蒼風 | #1☆2009.01/04(日)23:45 |
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「サーナイトと恋愛感情 窓から射す月明かりが、私を照らす。 灯りもつけずに、一人たたずむ。 誰もいない部屋。 いるのは、一匹のサーナイトのみ。 自分のトレーナーは、今は買い物に出かけるためにいない。 それが、考えごとをするにはちょうどよい時間となった。 最近、普通は持たない気持ちを持ち始めた。 持ってはいけない気持ちを。 「…どうして?…」 独り呟いた言葉が、部屋に響く。 自分に聞いてみるが、答えはでない。 「…どうして…人間じゃないの?…」 自分の姿を見ながら、口に出す。 どうして、ポケモンじゃなきゃいけなかったの? 人間だったらなにも問題はなかったのに。 ポケモンでなければ、今も、胸のなかにある気持ちを持ってはいけないと思う必要もなかった。 だけど、 「…好き…」 トレーナーとしてではなく、人間として。 同じ生物同士が思う感情で。 あの人を愛している。 いけないと思って、何度もこの気持ちを捨てようとした。 でも、捨てても、捨てても湧いてくる。 変わらないこの気持ち。 こんな気持ちを持つのはおかしい。 持っては、彼が迷惑するだけ。 そう、自分に言い続けてるが、変わることはない。 彼と、話しているだけで幸せになれる。 彼の笑顔を、もっと見たいと思う。 彼の、特別ななにかになりたいと思う。 自分のポケモンとしてではなくて、もっと近くにいたいと思う。 彼に、愛されたい。 「…愛しています…」 本人にではなく、一人での告白。 彼には言えない。 伝えて、捨てられたくないから。 特別ななにかになれなくても、側にいられることの方が大事だから。 目の前から、彼がいなくなるなんて辛すぎるから。 「…私は…貴方がいないと駄目ですね…」 貴方なしでは、生きられない。 それほどに、愛してる。 彼は、自分が幸せに生きてられるのは私のおかげ、と言うけれど、貴方が幸せだから私は幸せなんですよ。 貴方が笑っていられないなら、私は辛い。 貴方が笑っていられるなら、私は嬉しい。 最愛の人の笑顔ほどに、私の心をうごかすものはない。 でも、本当に好きだから。 本当に愛してるから。 「…貴方に愛されたいんです…」 永遠に、私だけを見ていてほしい。 愛している、と言ってほしい。 あの人は、私をどう思ってくれているのだろう。 ただいま、と玄関のほうから声がする。 私は急いで灯りをつけて、彼のもとへ走った。 「どうしたんだい、そんなに慌てて?」 彼が、優しく微笑みながら私に言った。 言葉の代わりに、テレパシーを使う。 「いえ、何でもありません」 そうか、と言いながら私の横を通り、リビングのソファに座った。 彼が、私に隣に座るように促す。 私も、その隣に座った。 そして、静かに彼が口を開いた。 「…お前は…俺をどう思ってくれてる?」 いきなりの言葉に、私の心臓がはねた。 伝えていいのだろうか。 (でも…そんな意味じゃないわよね…) 「素晴らしい、トレーナーだと思いますよ」 緊張で声が震えるが、止められない。 「…それだけ?…」 なんだか、寂しそうな目で私を見つめてる。 私は、逆に聞いてみた。 「貴方は、私をどう思ってくださってますか?」 これには彼が驚いたらしく、目を見開いている。 急に、彼の顔が赤みをました。 「…俺は…その…好き…だよ…」 私は、今言ったことが理解できなかった。 人間がポケモンに恋をするはずはないのに。 (…ポケモンしてよね…良いパートナーとして…) 「…私も、貴方が好きですよ」 「違う」 私の顔を真っ直ぐ見ながら、彼が言った。 なんの音もしない。二人だけの空間。 「そんな意味じゃない。…お前を…愛しているよ…」 静かなのにはっきりと、彼の口から溢れていった。 それが、私の心に染み渡る。 でも、信じれない。 「…嘘じゃないのですか…」 「嘘なんかじゃない。お前を、愛している」 更にはっきりと、私に伝える。 求め続けた言葉。 今、この気持ちを貴方に伝えられる。 「私も…誰よりも貴方だけを…愛しています」 二人の気持ちが、伝わった。 そっと、彼が私を抱いた。 今までとは、違うぬくもり感じる。 夢ではない。 彼だけが持つ温かさがある。 私たちのこの気持ち、嘘じゃない。 永遠に変わらない、気持ち。 側にいたいと思う気持ち。 壁を越えてまで手にした幸せを、放したりはしない。 私は、幸せです。 貴方が、私の幸せなのですから。 ――end――――――――― |
蒼風 | #2☆2009.01/10(土)01:42 |
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「あなたとの大切な時間」 退屈な時間。 家事も、全部終わってしまいやることがない。 一人きりの時間に、やることがなくなるのは、本当に寂しくなる。 でも、心の中は晴れていた。 「明日よね」 私は、うきうきしながらカレンダーを見る。 カレンダーには、次の日のところに赤い丸がついている。 それは、彼が帰ってくるという印。 この3日間、彼は仕事が忙しくて帰ってこれない日だった。 彼は、レンジャーの仕事をしているため、帰ってこれない日は少なくはなかった。 彼はポケモン達の命を救うことを誇りに思っている。 だから、彼の姿を見たいと思っても、彼の誇りを否定したくはないから我慢できるのだ。 でも、今日は帰ってくる。 私は、彼の帰ってくる時間に合わせて、夕食の支度を始めた。 やっと、一人で食べる寂しい夕食が終わると思うと、料理も楽しくできるものだ。 久しぶりに、彼のために食事を作るので少し緊張もしたが、ちゃんと自信を持って出せる夕食が作れた。 時間が気になり、壁に掛った時計を見てみる。 「もうそろそろね」 時計の針は、彼が帰ってくる予定の時間まで、あと数分でたどり着こうとしていた。 私は、テーブルに夕食を並べて椅子に座って待つことにした。 カチ…カチ…。 時計の音が、部屋に響く。 帰ってこない…。 もう、予定より一時間も過ぎている。 こんなに過ぎることなんて今までなかったのに…。 暖かいうちに食べてほしかったのに…。 なんだか、寂しくなってきた。 ご飯から出ていた湯気もすっかり消えて、今ではもうカチカチになっている。 「まだかな…」 ジリリ。 そう呟いた途端に、電話が鳴った。 私は、慌てて立ち上がり受話器を手に取った。 「もしもし」 「あっ、ミューリ。あの、予定では今日帰えれるはずだったんだけど、今日は帰れそうにない。明日の朝までには帰れそうだけど、遅くはなるから先に寝てて。 …ごめんな」 私は、急いで頬を伝う涙を拭いて、落ち着こうとした。 もし、声が震えでもしたら彼が心配してしまう。 だから言わない、我慢する。 「あやまらなくていいですよ。 大変なのは分かってますから。私は、あなたのポケモンなんですからね。 お仕事頑張ってください…」 「ああ。本当にごめんな…。それじゃあ」 ツー…。 受話器から、悲しくなる音がする。 私は、泣いていた。あんなに待っていたのに、彼には会えない。 確かに、明日になれば会える。 でも、今日会いたかった。少しでも、早く会いたかった。 頑張って作った夕食を、あの人に食べてほしかった。 あの笑顔を見て、私のいる意味を感じたかった。 「ご主人のバカ…」 口から出ていく言葉。 こんなことでも言わないと、潰れてしまいそうだった。 少しでも、ごまかしたかった。 「朝までだって…待つ…」 寝て待ってるなんて嫌だった。 せめて、この食事を自分の前で食べてほしかった。 私は、待った。ただ何もしないで。 椅子に座ってるのに疲れて、近くにあるソファーに移動した。 それが、失敗だった。 柔らかいソファーは、私の眠気を誘った。 瞼が少しずつ閉じていく。 そして私は、意識を手放してしまった。 〜 もう、辺りが薄く明るくなっていた。 こんな時間になるなんて。 寝てて、と言っておいてよかった。 そんなことを考えながら、俺はバスから降りた。 朝の寒い空気が体にまとわりつく。 早く家に帰ろうと、彼は走っていった。 「…あれ?」 家の前まで来たが、不思議な事が起きてることに気がついた。 リビングの電気がついてる。 庭の向こうに見えるリビングの明かりが、ついたままになっている。 カーテンが閉まっていて、中は見えない。 まさか…泥棒か? そうだとしたら、ミューリの身が危ない! すぐに玄関の扉の前まで行き、そっとドアを開けた。 家の中は静かで、何も音はしない。 俺は、足音を立てないようにしながら、リビングへと近づいていった。 そして、目に入ったものは…。 「…ミューリ…」 小さく寝息を立ててる、サーナイトの姿があった。 こんなところで寝てたのか…。 いや、待ってくれてたのかな? 俺は、寝室から毛布をとってきて、そっとミューリにかけてやった。 「…んっ…」 あっ、起こしちゃったかな。 軽く目を擦りながら、ミューリが起きる。 そして、視界に入ったのは。 「あっ、ご主人様…」 「ただいま、ミューリ。寝てていいよ」 「おかえりなさいませ、ご主人様…。私は起きます」 そう言いながら体を起こし、俺の背中を押した。 そして、椅子に座らせる。 前を向いて、テーブルの上にあるものに気がついた。 「これ…」 置いてあるのは、昨日の夕食。 二人分置いてあるので、ミューリ食べていないのがわかった。 「お腹すいているでしょう?今から暖めますが食べますか?」 「ああ、お腹ぺこぺこだよ。君の美味しい食事を食べてなかったから、体が弱っちゃったしね」 それじゃあ、と言いミューリが皿を取り、電子レンジで暖め始める。 ガー― 静かな空間に鳴る音。 でも、寂しくはない。 だって、すぐそばにあなたがいるから。 孤独なんて感じる時間もないから。 あなたがいる、その幸せを実感する時間でいっぱいだから。 暖かい二人の時間が、また流れ始めた。 ――end――――――――― |
蒼風 | #3☆2009.02/01(日)01:16 |
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「暗闇の後の暖かさ」 明るいような暗いような、それがどっちかもわからないような空間。 下に地面があるのかもよく分からない。 そんなところに、私は立っていた。 辺りには誰もいなくって、なんだか寂しい。 少しずつ歩いていく。 「ご主人――!!」 呼びながら返事を待って歩いた。 すると、いつからいたのか目の前に背を向けた主人が現れた。 ピクリとも動かずに、たたずんでいる。 「…ご主人…」 そっと呼び掛けると彼は振り向いき、笑顔を見せてくれた。 優しい笑顔と一緒に、周りが明るくなった気がした。 私の方に主人は近づいてくる。 彼は両手を広げて、いつものように私が抱きつける形をとった。 暖かそうな空間がそこにできる 。 私はゆっくりと抱きつこうとして、近づく。 途端に、なにか綺麗な毛を生やした生き物が横から飛び出した。 !? その生き物、キュウコンが主人の胸へと飛込んだ。 主人はそのキュウコンを愛しそうに抱き、キュウコンは彼の頬を舐めた。 なにがおきているのか理解できない。 頭の中は真っ白になり、視界が霞んでいく。 呆然と二人を見ていると、キュウコンがこっちに視線を移した。 「あなた、彼を自分のものと思ってるみたいだけど…それは勝手な考えよ」 「…何言ってるの?」 フフッ、と笑いまたはなし始める。赤い瞳が不気味に輝く。 「彼はあなたのものじゃないって言ってるの。ほら」 そして、また頬を舐める。 しかし、私が見ているのに主人は嬉しそうに笑うだけ…。 見たくもない映像に、目を瞑る。 でも、そんなことで気持ちは戻らなくて痛んでいく。 「彼を解放しなさい」 外から声が聞こえる。 「あなたの束縛から彼はこんなにも解放してほしがってるのに、気づくことも出来なかったの?ミューリ」 必死に耳をふさいでも、逃げられない声。 頭の中に響きわたる音。 (…ミューリ…) 別の声が聞こえた。 冷たくて痛いものじゃなくて、癒しを与えてくれる。 そんな声。 「ミューリ!」 目の前に主人の顔があって、その表情は心配そう。 自分の体はいつものベッドの上にあった。 起きて夢だと気付いても、あの感じは体から抜けていかないで体内に巣くったまま。 「大丈夫か?すごいうなされてたぞ」 「…ご主人…」 彼は、手でそっと私の汗を拭いて、となりに座った。 ベッドが彼の重さで沈む。 心配そうな顔のまま、私を見てくれている。 「そんなに怖い夢を見たのかい?」 私がいつまでも喋らずにいるし、ずっと夢のことを考えていたからそれが顔にでてて、心配したんだと思う。 「ご…ごめんなさい…」 「ミューリ?」 沈黙が部屋を支配する。 涙が出てきてしまい、うまく喋れない。 やっとのことで声を絞りだした。 「ご主人…」 「ん?」 「今更なんですが…」 「ああ」 言葉にするのが、夢のとうりになるのが怖くて目をあわせずに聞いてみる。 「私…迷惑になってませんか?」 「いきなりどうした?」 「正直に言ってください」 また私は、彼を困らせてしまっているけど仕方ないことと思って、嫌われないことを願う。 「正直にって…言われてもな」 「…私の…あなたに対する気持ちが重荷になってしまってるんじゃないかって…思って…」 「ミューリ」 そっと呼び掛けてくれる。 「お前、俺の気持ちも考えてくれよ…っ。俺はな、お前が愛しくてたまらない。絶対に離したくない…!」 暖かい腕で私は抱き締められる。温もりが包まれた体に伝わってきて、哀しみの涙が止まっていく。 「それは…迷惑なのか?」 「ご主人…」 「どんな夢を見たかは分からないが、俺はお前だけを愛してるんだぞ、ミューリ」 「…ありがとうございます…」 嬉しかった。 あなたにこんなにも大切に、愛しく思ってもらえて。 どんな夢を見ても、あなたの言葉が、優しさが、温もりが吹き飛ばしてくれる。 この気持ちは変わらない。 ずっとずっと、私の瞳にはあなたしか写らないんですから。 「「大好き」」 二人の癒しの言葉が交差して送られた。 変わらない永遠の愛を誓いながら。 ――END――――――――― |
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