くにいたパール達も気になって寄ってきた。

「時間の停止が起こると、悪夢も同時に広がる。
 そして、みんなに恐怖が襲いかかる」

空は未だに真っ暗で真っ黒。時は停まったまま。
ただ、光は薪の火が灯るだけ。寂しい風景だ。

「だいぶ深刻化しているんだな。…災害の被害が。しかし、塔に玉を戻せば…」

ヒゲおやじはそう口にしたが…。

「やってみたら?」

レナは口を挟んだ。辺りは一瞬にして静まり返る。
そして黙って盗んだしらたま≠差し出す。

「えっ?」

サスケは声をもらす。
今まで玉を取り返し、塔に収めることを考えてきたのだから、みんな気になっていた。

「しらたま≠ヘ返す。先ほど優しくしてもらった礼だ。とりあえず空間の塔に行くんだな。
 まあ、いずれ分かるだろう。その玉の本当の使い道…が」

チェリーは一歩前に出て、しらたま≠受け取った。
クロとレナはこれ以上語ってはくれなかった。
だが、今の話を聞いて、2匹は心が落ち着いたかのように見えた。
何だか楽になったらしい。何故だろう。不思議だった。
そしてクロとレナはこの場を足場に去った。

そして、ダイヤが見たあの“悪夢”は何を指しているのだろう。
あのかわいそうな男の子が、不気味なポケモンが、目が覚めた今でも気になってならなかった。
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しっぽ #20★2008.12/16(火)16:01
★第十九話★ ―再開―

“いつまでも、友達でいようねっ!”

「これで空間の塔は元に戻るわ。
 早く、思い出の空間の塔を復活させなきゃ…」

チェリーはダイヤ達の前に出て、急いで細い暗い道をしらたま≠担いで走り抜けた。
その時彼女の頭の中では、以前の思い出が次々と浮かぶのであった。
これで、思い出が形として残る。これで、安心できる。とても嬉しかった。


「空間の塔が見えてきた!」

目の前には、崩れかけてはいるが、塔らしきものが見えた。
間違いない。あれは空間の塔だ。

「あれ?誰かいるみたい」

塔の前に、1匹のキルリアが塔を見て佇んでいた。
チェリーには見覚えがあるシルエット。チェリーはすぐに誰か気づいた。
するとキルリアはこちらを振り向いた。

「あららっ☆チェリーちゃん…かしら?」

「リナー!会いたかったよぉ〜!」

チェリーは猛ダッシュして、キルリアのリナの元に駆けつけた。
また、リナも同じく、チェリーに向かって駆けていく。
2匹は友達だという。お互い泣いて、お互い心配だっだと話した。
そう、2匹は空間の塔を前に再開を果たしたのだ。

「やっと会えたよ…ううっ!」

「良かった良かった。無事再開だな」

サスケは嬉しそうに見ていた。今まで暗い時が多かったけど、今は何だか嬉しくて…。
ダイヤだって、パールだって、そしてヒゲおやじもフレウスだって、思うことは同じだった。
本当に再開出来て…良かった。

「早く塔にしらたま≠収めよう!」

みんなはあちこちに散らばった塔の破片を拾い集め、塔を出来る範囲で修復させた。
見た目はもろい塔。それでも、やはり立派な空間の塔だ。
そして、残るはくぼみにしらたま≠収めるだけ。

「これで、思い出の空間の塔が直る。形に残る。
 そして、世界も少しは良くなるはず…」

みんなが見守る中、チェリーは心に思いを持ち、塔のくぼみにしらたま≠収めた。

 … … …

しかし、何も起こらない。
暗い空は晴れることなく、ゆがみによる木がなぎ倒される現状がおさまる気配もしない。
ただ、不吉な空気が漂い、むしろ悪化しているようだ。

「そ、そんな。塔は形を取り戻しても、友達のリナと再開しても…。
 世界のゆがみや災害はおさまらないなんて…」

「ま、待ってよチェリーちゃんっ☆他に原因があるんじゃないかなぁ?
 …ねっ☆元気出してよぉ〜」

リナは必死でチェリーを励ました。チェリーは泣いている。
――何で世界の災害はおさまらないの?何をすればおさまるの?
ただ、そう疑問を投げかけるだけだった。
すると、ヒゲおやじはハッとした表情でつぶやいた。

「うむ。しらたま≠ニもう1つの玉、こんごうだま≠燗モノ収めれば良いかもしれんな」

確かに、こんごうだま≠ヘまだ盗まれっぱなしで、まだ塔には無いはず。
こんごうだま≠燗モノ収めれば、ひょっとしたら…。
みんなはそう思った。きっとそうに違いない。

「…でも、肝心なところこんごうだま≠ヘ今、誰が持っているのかなぁ…?」

「我が持っている」

パールが言葉を発した時、近くの草村の茂みから声がした。
声の主はダイヤ達のメンバーではない。また、聞きなれない声である。

「誰だ!?姿を現せ!」

 ―――ガサッ

「我の名はミカルゲ。こんごうだま≠盗んだのは…我だ!」
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しっぽ #21☆2008.12/14(日)16:26
★第二十話★ ―VSミカルゲ―

「我が確かにこんごうだま≠盗んだ」

なんと、こんごうだま≠盗んだのは、ここらでは見かけないミカルゲだった。
背筋が寒くなる。とにかく怖い。

「な…何故奪ったんだ!」

サスケは思い切って問う。だが、ミカルゲは黙っている。
このまま聞いてても、全く答えてくれる気配はない。

「お前のせいで…!言うんだ!タネマシンガン!」

 ―――シュババ…

無数の種が、ミカルゲに向かって飛んでいく。
茶色い砂煙が舞った。攻撃は力強かった。

「くっ…。あくのはどう!」

 ビシャ―――…

今度はダイヤ達に攻撃が来た。ダイヤ達は慌てて避ける。また砂煙が舞う。

「私も止めます。いわなだれ!」
「ワシも…エナジーボール!」
「ほのおのうず!」

「あくのはどう!」

そして、何回も攻撃のやり合いは繰り返された。
当てようと攻撃をしては避けられ、そしてまた攻撃をする――
しかし、これではキリがない。

「はっぱカッター!」

チェリーは力を振り絞り、頭の葉を振ってはっぱカッターを繰り出した。
葉は無数に飛び、見事ミカルゲに命中し、そしてミカルゲは近くの木に叩きつけられた。
木には数枚の葉が刺さっている。ミカルゲはただ目を大きくし、ゾッとしていた。

「あなたが盗んだ理由を話さないと…思い出のある空間の塔も、世界もこのままなのよ!」

チェリーは強く気持ちを持っていた。
何故こんごうだま≠盗んだのか。何故世界は狂っているのか。
そして、何故空間の塔は復元できないのか。
ミカルゲなら…間違いない。絶対に知っているはず。チェリーは諦めなかった。

「――くっ…。今から全て話す。
 …実は、世界を救うために必要だから、玉を盗んだ」

「世界を救う…ため?じゃあ塔から玉が離れると世界が乱れるのは嘘だと言うのか…?」

「ああ、もちろん。そしてそれはダークライが作った嘘だ」

「ダークライ…」

ダイヤ達は一瞬にして騒然とした。
はたして、ミカルゲが言う話は本当なのだろうか。
そしてダークライとは一体何者なのだろうか。
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しっぽ #22★2008.12/16(火)15:48
★第二十一話★ ―新たな説 そして世界を救う方法―

みんなはミカルゲに注目した。
ミカルゲは一度黙り込む。そして語り出した。

「我は…世界を救いたかった。でも、ダークライというポケモンが敵にいた。
 世界を暗黒な世界に変えたくて、邪悪な力を手に入れたくて…奴は嘘を作った。
 玉が塔から離れると時空がゆがみ、災害が起こると伝えられた。
 しかし、それは違う。玉が盗まれる前からゆがみは生じていた。
 だから“玉が塔から離れると時空がゆがむ”…それは嘘」

ミカルゲは一気に話した。どこか疲れている。
辺りがいつもより暗くなる。災害が進んだ影響が増している。
ダイヤはうなずき聞いていた。確かにこんごうだま≠盗まれる前から災害は起きていた。

「なるほど。それで盗んだのか。確かに…お前さんが言うことはつじつまが合う」

「じゃあ、ミカルゲは世界を救う方法は知っているのっ?」

「ああ、そうだ。まずは玉を2つ揃え、時空の狭間に行くんだ」

「空間の狭間…?」

ダイヤ達はミカルゲが話す新たな説を、驚きつつも聞いていた。

「確か、丘の上に1本の大樹がある場所のどこかに…な」

「丘の上。1本の大樹…思い出した!」

パールは思い出した。空間の塔へ初めて向かったときに訪れた場所だ。

「そして、時空の狭間へ行くためには…カギが必要だ。ピンクと水色が混じったカギ…」

「そういえばワシはそれらしきカギを知っておるぞ。なあ、フレウス?」

「ああ、あの時のカギか…」

ヒゲおやじとフレウスはカギを見たことがあるらしい。
2匹はお互い見合ってうなずいた。話は連鎖するように続いた。

「じゃあ…世界を救うには、こんごうだま∞しらたま≠揃え、
 大樹のある丘へ行き、そしてカギを使うと、道は開くの?」

「まあな…」

実際、ミカルゲの話す内容は本当か分からないが、ダイヤ達は信じていた。
時間が無い。情報が無い中、今はそれしか頼ることができなかった。

「みんな、ミカルゲの話にかけてみないか?ワシとフレウスはカギを取りに行く。
 その間にダイヤ達はこんごうだま∞しらたま≠2つ持って、丘へ向かうのじゃ!」

「OK!じゃあオレ達は丘へ向かうよ!」

「…我も行く。話が違ったら我は…。急ぐぞ!」

ダイヤ達は二手に別れて、それぞれの場所に向かった。
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しっぽ #23★2008.12/20(土)13:13
★第二十二話★ ―つれて進む時空のゆがみ―

ダイヤ達は2つの玉を抱え、大樹が1本ある丘へ向かっていた。
メンバーはダイヤとパールとサスケ、それにチェリーにリナ、そしてミカルゲ。6匹は道を歩いた。

「リナ…本当に会えて良かったわ!」

「アタシだって…嬉しいわ」

リナは赤く顔を染めて、チェリーとの再開に喜んだ。
彼女は実は恥ずかしがり屋。そのため、いつも気を紛らわせ、その事を隠していた。

「ふふ…リナったら相変わらず恥ずかしがり屋なのね」

「ギクッ…。チェリーちゃんっ☆」

「あはは…」


しかし、喜んでいる暇は無かった。
歩く道に黒い霧がかかり、視野も悪くなる。光がないと怖くて進めない。

「アタシに任せて!」

リナは『でんきショック』で電気を作り出し、『ねんりき』を使い、光の玉を作って辺りを照らした。

「あたし思ったけど…ミカルゲ、あなたの名前は?」

「我の名はレイ。よ、よろしく…」

ミカルゲのレイは、初めて出会った時と性格はかなり違っていた。どこか大人しかった。


「おう!今は急がないとな。丘まではもう少しで…」

 ズズズ―――…

突然、地鳴りが静かな暗い道に響いた。
足元が揺れている。地震か…?

 ガッシャ―――ン!

地面に亀裂が入り、地割れが起きた。

「わあぁ―――っ!」

リナとパールとダイヤは地割れに巻き込まれ、小岩と一緒に中に落ちてしまった。
これでは仲間が引き離されてしまう。

「つるのムチ!」

 ―――バッ

チェリーの『つるのムチ』にパールは掴まった。そしてリナ、一番下にダイヤがしがみついた。
サスケとレイはチェリーの体を引っ張り、ダイヤ達を上に引き上げようとした。
しかし、力が、体力が保たない。

「みんな、頑張って!」

「諦めないでっ☆大丈夫よ!」

「しかし、体力が保たないぜ…」

大分時間が経ち、ダイヤ達の体力は限界を超えていた。
このままでは、みんな落っこちてしまう。

 ズズ―――…

チェリーの足は次第に引っ張られて崖に近づく。

「我々はここまで…か」

「わたし、もう…だめ…」

 サッ…

ムチが緩み、チェリー達はそのまま勢い余って、ダイヤ達と一緒に真っ逆さまに転落した。
みんな力尽きて、声を上げずにいた。

「…(ボク達、もう終わり…なのかな)」
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しっぽ #24★2008.12/21(日)13:49
★第二十三話★ ―ダイヤの記憶 そして仲間―

ダイヤ達が落下したとき、ダイヤは今までの記憶が流れるように蘇った。
その時の記憶は、ダイヤがまだ人間だった時の記憶だった。


――…

「ちぇっ。アイツ居なくなったからつまんねーや」

「数日前から行方不明だってよ?ウチらを恐れて逃げちゃったんじゃね?」

「ふん。あんな奴、居なくなって正解さ!」


「…(ああ、もう放っておけない。ボク、助けたいよ!)」



「…みんな、どこ行ったのかな」

「…あなた、友達に会いたい?」

「…うん」

「よく言いました。今から独りぼっちのあなたに、希望を託します。
 ポケモンの世界を救うことで、友達と再開できるでしょう。
 友達を…ポケモンの世界を救って下さい」

――…


「…ハッ!」

ダイヤに、今まで頭の隅に閉ざされた記憶が蘇った。人間の時の記憶がハッキリ思い出せる。
ダイヤは思い出した。誰かを救うために、この世界へやってきた。
そして、世界を救えば、友達と再開できる。

 パアァ―――…


「ダイヤ、ダイヤ起きて!」

「うわわっ!」

「ダイヤ…無事で良かった…!
 わたし達…誰かに助けられたみたいよ!」

ダイヤは広い草原にいた。みんな無事だったようだ。
しかし、近くには崖らしいものは無かった。一体誰が助けたのか…。

真っ先にパールとサスケが心配してくれた。何故か2匹は涙を浮かべている。

「ダイヤは大事な大事な仲間よ!良かったわ…」

「パールにサスケ…」

「ふふふ。良かったわねっ☆」

ダイヤとパールは抱きしめて泣いた。もちろん嬉し泣きである。
サスケも嬉しくて笑っていた。
チェリーとリナは3匹を囲み、隅でレイは温かく見守っていた。

「生きていて…良かった」

みんなはダイヤを心配していた。大事な大事な仲間だから…。


「あ、目の前に丘が…」

霧が晴れ、視界が良くなったその先には、立派な1本の大樹が丘にあった。
まさしく、あの時見た大樹。

「行こう!丘の上に!」

ダイヤ達は丘に向かった。
世界を救うために。そして友達と再開するために。
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しっぽ #25☆2008.12/23(火)12:09
★第二十四話★ ―クロとレナ 再び―

「丘だわ!あのときの丘よ!」

ダイヤ達は丘を半分ほど駆け上がった。
しかし、黒い霧が晴れたものの、今度は辺りが急に暗くなった。
あの時の星空は当然、もう無い。だいぶ深刻化している。世界の崩壊が…。

「何だか…暗いわね。早く時空の狭間を見つけないと」

「悪いが…そこまでだ!」

 ―――ババッ

「お久しぶりだな。ダイヤ」

大樹の中から、クロバットのクロと、ヘルガーのレナが飛び降りてきた。
ダイヤ達は一歩後ろへ下がる。警戒した。

「あの時は親切にしてくれてありがとう。でも、アタイ達…役目があるの。
 アンタ達を倒すという役目が…!」

クロとレナは黒いオーラを出して言い放った。
邪悪な感じが伝わる。怖かった。

「ボスから邪悪な、最強の力をもらった。これならお前らを…倒せる!」

「…我は必ずお前達を倒す」

レイは一歩前に出た。

「げげっ!?レイ、お前も一緒だったのか!?
 一緒に世界を支配するのに裏切りやがって…」

クロとレナは、レイを睨みつけた。
なんと、元々レイはクロとレナの仲間だったらしく、同行してたらしい。

「こんごうだま∞しらたま@シ方とも我々が手に入れた。
 我は決心した。お前達には悪いが…裏切って世界を救う」

「レイ、仲間だったって本当かy…」

「うるさい!エアカッター!」

クロは話を切り出し、『エアカッター』を繰り出した。
白い刃が無数に飛んでいく。威力は前回よりはるかに上回っていた。

「うわっ!」

「アタイも行くわ。かえんほうしゃ!」

 ―――ボウゥ

レナの技は飛び火して丘がオレンジに燃え始めた。辺りは炎の戦場と化した。
このままでは負けてしまう。
持てる力を使い、一斉攻撃を始めた。

「みずのはどう!」
「ほのおのうず!」
「タネマシンガン!」
「はっぱカッター!」
「でんきショック!」
「あくのはどう!」

 ―――カッ

しかし、クロの起こした風で、攻撃は全てかき消されてしまった。

「そんな大技でもかなうわけがない。これぞ最強の力だ!ハハハっ!」

ダイヤ達にはこれ以上の大技は無かった。
ただ、クロとレナが笑っているのを見ているしか無い。悔しかった。

「――くっ。我々、ここまで…か…」
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しっぽ #26★2008.12/24(水)12:38
★第二十五話★ ―究極技―

「ダイヤ!パールにサスケ!これを使うんだっ!」

 ―――ジャリ…

フレウスが丘の向こうから現れた。
ダイヤに向かって3つの玉、青と赤と緑の玉がついたカギが投げられた。
そう、あの必要としていたカギである。

「そのカギには、時空の狭間を開くほかに、究極技を使うのに必要なエネルギーが込められている。
 お前達はまだ体は小さいが…きっと使いこなせる!使うんだ!」

「ありがとう!フレウス!」

あのカギには、究極技のエネルギーが込められているらしい。
ダイヤとパールとサスケはカギを3匹で持ち、体にエネルギーを溜めた。目をつむって集中させた。
すると3匹の体から、とてつもない黄緑色のエネルギーが、燃えるように現れる。

「力が…エネルギーがみなぎる!
 今だ!ハードプラント!」
「ブラストバーン!」
「ハイドロカノン!」

「よし!そのまま集中して当てるんだ!」

 ズボボォ―――――

強大な力が技の塊となり、クロとレナに放たれた。
言葉では言い表せれない。とにかく凄い迫力だ。

「ぐあぁ―――――!」

クロとレナはその場に倒れた。だいぶ体力を消耗したらしい。

「やった!わたし達…やったのね!」

「…うぐぐ。まだ終わらせない!」

クロが立ち上がった。続いてレナもよろめきながら立ち上がった。

「アタイ達は絶対に倒す!特にレイは…な」

「おい、辞めr…」

「レイ…消えろ―――!」

 シュバババ―――

2匹は渾身の力で『シャドーボール』を撃ち放った。
レイに対しての憎しみは大きなものだった。

「…我はここで終わりだ。
 ダイヤ達…その究極技を秘めたカギを丘の天辺で使うんだ。そうすると時空の狭間が現れる。
こんごうだま≠ニしらたま≠その先にある神殿に収めれば、世界は救われる。
 さあ、我を置いて…行くんだ!」

「レイ…避けろ!」

「うう…早く行くんだっ!」

「そんな!見捨てるなんて…!」

“見捨てるのは、絶対に…できないっ!”

「わたしが攻撃を打ち消す!はっぱカッター!」

「アタシだって!でんきショック!」

チェリーとリナの思い。
その思いを持って、チェリーとリナは攻めに出る。そして攻撃は互いにかき消された。
周りに大きく衝撃波がはしる。

「ヒゲおやじさん…!」

ヒゲおやじも丘の向こうから駆けつけてくれた。

「ワシ達は相手をせき止める。
 ダイヤにパールにサスケ、そしてレイ。4匹で時空の狭間へ行くのだ!」

「えっ…ヒゲおやじさん達は?」

「ワシ達は大丈夫。さあ、カギを持って丘を登るのだ!」

「うん!絶対に世界を救うからね!」

ヒゲおやじ達はクロとレナの暴走を止めようと戦い、
ダイヤ達4匹は丘の天辺、大樹の真下へ向かったのであった。
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しっぽ #27☆2008.12/26(金)14:21
★第二十六話★ ―世界の崩壊の危機 そして別れ―

「天辺に着いた…」

ダイヤが下を見下ろすと、チェリー達がクロとレナをせき止めるように戦ったいた。

「ギガドレイン!」
「かみなりパンチ!」
「サイコキネシス!」

「クロスポイズン!」
「かみなりのキバ!」

まさしく、やり合いだった。当ててはやり返す。まさにその連続。
やはり、平和を取り戻すしかない。

「ダイヤ!早くカギを天に向けるのじゃ!」

「分かった!」

 ―――ガチャ!

天にカギを向けると、黒い空に亀裂が入り、七色の光が差し込んだ。
光の中から、赤と青と黄の3色の光の粉を散らした大きな鳥が現れた。
まるでサンダー、ファイヤー、フリーザーが三位一体となったかのよう。とてもきれいだ。

「みんな、乗って!」

ダイヤの合図を聞き、パールとサスケは大きな鳥に乗った。

「…レイ、待ってくれ!」

クロが混戦の中、レイに叫んだ。

「…何?」

「たとえ俺らが滅んでも…まだボス、ダークライがいる。以上だ」

そう言い残して、クロは倒れた。レナも悪あがきしてすぐに大人しくなった。
また、チェリー達もボロボロで体力は限界にあった。息を切らせている。

「早くレイも乗れよう!」

「ああ。…――!」

レイは目を大きくして、立ち止まった。
なんと、丘の周りの地形がなくなっていたのだ。
紫のうねった光に飲み込まれ、あとは丘しか残っていない。

「やばい!災害が進んだ結果、この世界が、この星が消滅する!」

「…な、なんだって!?」

徐々にうねった光が地形を飲み込む。
チェリー達は飲まれまいと、慌てて丘の天辺まで駆け上がった。

「みんな、早く乗って!」

「ダメよ!そんなにたくさん乗れないよ!」

大きな鳥は、ダイヤにパールにサスケ、そしてレイの4匹を乗せるのが限界だった。


「…わたし達、ここでお別れね」

「ど、どういうこと?」

チェリー達はその場から動こうとしない。立ち止まっていた。

「ワシ達はここまで頑張って力をやることができた。ワシ達にできるのはここまでだ」

「い…いいのよっ☆寂しくないわ!短い時間だったけど、今までありがとう…」

「さあ、私達はかまわず、乗ってくれ。キミ達なら必ず世界を救うはずだ」

チェリー達は最後まで笑顔で送ってくれた。リナは泣きながら送ってくれた。
取り残されると、うねった光に飲み込まれ、存在自体無くなってしまう。
でも、チェリー達は一切寂しい顔はしなかった。

「分かったよ。ボク達、必ず世界を救うよ!」

 シュイイ―――ン…

「絶対に、絶対にやり遂げてよ―――っ!」

大きな立派な鳥は飛び立った。

 パアア―――…

振り返ると、すでにチェリー達の姿はなく、ただ、紫の光が広がるだけ。

「ダークライ…か。
 ダイヤ達…絶対に世界を平和にしよう!」

「うん!絶対に、絶対に平和にしよう!」

レイはダークライという言葉を何回もこぼしたいた。
ダイヤ達は、世界を平和にするため、そして友達と再会するために七色の光の中を行くのであった。
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しっぽ #28★2008.12/30(火)13:15
★第二十七話★ ―時空の狭間―

「見えてきた!時空の狭間だ!」

 シュババ―――ッ

紫の世界から、一気に薄ピンク色をした雲の世界に飛び込んだ。
雲には電気がはしり、バチバチいわせている。
空はピンク色。そしてレイの言うとおり、神殿が見えた。

「無事到着か…。初めて見たが…」

大きな鳥は雲の上に着地した。ダイヤ達は恐る恐る降りた。

「わあ…フワフワよ!」

「って――…。すごい高いや!」

目の前には鼠色の神殿があった。高さは首を真上に上げないと見えないほど。
所々ヒビが入っている。空間の塔と同じく、かなりもろいようだ。
ダイヤ達は中へ入ることにした。


「ねえ、レイ?前から疑問に思っていたけど…ダークライって何なの?」

「ダークライは悪夢を見せるポケモン。世界を暗黒化させようと企んでいる。
 そして、ダークライは我を狙っている」

「…ど、どういうこと!?」

広い神殿の中で、みんな一度足を止めた。
レイにかすかに光が当たった。薄暗く弱い光。

「我はダークライの野望を止めようとしてるからだ。
 そして大分前に仲間として同行してたから…。そして裏切ったから…。
 我は裏切ってでも世界を救わなくてはならない」

「なら急ごう!早く奥へ行こう!」

相変わらずせっかちなサスケは駆け出した。パールも後を追う。

「…レイはえらいよね。
 世界を救う。それが当たり前のように頑張れるから…」

「…」

レイは黙っていた。

「ボクも世界を救いたい。ボクは大切な友達と再会するために…」

「…そうか。頑張ろうな」

レイは顔を上げた。
日が明るく差し込んできた。
ダイヤとレイも急いで駆け出す。

目指すは、神殿奥地。もう少しだ。
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しっぽ #29☆2008.12/31(水)15:00
★第二十八話★ ―時空を司る神―

ダイヤ達は大広間に出た。
天井が抜けていて、空を一望できるほどの広さ。
壁全体は壁画である。時間と空間について描かれたものらしい。

「わぁ…。すごい壁画ね…」

「ああ。時空を表す壁画だ」


 ズズ―――ッ…

「わわっ!揺れが始まったぜ!」

足元が浮き出し、縦に揺れる。まるで突き上げられる勢い。
壁画や天井から破片がボロボロ崩れ落ちる。
すると上から異様な空気が漂ってきた。空の雲が渦巻いている。

 ―――にゅっ…

「グバァ―――ッ!」

「シャァ―――ッ!」

渦巻いている雲の中から、2匹の巨大なポケモンが現れた。
お互い睨み合い、激しくぶつかり合う。

「…――!あれは…ディアルガとパルキア。
 間違いない。時空を支配する、伝説のポケモンだ」
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しっぽ #30★2009.01/03(土)13:46
★第二十九話★ ―玉の隠された力―

空は次第に紫に暗くなる。

「シャァ―――ッ!」

 ―――ガッ

パルキアが腕のようなものから、カッターらしき攻撃が放たれた。
ディアルガに命中。態勢を立て直す。

「グァー…」

衝撃波で神殿のあちこちが崩れ始めている。
何だかディアルガとパルキアは苦しそうにも見えた。

「あのポケモン達は暴走している。
 早くあのポケモン達を静めなくては…」

「じゃあボク達が戦うよ!」

ダイヤは暴走を止めようと考えた。

「待て!あのポケモンとはレベルが明らかに違いすぎる。
 あの玉を使うのだ。こんごうだま≠ノしらたま≠使えば落ち着きを取り戻す」

レイはこんごうだま∞しらたま≠取り出した。
すると2つの玉は点滅し、光を放った。
その光は、ディアルガとパルキアに向かって放たれた。

ディアルガにはこんごうだま≠フ水色の光が、
パルキアにはしらたま≠フピンク色の光が届く。

 パアア―――…


すると、2匹は開放されたかのように落ち着きを取り戻した。
あの玉は、神の暴走を止める力が秘められるのだ。

「…私達を怖れず、止めてくれてありがとう」

ディアルガは礼を言った。パルキアは辺りを見渡した。

「…しかし私達が助かっても、まだ時空にゆがみが生じているようだな」

「我が思うに、多分ダークライがまだ…」

「ボク達がダークライを倒すよ!」

ダイヤ達は強く言い張った。
ディアルガとパルキアは彼らの意志に驚く。

「そうだな。後はダークライさえ止めて、
 その玉を神殿の奥地のある場所に収めれれば、世界を救える」

「私達も時空を破壊するダークライを止めたい。
 …私達はこの不安定な神殿を軽く修復してから後で駆けつける」

「ディアルガにパルキア…ありがとう。心強いよ。
 みんな行こう!神殿奥地に!」

そう言い残し、神殿の階段を、ダイヤ達が駆け抜ける。
上から眩い光がもれる。頂上まであと少しなのだろう。

「絶対に…絶対に平和を取り戻そう!」

いよいよ最終決戦を迎えようとしていた。
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しっぽ #31★2009.01/05(月)14:25
★第三十話★ ―ダークライ―

「…ここが神殿の奥地であり、頂上なのか」

ダイヤ達は神殿の奥地にたどり着いた。
柱が何本か並び、辺りはピンク色の空と雲がある。
神殿というより外にいる感じだ。

「あ!あそこの壁画にくぼみが!」

パールは真正面に指を指した。
目の前の巨大な壁画には、トライアングルのような模様が描かれており、
その角のうち、2つのくぼみがあった。
トライアングルの真ん中には、赤い丸い模様が描かれていた。
何を示しているのだろう。

「おそらく、そのくぼみにこんごうだま∞しらたま≠はめれば…!」

「レイ、みんな…ボクがやってみるよ!」

ダイヤが玉を持ち、駆け出そうとしたその時。


「…その先は行かせないッ!」

 ―――フッ…

ダイヤの目の前の地面に、不気味な影が浮かび上がってきた。
中から黒いポケモンが現れた。鋭い目をしていて怖い。

「お、お前誰だ!?」

「お前達が最も恐れている…ダークライだ。
 …レイ。お前とは久々だな」

「ああ…」

正体はなんと、ダイヤに悪夢を見せていた、あのダークライだった。
ダイヤの脳内に、あの悪夢の記憶が蘇った。
夢に現れたポケモンはダークライ。あのポケモンだったのか。

「レイは私と世界を作るのを裏切って逃げた。
 …そして今、世界のために私の敵となって現れ、向き合って戦おうとしている」

「まあな。しかし、我は負けない!」

レイは元々ダークライと世界を狂わせようと動向していた。
あのクロとレナと同じ仲間として…。
しかし、何故かレイだけは平和のために頑張っている。
今はそれを考える暇は無い。戦うのみだ。

「フフッ。負けるのはお前達だ。シャドーボール!」

ダークライは黒い塊をレイではなく、ダイヤ達に向け放った。

「…――!避けろ!」

 ズゥ―――…

「…きゃあ!」

「うわぁ―――!」

だが、ダイヤ達は避けられなかった。
3匹は塊の勢いにやられ、ピンク色の空の中を落ちていく。

「ああっ…」

「フフッ。これで邪魔者は消えた。
 レイ。お前を仲間にして間違いだった。
 そして今、仲間を失ったお前はこれで…終わりだ!」

「わざとダイヤ達を…。
 ダークライ。よくも大事な仲間を…許さない!」

ダークライとレイは、これまでにない目つきに口調に変化した。
きっと2匹は大きな何かがあったに違いない。

その中を…ダイヤ達は落ちていった。
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しっぽ #32☆2009.01/05(月)15:24
★第三十一話★ ―クレセリア―

ダイヤ達は真っ逆さまにピンクの空へ落ちた。
まさに、あの時の地割れのように、転落した。
きっと助からない。ダイヤ達は半ば諦めかけていた。

“ここで諦めては…いけません!”

 パアァ―――…


「…こ、ここは?」

サスケは目を開けた。ピンク色の空を浮いている。
気づくとダイヤ達は、何かにしがみついていた。

「良かった…。私の名前はクレセリアです」

「あ、あの…夢で出会った…?」

「ええ、そうです。以前ダイヤさんの夢で出会いましたね。今回は現実で出会えて嬉しいです」

ダイヤ達を救ったのはクレセリアだった。
クレセリはホッとした表情を見せる。

「実はあの時の地割れでもお助けしましたの」

「ええっ!?クレセリアさんが…!?」

「クレセリアさん…本当にありがとうございます!」

ダイヤ達は頭を下げた。
しかし、あの時助けたのもクレセリアだったとは、誰も想像していなかった。


「私にはダークライをやっつけるという使命があるのです。
 …私はそのためにこの場へとやってきました。
 そして目的が同じあなた達と合流したのです」

ダイヤ達は黙って話を聞いていた。
ここにいる、クレせリアを含む4匹は、ダークライを倒したいために集まった。
ダイヤ達はそんな存在なのだろう。

「今はダークライを倒すことに集中いたしましょう。行きますよ!」

クレセリアはダイヤ達3匹を乗せ、上昇した。雲は怪しく光り出す。
早くレイとダークライのいる神殿奥地に戻らないと…。ダイヤ達は急いだ。
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しっぽ #33★2009.01/08(木)16:33
★第三十二話★ ―レイ―

「あくのはどう!」

「そんなものは効かぬ…シャドーボール!」

 ―――ズボォ…

「邪悪な力がみなぎる…フハハッ!そして私の力で…世界を暗黒に変える!」

「そんな身勝手な事…させるものかっ!」

レイとダークライはまだ戦っていた。激しい言い争いと激しい技のぶつけ合い。
だが、レイはだいぶ傷を負っていた。見ていて痛々しい。
でもレイはやられまいと立ち上がっては戦っていた。


「ダイヤ達も消えたところで、そろそろトドメを…」

「待てっ!まだ終わっていない!」

 ―――バッ

ダイヤ達はクレセリアに乗って、雲の中から勢いよく突き抜けて現れた。
雲が上へ舞い、ちぎれて消える。ピンク色の空で。
以前に比べると、ダイヤ達の威勢は増していた。もう負けやしない。そんな勢いだ。

「ダークライ。いい加減にやめたらどうですか?私は許しませんよ!」

クレせリアは本気だ。態勢を立て、いつ来ようが対応できるようにする。
ダークライはいやな顔をする。中でもクレセリアは厄介なのだろう。
そしてお互いを結ぶ関係があるはず。そう思った。

「ちっ…。生きていたか。しかもクレせリアまで…。
 これでも食らえっ!はかいこうせん!」

「我が止めr…」

「レイ!?」

 シュババ―――ッ…

レイは『はかいこうせん』の中に突っ込み、ダイヤ達の代わりに攻撃を受けた。
光はまぶしく、レイの姿は見えない。レイの行動はあまりにも無謀で衝撃的だった。

「レ―――イっ!」

サスケは思わず叫んだ。
目の前で仲間が犠牲になってダイヤ達を守る。レイの行動が信じられなかった。

「うぐぐ…。よくも、よくもダイヤ達を…!
 ダークライ、ここまでだッ!おきみやげ…」

 スウゥ―――…

「力が…力が抜ける。邪悪な力がああっ…!」

ダークライの力が『おきみやげ』の力により、徐々に抜ける。黒いオーラも薄くなる。
レイは自分の体を犠牲にダイヤ達を守り、そして自分の力を犠牲にダークライの力を失わさせた。
レイはその場に倒れた。ダイヤ達は心配になって寄り添う。
彼の行動に、みんな衝撃を受けた。強く胸に残った。

「レイ…しっかりしてよ!起きてよ!」

しかし、レイは起きない。むしろ起きる様子が伺えない。

「まさか…レイは…!?」

「…レイ。何であそこまで身を犠牲にしてまで…あたし達を守ろうとするの?
 あたしだったら…あんなこと出来ないわ。…グスッ」

みんな静かにレイを見ていた。悲しくなってきた。自然と涙が流れてくる。
あのダークライが憎い。絶対に倒してやりたい。
そんな思いが、ダイヤ達の心に込み上げてきた。ダイヤは静かに顔を上げた。

「ボク、決めたよ!
 …ボクは大事な仲間のレイの思いも、そしてチェリー達の思いものせて、必ずダークライを倒す!
 そして世界を平和にして、そしてあの友達と再会するよっ!」

ダイヤは強気になって言い張った。
絶対に、絶対にやり遂げてやる!

「…フフッ。…フハハッ!
 “友達と再会”だと?…お前、何か勘違いしていないか?」

「えっ…?」

ダークライは微かに笑っていた。同時に闇の風が吹き、不気味である。
そしてダークライは目を光らせ告げた。

「今言うことは本当だ。疑うな。
 お前の再会相手、つまりお前の友達は…そこに倒れているヤツ。つまり…レイだ!」
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しっぽ #34★2009.01/24(土)17:16
★第三十三話★ ―友達の正体―

「レイ…キミが…っ!」

ダイヤは驚き声にした。
いくらサスケとパールが、レイをさすっても返事をする気配もしない。
クレせリアは眺めて様子を伺う。

「レイは気絶している。…いや、悪夢を見ているのだ。かわいそうにな…」

「ダークライ!お前よくも…」

「お前も同じ悪夢に包まれろ!」

 ―――バババッ!

「わああ―――っ!」

ダークライはまた体から不気味なオーラを出し、黒い塊をダイヤに投げた。
『シャドーボール』ではない。『ダークホール』だ。
素早い影がダイヤに忍び込んだ。

「ダイヤーっ!」

「ダークライ!やめてっ!」

ダイヤに黒い塊の攻撃が命中し、眠気に襲われる。
クレセリアも思わず声を上げた。
ダイヤは次第に目の前がかすれ、倒れ込んだ。

「ダイヤ!しっかりしろ…!」

声が微かに聞こえる中で、気が遠くなる。意識が…。



――…

「ダイヤ…。ダイヤよ起きてくれ」

「…ふああ。あれ?ここは?」

ダイヤは暗い世界にいた。辺りは真っ黒。
その中に、ダイヤを呼ぶポケモンが1匹いた。

「レイだ。分かるか?
 どうやらヤツの仕掛けた悪夢にはめられたみたいだな」

その正体は、あのレイだった。

「良かった…!レイ、無事だったの…!
 …レイ?レイは何であの時ボク達を命を懸けてでも助けようと…?」

「お前は我の友達。そしてサスケ達は我の仲間だから。
 そしてお前が我の友だと、我は神殿に着いたときに確信した。
 “友達と再開したい”と…。あの一言を聞いて。
 そう。そして今言うのもナンだが、我はお前の…一番の友達さ」

「レイ…!」

お互いが友達だということが、今になって気づいた。
そしてお互い抱きしめ、喜んだ。嬉しかった。涙が溢れた。
たとえ姿が変わっても、記憶が消えかかっても、気持ちは変わらなかった。


「そういえば、レイ?
 何でレイはポケモンの世界に…?」

「我は逃げたかったのだ」

レイは急に声を出し、大人しくなる。
きっとダイヤには分からない、何か深い理由があるに違いない。
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しっぽ #35★2009.01/24(土)18:13
★第三十四話★ ―理由―

「我は…辛かったのだ」

 …――!

ダイヤの脳内に、あの記憶が蘇った。
まだダイヤとレイが人間だった時の事。
レイが数人の人にやられていた、心痛む記憶が。
徐々に蘇る。人間だったときの記憶が、全てが…。

「あの時、ダイヤだけは違った。ダイヤは我を助けようとした。
 しかし、それでも改善されない。寂しい日が続いた。
 そして我慢出来なくなり、我は姿を変え、この世界に逃げてきた…」

レイは語り出した。
聞いていてこちらが泣きたくなってきた。

「ポケモンの世界へ来たある日。ヤツがこう誘った。
 “私達と世界を暗黒に変えないか?”
 しかし、不安定になっていた我は見事に騙され、動向したのだ」

「…でも、レイ?
 いつ世界を救おうと決心したの?」

「不思議なのだが…次第に我は目覚めたのだ。
 “世界を救うべきだ!”
 それからヤツと、そして仲間のクロとレナとは縁を切った。
 …しかし、クロ達はかわいそうだ。我と同じくダークライのターゲットにされて…」

彼の話す言葉から、いくつものストーリーが感じられる。
ここまでとても長い道のりだった。
そしてレイはとても辛かったのだ。

「ダイヤ。お前がどういう気持ちで此処に来たかハッキリはしてないが、
 我をこの世界まで、時空を越えてまで追いかけてくれて…ありがとうな」

…――


 パアア―――…

そして眩しい光が差し込んできた。
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しっぽ #36★2009.01/21(水)18:05
★第三十五話★ ―最終決戦―

「ダイヤさん…!レイさん…!起きてください」

まだダイヤとレイが倒れていたとき、クレセリアは2匹を囲み、宙で舞を舞う。
光輝きながら、2匹に癒やしの光をかける。眩しい。

 パアア―――…

「…あれれ?ここは?」

「良かったー!目を覚ましたぞ!」

光に包まれ、ダイヤ、そして続いてレイが目を覚ます。
サスケは2匹を見て飛び跳ねて喜んだ。

「良かったです。悪夢から覚めて…」

クレセリアはホッと一安心した。


しかし――

「…――!
 おおっ!世界が変わり始めたぞ!」

ダークライが手を大きく広げた。
その先では、うねった暗い光が、この大空を包み飲み込もうとしていた。
あの光は…間違いない。チェリー達と別れた時と同じものだ。
ダイヤ達は危険を感じた。このままでは…飲まれてしまう!

「危ない!あたし達が飲み込まれたら…!」

「飲み込まれたら最後…生きては帰れない。
 フフフ…。とうとう世界が崩壊する!
 そして暗黒の世界…私の世界に生まれ変わる!」

ダークライの目つきが突然変わった。

「…――!?ダークライのすぐ後ろに壁画が…。
 早くこんごうだま∞しらたま≠壁画に収めなければ!」

「ボクが行くよ」

レイの横で、ダイヤは決心した。
とっさに玉を持ち出し、駆け出した。広い神殿を…。

「そうはさせるか!シャドーボール!」

「よせ!待つんだ!」

ダークライが塊を作り出した時、レイはすぐにダークライに飛びつきしがみついた。
突然のことなので手元が狂う。ダークライは攻撃を外した。
そしてすぐにレイを振り払った。

「まあ…よく逆らえるほどにも…」

「我は逃げ出した臆病者だった。しかし…今の我は違うっ!」

するとダークライはニヤリと笑い目を光らせた。

 シュッシュシュ―――

レイに構わず黒い手に邪悪な塊を作りだした。

「ええいっ!発射直前までに!ハードプラント!」
「ブラストバーン!」
「私もいきます!オーロラビーム!」

サスケとパールの体は、不思議なカギと光り共鳴するかのよう。
クレせリアは体を輝かせていた。

 ―――バッ

ものすごい音を立て、激しく煙が舞う。
しかし、あれほどの強力な技をぶつけたはずだが、ダークライには効いてない。
あれだけの攻撃を受けたはずなのに、構わず塊を作り上げる。
ダークライの表情は余裕、いや、面白いとでも言いそうな感じだった。

「…フフッ。今度こそ滅ぶがいい!
 最大パワーでシャドーボール!!」

塊の大きさはとてつもない。直径10メートルはある。
その大きな塊はもう、壁画の前にたどり着いたダイヤの目の前に来ていた。

「…――!?わああぁあぁあ!?」

「ダイヤ―――っ!?」

サスケ達はそろって思わず声を上げた。
レイはひどく涙をこぼしていた。大切な友が――…。

 ――玉を収めれば、世界は救われる。
――玉を収めるのを阻止すれば、世界は暗黒に変わる。

 早く、玉を収めて回避しなくては――!


「ごめんね。みんな…」

「…――!ダイヤ!?」

「このまま玉を収めると、ボクはダークライの攻撃に飲まれ、消されてしまう。
 長くて短い間だったけど…みんな。今まで本当にありがとう…」

 ―――カチッ…

ダイヤは泣きながら、2つの玉をさっと収めた。確かにしっかりはまっていた。
彼の姿は輝き、立派にみんなの瞳に映っていた。
そして、眩しさと共に、姿が消えた。

「ダイヤ―――――っ!」

“なんでこんなことになってしまうの…”

レイは悲しかった。サスケもパールも、そしてクレセリアも。
大切な友達が、大切な仲間が目の前で…。
止められなかった自分が悔しかった。
そして、ダークライが憎かった。


 …――!

「待て!まだ可能性はある!」

途方に暮れていたその時、どこからか声がした。
天の声だろうか。しかし聞いた覚えがある。

「加勢するぞ!ときのほうこう!」
「あくうせつだん!」

 バババァ―――…!

雲の裂け目から、ディアルガとパルキアが現れ、
ダイヤに直撃寸前の『シャドーボール』に撃ち込まれた。

「わああぁあぁあ―――――っ!」

 パアア―――…

みんな声を上げ、辺りは真っ白になった。

微かに、温かな光が差してきた――
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しっぽ #37★2009.02/02(月)17:31
★最終話★ ―たとえ時空を越えても―

 … … …。

ここは、どこだろう。温かな雰囲気と、やわらかな日差しが注ぐ。
この場所は…あの大樹の真下だ。どこからか声がする。

「…きて!…起きてっ!」

「…――はっ!?」

声を聞き、サスケとパールは飛び起きた。2匹が視線をおくった先には、なんと――!

「お帰りなさい!」

なんと、チェリー達が笑って立っていた。
ヒゲおやじは髭をたなびかせ、フレウスは腕を組んでにこっと笑っている。
リナは思わず顔を隠し、嬉し泣きをした。

「ううっ…。みんな、無事だったのか。良かった…」

「キミ達が無事で何よりだ…ありがとう」

「本当に良かった…!
 全ては皆さんが、最後まで諦めず戦ったのですから、
 元の平和な世界が戻って来たのです」

サスケの後ろでクレセリアがニッコリして、また、ホッとしていた。そばにいたレイも頷いた。
気づけば、空はオレンジ色に染まり、雲が浮かんでいる。
どれだけ久しぶりに見たのだろう。すごく平和を感じられた。
みんなで綺麗な空を見上げ、喜びに浸った。


すると、あることに気づいた。

「あれ…ダイヤは?」

「そ、それは――…」

そう、ダイヤは神殿奥地にて、ダークライの攻撃に巻き込まれ、
そしてディアルガとパルキアの攻撃が入り守られたはずだが…。

ダイヤの姿は無い。ディアルガ達の姿も無い。
大樹のある丘から見渡しても見当たらなかった。

「まさか、ダイヤは…!」

「おい、パール!それはないだろ!?ダイヤがいなくなるなんて…そんなの…」

みんな辛くなってきた。仲間の、そして友達のダイヤがいなくなるなんて…。

「そ、そんな…。ダイヤがいない…あたし寂しいよ…」

「オレ達、ダイヤがいないと悲しいよぉっ!
 あれだけ一緒に頑張った仲間なんだ。大切な仲間なんだ。
 ダイヤがいないなんて…ちっとも嬉しくないっ!」

サスケは泣き出し拳を握った。悔やんだ。
チェリー達は心配してサスケとパールに寄り添う。みんなの表情は暗い。

「ダイヤがいなくなったら…。我は…我はどうすれば…。一体、ダイヤはどこにいるのだ…」

ダイヤとは親友のレイは非常に元気を失い、言葉をなくした。

「…レイ」

ダイヤの友達のレイを、ただ見ているしか無かった。


「ダイヤは世界を救いに、そして友達のレイを探すためにやって来たのかもしれない…。
 ワシはそんな気がする。ダイヤは本当にすごいポケモン、いや、人間だった…」

「ううっ…。こんな我の事を思ってダイヤは…。
 ダイヤぁ…ダイヤ―――――っ!!」

レイは力を振り絞って叫んだ。声はこだまして響いた。
声がかれた。顔が下に向き、草地に涙がこぼれる。

「ダイヤ…」


 …――!

「…?あれ?その声は…レイ?
 ボクは…ボクはここにいるよ!」

なんと、後ろでダイヤは傷だらけで、よろめきながらも立っていた。
日の光が当たり、眩しく輝いて見える。

「ダイヤ!?無事だったのか!」

レイは泣いて心の底から心配していた。そしてサスケの目には大粒の涙が流れる。

「ダイヤ―――――っ!」

「ダイヤ…良かった…」

お互いに泣き合い、そして喜び合った。チェリー達はダイヤとレイを囲んだ。
パールとサスケは、ダイヤの両脇に立って笑う。みんなが本当に喜びに浸った瞬間だった。


「…――!体が…!」

レイとダイヤの体が光に包まれた。

「ダイヤさんにレイさん。あなたは世界を救い、お互い再開を果たしました。
 そして今、目的を果たしたあなた達は別れを告げ、元の世界へ帰らなければなりません」

クレセリアの言葉を聞き、ダイヤとレイはお互い見合い、頷いた。

「みんな…お別れだね。ボクとレイは元の世界に帰らないといけない」

ダイヤは寂しさを一切見せず、思い切って話をした。

「でも、アタシ…ダイヤのこと忘れないからっ☆」

「あたし、これからも平和を守るからね!約束するよ!」

「オレ…一生ダイヤのこと忘れないからなーっ!」

みんな、思い思いの言葉を口にする。次第に体を包む光は輝きを増す。

「みんな…さようなら―――!」

 パアア―――…

ダイヤとレイは光をまとい、青い空の中へ消えていった。

「ダイヤー!レーイ!
 思い出を、世界の平和を、ありがと―――う!」


こうして、ダイヤとレイは、無事に世界を救うことができた。
全ては、サスケやパール、そしてチェリー達がいたから…。
最後まで諦めず、平和のために戦えた。

今回の出来事を通して、心が強くなったみたい。
なんだか最初の時より遥かに成長した気がする。

いろんな者が知り合い、何かを見つけ感じる。そして、成長していく―――

人間世界に戻ったって、この事は忘れない。

 “たとえ記憶が閉ざされても、たとえお互い離れ離れになっても、
   そしてたとえ時空を越えても、思う心は変わらない”

 時空≠サれは大切な思い出の場所


     ―たとえ時空を越えても 完結―
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[1182]

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ぴくの〜ほかんこ